説明台詞なしサンプル その4
魔法少女部ッ!
第1話 遅れた部長はキツイ洗礼を受ける
私は部室に急いでいた。放課後にふとネタを思いついてしまって、スマホにそれをメモしていたのが遅れた理由。簡単なメモにするつもりが膨大な文章量になってしまい、時間があっと言う間に過ぎてしまっていたのだ。
スマホの時間表示を見て現実に戻った私は、急いで荷物を片付けて部室へと向かう。こんなんじゃダメだな、部長失格だ。
廊下を走って別校舎へ渡り、階段を登る。自分の教室から部室に行くまでにも10分くらいかかるのだ。ああもう、創作の神様は何故いつも私の都合とは無関係にささやきかけてくるかなぁ……。この部活の大切な時期に。
何とか急いで部室の前に着いた私は、その場で息を整えて深呼吸。全然焦っていない風を装って、勢い良くそのドアを開ける。
「みんな、頑張ってる?」
「あ、先輩、遅いですよっ」
部室内にいた後輩の1年生、明穂からのキツイ洗礼。遅れた私の目に映ったのは既に部室内に揃っている3人の部員の姿。全員が1年生で仲良し3人組だ。だからかな、出席率は高い。誰もサボる部員のいない部活って素敵。ただ、それは部活にとても真摯に取り組んでいると言う事で、融通が利かない事でもあるんだよね。
私は自分が頑張って走ってきた事もあって、それが遅れた代償だと自分に言い聞かせるようにつぶやく。
「そうかなぁ……」
「20分も遅れてるじゃないですか」
「そのくらい普通じゃない?」
私も普段はここまで遅れない。前に5分くらい遅れる事はあったけど、その時はそこまで誰も気にしてはいなかった。20分くらい許容範囲じゃないのかなぁ。
部活の開始時間は教室からの距離の関係もあって、放課後から15分後と決めている。あ、でもそこから更に20分も遅れたらやっぱり気に触っちゃうかな。
その後も明穂からのお小言をスルーしつつ、私も部活の準備をする。私は部長なのだ。私が来てからがちゃんとした部活だよ、うん。
「はいはい、それじゃ、全員揃ったし一通りやってみましょ」
全部員の4人が揃ったと言う事で、私達は改めて練習を始める事にする。まずは、事前に決めたポジションに立って呼吸を整えた。手にはそれぞれの特性に合わせたマジックステッキ。
準備が整ったところで、全員の意識を同調させて揃って呪文を唱え始める。
「マジカルミラクル……」
「大いなる光の根源よ、今我に奇跡を叶える力を……」
「ダークブラッドパワー……」
「ドゥーク・ザ・ライドゥ……」
それぞれに意識を高める言葉が違うため、最初はどうしてもバラバラになってしまう。学校によってはここから揃えるところもあるみたいだけど、それは部員数に余裕のある場合の話だ。
第一、前段階で揃わないのは普通で、バラバラでも特に減点対象にはならない。問題は意識を高めまくった後で発するキメの一言。これはしっかり審査対象になる。ここでキレイにハモれる事が高評価に繋がるんだ。
私達はそれぞれの言葉を唱え終え、ステッキに意識を込める。
「「「「フラッシュ・モブ!」」」」
魔法少女部の演技の最初の見せ場、全員揃っての変身が決まった。タイミングもバッチリ揃い、私達4人は揃って魔法少女のコスチュームに変身。変身した後はそれぞれの決めポーズで完了。今までに何度も練習しているだけあって、何の問題もなくキレイに全ての演技が完成する。
私はこの成果に一応は満足するものの、心の中に残ったモヤモヤを拭い去れずにいた。
「……やっぱさぁ、最後の掛け声、これ止めない?」
「いやでも、一番ピッタリ息が合うし」
私の呼びかけに不満を表明したのは後輩3人組の一番のノッポ、
私はジェスチャーを駆使して、分かりやすく自分の気持ちを訴えた。
「いや、フラッシュはいいんだけどね、その後にモブって……」
「私もかっこいいと思うけどな」
「私は別に……」
私の主張に対し、明穂も3人組の最後の1人、メガネ女子の
てか、私だけ異分子かよ……。この戦いに無謀なものをヒシヒシと感じた私は、シレッと話の矛先を変える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます