第6話見物効果

人に見られることを好きになる──



人に見られるのは苦手だ

人に見られていると思うと萎縮してしまう

周りの動きに気をとられてしまって目の前のことに集中できなくなる

気にすることをやめたい

でも気に入ってきて

周りの音を遮断できたらどれほど気楽なことか



『観察効果』『見物効果』

ググっているとそういう心理ワードが書かれていた

スポーツの世界では観客が多いほど選手は能力を発揮できるという

女性なら見られることによって美しくなるという

人は見られないと成長しない

プレッシャーになることもあるけれどモチベーションになることもある

コンプレックスや隠したいことがあるから見られたくない注目されたくない

そんな気持ちが自分の中にはある


自分のやり方を否定されたくないから

相手が正しいと思ってるやり方を強要されたくないから

相手のペースに合わせてしまって疲れたくないから

相手が発した音が琴線に触れる

閉ざそうとするほどその音は高鳴ってきて

それが喧騒の群れであれば不思議と気にならなくなる

パチンコ店の中にいるほうが落ち着くといった人の心理が理解できるかもしれない

静かなところがいいでも静かすぎるのも苦痛だ


周りと距離をとりたい

自分の空間がほしい

でもそこには土地の所有権なんてないわけで

無法地帯なわけで

動かないものはテコを使っても動かないわけで

学芸会の草役というわけにはいかないわけで

いい人でその場を凌ぐというのはウンザリしてきてるわけで

いい人になると自分らしさがなくなるように思えてきて

きっと相手と向き合えてないんだろうなって



そんな自分がいつの日か壇上に立ち客席が居並ぶ中で堂々とスピーチを行う。

練りに練り上げた話だ。

反応はどうだろうイマイチでもかまわない。

これをやってる自分が痛快なんだ。

きっと過去の自分は痛快だと笑ってる。

思いもよらぬ不快なことは起こる。

でも思いもよらぬ痛快なことも起こせる。

まずは人から見られることを好きになる。



思いもよらぬ突風で傘がめくれ上がって花束のようになってしまった。


見知らぬ人の反応は…



特になし



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