第2話 生き残った人々の末路


 22世紀初頭、人類は負けた。


 当時、人類は繁栄を謳歌していた。

 どんな病気もほぼ治療可能になり、ロボットやバイオテクノロジーなどで労働問題や食糧問題も解決。

 ただ、1つ解決できなかったことがあった。


 地球の環境だ。


 人類の活動の為なのか、太陽の異常状態なのか、氷河期の終わりなのか……とにかく、地球が住みづらくなってきたのは確かだった。

 異常気象、異常高温、異常低温、異常降水、異常、異常……異常だらけの地球環境をどうするのか?

 そこで世界各国が集まって、地球環境改善機関を設立したらしい。


 メインとなったのは『アバカス』という人類の英知を結集して構築したスーパーコンピュータ考える機械だ。

 世界中の情報を集めて、人間よりも遥かに迅速かつ的確な結論を導き出してくれる。

 そう期待されたのであったが……。


 地球環境に人類は害悪でしかない。


 と、はじき出した。

 世界中のネットワークを支配し、コンピュータやらロボットやらを完全に配下に置き、人類撲滅の為に『アバカス』は全力を尽くした。

 その1つがバイオテクノロジーを、駆使して作り上げたいわゆる生物兵器『G』だ。

 人類が嫌がるゴキブリに、アリやハチの社会性を混ぜ合わせた生き物で、先兵として世界中に現れた。

 駆逐しても駆逐しても現れる『G』によって、各国の軍隊の体制はもろくも崩れ、人類文明の崩壊の一端となった。

 このほかにも作り出されたロボット兵士や化け物生物兵器により、人類は敗北を繰り返し……。

 その後の世界はお察しの通り。


 世界がどうなったのか?

 人類生みの親に半反旗をひるがえした『アバカス』はどうなったのか?

 ともかく残った人類の一部は、生き抜くのが精一杯であれからどれだけ経ったかなどと、いちいち勘定をしていない。


 生き残った人々は、世界中の彼方此方に小さなコミュニティをなんとか形成し、全滅を免れている……はずだ。

 彼方此方放浪している者から、そう聞いている。

 まあ、俺が見える範囲……ヤマに囲まれたヘイヤとかいった広い大地には、片手ほどしかそのコミュニティを確認できていない。


「アタシらが守ったのって何だったの?」


 彼女はトラックの荷台の物を蹴飛ばした。

 命を賭けて守った物がなんなのか、気になったようだ。

 俺も気になるが……


「おいおい、中身が判らないのに蹴飛ばすな」


 シートに被された木箱に入っている。

 何かはいっているか判らないのに、蹴飛ばすのはよろしくない。

 貴重品かもしれないし、衝撃に弱いモノかもしれないのだ。


 まあに着いたら判るだろう。

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