その4~6

- works.03 ドーファー邸 -


その4~6を掲載しています。




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《前回までのあらすじ》


 チャビの闇の実力者ディー・バーバリアの元から逃げ出したルグニカ、ソニカの

ために水長の村を訪れることになったパーティは、船で北トゥムに向かいます。

 さて、どんな事件が待ち受けているのでしょうか?


~その4 止鏡湾を渡る~


GM:   翌朝、朝靄の出てる桟橋に君たちは集まった。

      桟橋には全長20mくらいの細身の船が停泊してる。

      はしけの前で水夫が

      「あと半刻で出発だ。北トゥム、アイアン・ロックへは

       泳ぐより船に乗った方が早いぜ!」(一同爆笑)

      って大声で叫んでる。

ケイ:   「おもしろい水夫さんね」

ジェスタル:「船乗りってさ、みんな陽気なんだね」

GM:   「お兄ちゃんたち、定期便は初めてか?」

ヤシュト: 「そうなんだ」

GM:   「じゃあ、ちょいと説明しとこうか。

       このフライング・フィッシュ号は15時にアイアン・ロックに停泊、

       明朝の10時に北トゥムに到着だ。

       北トゥムまでかい? それともアイアン・ロック止り?」

ヤシュト: 「北トゥムまで」

ラルク:  「アイアン・ロックにはどのくらい停泊するんですか?」

GM:   「2時間ってとこかな」

ラルク:  「薬草を届けるには充分な時間ですね」

ジェスタル:「充分すぎるだろ」

GM:   「個室を使うんなら100Gold、甲板でいいなら20Gold」

ケイ:   「ずいぶん差があるのね」

ヤシュト: 「甲板って、一晩中甲板か?

       明日の10時なんだろ、この船が北トゥムに着くの」

GM:   「心配すんなって。

       甲板にも幌がかかってるから、雨風の心配は全くいらない」

ヤシュト: 「どうする? 甲板でいいか」

ジェスタル:「80Goldの差は大きいぞ」

ラルク:  「甲板にしましょう」

GM:   「それじゃ20Goldずつ払ってくれ」

ラルク:  20Gold減らしてっと。

ケイ:   「あ~あ。早く100Goldくらい、ぽーんって

       払える身分になりたい」(笑)

GM:   「さっ、船に乗ってくんな」

ヤシュト: じゃあ乗り込むよ。

GM:   君たちが甲板に上がると、メイラレンの旅人2人、王宮の文官らしい

      男、商人6人が先客として思い思いの場所に陣取ってるね。

ラルク:  私たちも空いてる場所に適当に座りましょう。

ヤシュト: 先客たちはどんな感じ?

GM:   文官は気難しい顔をして、船縁から海を眺めてる。

      旅人の2人連れは何やら冗談を言い合ってるみたいだね。

      商人連中はまだ出港もしてないのに、ワイン片手に

      ポーカーを始めてる。

ジェスタル:修学旅行みたいだな。(一同爆笑)

ケイ:   私も同じこと考えてた。(笑)

GM:   桟橋の鐘が鳴り響くと、立てられていた14本のオールが

      一斉に海中に沈み、グン、グン、グンと船は滑るように加速していく。

ジェスタル:え? 横に漕ぎ手がいるの?

GM:   説明不足だったね。

      このフライング・フィッシュ号は2層構造のガレー船なんだ。

      海面に近い2層目に漕ぎ手が14人、一人一本ずつのオールを

      操っている。

      1層目の甲板が君たちのいる場所で、船尾の方に

      小さな客室があるんだ。

ジェスタル:なるほど、よっく分かりました。

ヤシュト: 船が風を切って進んでいくわけだ。

      う~ん。ここは渋く海を眺めていよう。

ケイ:   私もなんとなく開放感。

GM:   ガレー船は快調に飛ばして、みるみる南トゥムの桟橋や灯台が

      小さくなっていくよ。

ジェスタル:「船って見てるとそうでもないけど、乗ってみると速いもんだな」

ヤシュト: 「なあ。こんなに速いとは思わなかった」

ラルク:  「気持ちいいですね~」

ヤシュト: 「たまには船旅もいいもんだな」

GM:   船があげる波しぶき、下の層から聞こえてくるリズムを取る

      拍子木の音、頭上を横切る海鳥たち。

ジェスタル:うんうん。いいねぇ。

ケイ:   情景が浮かぶね。

GM:   という最高のシチュエーションの中、みなさん抵抗チェック。

ジェスタル:なんのチェック?

GM:   いや、船酔いする人いないかなっと。(一同爆笑)

ヤシュト: なんじゃそりゃ!(笑)

GM:   誰か10以下の人、いる?

ラルク:  誰もいないみたいですね。

GM:   残念。

ケイ:   意地でも出さないもん。(笑)

ジェスタル:こんなに気持ちいいのに船酔いなんかゴメンだよ。

      あっ!

ヤシュト: どうした?

ジェスタル:おかし買ってくんの忘れた!(一同爆笑)

ケイ:   もう。本気で何事かと思ったっしょ。

ヤシュト: ちょっと周りの話を聞いてみようかな。

      商人連中はまだポーカーやってる?

GM:   うん。わいわいと勝った、負けたを繰り返してるようだけど。

ケイ:   ようだけど?

GM:   商人たちのカードを持った手や、ワインを持った手の動きが

      時折妙な動きを見せるんだ。

      こう、ヒラヒラと軽やかに印を結ぶように。

ジェスタル:なんだ、それ。

GM:   知ってるかどうかはセージで判定して。

ケイ:   11。

ヤシュト: うへっ、6。

ジェスタル:10。

ラルク:  7です。

GM:   ケイとジェスタルは聞いたことがある。

      指文字という商人間で使われている回話法だ。

      人に聞かれたくない話や、手早く情報を伝える時に用いる。

ジェスタル:「あれが指文字か~」

      って感心しながら言うよ。

ヤシュト: 「指文字?」

ケイ:   「商人さんたちの暗号みたいなもの」

ラルク:  「へ~。覚えたら便利そうですね」

ヤシュト: しっかし指文字は分からないから、聞き耳を立てても情報は

      得られないってことか。

      指文字、覚えたいぞ。

GM:   商人連中は君たちがじっと見つめてるのに気づいて、

      「おっ、若いの。一勝負やるかい?」

ヤシュト: 「いえ。指文字ですか? それが珍しくて」

GM:   「ははは。知らない人には奇妙に見えるだろうな」

ケイ:   「おじさんたちは北トゥムまで行くんですか?」

GM:   「ああ。鉱石の買いつけでね」

ラルク:  「私たち北トゥムは初めてなんですけど、どんなところなんですか?」

ヤシュト: おっ、いい質問だね、ラルク。

GM:   「まあ、メイラレンの玄関口だけあって、内陸の商品や人が集まる

       儲け話の転がってる町、かな」

ケイ:   さすが商人さん。

GM:   「お前さんたちは冒険者かい?」

ジェスタル:「ええ、まあ、一応」(笑)

ヤシュト: なんだよ、自信のない答え方だな。

ジェスタル:駆け出しなんだから自信なんてないよ。

ラルク:  確かにそうですね~。

GM:   「冒険者なら仕事にありつくのも簡単だ」

ヤシュト: 「そんなに治安が悪いんですか?」

GM:   「いろんな国の連中が集まれば平穏無事とはいかないさ。

       それぞれの思惑ってもんがあるからな。

       北トゥムとカットバレーの間じゃレッド・オーカーなんて

       物騒な連中が出るらしいしよ」

ケイ:   「レッド・オーカー?」

GM:   「紅山で採れる染料で髪を炎のような赤に染めた盗賊連中さ」

ラルク:  「げ。ほんとうに物騒ですね」

GM:   「だから内陸に向かうにゃ、屈強な護衛が必要になってくる」

ヤシュト: 「なるほど。確かに冒険者の仕事は多そうだ。

       あっ、そうだ。ゼイ・ロックスっていう商人を知りませんか?」

GM:   商人連中の内の一人がカードを切りながら答えるよ。

      「ガダメスの商人のゼイかな?」

ヤシュト: 「そう! そうです」

GM:   「なんでも貴族御用達の宝石商らしいね。

       私は直接会ったことはないんだが、依頼された宝石を

       必ず入手することで有名らしい」

ラルク:  「けっこうなやり手なんですね」

ヤシュト: 「いい情報ありがとう」

ケイ:   ちょっとずつ近づいてる感じがするね。

ジェスタル:うまく会えるといいけどな。

ヤシュト: 頑張ってカーズの剣を手に入れるぞ。

GM:   そんな会話をしている内に、太陽は真上に昇り幌の日陰に入らないと

      汗ばむ程になってくるね。

      お昼になると水夫の一人がやってきて

      「昼食はどうする? 7Goldで鶏のもも肉とライ麦パン、

       エール一杯つきっていう水夫コースがあるけど」(笑)

ケイ:   「水夫コース以外ってあるの?」

GM:   「水と塩だけっていう捕虜コースがタダだけど」(笑)

ジェスタル:「どうしようかな」(笑)

ヤシュト: 本気で悩むなよ。ちゃんと食べようぜ。

ジェスタル:だってよ~、貧乏なんだよ~。(笑)

ケイ:   それに捕虜コースって、水夫さんの冗談でしょ。

ラルク:  「4人前頼みます」

GM:   「あいよ。ちょっと待っててな。

       お嬢ちゃんは可愛いから食後のプラムもつけちゃうよ」

ケイ:   「やたっ。ありがと」

ジェスタル:いいなぁ。吾輩にも分けてね。(笑)

GM:   すぐに水夫が昼食4人前を運んでくれるよ。

ヤシュト: 船の上で食事なんて気持ちいいな。

ジェスタル:これからも用がなくても乗ろうか。(笑)

ラルク:  あれ、そう言えば文官らしい人がいるって言ってましたよね。

      その人はどうしてるんですか?

GM:   商人や、旅人も賑やかに食事をとってるけど、

      文官だけは相変わらず船縁で気難しい顔をして水平線を眺めてる。

ラルク:  なんか気になりますね。

ケイ:   そっとしておいた方がいいんじゃない?

ラルク:  アガルタに仕える者としては、ほっておけません。

      文官さんに話しかけます。

      「あの~。なにか心配事ですか?」

GM:   「え?」

      振り向いた文官の顔は青ざめてるね。

ラルク:  「これでも私はアガルタに仕える身です。

       お力になれませんか?」

ジェスタル:ラルクは立派な司祭に成長しつつある。うん。

GM:   「ああ、これはご親切に……うっ」

ケイ:   もしかしてこの人。

ヤシュト: 船酔いか~。(笑)

GM:   そのようだね。

ラルク:  なぁ~んだ、本気で心配しちゃいましたよ。(笑)

      「大丈夫ですか」

      っていいながら背中をさすります。

GM:   「ふぅ、少しは楽になってきました。ありがとう」

ラルク:  「見たところ王宮の方ですか?」

GM:   「ええ。下級文官です。

       船は苦手なんですが仕事ですから仕方ありません」

ラルク:  「仕事と言いますと?」

GM:   「アイアン・ロックは半国営鉱山なんです。

       その操業状況を定期的に調べるのが仕事なんです。

       ですから月に2度も船に乗らなくてはなりません」

ラルク:  「大変ですね。

       食べにくくても食事はとった方がいいですよ」

GM:   「気を遣っていただいてありがとう。

       アイアン・ロックに着いたら食べますよ。

       私はムリスといいます」

ラルク:  「私は南トゥムのラルクです。どうかお大事に」

      と言って、みんなの所に戻ります。

ジェスタル:じゃあ戻ってきたラルクに向かって、

      「どうだった?」

ラルク:  「悩み事でもあるのかと思ったら船酔いでした」(笑)

ジェスタル:「な~に考え込んでんだろと思ったら船酔いかよ」

ヤシュト: 「こればっかりはアガルタの力でもどうしようもないか」

ケイ:   「ラルク、偉いね。

       司祭さまは女の子だけでなく、みんなに優しくなくっちゃね」

ラルク:  ちょっとグサリ。(笑)

      さて、私もお昼をいただきます。

ジェスタル:「あれ? 食べるつもりだったの?

       吾輩がもも肉食べちゃったぞ」(一同爆笑)

ラルク:  「そんな~、ひどいじゃないですか~」(笑)

ケイ:   「ダメじゃない。そんなことするとプラムあげないよ」(笑)

ジェスタル:「うそうそ。残してあるよ」

GM:   そうやって賑やかに食事をしてると、船長が挨拶に回って来るよ。


~その5 午後のハプニング~


GM:   「どうですか、みなさん。

       快適な船旅をお楽しみいただけてますか?」

ケイ:   「は~い」

ジェスタル:「楽しんでます」

      吾輩たち、ほんとに楽しんでるよな。(笑)

ラルク:  「ほんとに速くていい船ですね」

GM:   「ありがとう」

      船長は自分の船を誉められて気をよくしたか、

      「君たちは見たところ冒険者のようだが、やはりアイアン・ロックで

       一仕事かね?」

      と話しかけてくるよ。

ケイ:   「いえ、北トゥムまで」

ヤシュト: 「やはりって、アイアン・ロックはそんなに冒険者が

       必要とされてる場所なんですか?」

GM:   「冒険者にとっては登竜門と呼べるだろうな。

       なにせ入り組んだ廃坑にはグリムロックが巣食ってるし、

       人里から少し離れればノール、オーガーなんかも出る。

       ここの仕事をこなせば、ようやく冒険者として認められるんだ」

ヤシュト: 「時間があれば挑戦してみたいな」

ジェスタル:「ヤダよ、そんなとこ」(笑)

ケイ:   今、話に出てきたモンスターのこと、知ってていいの?

GM:   ノールとオーガーについては巨人族の劣種だ、程度は知ってていい。

ケイ:   グリムロックについては聞いたことないのね。

ヤシュト: それじゃ早速セージ・チェックで7。

ジェスタル:セージのスキルがないので今回はパス。

ヤシュト: 他力本願はよくないぞ。

ラルク:  大丈夫。ケイさんが成功させますって。

ケイ:   私は10。

GM:   ケイだけは聞いたことがある。

      人間よりもかなり小さ目の種族で、知力はそこそこ。

      中には人間の言葉を理解する者もいる。

      判定値が10ならここまでかな。

ケイ:   その事をみんなに伝えます。

ヤシュト: 「少しばかり、やっかいな相手だな」

GM:   「興味があるなら鉱山責任者のガゼナルと話してみるといい。

       あの男も昔は冒険者だったからね」

ラルク:  「私が薬草を届ける人ですよ、ガゼナルさんって」

ジェスタル:「そりゃ一石二鳥じゃな~い」

GM:   などと話している時に魔力感知のできる人はやってもらおうか。

ジェスタル:ほいさ。10。

ケイ:   あれ、1ゾロだぁ。(笑)

ラルク:  13です。

ヤシュト: 魔力感知ができないの、俺だけか。

GM:   まあまあ。完璧なキャラクターなんてつまらないもんだよ。

      判定の結果だけど、ラルクとジェスタルは船の進路上の海中から、

      胃の痛くなるような圧迫感を感じる。

      これと似たものは前にも経験している。

ジェスタル:なんだろ?

ラルク:  なんでしょね?(笑)

      一応船長に警告しておきます。

      「船長。この船の先になにかいるみたいなんですけど」

GM:   船長は怪訝そうな顔でラルクを見るね。

      それと同時に船首にいた水夫が大声で怒鳴る。

      「キャプテン! 零時の方向に妙なさざなみが! 動きます!」

ヤシュト: 「オクトパス?」

ケイ:   「やめてよ~」

ジェスタル:「時の番人の遺跡から追いかけてきたとか」(一同爆笑)

ラルク:  「それはないですよ」

GM:   船長は水夫の報告に突然真顔になって叫ぶね。

      「緊急停止! オールを水面に立てろ!」

      ぐぐぐ~っていう抵抗と共に、船はみるみる速度を落としていく。

ラルク:  「ととと」

      ってよろけます。

GM:   うん。細かい描写がいいね。

      船がほとんど速度を失った頃、進路上30mくらい先の海面が

      盛り上がって巨大な乳白色の角が現れる。

ジェスタル:「何が出たんだよ」

ヤシュト: 「おいおい、まさかこいつは」

ラルク:  「ドラゴン……ですか?」

GM:   角に続いて馬車一台分はある顔、そして蛇を連想させる

      青白い首が現れる。

ジェスタル:「ほんとに出たよ!」

GM:   君たちのいる甲板にはまるでスコールのような水しぶきが降り注ぎ、

      船は木の葉のように揺れる。

ケイ:   はしっ。(船縁につかまった擬音のようです)

ヤシュト: 俺もマストに手を回しながら、ぽか~んと口を開けてるよ。

ジェスタル:うん。マヌケな反応しかできないだろうな。

      吾輩もぽか~ん。(笑)

GM:   メイラレン国籍の君たちは知っていていいけど、シー・ドラゴンだね。

      シー・ドラゴンは船になど気づいた様子もなく

      ゆっくりと西の方へ泳いでいく。

ケイ:   「あれがシー・ドラゴン」

ラルク:  「船がもう少し進んでたら危ないところでしたよ」

GM:   船長は額の汗を拭って、

      「みなさん、もう大丈夫です。

       このくらいの揺れでは、本船はビクともしません」

ラルク:  「この航路には、よくシー・ドラゴンが出るんですか?」

GM:   「まさか! 私もこんな間近で見たのは初めてだよ」

ラルク:  「そういった意味ではラッキーだったのかも知れませんね」

ジェスタル:「冗談じゃないよ。もうやだよ」

ヤシュト: 「人間の力の及ばない存在だな」

GM:   商人さんたちも一気に酔いが醒めた顔で、

      「あんなシー・ドラゴンやパームスを狩る連中がいるってんだから、

       まったく信じられんな」

ヤシュト: 「狩る?」

ケイ:   「パームス?」

GM:   簡単に説明しておこうか。

      パームスっていうのは、イルカに角が生えたような海の生き物で、

      4枚の透明な羽を持っている。

      メイラレンは水竜との契約で守られているから、水竜と同じように、

      水の中に棲む一角獣を聖獣視するんだ。

ケイ:   それを狩るって、大変なことなんじゃない?

GM:   そう。見つかれば審問もなく処刑される。

ヤシュト: 商人さんに聞こう。

      「あんなドラゴンを狩る連中がいるんですか?」

GM:   「噂だよ、ウワサ。

       なんでも内陸方面じゃパームスの羽で作った剣とか

       シー・ドラゴンの革が出回ってるそうなんだよ。

       もちろん正規のルートじゃないがね」

ジェスタル:船旅だからって気を抜いてたら、次から次へと新しいことが

      分かるじゃな~い。

ヤシュト: 俺もそうだよ。

      船の上だけでアイアン・ロックのこと、レッド……なんだっけ?

ケイ:   レッド・オーカー。

ヤシュト: そう、それにシー・ドラゴンと来た。

      退屈するヒマも与えてくれないぜ。

ラルク:  そういう割には嬉しそうですけど。

ヤシュト: 実はね。(笑)

      やっぱ冒険はこうでなくっちゃな。

GM:   ちょっとしたハプニングを乗り越えて

ジェスタル:ちょっとどころじゃないよ。(笑)

GM:   君たちはまだ日の高い午後3時頃、黒っぽいゴツゴツした

      山々のそびえるアイアン・ロックに到着する。

ヤシュト: 大きさはどのくらいの島なんだ?

GM:   だいたい大島より一回り小さいと考えて。

ケイ:   大島は行ったことないなぁ。

GM:   俺もないけど。(笑)

      確か大島は車で1、2時間あれば、島を一周できるって話だよ。

ジェスタル:ほんじゃ、そんなに大きくないね。

GM:   船はそれほど立派じゃない桟橋を滑らかに縫って、静かに停泊する。

      もやい綱で船が固定されると水夫が言うね。

      「はい、お疲れさん。

       停泊はきっちり2時間。17時には出港するから

       北トゥムにお出でのお客さんは遅れないように。

       でないと、俺たちの丸儲けになっちゃうからね!」(笑)

ケイ:   ほんと、面白い水夫さん。

ヤシュト: 「2時間だったら充分見学できるな」

ジェスタル:「船で待つのは退屈だから下りようぜ」

ケイ:   なんだか時間が決まってると銀河鉄道999みたい。

ヤシュト: 次は惑星アイアン・ロック~。停車時間は2時間。(一同爆笑)

      って?

ラルク:  似てる、似てる。

ヤシュト: バカはこれくらいにして下りようか。

GM:   商人連中を始め、乗客はみんな下船するよ。

      君たちも渡し板を伝って陸に上がると、まだ体が少し揺れてるような

      錯覚を感じる。

ジェスタル:そうそう。船から下りるとそうなんだよな。

ヤシュト: 「地面が揺れてる」

ケイ:   ふらふらするよね。

ヤシュト: アイアン・ロックってどんな感じ?

GM:   それほど高くはないけど、黒く沈んだ色の山々が連なり、地面も

      暗褐色。草木はほとんど見えないね。

ジェスタル:精霊使いとしては殺伐とした風景に見えるんだね。

GM:   うん、その通り。

      で、桟橋からほんの200mくらいで山の傾斜が始まるんだけど、

      その麓にバラック小屋がひしめいている。

      遠くに見える山々には、坑道の入り口だろうね、

      穴が無数に開いてるよ。

ラルク:  イメージできました。

ケイ:   鉱夫の島って感じね。

ラルク:  「とりあえず小屋の方へ行きましょう。

       責任者のガゼナルさんに、薬草を届けないと」

ジェスタル:「そうだったな」

ヤシュト: 「俺たちも付き合うよ。

       そのガゼナルって人、昔は冒険者だったんだろ。

       面白い話が聞けるかもしれない」

ケイ:   「うん。みんなで行こう」

GM:   それじゃ、全員でバラック集落の方へ向かうんだね。

ヤシュト: 「見聞を広めるとしよう」


~その6 鉱山の島~


GM:   ごつごつした上り傾斜を歩いていくと、手前に粗末な宿酒場、

      奥には鉱夫の長屋が並んでるらしい、と分かるね。

ジェスタル:「ここはやっぱり酒場でしょう」

ケイ:   「徹夜で飲まないでよ」

ヤシュト: 「ジェスタルだけ、置いていかれたりしな」(笑)

GM:   酒場には自分の受け持ちは終わったのか、

      麻の作業服を来た鉱夫が10人近くはいるね。

      それと奥の円卓には冒険者らしい出で立ちの男が6人。

ラルク:  「彼らはきっとモンスターを退治に来た冒険者でしょうね」

ケイ:   「たぶんね」

ジェスタル:酒場に入って何も頼まないのは悪い。(笑)

      まずはカウンターに行ってエールを頼むよ。

ラルク:  「私はいいですよ、ジェスタル」

ジェスタル:「まぁまぁ。こういう所に来たら飲むのは掟だ」(笑)

ケイ:   「なんの掟だか」

GM:   カウンターの主人は、

      「うちは混んでくると、とても勘定なんてできないんでね、

       ほら、カウンターの隅に樽があるでしょ。

       そこで好きなだけ汲んで、1杯1Gold置いてくれるかい」

ジェスタル:セルフサービスだってさ。(笑)

      「コップはどこにあるんです?」

GM:   「樽の横にありまさぁ」

      あんまりよく洗ってなさそうな木のジョッキが山積み。

ケイ:   私、いらない。(笑)

ラルク:  私もカウンターの方へ行って、

      「あの、鉱山責任者のガゼナルさんはどちらに?」

GM:   「あの人なら、もう直ここに来るよ。

       いつも仕事が引けると一杯やるのが日課だから」

ラルク:  「それじゃ待たせてもらいます」

      みんなに向かって

      「いいですか?」

ヤシュト: 「ああ。特に用事もないしな」

      1杯汲んで、入り口近くのテーブルにでも座るか。

ジェスタル:「夕飯もここで済ませてく?」

ケイ:   「きっと船で出してくれるでしょ」

ラルク:  汚いジョッキが、よほど気に入らなかったんですね。

ケイ:   ちょっとね。

GM:   でも鉱夫連中は全く気にせずに、陽気に杯を重ねてるようだ。

ヤシュト: 鉱夫連中がどんな話をしてるのか興味があるな。

      聞き耳をした方がいいかな?

GM:   いや、鉱夫連中の声はでかいからね。

      今はちょうど小柄な少年をはやしたててエールを飲ませてるところだ。

      「ほら、シュガーボーイ。男なら飲み干せ!」

      なんて言いながらね。

ラルク:  シュガーボーイ?

GM:   うん。“坊や”って意味だ。

      そのアダナの通り、見るからに華奢な少年だね。

ヤシュト: 「女の子だったりしてな」

GM:   (な、なんて、このプレイヤーは勘が鋭いんだ)

ジェスタル:「女の子じゃムリだろ、鉱夫は」

ヤシュト: 「それもそうか」

GM:   (ありがとう、ジェスタル)

      シュガーボーイと呼ばれた少年は野次にムッとすると、

      一気にエールを飲み干す。

      しかし、すぐに顔が真っ赤になると、次の瞬間には真っ青に。(笑)

      鉱夫たちからドッと笑い声が上がるね。

ケイ:   よくあるよね。こういうの。

ヤシュト: 大学時代に何度も見たよ。

      俺も新入生の頃はムリヤリ飲まされたな~。

ラルク:  という光景なんですね。

ヤシュト: のんべ連中はほっといて、冒険者はどんな話をしてる?

GM:   これはサーチでチェックしてもらわないと。

ヤシュト: とうりゃ、11。

GM:   ちょっと足りないな。

      冒険者連中は羊皮紙を見ながら真顔で話し合ってるね。

      断片的に、「第68鉱山」とか「グリムロック」とか

      「挟撃するか」なんて言葉が聞こえる。

ヤシュト: やっぱりモンスター退治のことか。それならいいや。

      大体察しがつく。

GM:   そのうち酒場はドヤドヤと人が増え出すね。

      粗野な言葉遣いが飛び交ってるけど、活気に満ちた喧騒だ。

      その中に中年の大男が混じってる。

      カウンターの主人に何か言われて君たちの方に向かってくるよ。

ラルク:  「ガゼナルさんかな」

ヤシュト: 船で聞いた話じゃ冒険者だったんだろ。

      どんな感じの人?

GM:   もうちょっと描写すると、顎髭をはやしてゴツい体格をしてる。

      腕なんてケイのウエストくらいありそうだ。

ジェスタル:そりゃ太い!

ケイ:   どういう意味よ!(一同爆笑)

GM:   「俺に用があるってのは、あんたたちか?」

      間近に近寄られると威圧感があるね。

ラルク:  じゃあ席を立って、

      「私は南トゥムのエレミヤ神父の使いで参りました、

       ラルクといいます。あなたがガゼナルさんですか?」

GM:   「ああ。そうだが」

ラルク:  「この薬草を預かってきました」

GM:   「こいつはありがたい。

       おい、ラサ!」

      ガゼナルはさっきシュガーボーイって言われてた少年を呼んで、

      「こいつをロッペンの所に持ってってやれ」

      そういって、薬草の入った鞄をラサに投げて渡すね。

      「ごくろうだったな。ところでエレミヤさんは元気か」

ラルク:  「はい。娘のカチュアさんも元気です」

GM:   「そいつはなによりだ。

       近いうちに挨拶に行かんとな。世話になりっぱなしだ。

       ところで……見たところ真っ当な仕事をしてるようには見えんが」

ジェスタル:「あ、分かります?」(笑)

ケイ:   「一応冒険者なんです」

GM:   「そいつは渡りに船だ。

       どうだ、ここで一稼ぎする気はないか?」

ヤシュト: 「と、いいますと?」

      ここはまず相手に喋らせて優位に立とうぜ。

GM:   だんだんと冒険者のイロハを身に付けつつあるね。

ラルク:  なるほど。これは冒険者と雇い主の交渉なんですね。

ケイ:   そんな実力もないのに。

ジェスタル:口だけは自信があるんだけどね。(笑)

ラルク:  そんなのえばれないですよ~。

GM:   ガゼナルはヤシュトの質問に答えるよ。

      「ここ数ヶ月廃坑にモンスターがはびこっててな。

       今いる連中もよくやってくれてるが、なにせ数が多い」

ケイ:   「数はどのくらいですか?」

GM:   「確認しているだけでも、廃坑に40匹近くのグリムロックが

       いるだろうな」

ジェスタル:「40匹!」

ヤシュト: 「なにも一度に相手をするってわけじゃない」

ケイ:   「各個に倒せばいいんだし、冒険者は私たちだけじゃないでしょ」

ラルク:  「他にも冒険者がいるってことは、共同作戦っていう手も

       使えますよね」

GM:   ガゼナルは顎髭をなでながら、感心した様子で

      「なかなか仕事の分かりが早いじゃないか。

       こいつは是非とも力を貸してほしいもんだな」

ヤシュト: 「幾らで俺たちを買ってくれます?」

ジェスタル:かっこいいじゃな~い。

ケイ:   うん。交渉してるって感じ。

GM:   その質問にガゼナルは大声で笑い出すね。

      「ははは。お前ら報酬を高くしようと頑張ってるんだろうが、

       ここは半国営鉱山だ。報酬は定額で王宮から支払われるのさ」

ヤシュト: がくっ。

      なんだ、なんだ。折角かっこつけたのによ。(笑)

ラルク:  そういえばムリスさんが、そんなこと言ってましたね。

ヤシュト: え~い、そういうことは早く言わんか。

      もう下手な駆け引きはなしだ。正直にいこう。

      「実は俺たち、これから北トゥムまで用事がありまして」

GM:   「そいつは残念だな。

       だが帰り道に気が向いたら俺を訪ねてくれ。

       ここアイアン・ロックは鉱石とモンスターが名物だからな」(笑)

ジェスタル:「いやな名物じゃな~い」

ラルク:  「でも冒険者として名をあげるには、恰好の場所なんですよね」

GM:   「ああ。王宮からの仕事ってことでギルドへのウケもいいしな」

ケイ:   「どうする? 帰りに寄ろうか」

ヤシュト: 「う~ん、北トゥムでどうするか分からんしな」

GM:   「今すぐ返事をする必要はない。

       帰りに仕事がほしかったら寄ってくれ」

ケイ:   「それなら、いいんじゃない?」

ヤシュト: 「だな。そういうことなら、よろしくお願いします」

GM:   「それじゃ、俺は一杯やらしてもらうよ。

       エレミヤ神父によろしくな」

ラルク:  「はい。お伝えします」

GM:   ガゼナルはカウンターの方へ去っていったよ。

ヤシュト: 「さすがに南トゥムを出ると、いろんな仕事があるな」

ジェスタル:「まずは北トゥムの用事を済ませましょ」

ラルク:  「そうですね」

GM:   もう、やりたい事はないかな?

      それじゃ船着き場の方から出港を告げる鐘の音が鳴り響くよ。

ケイ:   ますます銀河鉄道999。(一同爆笑)

ヤシュト: メーテルー。

ケイ:   鉄郎、急いで!(笑)

ラルク:  好きですね、銀河鉄郎。

ジェスタル:銀河鉄郎?

一同: (一瞬の沈黙の後、大爆笑)

ヤシュト: 鉄道だよ、鉄道。

ケイ:   さすがDくん。

GM:   お腹が痛いよ。

      どうだろう、この後北トゥム入りするわけだけど、息抜きがてら

      散歩でもしない?

ジェスタル:そうだね、外で煙草吸うのもうまそうだし。

ヤシュト: 行こう、行こう。

ラルク:  せっかく日光に来てるんですもんね。


と、いうわけで2時間近くプレイしたところで休憩です。

5月の日光は過しやすい温度で、空気も新鮮、ちょっとの散歩で

リフレッシュできました。

20分後にプレイ再開です。

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