第5話ロミジュリ

土曜日。雨。



今日は土曜日だし時計のアラームが鳴ってもまた寝入ることにした。

そして2時間後もうこれ以上寝れないなと思い体を起こす。

雨。。


布団干せねぇ掃除する気分じゃねぇ

窓辺の机に座り今勉強中の手話を覚えることに。


外から入ってくる雨模様の風が寒さを感じさせ体が総毛立つ。

まあでもちょっと肌寒いくらいの方が知熱を冷ましてくれるからちょうどいいかなと。



やっと最後のページまで目を通すことができた。

しかし覚えてナンボ

また初めのページから記憶の定着を確認してゆく

体で覚えるっちゃあ時間がかかるねぇ~、



冷蔵庫の残りもの乾燥してパサついたごはんで簡単に昼食を済ませ犬が散歩に行きたそうな瞳をこちらに向けてきたので雨の音も聞こえないから行くなら今だなと思い外へ連れ出した。


いつも夜はむこう方面なんだけど昼間はこっち方面かと久しぶりの反対コース。

公道に面していない立ち並ぶ民家の通りを散策してゆく。

と、雨がパラパラと降ってきた。

出たら降ってきた。

俺って雨男かな?と疑問するけどまぁすぐ止むよ、

急に降ってきたんだから急に止むだろと強く思い込むことにする。

俺が雨を降らせたのかもしれないけど俺は雨を止ませることもできると一方的に思い込んだ。

近頃強い気持ちってのはそういうことなんじゃないのかなって思ってたりする。

ほら、雨止んできた。



この辺の通りは山の近くなので急勾配になっていたりする。

下って上ってそして下りの急な長い階段。

犬の降りるペースが早いと胴輪が首に食い込んで喉が圧迫されてしまって咳こむのでヒモを張った状態でペースを合わさせる。

ヒモが少しでも弛まればペースを上げてくる。


下っている途中で犬のペースが一軒の家の前で止まる。

この家に犬がいるのは今までの経験からわかっていてうちの犬がこの家の前で止まるのもわかっている。

段差を上がり正面口の下の隙間をクンクン嗅ぐうちの犬。

その正面口の並びの勝手口の並びの柵のむこうに犬小屋がありむこう側からうちの犬の様子を見ている犬。

しばらくはこの家の犬の姿は見ていなくて犬小屋だけの存在だったが今日はいた。


目が会う二匹──


まっすぐ見つめる家犬──

慌ただしく動きまわるうち犬──


勝手口の下の隙間に鼻を押し込み臭いを嗅ぎ回るうち犬──


壁に挟まれたむこうへたぐるように出口を探す家犬──


鼻の奥から漏れる切ない声が──


その声を掴もうと探るその鼻が──


そしてお互いの鼻と鼻が重なり合い

お互いを感じられるのは臭いだけ──


二匹を引き剥がすものは綱と目の前の厚い壁──


あなたは青い綱そしてわたしは赤い綱

それはなにか運命を想わせるような二色の関係──


わたしは切声をあげて去ってゆく

それではさようなら──



ロミジュリかっ!

わたしはたかが犬の散歩でこんな初々しい気持ちになるとは思いもしなかった。

その光景はいつか観たロミオ&ジュリエットを連想させていた。

なんだか優しい気持ちでツッコまずにはいられなかった。



そして階段を下り終わり何事もなかったかのように辺りを散策しながら進んでゆくうち犬であった──




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