世界観設定

●表の歴史

 約24000坪ほどの広さのこの世界。二人で暮らす分には広々としていますが、世界というにはとても狭い世界です。

 中央には天高くそびえ立つリンゴの木が至る所に生えた塔「神の御柱」があります。その近くには薔薇園が綺麗な屋敷が一軒あります。

 それ以外には人家はなく、湖や森などの自然豊かな世界です。動物たちもいますが、彼らは皆さんを襲ったりなどしません。

 そして、人形たちがあなた達の家事全般をしてくれるため、あなた達は仕事をしなくても遊んで暮らすことができます。

 娯楽を求めるなら、使用人人形に命じれば、どんなものでも持ってきてくれます。その持ってくるものはすべて不思議な力で動いているようです。

 まさに楽園と呼ぶにふさわしい場所となっています。


 この世界に歴史、と呼べるほどのものはありません。何せこの世界には人はあなたたちだけしかいないのです。

 そう、つまりはあなた達がこの世界における始まりの人なのです。

 それ故に、この世界は望んでいるのです。あなた達が子供を作り、世界を作っていくことを……


◆真実の歴史

※注意。この先は閲覧制限がかかっています。この先を読むのであれば覚悟して読んでください。
















●女神の加護が薄い世界

 この階層は、かつては大体8万㎢と広大な土地を持ち、その土地で多くの人々が暮らす世界でした。

 しかし、この階層は基盤世界からはるか下の、遠く離れた階層です。それが原因かは不明ですが、女神からの加護が薄くなっており、度々ロアテラの一部が復活することがありました。

 そんな世界でも、星の騎士は現れます。この階層を守るために星の騎士になるものもいるのです。

 ですが、そんな星の騎士たちもこの世界では加護を十全には受け取れず、ブリンガーを守ることはできても、戦いで傷つけられるたびにステラドレスとなっているシースは傷つき、命を落とすものもいました。

 

 ですが、この世界にも希望はありました。それが、とある星の騎士です。

 かの騎士は元々はほかの階層にいた人物だったそうですが、シースの少女のためにこの階層で暮らすようになりました。

 多くの騎士が命を落としていく中、とある少女をシースとして常勝無敗で戦いを制していました。

 少女も日々の戦いによって傷ついていきますが、それでもなお、その騎士を慕い、恋に落ち、そして彼のためだけに共に寄り添い戦うのでした。

 そして、彼と彼女はこの世界の希望であり、英雄としてもてはやされることになりました。

 彼らが結婚する際には多くの人々が諸手を挙げて喜んだほどでした。


●娘を愛した神様

 彼らがここまで強くあり続けたのには一つの原因があります。

 それは、彼女の、シースとその母親にありました。

 シースは実は、この世界の神様の子供だったのです。

 

 その神様は、とある人、とある個人の魂の輝きに恋をして、その人と子供を授かりました。

 しかし、その夫であった男性は病によって亡くなってしまいました。その後、その神様は子供を大切に大切に、育てていたのです。

 その少女は神様の望むように穢れを知らない、真っ白な少女として成長しました。神様もそんな彼女を深く、深く、愛しておりました。

 それは、ロアテラの一部が出てきても、星の騎士に任せるだけで彼女への愛を注ぎ続けるほどに、たとえこの世界が滅んだとしてもこの娘だけは守り切るくらいに……。


●娘の運命の出会いと戦いの始まり 

 そんな愛を注ぎ込まれ続けた少女はほかの階層から来た来訪者と出会い、恋に落ちてしまいます。

 どうやって彼らは出会ったかはわかりません。ですがこうやってであったのは運命だったのでしょう。

 最初は幸せそうな彼女を素直に祝福していました。彼女が幸せであるならそれでいい、とすら思っていました。

 実際、恋仲になった後の彼らからは輝かしいほどの魂の輝きを感じていたそうです。

 ですが、彼が星の騎士になってからは一変しました。

 加護を十全に受けられないこの世界では、攻撃を受けるたびにシース自身も傷ついているのです。

 神様は必死に彼女が死なないようにたくさんの加護を与え、生き延びさせてきました。


●楽園創世の始まり

 神様はそんな娘の姿を見て、このままでは何れ彼女は死に至る、と確信しました。

 愛する娘を失いたくない、だからといって、娘の幸せでもあるブリンガーを失うわけにもいかない……。

 そこで神様は一つの決心をしました。自らの力全てを使って、ロアテラからも二人の女神からも、何者からも守る楽園を作ると……

 

 ただし、神様だけの力ではやはり強力な力を完全には防ぎきることはできません。そこで二つの工夫を凝らしました。

 一つは「ごくごく小さな範囲だけにすること」です。

 世界全てを守ろうとすればそれだけ力を拡散させてしまいます。そのため彼ら夫婦が一生を暮らすのに必要な場所だけを守ることにしました。


 そしてもう一つが「魂の輝きを使うこと」です。

 この神様にとって、魂の輝きとはエネルギーでもありました。そのエネルギーで少しでも長く、長くあり続ける様にしようと考えました。

 同時に、もしもこの世界からロアテラがいなくなった後、彼ら夫婦だけでは世界は成り立たないと考え、燃料とするだけではなく、彼らを未来に残すことにしたのです。

 そこで神様は、魂の輝きを強く感じられる選ばれた人々を自分の中に保存して、彼らに永遠の夢を見させるのでした。


 こうして神様は完成させました。「輝きの鳥籠」という名の楽園を……。

 その楽園が出来上がる時にはもうこの世界が崩壊するギリギリで、この「輝きの鳥籠」以外の場所はロアテラに喰われようとする直前でした。

 それでも、ギリギリではありましたが、確かに完成させたのです。

 

 そして神様は自らを「常に魂の輝きを取り込み続けること」「愛する夫婦が永遠に暮らせる楽園を存続させること」この二つのみを残して、ただの世界のシステムになろうとします。

 完全にただのシステムになる前に、彼女は娘夫婦を誘いました。

 

 「この楽園で、永遠に暮らしましょう」と……。


●拒絶された楽園

 ですが、娘夫婦はそれを断りました。彼らはこの世界を守るために最後の戦いへと向かってしまいました。

 ただ一人の大切な子供を、その楽園に残して……。


 システムとなってしまった神様は、それを止めることはできなかったのです。

 外側に対しては圧倒的な守りを持っていたとしても、自らの意思で出ていくものは、止められなかったのでした。


●娘夫婦の忘れ形見 

 しばらくして、夫婦が残した子供はすくすくと成長しました。

 世界は「愛する夫婦が永遠に暮らせる楽園を存続させること」という役割を果たすために、自らに取り込んでいた人々の中から、子供と運命がつながっている少女を見つけ、その少女を目覚めさせて夫婦になることを望みました。

 その少女は神様に従い、娘夫婦の忘れ形見である子供と夫婦となりました。


 しかし、その少女によって、娘夫婦の子供は楽園を拒絶するようになっていったのです。


 少女は元々は他の階層から来たブリンガーでした。そして、願いは自分のもとの世界に帰ること、でもありました。

 少女はそのために、神様が大切にしている子供を取り入ったのです。外にはいろんなものがある。一緒に外に出よう、と……。

 そんな少女の甘言に惑わされて、遂には子供は外へと出るために神の御柱を駆け上る決意をしました。その時、ちょうど彼らは子供を一人授かったときのことでした。


 脱出するために彼らは神の御柱に直接交渉しました。

 そんな彼らを見て、このまま出させるわけにはいかない、そう考えて娘夫婦の子供とシースであった少女とは別の娘を鳥籠に閉じ込め、永遠の楽園生活へと導いたのでした。

 そして、娘夫婦の子供を惑わした少女は罰として、楽園の外へと追放したのです……。


●楽園に残ったもの


 そうして残ったのは、「常に魂の輝きを持った人々を取り込み続けること」「愛する夫婦が永遠に暮らせる楽園を存続させること」この二つのシステムが残った楽園だけでした。


 この世界を作って守ろうとしたものをすべて失った世界は、それでもなお、そのシステムを果たすために動き続けます。

 二つの使命を果たすために、魂の輝きを持った人、または二人をこの世界へと引きずり込むようになりました。

 そして、世界に引きずり込んだ後は、愛する夫婦となることを望み、その楽園を存続させるために子供を作ることを望むのです。そう、かつての娘夫婦や子供夫婦のように……。

 しかし、世界にとって魂の輝きが最も輝いていた時は「恋仲となり、夫婦となり、その子供ができ、幸せな家庭を築いている」その瞬間こそが最も輝いていたと感じていました。

 逆に、それ以降は絶望しか待っていない、それどころか自ら幸福から離れようとすらする、とも考えてしまっていました。

 そのため、夫婦となり、子供を作った夫婦は、そのまま眠りにつき、永遠に夢の中で家族で仲良く暮らし続ける夢を見させられます。

 そして、そんな魂の輝きを燃料として、この世界を存続させ続けるのです。

 ロアテラがいなくなる、その時まで……。



●そして現在……


 現在、この階層は鳥籠以外はすべてロアテラによって喰いつくされ、今なお、ロアテラに狙われ続けています。

 魂の輝きをたくさんたくさん、抱え込んでいるこの極上の餌でもある鳥籠を……。

 

 二人の女神様もまた、ロアテラの一部がこの階層から漏れ出て、他の階層にも被害が及んでいるため、この階層を切り離そうとしています。

 しかし、鳥籠は二人の女神様すらも遮断しており、その鳥籠があるため階層を切り離すこともできないそうです。

 

 ですが、幸運なことにその世界とつながる糸のようなものがあることに気付きました。 

 二人の女神様はその糸を用いて、鳥籠の世界とつながるための楔としました。

 これにより、この世界へと引きずり込まれた人は、自らの記憶や所属などの、元々の世界とのつながりを楔として、女神たちとつながるようになりました。

 これによって、この世界へと引きずり込まれた人々にも女神様は加護を与えられるのです。

 女神たちの目的は一つ、この世界の神様を内側から壊して、この階層そのものを切り離すことです。この階層は既にアーセルトレイにとっての癌になり果てているのです。


 この世界に来た人々は皆、最初は元の世界へと戻ろうとします。

 しかし、愛する人とともにいるこの楽園ではその暖かさに飲まれ、そのままこの楽園にい続ける人が続出しました。

 例え、拒否してこの世界から脱出しようとしても、世界がそれを許しませんでした。もう、これ以上、自分の大切な夫婦を失いたくないのです。

 そして、世界へと立ち向かい、敗北していくのでした。


 そして、今もなお、この世界はあり続けているのです。


●気候や地形、文化について

 この階層は先ほども述べたとおり、約24000坪ほどの小さな世界です。二人で暮らすには広いですが、世界として考えると狭いでしょう。

 すべてが平地であり、ところどころに森林が見られます。中には泉や湖があるでしょう。

 気候も常に過ごしやすい気候で、花々が咲き誇っており、鳥や動物たちも喜んでいます。

 中心には天高くそびえ立つ「神の御柱」とそのそばに無人の屋敷があります。西洋風の屋敷でそのそばには薔薇園もあるほどです。

 この屋敷には使用人として人形が動き回っています。この人形たちはあなた達を主人として身の回りの世話をしてくれます。

 また、この豪邸では、望めばいつでもご飯を手に入れることができます。すべて人形たちが作ってきているようです。あなた達が望めばどのような料理も出してくれるでしょう。

 衣・食・住、生活するための仕事はすべて人形たちがしてくれるため、あなた達は何をしなくても暮らしていくことができます。そのため、安心して日々を過ごすことができます。

 

 本当にたった二人だけのための楽園となっているのです。

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