第13話 ギルドマスター
チュンチュンチュン
「んぁ?」
鳥の鳴き声で目を覚ました。
あまりの眠さに焼き鳥の作り方を考えてしまった。
昨日は濃密だったなだいぶ。
今日から冒険者かぁ。父さん喜んでくれるかな。
あの方の正体はもう掴んでいる。なぜ俺の両親を殺したかも知っている。今すぐには殺しに行かない。殺せない理由があるからだ。だから冒険者になる。これも理由はある。
絶対に落とし前はつけてもらうからな。
顔を洗いに部屋を出る。1階の外に井戸があり、そこで顔を洗う。
食堂に行くと冒険者でごった返していた。
空いてる席がないから相席するか。
「すまない。ここ座っていいか?」
「あ?いいぜ別に。」
「ありがとう。」
少しごつい感じの見た目の獣人だ。
獣人は強いので冒険者に多い。
ウェイトレスの人にサンドイッチとコーヒーを頼む。
「お前、ガキだろ?いくつだよ。」
「10歳だ。」
「若ぇな。なんでこんな所で1人で泊まってんだ?親は?」
「死んだ。」
「そいつはすまねぇな。」
「いや気にすんな。」
注文が届きサンドイッチにかぶりつく。
「じゃあお前両親いねぇでどうしてんだ?」
「冒険者をやってる。昨日からだ。」
「その若さでか!?お前戦えんのかぁ?」
「これでもBランクだ。」
ガタン!
獣人の男が立ち上がった。
「お前嘘だろ!?俺だってCランクだぞ!」
「嘘じゃねぇ。ほら冒険者カードを見ろ。」
「おぉ、まじだ。す、すげぇな。」
ガンティーは落ち着いたのか着席する。
「そーでもねぇよ。」
「なんだ嫌味かよ。ガキのくせに生意気だなぁ。」
「生意気で悪かったな。」
「へっ、クソガキが。
まぁなんかあれば俺に声をかけな初心者くん。俺はガンティーだ。」
そう言ってガンティーは席を立つ。
「よろしくなガンティー。俺はウィンだ。ウィンバルド・スフィンドール。」
「おうよろしくなウィン。」
拳を突き合わせる。
会計を済ませガンティーは宿を出ていった。
俺も早く食おう。
会計を済ませギルドへ向かう。
ギルドに入るとたくさんの人がいて視線が刺さる。
昨日は人すくなったし、帰りはハルナさんたちと一緒だったからなぁ。
「おいおいここはガキの来る場所じゃーねぇぜ。」
早速冒険者Aにからまれた。
「あ!ウィンくん!おはようございます。」
しかし手を出す前にハルナさんに遮られた。
冒険者Aもしぶしぶ下がっていく。
「昨日の件でギルドマスターがお呼びです。2階の執務室にすぐ向かってください。」
「ギルドマスターですか。分かりました。」
『ギルドマスターだと?あのガキ何者だ?』
そんな声が聞こえるが無視し、2階に向かう。
執務室に着き、ドアをノックする。
「入れ。」
静かに扉を開け中へはいる。
中には頭を角刈りにしたガタイのいい男性がいた。
60歳くらいだろうか。歳にしてはめちゃくちゃマッチョだ。
「君がウィンバルドくんか?」
「あぁ。そうだ。」
「来てくれてありがとう。さあ座ってくれ。」
勧められるがままに座る。
「私はギルドマスターのエラドネル・テンベールだ。エラドと気軽に呼んでくれ。」
「分かったエラド。俺はウィンバルド・スフィンドールだ。ウィンでいい。」
拳を突き合わせる。
「よろしく。さて、今日君をここに呼んだのは昨日の件でだ。分かってるよね。」
「あぁ、もちろん。」
「ウィンくん、君はどうしてヒュージタイガーを瞬殺できたんだい?あれはAランク冒険者でも苦戦する代物だ。ステータスが100前後の君には到底無理だ。スキルでも厳しいだろう。なにか秘密があるんじゃないのかな?」
「あぁ、あるぞ。俺は実力を隠してる。もちろんステータスは100じゃない。」
「やはりか。なぜ隠す?」
「面倒だからだ。受付でそんなことしたらハルナさんが卒倒しちゃうだろ。」
「そうか、確かにな。だがどうやってその若さでそれほどの力を得たのかな?」
「あんたに言わなきゃいけない義務はない。利用規約にもなかったし。」
「アハハ、そりゃそうだな。まぁ言わなくてもいい。」
「そうだ。まぁ言わないと面倒事がついてくるのは分かってる。」
「なんだ分かってるのか。そうだぞ。ステータスがどのくらいかだいたい知られてないとほかの冒険者から絡まれることになるよ。」
「ふっ、望むところだ。」
「うん、今日はもういいよ。依頼を受けに行きな。」
「あぁ、もちろん行くさ。」
「じゃあ依頼を頑張ってな。」
「おう。」
そう言って執務室を出る。
よし!依頼を受けに行くか。
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エラドネル視点
ウィンくんが執務室を出ていく。
「ふぅー。」
自然とため息が漏れる。
ウィンくんを呼んだのはウィンくんの実際のステータスを知りたかったのもあるが、実はウィンくんをこの目で見てみたかったのだ。
大人より低い身長。10歳にしては引き締まった身体。幼さが残る整った顔。そして先を見すえてるような綺麗な目。
本当に10歳なのかを疑ってしまうレベルだ。
なにか目の前に歴戦の兵士が座っていたような感覚だった。
とにかく圧力が凄い。
なんだあの溢れ出るオーラは!
元Sランク冒険者の私だからこそ分かる事だ。
あの子は絶対に大物になる。それほどに実力の底が見えなかった。
国王陛下に連絡しとこうかな。
コンコンコン
「ギルドマスター、次のご予定が。」
「あぁ、今行く。」
そう言って執務室を出た。
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