その7~9
- works.03 ドーファー邸 -
その7~9を掲載しています。
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《前回までのあらすじ》
初めて止鏡湾を渡ったパーティは船上でも様々な情報を得ました。
シードラゴンを狩る者たち、レッド・オーカーと呼ばれる盗賊、
アイアン・ロックに巣食うモンスターなど。
さて、北トゥムではどんな事件が待っているのでしょうか。
~その7 北トゥム~
GM: 裏の水溜まりみたいな小さい池に虹鱒がいたよ。
ジェスタル:釣竿持ってくればよかったな。
ケイ: 気持ちよかった~。あのホテルを見なければ。(笑)
ラルク: なんで潰れたんでしょうね。
GM: お化けが出たとか。
ヤシュト: 夜になったら肝試しでもやっか。
ケイ: やだ、やだ、ぜったいイヤ。(本気)
GM: そういやお化け苦手だったね~。(笑)
ラルク: そうなんですか?
ジェスタル:そうなんですよ。(笑)
ケイ: この話はおしまい。はい、GM、続き!(笑)
GM: はいはい。
夕方になってフライング・フィッシュ号は出港するね。
ここからはちょっと端折って、翌日の10時に北トゥム到着だ。
(と言いながら、北トゥムの地図を見せました)
ヤシュト: おお~っ。
ジェスタル:細かい!
ラルク: パチパチパチ。
ケイ: やっぱり地図があるとワクワクするね。
GM: まぁ、便宜上地図を見せたけど、
キャラクターは初めて来る土地なんだから、
そのつもりでプレイしてね。
ヤシュト: 分かってるって。
誰にも聞かずに町の構造が分かってたら変だもんな。
GM: そういうこと。
7月1日の朝10時に北トゥムの港が見えてくる。
さすがに“メイラレンの玄関口”と言われるだけあって、
様々な国旗の船が出入りしてる。
ラルク: 国際港ってわけですね。
ケイ: もしかして、王都のメイラレンより発展してるのかな。
GM: 商業的にはそうかもね。
港の隅にはドックがあるし、カタパルトやバリスタを装備した
ガレー船も見える。
ジェスタル:たしか軍艦を見るのは初めてだからさ、
「でっかい船が停まってるよ」
ってびっくりするよ。
GM: うん、いい反応だね。
ヤシュト: どこの軍艦だ?
GM: 水竜を象った船旗からメイラレン国籍だと分かるよ。
ヤシュト: 自分の国の船か。なんか新鮮だな。
ケイ: 前のキャンペーンじゃ、船なんかめったに乗らなかったもんね。
GM: その時の君たちの国は遊牧民が作った国で、船とは無縁だったからね。
ジェスタル:前のキャンペーンの話はラルクが寂しそうだから、この辺にしとこう。
ラルク: うるうる。(笑)
GM: ごめん、ごめん。ラルクは前のキャンペーンは知らないもんな。
話を戻すと君たちの乗るフライング・フィッシュ号は、
滑るように港へと入っていく。
北トゥムの港はさすがに立派で、石を切り出して作った桟橋だ。
ラルク: 国際港ならではですね。
GM: 停泊すると、例の陽気な水夫が
「シー・ドラゴンの見物料はまけといてやるよ。(笑)
又の乗船を」
ケイ: 「帰りもこの船だったらよろしくね」
ジェスタル:「ども、お世話さまでした」
GM: 港から北に向かってメインストリートが伸びていて、
森を切り拓いて作った町らしく緑が豊かだね。
そして背後にはレッド・オーカーを産出する
赤茶色の紅山が聳えている。
ヤシュト: 例の盗賊団が頭を染めてる原料か。
ラルク: (地図を見ながら)あれっ、この丘の上にあるお屋敷はなんですか?
ケイ: ほんとだ、3つあるよね。
GM: そこら辺はキャラクターとして調べてくれるかな。
ヤシュト: 旅の醍醐味ってやつだな。
ケイ: 「ね、水長の村って、今日これから行くの?」
ジェスタル:「どうする?」
ヤシュト: ちょっと待って。もう少し町の雰囲気を聞いておきたい。
(ケイとジェスタルに向かって)ごめんね。
ケイ: ううん、いいよ。
ヤシュト: ちゃんとイメージできないと、今一つ乗れないからさ。
ジェスタル:それは言えるね。
GM: で、何を聞きたいのかな?
ヤシュト: どんな連中がいて、町の作りがどうとかさ。
GM: 分かった。
北トゥムのメインストリートには、石畳が敷かれていて整然としてる。
その上をポプラやチークなどの木材を載せた馬車が行き交ってるね。
ケイ: ポプラとかチークって、船に使うんだっけ?
GM: その通り。さすがファンタジー少女。
ヤシュト: それじゃ空想少女って意味にならんか?(笑)
ジェスタル:遠い目をしてそうだぞ。(笑)
GM: 突っ込みが鋭いな。
ドックの方からは乾いた木槌の音が響き、往来からは掛け声が
伝わってきて貿易港の活気に満ちているよ。
ここは港だから、商人や作業員が多いね。
ヤシュト: なるほど。大分イメージが湧いてきた。
水長の村はどっちだか分かる?
GM: それもキャラクターが調べる事柄だね。
ジェスタル:そりゃそうだ。
ラルク: 「それじゃ、ちょっと早いですけど、
お昼をとりながら休憩にしませんか」
ケイ: 昨日は船で寝たんだよね。
「甲板で寝たから肩も凝ったし」
ジェスタル:「お灸なんてどう?」
ケイ: 「え?」
ジェスタル:「ティンダー(火をつける精霊魔法です)のお灸」(一同爆笑)
ケイ: 「火傷しちゃうでしょ!」(笑)
ジェスタル:「とにかく吾輩は休憩に賛成」
ヤシュト: 「ジェスタルはいつでも賛成だろうが」(笑)
ラルク: 「酒場にでも向かいましょうか」
ジェスタル:「どのみち今日は泊りでしょ?
だったら先に宿を取っといた方がいいんじゃないか?」
ヤシュト: 「そうするか」
そこら辺にいる人をつかまえて、
「すみません」
GM: 港で荷物を積み込んでるおじさんがつかまった。
「なんだい?」
ヤシュト: 「この辺に泊れるとこないですか?」
GM: 「あんたら船乗りじゃないよな。
そんならメインストリートに沿って歩けば看板が見つかるよ。
“テンケイ”って宿酒場がね」
ヤシュト: 「てんけい?」
GM: 「ああ、テンケイだ。俺も意味は分からんがな」
と言って、おじさんは去っていくね。
ジェスタル:「てんけいって、どういう意味だ?」
お前さんセージ持ってんだろ。
ヤシュト: そうか。調べてみよう。12。
GM: カーズの方の言葉で“天の恵み”という意味だ。
それでテンケイ。
ヤシュト: ほう!(妙に嬉しそうです)
ケイ: カーズの剣に少し近づいたかな?
ヤシュト: 「行こう! カーズの宿、いや、テンケイに行くぞ」
ラルク: 「急に元気になりましたね」
ヤシュト: カーズだ、カーズ~♪ みんな、ついてこい~♪(笑)
ジェスタル:妙な歌作るなよ。(笑)
GM: 教えられた通りメインストリートを進んでいくと、
町の中心部では内陸からの商人や旅人だろう、見慣れない服装や
聞きなれない言葉が飛び交い、ずいぶんと賑やかだよ。
ケイ: ちょっとした異国情緒ね。
GM: 更には一目で砂漠の民と分かる、褐色の肌にターバン姿の男たちも
何人か歩いてる。
ジェスタル:国際都市だなあ。
ラルク: ターバン姿っていうと、やっぱりチャビ人ですよね。
GM: そうだね。
さて、お目当てのテンケイの看板が見えてくるよ。
入り口にはベロスと呼ばれるドーベルマンに似た犬が
2匹寝そべってる。
ヤシュト: 入り口にいるのか?
ジェスタル:「番犬?」
ケイ: 「お客さんの飼い犬じゃない?
普通お店の入り口に番犬はいないでしょ。
いるなら中よね」
ラルク: どうして中にはいるんですか?
GM: 中世の酒場や食堂では、食べ終わった肉の骨を床に投げるんだ。
それを犬が食べるってわけ。
ラルク: なるほど。
ヤシュト: この世界でもそうなのか?
GM: いや、そこまで凝ってはいないよ。
現実世界を真似すぎるとマニアックになっちゃうからね。
ジェスタル:それより、入り口にドーベルマンみたいな犬がいたら怖いよ。(笑)
ケイ: 「ジェスタルはおいしそうに見えるかもね」
ジェスタル:「やめてくれ」(笑)
GM: 君たちが店に入っても犬はおとなしいままだ。
店内にはカットバレーやロイド、ガダメスなどの服装があふれ、
狩人、ズボンに木屑をつけた作業員なんかがいる。
ヤシュト: 店の人は?
GM: カウンターにはメイラレン人にしては眼光のするどいおじさんがいる。
この人の渋い雰囲気が影響するのか、店内も落ち着いた感じだ。
ヤシュト: いい店じゃないか~。
俺、こういうの好き。
ジェスタル:まさにヤシュト好みの店だな。
やれやれ、また長くなりそうじゃな~い。(笑)
GM: マスターの他には奥さんらしい女性が給仕をしてて、その後ろを
5、6歳の小さな女の子がチョコチョコついてまわってるね。
ケイ: かわいい。
GM: と、いうような感じの店だよ。
ジェスタル:ここは宿と兼用になってるわけ?
GM: うん。2階が宿みたいだよ。
ラルク: 部屋を頼んどきましょう。
とりあえず今日は泊るんですから。
ヤシュト: 分かった。
~その8 蒼鶴と紅隼~
ヤシュト: カウンターの方へ行って、
「すみません、宿をお願いしたいんですが」
GM: 「いらっしゃいませ。
ご婦人がご一緒なら3人部屋と個室をご用意しましょう」
若輩の君たちに対しても、とても丁寧な対応だね。
ケイ: 「お願いします」
ヤシュト: 「あの、ちょっと、お聞きしたいんですが」
GM: 「立ち話もなんですから、どうぞカウンターに座ってください」
ジェスタル:「こりゃどうも」
ヤシュト: ギイっと、椅子に座って、と。
GM: 「お客さんたちは海を越えていらしたんですね」
ラルク: 「はい。南トゥムから」
ヤシュト: 「どうして分かったんですか?」
GM: 「潮の香りが染みついてますよ」(笑)
ヤシュト: む。やるな、この人。
「失礼ですが店の名はカーズの言葉だと思うのですが」
GM: 「ええ。私の祖父はカーズ人です」
ヤシュト: よし!(笑)
「ぶしつけで申し訳ないんですが、カーズの刀にはお詳しいですか?」
GM: 「奇妙なものですね。
つい先日もカーズの刀剣を求めている商人さんが
いらしゃいましたよ」
ヤシュト: 「もしかしてゼイ・ロックスさん!?」
ケイ: そんな、立ち上がらなくても。(笑)
GM: 「お知り合いでしたか」
ヤシュト: 「いえ、旅の途中で名前を聞いたことがあったんで」
ラルク: 「ゼイさんは、まだこちらに?」
GM: 「ええ。10日ほど前から滞在なさってますよ」
ヤシュト: 「い、今、会えますか!」
ジェスタル:「落ち着けよ」
GM: 「いつも日が暮れてから、疲れきった様子で戻ってきます。
なんでも冒険者を探してらっしゃるそうで」
ケイ: 「冒険者?」
ジェスタル:「剣を探してるんじゃなかったっけ?」
ケイ: 「剣を手に入れるのに冒険者が必要なんじゃない?」
ラルク: 「その線が濃いですね」
GM: 「ゼイさんは夕方には戻るはずです。
会ってみたらいかがですか?」
ヤシュト: 「分かりました」
うし、うし!(一人で盛り上がっています)
ジェスタル:「そもそも北トゥムに来た目的を忘れるなよ」
ヤシュト: 「え?」
ジェスタル:「水長の村だよ!」
ヤシュト: 「ああ、忘れるわけないだろ」
ケイ: 「ウソ。忘れてた」(笑)
ラルク: 「忘れてましたよねぇ」
ヤシュト: 「大丈夫だよ。今、思い出したから」
ジェスタル:「忘れてんじゃないか!」(笑)
ヤシュト: そうだ、主人にさ、聞いてみよう。
「ゼイさんが探しているのは、どういう剣か聞かれましたか?」
GM: 「蒼鶴という剣です」
蒼い鶴と書いてソウカクね。
ヤシュト: 「蒼鶴……」
ケイ: セージ振ってみていい?
GM: どうぞ。
ヤシュト: 俺も。10。
ケイ: 13。
GM: ケイは聞いたことがある。
内陸ではブルー・グリントと呼ばれるカーズから流れてきた剣で、
冒険者の間での知名度はちょっとしたものだ。
ケイ: じゃあ、マスターに
「あのブルー・グリントですか?」
GM: 「よくご存知ですね。カーズでは名の通った剣です。
何でもある対決のために作られた剣だとか」
ジェスタル:「対決っていうと、もう1本同じようなものがあるってことですか?」
GM: 「ええ。もう一振りは紅隼といいます」
これは紅の隼と書いてコウジュンね。
ヤシュト: 鶴と隼か!
ジェスタル:かっこいいじゃな~い!
ケイ: 「そっちはレッド・グリント?」
GM: 「内陸ではそう呼びます」
ヤシュト: くぅ~、いいなぁ。
蒼鶴と紅隼……ほしい~。(笑)
GM: 刀マニアの君にしてみたら垂涎ものだろう。
ヤシュト: いかん、いかん。プレイヤーの地が出ちまってる。
ヤシュトに戻って、
「すみませんが、俺たちが留守の間にゼイさんが戻ったら
会いたいと伝えてくれませんか。
俺はヤシュトといいます」
GM: 「分かりました。伝えておきましょう。
カーズの刀にずいぶんと興味をお持ちのようですね」
ヤシュト: 「これでも剣士を目指してるんですよ」
GM: 「よろしければ、祖父の遺したカーズ刀がありますが。
お見せしましょうか?」
ヤシュト: 「ぜひ!」
GM: 主人は店の奥に入っていくね。
ラルク: 「また、忘れてますよ」
ジェスタル:「こうなったヤシュトは誰にも止められん」(笑)
ヤシュト: (苦笑しながら)「すまんな、みんな」
ケイ: 「いいよ。
今回は元々ヤシュトのつきあいで来たんだしね」
GM: ほどなく主人は戻ってきて、木の鞘に入った剣をヤシュトに渡すね。
ラルク: 「木の鞘ですか。珍しいですね」
ヤシュト: 「これが……」
GM: 「白雷(ハクライ)と銘がうってあります」
ヤシュト: 「よろしいですか?」
と聞いてから鞘から抜くよ。
ジェスタル:「カーズの刀ってかっこいい名前ばっかだな」
GM: かなり使い込まれた剣を抜刀すると、内陸の剣よりも
細身で反りが強い。何よりも刃が薄くて、見ているだけで
寒くなる切れ味を感じさせる。
ヤシュト: もろ日本刀だね。
GM: プレイヤーはそう受け取っていい。
ヤシュト: 「ふぅ~」
パチンと鞘に戻してご主人に渡そう。
「ありがとうございました」
いや~、いいものを見せてもらった。
ケイ: もういい?
ヤシュト: ああ、ごめん。もう満足だ。(笑)
ケイ: マスターに、
「あの、水長の村の場所をご存知ですか?」
GM: 「正確な場所は知りませんが、赤目の森にあるようですね」
ラルク: 「赤目の森?」
GM: 「グローブゴブリンや狼が多いので、そう呼ばれています」
真っ赤な目が光ってるってことだよ。
ジェスタル:「すごそうな森だな」
ケイ: う。やっぱりあっさりとは着けないのね。(笑)
「誰か森に詳しい人はいますか?」
GM: 「あの隅で飲んでいるノデロさんという狩人が、
たまに赤目の森に入るようですよ」
ヤシュト: 「もしかして、表の犬は狩人さんの?」
GM: 「ええ、そうです。
人に対しては大人しいですから安心してください」
ジェスタル:「狩人なら犬を使うっての納得だな」
ラルク: 「後で話を聞いてみましょうか?」
ケイ: 「うん」
このGMだから、情報収集を怠けるとひどい目に遭いそう。(笑)
ヤシュト: 「水長の村とはどんな村なんでしょう?」
主人に聞くよ。
GM: 「さぁ……。
時々グレッシャムという男が水長の村から出てきますが、
実際に村へ行った者は少ないでしょうね」
ケイ: 「そのグレッシャムさんは、何をしに出てくるんですか?」
GM: 「詳しくは知りませんが、不思議な水晶を道具屋に売りに
くるそうです。そのお金で日用品を買って戻るようですが」
ヤシュト: 「たぶん、村で賄えないものを買ってるんだろう」
ケイ: 「不思議な水晶って、やっぱりあれよね」
ジェスタル:「でしょうな」
ラルク: 「水長が作ってる水晶でしょうね」
GM: 「そういえば2ヵ月ほど前ですが、その水晶を独自に仕入れようとした
商人さんが、護衛を引き連れて水長の村に向かったんです。
途中現れたグローブゴブリンは見事に護衛が退治したのですが」
ジェスタル:「ですが?」
GM: 「村の入り口で、素手の女性に撃退されたようです」
ヤシュト: 「素手の女性に?」
ラルク: 「護衛が?」
GM: 「はい」
ジェスタル:「グローブゴブリンを退治できる護衛が、
なんで素手の女に負けるんだ」
ケイ: 「ねぇ」
GM: 「かなりのカポエラ使いだったようです」
ラルク: 「カポエラ?」
ケイ: カポエラってスキルにもあるやつでしょ?
GM: そうそう。
中国のカンフーに投げ技を取り入れたような格闘技だと思ってね。
ヤシュト: 「ただ水長の村に行けば済むのかと思ったが、
そうもいきそうにないな」
ケイ: 「今日は色んな話を聞いてみることにして、明日に出発しない?」
ヤシュト: 「だな。うん、焦って失敗するのは面白くない。
そうしよう」
ケイ: 「じゃあさ、狩人のノデロさんに話を聞いてみようよ」
ヤシュト: 「ああ。俺とケイで行くか」
ジェスタル:「行ってらっしゃ~い」
この2人が一番まともに聞き込みをやるでしょう。
吾輩たちじゃちょっと心配。(笑)
ラルク: そうですよね。
ヤシュト: 自分で言うな、自分で。(笑)
ケイと狩人さんのところに行くよ。
ケイ: 「すみません」
ヤシュト: 「ちょっと話を伺いたいんだが」
GM: 狩人は日に焼けた顔をあげて、
「なんだい?」
ケイ: 「赤目の森について聞きたいんです」
GM: 「俺も奥まで入るわけじゃないからな」
ヤシュト: 「いえ、知ってることだけで結構なんですよ。
水長の村に行かなくてはならないんでね」
GM: 「水長の村!?
悪いことは言わない、やめた方がいい!」
ケイ: 「そんなに危険なんですか?」
GM: 「俺たちの中でも水長の村まで行った者はいない。
それに最近では商人連中が女にやり込められたって話だし」
ヤシュト: 「さっきマスターから聞きました。
いったいどういう村なんですかね」
GM: 「さぁ・・。
大体赤目の森を切り抜けたってことは、相当の護衛を
連れていったってことだ。
それをやり込めてしまうってんだから」
ケイ: 「思ってた以上に危ない森みたいね」
ヤシュト: 「だからって帰る訳にもいかんだろ」
ジェスタル:別に吾輩たちは帰ってもいいんだけど。(笑)
ヤシュト: なにぃ~。(笑)
GM: 「しかし、そんな危険な森をグレッシャムという男は
山刀一つで抜けてくるんですから、大したものですよ」
ケイ: 「誰ですか、それ?」
ラルク: 水長の村から水晶を売りに来る人ですよ。
ヤシュト: さっき聞いたろう。(笑)
ケイ: メンゴ。(ごめん、の意味です)
GM: 「それに、あの森に入っていくと妙な視線を感じるし。
見えそうで見えない影のような……。
いや、失礼。気のせいだと思うんだが」
ケイ: ……お化け?
ラルク: きっと小動物かなんかですよ。
ケイ: だといいんだけど。
ヤシュト: とにかく、この狩人さんは詳しいことは知らないみたいだな。
「どうも、ありがとう」
と礼を言って、ジェスタルとラルクのところに戻ろう。
ラルク: 「どうでした?」
ケイ: 「ずいぶん危ないみたいよ」
ジェスタル:「だと思ったよ」
ヤシュト: 「しかし、グレッシャムという男は山刀一つで森を抜ける。
商人はゴブリンを倒して女に返り討ち」
ジェスタル:「つまり、その女を倒せばいいと」(一同爆笑)
ケイ: 「違うでしょ!」
ラルク: (メモを見ながら)
「そう言えば、村長さんから水長の村は肉を食べない、
武器を持たないって話を聞きましたね」
ジェスタル:「な~るほど」
ケイ: 「モンスターの血であろうと、流しちゃいけない」
ヤシュト: 「と、なるとやっかいだぞ。
戦わずにグローブゴブリンを退けるわけか……。
魔法で使えそうなヤツはないか?」
ラルク: 「私は今のところ回復系しか心得がないです」
ジェスタル:「ホラー(相手に恐怖心を与える魔法です)なら使える」
ケイ: 「私もイリュージョン(幻影を見せる魔法です)があるよ」
ヤシュト: 「なんとかなりそうじゃないか」
ケイ: 「それにいざとなったらゴブリン語が喋れるし」
ラルク: え、いつのまにそんなスキル取ってたんです?
ケイ: 実は最初から。(笑)
ドワーフ語があればゴブリンもオーケーなんでしょ?
GM: そうだよ。
ジェスタル:よく分かんないもの取ってるな~。(笑)
ケイ: 役に立ちそうだからいいじゃない。
ヤシュト: 「大体の作戦は決まったし、まずは町を歩いてみるか」
ラルク: 「グローブ・ゴブリンを傷つけないって方向ですね」
ジェスタル:「女の人に殴られるのはイヤだからな」(笑)
ヤシュト: そうだ、GM。
出かける時に主人にゼイさんのことをもう一度頼んで、
主人の名前を聞いておきたい。
GM: 店の主人は
「ミヤビといいます」
どうやらカーズ系の名前だね。
ヤシュト: 「俺はヤシュトです。
しばらくやっかいになります」
と挨拶しておこう。この人気に入った。
ジェスタル:また始まったよ。オヤジマニア。(笑)
GM: 取りあえず通りに出るのかな?
ラルク: そうですね。
~その9 謎かけ婆さん~
ケイ: (地図を見ながら)
「まずは道具屋にしない?
水長の村から仕入れてる水晶を見てみたいな」
ジェスタル:「吾輩もそう思ってた」
ヤシュト: 「じゃ、道具屋に行くか」
ラルク: あ、教会もすぐそばですね。
「ちょっとこちらの教会に挨拶をしておきたいんですけど、
行ってきていいですか?」
ケイ: 「うん。立派、立派」
ジェスタル:「行ってこいよ」
ヤシュト: 「俺たちはあんまり関係ないから、ちょっと離れて待ってるか」
ジェスタル:「そうするか」
ケイ: 「冒険者がゾロゾロと行くのもなんだしね」
ラルク: 「じゃ、ちょっと行ってきます」
教会の扉をノックします。
GM: すると、君と同年代の青年が出てくるね。
ラルク: 「はじめまして。
私、南トゥムのエレミヤ神父を師と仰ぐラルクといいます」
GM: 「僕はこの教会に務めるサンシットといいます。
エレミヤ神父を師事しているのですか」
ラルク: 「エレミヤさんをご存知なんですか?」
GM: 「父とエレミヤ神父は共にハート司教から教えを請うていたのです。
少しお待ちください。父を呼んできます」
ジェスタル:なるほどね~。
ヤシュト: エレミヤさんも、ここの教会の人もハート司教の弟子ってわけか。
ラルク: 私はそのエレミヤさんの弟子ですよ。(ちょっと得意)
ジェスタル:3代目で終わりか。(一同爆笑)
ラルク: ひどいな~。(笑)
GM: すこし待つと、優しそうなおじさんが出てくるよ。
「はじめまして、トイロスといいます。
エレミヤの元で働いているとか」
ラルク: 「はい。
こちらに私用で参りまして、挨拶にうかがいました」
GM: 「これは、これはご丁寧に。
エレミヤと娘のカチュアは元気ですか?」
ラルク: 「ええ、とっても」
GM: と、話していると、プレートメイルの騎士2名に担がれて、
商人が連れてこられるね。
「神父! 怪我人です」
商人さんの肩には深々と矢が刺さってる。
ヤシュト: なんだ、なんだ? って遠くから見ていよう。
GM: トイロス神父は騎士に指示を出して、教会に運び込ませながら
「ラルク君、君も手伝ってくれ」
ラルク: 「はい」
GM: トイロス神父は騎士の一人に
「またレッド・オーカーが?」
それに答えて騎士が
「はい。商隊はこの商人を除いて全滅したようです」
ヤシュト: レッド・オーカーか。
かなり好き勝手に暴れてるみたいだな。
ジェスタル:ほんとに物騒だな。
メイラレンの騎士は何をやってるんだよ。
GM: ヤシュトたちまでは、会話は届かないよ。
教会の外で待ってるんだろ?
ヤシュト: プレイヤーの感想ってことで。
GM: それならよし。
場面を教会に戻すと、商人は歯を食いしばり痛みに
耐えているようだね。
ラルク: 痛みを和らげます。
ヒーリングで判定値は12。
GM: 回復量は?
ラルク: D8で10点回復です。
GM: 商人さんの苦痛の色が少し和らいだようだ。
トイロス神父は微笑んで君に頷いて見せる。
息子のサンシットも一緒になって、矢を抜く治療が始まるね。
ラルク: それじゃ、患者さんに声をかけます。
「がまんしてください」
GM: 「わ、私は助かるんでしょうか?」
ラルク: 「大丈夫です。
アガルタの名において、死なせはしません」
ケイ: う~ん、いいセリフだね。
ジェスタル:だけどよ、矢を抜いてるのはトイロス神父だろ?(一同爆笑)
ラルク: それを言っちゃあ、お終いですよ~。(笑)
GM: でも商人はその言葉に力を得たのか、すこし楽になったようだね。
ほどなくトイロス神父とサンシットの治療が終わり、
ラルクは書斎に通される。商人さんは命に別状はなかったよ。
「ご苦労だったね、ラルク君。
手伝わせてすまなかった」
とトイロス神父が頭を下げるね。
ラルク: 「いえ、これこそがアガルタに使える者の務めです」
GM: 「痛みを和らげるためにとっさにエレンドを使うなんて、
僕ではあそこまで迅速にいきませんよ」
とサンシットも感心した様子だよ。
ケイ: 冒険で慣れてるもんね。
ジェスタル:特に自分にかけるヒーリングが。(笑)
ラルク: うるうる。ケイさんまで。
ケイ: わっ、私はそんなつもりで言ったんじゃないよ。(笑)
こら。(ジェスタルを小突いています)
ジェスタル:すまん。
GM: 「しかし」
とトイロス神父が口をはさむね。
「残念ながら先ほどのヒーリングを見た限りでは
まだまだエレンドに力が足りないようだ」
ラルク: 「おっしゃる通りです。修行が足りません」
GM: トイロス神父は机から緑がかった水晶でできた十字架を取り出して
「これを身につけていなさい」
ラルク: 「これは?」
GM: 「ターン・クルセイダーというものだ。
今の君ではアンデッドに対して少々心もとない。
この水晶の十字架が助けになる」
ルール的に説明しておくと、3回までターン・アンデッドが使える。
もちろん精神力は消費しなくていい。
ラルク: えっ、ほんと!? すっげーっ!(一同爆笑)
ヤシュト: なんだよ、そのセリフは。
トイロス神父が目を丸くしちまうぞ。(笑)
ジェスタル:やっぱ、あ~げない、とか言われるぞ。(笑)
ラルク: すみません、今のはなしってことにしてください。
GM: やり直しのセリフ、どうぞ。
ラルク: 「ありがとうございます、トイロス神父」
GM: 「ターン・クルセイダーに頼るのではなく
あくまでも、修練の手助けと使うように。いいね?」
ラルク: 「はい。心掛けます」
ターン・アンデッドは6点もMPを使いますからね。
これは大助かりですよ。
ケイ: よかったね。
GM: というわけで、小一時間もヤシュトたちを待たせた後、
ようやくラルクが教会から出てくるよ。
ケイ: 「おそ~い」
ラルク: 「待たせちゃってすみません」
ジェスタル:「なにやってたんだよ」
ラルク: 「レッド・オーカーに襲われた商人さんがいて
その看護で遅くなってしまいました」
ケイ: 「それなら仕方ないか」
ヤシュト: 「じゃ、当初の予定通り道具屋に行くか」
ジェスタル:「おう」
GM: ほどなく道具屋に着くよ。すぐ近くだからね。
ケイ: 地図で見てもすぐそばね。
GM: よく言えば年季の入ったたたずまい、悪く言えばボロ屋だよ。(笑)
ジェスタル:怪しげな店なわけだね。
ラルク: ガランとドアを開けます。
GM: 「おや、お客かね。昼時に珍しい」
髪の毛が真っ白なお婆さんがカウンターに座ってるよ。
ケイ: 「そうか。お昼を食べてなかったね」
GM: もう午後1時近くだよ。
ヤシュト: 「一食ぐらい抜いても大丈夫だ」
ジェスタル:「ところで、どんな品物があります?」
GM: 「見たところ冒険者のようだねぇ。珍しい品を並べてみようかねぇ」
お婆さんの口調で説明すると長いんで、ざっと言うと、
精神力を蓄えられるエナジー・オーブ、
地上に5人まで転送できるホワイト・オニキス、
逆に地下に転送できるブラック・オニキス、
落下速度を0にするデール・ブレスレット、
風景や人の姿を記憶できるメモリース・クリスタルなんかが
並べられる。
ジェスタル:「ううむ、ほしいものばっかじゃな~い」
ケイ: 「お財布と相談しなくちゃ」(笑)
ラルク: 「エナジー・オーブは是非ともほしいなぁ。
お婆さん、いくらですか?」
GM: 「安い物で1200Gold、高い物は1800Goldだよ」
ラルク: 「た、高い。ほとんど破産しちゃいますよ」
GM: 「それじゃ、婆の暇つぶしにつき合うかい?」
ラルク: 「なんです?」
GM: 「これから出す謎かけに答えられれば、2割引きしようじゃないか」
ジェスタル:「待ってました!」(笑)
ケイ: 「謎かけ、謎かけ」
GM: 「それじゃ、悩んでもらおうかねぇ。
ある険しい山の洞窟に」
ヤシュト: 「ある険しい山の洞窟に」
GM: 「婆の真似をしなくてもいいんだよ」
ケイ: 「やめなさいよ」
ジェスタル:「難しい問題になったらどうするんだよ」(笑)
ヤシュト: 「いや、お婆さんの口調がおもしろくって、つい」(笑)
GM: 「ある険しい山の洞窟に、財宝を貯め込んだドラゴンが住んでいた。
そのドラゴン、昼は平気で出かけるのに、
夜には財宝を腹の下にひいて、大切に守っていた。
さて、何から守っていたんだろうねぇ」
ヤシュト: 「う~ん」
一同: 「うぅ~ん」
ケイ: 「険しい山の洞窟でしょ」
ジェスタル:「昼は出かけて、夜は守ってる?」
ラルク: 「うぅ……」
GM: 「解けないようだねぇ。定価で買って貰おうかねぇ」
ジェスタル:「お婆さん、ちょっと待った! もうちょっとだけ!」(笑)
ケイ: 意外と負けず嫌いだったんだ、ジェスタルって。
ジェスタル:こういうど~でもいいことでは、負けたくない。(一同爆笑)
ヤシュト: なんだそりゃ。
ラルク: 「昼、夜……」
GM: 「降参かい?」
ケイ: 「もうちょっと」
ラルク: 「分かった! 騎士ですね、お婆さん!」
GM: 「おお、お見事。その通りだよ。
約束通り2割引きでいいよ」
ラルク: 「やったー!」
ケイ: 「そうか、騎士かぁ」
ジェスタル:「なんで?」
ケイ: 「夜のナイトと騎士のナイトのかけ言葉なのよ」
ジェスタル:「なるほどね」
GM: 「で、何を買うんだい?」
ジェスタル:「他の物も2割引きですか?」
GM: 「ああ、いいとも」
ジェスタル:「じゃあ、持ってなかったコンパスを」(笑)
GM: 「160Goldでいいよ。魔法の品は買わないのかい」
ケイ: 「実は所持金が乏しくて」
ラルク: 「エナジー・オーブって、安い物で2割引きでも960ですよね。
計算してみたら、全然足りませんでした」(笑)
GM: 「なんだい、あんたらは。
婆の謎かけを解きに来ただけかい?」(笑)
ヤシュト: 「いかん、いかん。本来の目的を忘れてた。
お婆さん、グレッシャムさんを知ってます?」
GM: 「ああ、水長の村のね。
エナジー・オーブを届けてくれる男だよ」
ケイ: 「するとエナジー・オーブは水長の村で作るんだ。
ね、お婆さん。お婆さんの名前なんていうの?」(一同爆笑)
ジェスタル:なんだよ、その質問は。(笑)
ラルク: もっと重要なことを聞くのかと思いましたよ。
ケイ: だって、なんて名前かなって思ったんだもん。
GM: 「婆はカマラだよ。カマラ婆さんと呼んどくれ」
ケイ: 「カマラお婆さん、水長の村はどう行くか知ってる?」
GM: 「さあねぇ。
ただグレッシャムの話だと、片道6時間はかかるそうだよ。
それに町から北西の方角に村があるって言ってたね」
ジェスタル:「そのグレッシャムさんには会えないですかね?」
GM: 「月に一度か二度町に出てくるだけだからねぇ。
それにいつって決まってるわけじゃないんだよ」
ジェスタル:「グレッシャムさんに会うのは無理っぽいな」
ヤシュト: 「だな」
ケイ: 「ありがとう、カマラお婆さん」
ヤシュト: 「それじゃ、また来るよ」
GM: 「ああ、またおいで。
謎かけを解いたんだから、魔法の品は2割引きで売ってあげるよ」
ラルク: 「お金ができたら来ます」(笑)
と、言ってお店を出ましょう。
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