第18話 謁見
俺は今馬車の中にいる。
そして目の前には王太子と騎士団長が座っている。
騎士団長の俺を射殺そうとする視線が凄まじい。
だが俺はどこ吹く風で王太子と会話をしている。
「ほう、ウィン殿は1回王都に来たことがあるのだな。」
「あぁ、そうだ。家族との旅行でな。」
こんな感じで王都についた。
馬車は王都に入るなり直ぐに城へと向かった。
何度見てもでかい城だなぁ。
そう思っているともう着いたようだ。
「このお方は事前に知らせたように僕の命の恩人だ。丁重に客室まで案内しろ。」
「は!」
王太子は指示を出し、一旦国王へ帰還報告をするそうだ。
俺は案内の騎士について行く。
「こちらでお呼びになるまでしばらくお待ちください。」
そう言って退室していく。
わお、広い部屋だな。
前世でよくテレビで見た金持ちの家みたいだ。
俺はソファーに座り、テーブルに置いてある菓子をつまんで待つ。
1時間ほど待っていると先程の騎士が戻ってきた。
「お待たせ致しました。只今より国王陛下との謁見となります。失礼の無いようにお願い致します。それでは私の後についてきてください。」
大人しくついて行く。
だけど失礼のないようにねぇ。どーしよっかなぁー。
そう考えていると今まで城で見た中でも一際大きく、綺麗な装飾を施された扉の前へついた。
扉が空くと、右には文官、左には武官が立っていて、奥には玉座があり、国王らしき人が座っている。その左隣にも玉座があり、王妃とみられる女性が座っている。
俺はその直前までゆったりとした歩調で歩く。左右の人達の視線が俺へと刺さる。
そして玉座がある陛下の直前で立ち止まる。
そして国王をこの目で見つめる。
あちらも俺の目を射抜いてくる。
おおよそ40代くらいで、髭を生やしている。
「貴様!陛下の御前である。跪かぬか!」
騎士団長が喚く。
「なぜ跪かないといけない。俺は国王の臣下になった覚えはない。」
ザワザワザワザワ
周囲がざわめく。
「な、貴様!無礼であるぞ!」
「冒険者は自由を求める職業だ。国家権力に縛られるものでは無い。それともなんだ。俺は恩を売るつもりは無いが、恩人に対して跪けと言うのか?それがこの国の国風だと言うのか?」
「き、貴様!つけ上がりおって!」
「ガキが陛下に無礼を働くな!」
「恩人などとはおこがましい小僧だ。」
色々言われている間も俺と国王は見つめあっている。
「静まれ。」
国王は静かに言った。
その一言で場は静まった。
「ウィンバルド殿と言ったな。」
「あぁ。」
「息子が世話になった。助けてくれたそうだな。余からも礼を言う。ありがとう。」
そう言って国王は立ち上がり、俺に頭を下げた。
「な、へ、陛下!」
「黙れ!ウィンバルド殿を邪険に扱うことは余が許さぬ。」
「は!」
有無を言わさぬ国王の態度で騎士団長は黙る。
「すまんな。俺は敬語や礼儀が苦手なんだ。」
ま、女性以外にはな。
「冒険者なのだからそれは仕方なかろう。余も気にしていない。」
「すまない。」
「さて、貴殿は何か欲しいものはあるか?礼に欲しいものは何でも与えよう。」
「それでは一つだけ頼む。」
「分かった。なんなりと申すが良い。」
「Sランク冒険者の地位だ。国王からギルドへ言って欲しい。」
「ほう、そんなものでいいのか?」
「あぁ、それだけでいい。」
「随分無欲なものよ。」
「そうでもないさ。」
「あいわかった。後日必ずかなえよう。」
「ありがとう。」
「礼はこちらが言うものだ。」
「そうか。」
「よし、これにて謁見を終了とする。」
そう言って国王と王妃は退室して行った。
皆もぞろぞろと謁見の間を出ていく。色んな人が俺のことを憎らしい目で見てくる。
「アハハハハ、陛下にあの様な態度を取ったのはウィン殿が初めてだろうな。僕が事前に陛下に言っといて良かった。」
ずっと文官の列にいた王太子が話しかけてきた。
「すまんな、気を遣わせちまって。」
「恩人なのだから当たり前だ。」
「そうか。」
「あとこの後すぐまた陛下にあってもらうからよろしく頼む。」
「分かった。すぐ行こう。」
「あまり驚いていないな。知ってたのか?」
「いや、そうかなと思ってただけだ。」
「そういうことにしておこう。それでは僕についてきてくれ。」
そういう王太子について謁見の間を出る。
少しばかり質素な扉の前で立ち止まった。
「ここでは陛下もだいぶフランクに接してくださる。先程との態度の違いに驚かれるなよ。」
「あぁ、分かった。」
俺がそう言うと扉が開いた。
「やあ、ウィンバルド殿さっきぶりだな。」
「ウィンでいい。」
「ならそうさせてもらおう。あ、まだ自己紹介がまだだったな。エドワールド・フォン・ドートミールだ。この国の国王をやってる。気軽にエドと呼んでもいいぞ。」
「ハハ、家臣のヤツらに殺されそうだな、エド。」
「余が彼らを止めておこう。」
「ありがたい。」
「あ、あの。僕のこともイルゾと呼んでくれないか。僕もウィンと呼んでいいか?」
「もちろんいいぞ、イルゾ。」
「私も自己紹介しても良くって?」
あ、そういえば王妃を忘れてたな。
「すいません、どうぞ。」
「私はシホンネル・フォン・ドートミールですわ。シホンと呼んでくださいまし。よろしくですわ、ウィンくん。」
「ええ、よろしくお願いします。」
「何でシホンには敬語なんだ?」
「さぁ?何故でしょうね。」
エドとイルゾがコソコソ話す。
いいだろ別に、女性なんだから。
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