第5話 襲撃

 朝、だるい……だが、隣に寝ている彼女を起こして早いとこ新しい仕事を探さなければ、懐がどんどん軽くなる。


「仕事を探せ……いつまでも寝てるな」

「……なに? もう朝?」


 彼女は眠たそうに目をこすりながら上半身を起こした。


「寝かせなかったのはお前だろ? マガジン代以上に……」

「……クソマズイ、レモネードの所為だ」

「本物なんてそんなもんだ。本物が旨いとは限らない」

「へいへい、そんなもんですか……」


 こいつに付き合っているよりも、仕事を探しに行こう。

 まあどこかに物を運ぶ用心棒ぐらいにしか……


 ……ズドーン……ッ!


 何か……いや、遠くに爆発音が聞こえた。

 常に聞いている音だが嫌なものだ。だが、何かいつもと違っているような気がする。


「アタシにも武器を!」


 俺の記憶では、彼女はまだ真っ裸だったはずだ。

 シーツ一枚で立ち上がって武器を要求しているが、先に服を投げつけた。

 俺の女の――本人は拒絶するかもしれるが――裸を人前で見せる気はない。


「どこで!」


 宿屋の2階の窓から上半身を出した。


「上を着ろ!」


 とにかく、爆発音は近い。街の囲の中から聞こえてくる。


 バババババババババっ!


 マシンガンの音が聞こえてくる。誰かが乱射しているようだ。

 この女以外に誰が……いや、それよりも宿屋の壁に弾丸が撃ち込まれているじゃないか。


「顔を出すな!」


 危ない、危ない……頭が吹き飛ばされていただろう。

 彼女を押し込むと、途端、弾丸が部屋に飛び込んできた。


「ロボット兵だ! この街にも襲ってきた!」


 そう叫ぶと弾丸のように宿屋を飛び出して言ってしまった。

 彼女の生まれ故郷は、『アバカス』の軍団に蹂躙されたときいたとがあった。


 復讐……。


 そう思ってもおかしくはない。

 物陰から外の様子を見ると、彼女が言うとおり無機質の白い身体をもったロボット兵が街の中をうろうろしている。

 その後ろには巨大な戦車。

 子供の頃に残っていた絵本で読んだ古代生命のマンモスを思わせるような巨体に、巨大な鼻を思わせる40センチもある主砲。巨大な牙を思わせるバンパー……。その巨体からはロボット兵がゾロゾロと出てきているのが見えた。


 ふと、宿屋から飛び出す彼女の姿を見つけた。


「行くな!」


 俺の叫び声は彼女には届かなかったようだ。


 それが、彼女を見た最後だ――。

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