その19~21

- works.02 ある約束 -


その19~21を掲載しています。




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《前回までのあらすじ》


 漁師の島地下に眠る遺跡に乗り込んだパーティは大ダコを排し先に進みます。

謎だらけの遺跡の中で、ミリアを救う手がかりを掴めるのでしょうか……?


~その19 冒険者になって~


ヤシュト: 先に進むよ。

GM:   岩のごつごつした洞窟が、しばらく続いてる。

      所々に魚の骨があったり岩海苔がこびりついてたりして、

      ライム・ライトの明かりを頼りに進む君たちには薄気味悪いね。

ラルク:  今、時間はどのくらいですか?

GM:   真夜中の3時頃だ。

ジェスタル:タイムリミットは何時だっけ?

ケイ:   夜の7時。

ヤシュト: あと16時間か。

GM:   ルール的には、若いからマイナス修正は加えないけど、

      ちょっと疲れ出す頃だ。

      昨日は一日馬を飛ばして帰ってきたのに、全然眠ってないからね。

ジェスタル:それならみんなに言うよ。

      「よお、少し休憩しないか?」

ヤシュト: 「バテたか?」

ケイ:   「ミリアの事は気がかりだけど、先を急ぎすぎるのもまずいよね」

ジェスタル:「腹も減ったしよ」

ラルク:  「保存食の残りがありますよ。食べますか?」

ケイ:   「塩水に浸かって、尚しょっぱくなった干し肉ね」(笑)

ヤシュト: 「何も食べないよりはマシだろ。

       人数分あるか?」

ラルク:  「ちょうど4食分残ってました」

GM:   保存食の中には小瓶のワインも含まれてるよ。

      さすがにパンは食べられないけど、チーズと干し肉は

      食べられるだろう。

ジェスタル:じゃあ、そこら辺の岩に腰掛けて、保存食を食べよう。

ケイ:   「うう。しょっぱい」(笑)

GM:   君たちは海中にある洞窟で、塩水漬けの保存食を食べているわけだ。

      冒険者になって今はミリアの為に、ケルトの“時の番人”の遺跡を

      目指している。

      ずいぶんと日常からはかけ離れた生活だね。

ヤシュト: そう言われればそうだな。

      しみじみ言おう。

      「みんな、冒険者になって後悔してないか?」

ケイ:   「ヤシュトはしてるの?」

ヤシュト: 「いや、俺は剣で身を立てるのが夢だったからな」

ラルク:  「私だってアガルタの名のもとに、誰かの役に立てるのなら

       それでいいんです。

       冒険者という職業は、自然にそうなったってだけで」

ケイ:   う~ん、立派。

ジェスタル:この話題はまずい。

      吾輩たちの無目的ぶりがばれる。(笑)

ケイ:   ごめんね、ジェスタル。私にもちゃんとした目標があったのよ。

      「私はただショウっていう名を守りたいだけ。

       おばあちゃんがとってもいい人だったから、私の代でショウ家を

       無くしたくないんだもん」

ラルク:  そういう目的があったんですか。

GM:   メイラレンで苗字を名乗れるのは貴族と功績のあった者だけって

      いうのは前にも言ったよね?

      一度与えた苗字を永久に認めると、その人の功績まで薄れてしまう。

      だから貴族でも、功績のない者は爵位を剥奪されてしまうんだ。

ケイ:   でも私が苗字を名乗れるだけの冒険者になれば、ショウ家は続くでしょ?

ラルク:  な~るほど~。

ヤシュト: ジェスタル、ピーンチ!(笑)

ジェスタル:「吾輩は面白ければ、すべてよし!

       これといった目的はないが、今はこれでいいのだ!」(笑)

      ちょっと開き直って言うよ。(笑)

ケイ:   「ジェスタルらしいね」

ジェスタル:「目的はないけど、今は冒険者でよかったと思ってるよ。

       でなきゃ、ミリアのために何もしてやれなかったし」

ラルク:  「そうですよね」

ヤシュト: 「ただの灯台守だったら祈るくらいしかできなかったからな」

      うぅん、いいなぁ。

      パーティ内会話はテーブルトークの醍醐味だよな。

      「よし、そろそろ行くか」

ジェスタル:「ああ。大分疲れも抜けたような気がする」

ケイ:   ライム・ライトはまだ大丈夫?

GM:   あと1時間くらいはもつよ。

      みんな先に進むわけだね?

      天然の岩肌をくり貫いた洞窟を40mほど進むと人工の遺跡に変わる。

      使われているブロックは、マンティコアの洞窟と全く同じだ。

      ここにはかなり厚く埃がたまってるよ。

ヤシュト: 「ケイの言うとおり、信じられない魔法の巣窟らしいからな。

       こっからは俺が行く。みんなは少し遅れてついてきてくれ」

GM:   隊列は?

ラルク:  いつものフォーメーションAでいいでしょう。

ジェスタル:フォーメーションAって、一つしかないじゃないか。(笑)

ケイ:   ヤシュト、私、ジェスタル、ラルクね。

ヤシュト: 定番の隊列だな。

      用心のために一応ブロード・ソードを構えて進む。

      GM、変わったのは遺跡だけ?

GM:   ケイのライム・ライトが照らす範囲に、鈍く反射するものが

      幾つかある。どうやら床に転がっているようだ。

ヤシュト: 用心深く近寄ってみよう。

GM:   近づけばわかるけど、所々赤錆に覆われた鎧を着た白骨死体が5体、

      折り重なるように倒れてる。

ヤシュト: 後ろを振り返って、

      「白骨死体だ」

ケイ:   (露骨にイヤな顔をしながら)「見たくない」(笑)

ジェスタル:吾輩も吐き気を抑えながら近づこう。

ラルク:  ここは十字をきって死者の冥福を祈ります。

ヤシュト: いいぞ、ラルク。それでこそアガルタの司祭だ。

      さて、どうしてこんな所で死んでいるかだが。

GM:   見た目で分かることは、鎧に使われている金属が今よりも

      厚いことから、かなり昔の物だということ。

      デザイン的にはメイラレンの騎士団のものに似ていること、

      くらいかな。

ヤシュト: サーチで詳しく調べる。

      7。

ジェスタル:吾輩も調べよう。

      10。

GM:   ジェスタルは気がついたけど、鎧や骨の所々に針で突いた程の

      小さな穴が無数に開いている。

ジェスタル:「ヤシュト、よっく見てみろよ。

       細か~い穴がいっぱい開いてるぞ」

ヤシュト: 「こんな穴、武器じゃ無理だよな」

GM:   鎧を貫通できる武器としてはエストックとかだろうけど、

      穴の大きさが異様に小さいよ。

ラルク:  「これは魔法じゃないですか?」

ジェスタル:「気持ち悪いのは分かるけど、調べてくれよ」

ケイ:   「やだ」(笑)

      プレイヤーのセリフだけど、初めて白骨死体を見たんだもん。

      気持ち悪いっていうか、怖いでしょ。

ラルク:  確かにそれは言えますね。

ヤシュト: 女の子だから特にな。

      だが、ここはよ、そうだ、キャラクターの言葉で言った方がいいか。

      「ケイ、この先には何があるか分からない。

       俺たちもこの骸骨みたいになる可能性があるんだ。

       そうならないためにも、手掛かりはどんな些細なことでもほしい」

ケイ:   う~ん、見事な説得。

      「分かった」

      って口に手を当てながら白骨死体を見てみる。

      ここはセージでチェック。

      んと、すごい。15。

ジェスタル:もしもし。ほんとに怖がってる?(笑)

GM:   ケイはランダから魔法概念は習ったことのあるニードル・レインの

      痕跡だと思える。

      魔法以外に、これ程細かい穴を穿つ方法は考えられない。

      ルール的にはレベル3の古代魔法で、破壊力が大きい攻撃系のものだ。

ケイ:   「これはニードル・レインの跡だと思う」

ラルク:  「鎧も貫通するほどの魔法なんですか!?」

ケイ:   なの?

GM:   卓越した魔術師が使えば、鋼も板切れ同然。

ケイ:   なのよ。(笑)

ジェスタル:手を抜くな~。(笑)

ヤシュト: GM、鎧はメイラレンのものに似てるんだろ?

GM:   恐ろしく古いけどね。

ケイ:   「私の推測だけど、きっとケルトとタリア大陸の戦いで

       死んだ騎士じゃないのかな?」

ヤシュト: 「俺もそう思う。

       この遺跡にある魔法に目をつけたか、恐れたか」

ラルク:  「そっか。ここも戦場になったんですね」

ジェスタル:「騎士の戦った相手が、もういないことを祈るよ」

ラルク:  「まさか。10世紀以上も前の遺跡なんですよね、ここ」

ケイ:   「分からないわよ。

       入り口の魔法がまだ生きてるんだもん」

ヤシュト: 「だな。相手が人間とは限らないぞ、ラルク」

      GM、何か手掛かりになりそうな物は持ってなかった?

GM:   一般の騎士のようだね。

      身につけていた大抵のものは朽ち果てているか、錆びてるよ。

      特に不自然な物は所持していなかった。

ジェスタル:吾輩も剣を抜いておこう。

      な~んか、イヤな予感がする。

ラルク:  用心しながら進みましょうか。

GM:   ライム・ライトの照らす範囲はずっと幅、高さ共に4mはある

      人工の通路がまっすぐ続いている。

      さっきの騎士の死体から進むこと30m、今度はボロ布の

      固まりの様なものが、床に転がっている。

ヤシュト: また俺が先行して見てみよう。

GM:   ボロ布と思われたのは、緑色がかったローブだね。

      騎士と同じく、白骨死体が樫のロッドを右手に持ったまま、

      朽ちている。

ヤシュト: 「今度は魔術師だ」

      って、みんなに言うよ。

      一体だけ?

GM:   そう。

ラルク:  近寄っていって、握ったままのロッドを胸の上に添えてあげましょう。

GM:   ラルクがロッドに触れると、まるで白蟻が食い散らかした

      木材のように、崩れ落ちてしまう。

ジェスタル:なんか、はかなげじゃな~い。

ラルク:  かなりの時間が経ってるんですね。

      両手を胸に乗せて、ちゃんと寝かせてあげましょう。

ヤシュト: 「さっきの騎士の相手はこの魔術師かな?」

ケイ:   「たぶんね」

ジェスタル:「この人だけで、5人を相手にしたのか。

       すっごいな」

ヤシュト: 外傷とかはないの?

GM:   見た限りではローブにも骨にも外傷は見当たらない。

ヤシュト: 「おそらく、この遺跡を守って最期まで戦った

       ケルトの魔術師だろうな」

ジェスタル:「そうだろうね、うん」

ケイ:   「一人で時の番人の遺跡を守り通したのね」

ヤシュト: 何でもかんでもサーチで調べるのもなんだから、先に進もう。

GM:   そうだね。総当たりのコンピュータ・ゲームじゃないんだから、

      キャラクターとして重要と思えることだけを調べるべきだね。

      魔術師の死体から進むこと50m、両側の壁の様子が一変する。

ヤシュト: ん?

GM:   約3cmの穴が、壁一面にびっしりと開いているんだ。

ジェスタル:うわ~。見ただけでトラップって感じだな。

ラルク:  それがどの位続いてるんです?

GM:   ここから10m先には幅2m位の扉があるんだけど、

      そこまで続いてるよ。

ヤシュト: う~ん。

ケイ:   「歩き出したら、矢か槍が飛んでくるんじゃない?」

ジェスタル:「まず間違いないと思うよ」

ラルク:  「どうします?」

ヤシュト: 「走り抜けても扉が開かなければ蜂の巣だしな」

ケイ:   「問題はどうやってトラップが発動するかだけど」

ジェスタル:GM、すぐ近くの壁や床をサーチで調べていい?

ヤシュト: 俺も。

GM:   どうぞ。

ジェスタル:また10ぴったり。

ヤシュト: 13。

GM:   ジェスタルは埃の溜まり方の違いで気づいたんだけど、

      穴の壁が始まる同地点の床に、踏むと沈む仕掛けらしいプレートを

      見つけるね。

      材質は床と同じで分かりにくいけどね。

ジェスタル:その辺りを剣で指して、みんなに教えるよ、

GM:   普通に歩いていたら、まず踏む場所にあるね。

      ヤシュトは腰くらいの高さの壁に、15cm四方の四角い切れ目を

      見つける。

ヤシュト: 「これは何だ?」

GM:   ダガーで隙間に刃を入れれば、開けそうだ。

ヤシュト: どうするか……。

      床のプレートは飛び越せそう?

GM:   可能だろうね。

ケイ:   でも待って。

      一つ目は飛び越せても、その先にもうないとは限らないでしょ。

ラルク:  気づかなかったら終わりですね。

ジェスタル:自慢じゃないが、吾輩とヤシュトのサーチはレベル1。(笑)

ラルク:  解除しといた方がいいんですけどね。

ヤシュト: それは分かってるんだけどな~。

      これ(壁の切れ目)が罠解除の装置だって保証もないじゃないか。

GM:   君たちが、そう悩んでいるとだね、ケイさん。

ケイ:   はい?


~その20 さざなみ~


GM:   君の頭の中にさざなみのような、魔力のうねりが伝わってくる。

ケイ:   頭に直接?

GM:   そう、言葉じゃない。温かみを感じる魔力の波動だ。

      拒絶したいのなら魔力で判定してくれるかな。

ケイ:   んー……。ここは拒絶しない。

      軽く目を閉じて、体をリラックスさせます。

GM:   するとさざなみのような魔力は、君の頭の中を風のように

      よぎっていく。不快な感じはしない。

      まるで昔の知り合いとお喋りをしているようだ。

ヤシュト: ケイが突然目を閉じて黙っちまったんだろ?

      「どうした?」

      って、俺は声をかけるよ。

ジェスタル:GM、同じマジック・ユーザーとして魔力のやりとりをしてること

      くらいは分かってもいいでしょ?

GM:   うん。それくらいはいいだろう。

ジェスタル:ヤシュトの腕を抑えて言うよ。

      「待て。何かを感じてるんだ」

GM:   魔力はケイの意志を感じてか、去り際も不快感を与えないように、

      優しく消えていこうとする。

      ただ、完全に消え去るまえに“ドゥーナ・ベー”という言葉を残すよ。

ケイ:   土鍋?(一同爆笑)

ジェスタル:違うって。

ラルク:  なんで私たちのロールって、恰好よくなりかけると

      ギャグになるかな~。(笑)

ジェスタル:宿命だ。(笑)

ケイ:   ごめんネ。地が出ちゃうのよん。(笑)

ヤシュト: ちょっと照れるんだよな。

ケイ:   ドゥーナ・ベーって古代語?

GM:   そう。“常識の落とし穴”って意味だ。

ケイ:   魔力が去る瞬間に目を開けて、

      「待って!」

      って呼びかけてみる。

GM:   魔力は応えないね。

ヤシュト: 俺は魔力のことは素人だから聞くよ。

      「どうなってんだ?」

ケイ:   「今、だれかの魔力が教えてくれたの。

       常識の落とし穴って」

ラルク:  「誰かって」

ヤシュト: 「時の番人かぁ~?」

ケイ:   「それ以外に考えられないでしょ」

ジェスタル:「大ダコじゃないか?」(一同爆笑)

ヤシュト: 「んなわけないだろうが!」

ラルク:  「それは何かの助言ですかね」

ヤシュト: 俺はもう分かったぞ。プレイヤーが、だけどね。

ケイ:   私も多分このトラップの解除法なんだと思う。

      それをみんなに言うね。

      「時の番人は、このトラップの切り抜け方を教えてくれたのよ」

ジェスタル:「吾輩には分からんぞ」

ケイ:   「ヤシュト、壁の切り込みを開いてみて」

ヤシュト: 「よし」

      GM、ダガーでこじ開けようとする。

GM:   少し埃を落としながら、簡単にフタが取れるよ。

      中には金属製のレバーがある。手前に倒れるやつだ。

ケイ:   やっぱり。

ラルク:  「私もイマイチ納得できないんですけど?」

ヤシュト: 「つまりだ、普通プレートは避けて、罠を解除できそうなボタンとか

       レバーを探すだろ?」

ジェスタル:「あぁっ、なるほどな」

ラルク:  「それが常識ですよね……って、そうか!」

ケイ:   「つまりは逆のことをするのが、

       このトラップの解除法なんじゃない?」

ヤシュト: うーむ、プレイヤーは納得してるけど、キャラクターは納得してない。

      「待てよ、ケイ。

       時の番人にとって、俺たちは侵入者だぞ。

       その相手になんでヒントをくれる?」

ケイ:   「理屈だと説明しにくいんだけど、魔力の感じが優しかったの」

ヤシュト: 「それが罠かもしれない」

ケイ:   「ヤシュト、ここは私に任せて」

      そう言いながら、プレートを踏みます。

ジェスタル:うわっ、踏んだよ。(笑)

GM:   カチンと金属音がしてプレートは5mmほど沈むよ。

      これといって通路に変化はない。

ケイ:   レバーには触らないで、通路を奥に向かって歩き出します。

ヤシュト: それならケイを止めるよ。

      「ケイ、ここは俺が行こう。

       お前がこれだけ迷いなく動けるんだから、さっきの魔力ってのを

       俺も信じる」

ラルク:  いいなぁ~。決まってますね。

ジェスタル:こういうやりとりはいいやね。

GM:   うん。素晴らしいロールプレイだ。

ヤシュト: プレイヤーはとっくに納得してたんだけど、魔力の感覚はケイにしか

      分からないだろ?

      だからヤシュトなら反対するな、と思ったんだ。

GM:   こういう会話はじゃんじゃんやってよ。

      キャラクター性に深みが出るからさ。

ヤシュト: でも内心はどきどき。(笑)

      バックラーを構えながら通路を進みはじめるよ。

ケイ:   それじゃヤシュトに向かって、

      「ありがと」

      って言うね。

ヤシュト: 軽く手をあげて応えよう。

      用心深く左右に目を配りながら歩いていく。

GM:   1m、3mと進んでも、穴からは何も出てこない。

ヤシュト: 扉の前まで行こう。

GM:   すると、扉は左右に音もなく開くね。

      中まではケイのライム・ライトの光も届かないから細かい様子は

      分からないけど、通路よりもかなり広い部屋のようだ。

ヤシュト: 「ふ~っ」

      ってため息をついて、みんなに来いって合図するよ。

ジェスタル:「どうやら正解だったようだな」

ラルク:  「失敗だったらヤシュトの串刺しでしたね」

ヤシュト: そこ! なにを期待してた!(笑)

ラルク:  冗談ですって。

      私たちもヤシュトの所に行きます。

GM:   ライム・ライトを持ったケイが近づくと、

      部屋は20m×20mの広間だね。

      向かいの壁に、今通ったのと同じような扉がある。

ケイ:   殺風景な部屋なの?

GM:   これといった装飾品はないね。

      ただ、天井はかなり高くて、壁の少し高い所に石像がズラリと並び、

      君たちを上から見下ろしている。

ジェスタル:おいおいおい~。

ヤシュト: それってもしかしてよ。

GM:   石像は右腕からは石の剣が生え、背中にはコウモリのような翼、

      口には嘴がある。

ジェスタル:うぇ。

GM:   セージ・チェックは必要ない。

      王城や、豪邸に見られるガーゴイルだね。

ラルク:  これからの展開が予想できますね。

GM:   更に床には1m四方の穴が交互に開いている。

      扉の所からじゃ、どの位の深さなのかは窺い知ることはできない。

ケイ:   交互って、つまり、1m四方ずつしか足場がないってこと?

GM:   そうなるね。

一同: (力のない笑い)

ラルク:  壁のガーゴイルは何体いるんですか?

GM:   1辺に7体かな。

ヤシュト: 28体か……勘弁してくれよ~。(笑)

ジェスタル:さすがのヤシュトも弱気だな。

ヤシュト: あったりまえだ。4対28だぞ。

      どうやったら勝ち目があるよ!?

ケイ:   動くかどうか、まだ分からないわよ。

      GM、ガーゴイルに魔力感知。

GM:   どうぞ。

ケイ:   え~と、ちょっと低い。9。

GM:   大まかだけど、ガーゴイルの大半は魔力を失っているようだ。

      どれがとまでは分からないけど、動けるものはそう多くないだろう。

ケイ:   「全部が襲ってくるのは無理ね。

       かなり魔力が弱ってるから」

GM:   ケイがそうみんなに告げると、老人の声が天井に響く。

      ちょっと聞きなれないアクセントがあるけど、共通語だ。

      「死者を尊び、魂を慰撫する者よ。助言を聞き、機智に富む者よ。

       私は“時の番人”ニンブリー。

       そなたらの使命は、先ほど垣間見せてもらった。

       だが、私はケルト王リヴァの命により、この祠を守護する者。

       早急に立ち去るがいい」

ヤシュト: 「時の番人ニンブリー……」

ケイ:   「さっきの魔力はやっぱり時の番人だったのね」

ジェスタル:声だけ?

GM:   うん。姿なき声だ。

ラルク:  ここは一歩踏み出して天井に向かって言います。

      「時の番人ニンブリー、聞いてください。

       私たちの友人がマンティコアに苦しめられています。

       どうか力を貸してください!」

ヤシュト: 俺も手に入れた鍵を見せながら言おう。

      「俺たちは極刑を選んだ。

       ミリアをマンティコアから救いたいんだ」

GM:   「ケルト王リヴァの許可なき者を、先に進めることはできぬ」

ジェスタル:「かたいこと言わないで」(笑)

ケイ:   「私たちに罠のヒントをくれたのに、どうして」

ヤシュト: 「もうケルトはないんだ。

       頼むから力を貸してくれ」

GM:   「ならば、己が力量を示せ。

       ガーゴイルを倒せるのならば、それを通行の証としよう」

ヤシュト: 「ここは退くわけにいかない。

       何体でもやってやる」

ジェスタル:「おうよ!」

ケイ:   「出し惜しみはなしね」

ラルク:  「私もアガルタの名にかけて全力を尽くします」

GM:   声が止むと同時に、向こう正面のガーゴイルから石の破片がパラパラと

      落ちる。

      2体のガーゴイルが伸びをするように首を回らすと、

      無機質のはずの石像が突然躍動感を帯びていく。

ジェスタル:うぅ、リアルに想像しちゃったよ。

      怖いじゃな~い。(笑)

GM:   バッ、バッと翼を羽ばたくと、

      ガーゴイルたちは君たちへ視線を向ける。

ヤシュト: ブロード・ソードを構えながら叫ぶよ。

      「来るぞ!」

GM:   (フィギュアを並べて)よし、戦闘処理に移行しよう。


~その21 乱戦~


GM:   まずは移動ターン。

ジェスタル:全員同じ所に固まってるのはまずいから、壁沿いに横へ移動。

ラルク:  私はジェスタルとは反対方向に。

ケイ:   もう最初っから魔法詠唱。

ヤシュト: 俺は前進。ガーゴイルを迎え撃つ。

GM:   最後にガーゴイルの移動。

      2体ともグライダーのように滑空しながら向かってくる。

      次に行動ターン。

ヤシュト: 隣接までは、もう1ラウンドかかるか。この場でブロードを構えてる。

      あ、居合抜きの構えね。

GM:   了解。

ケイ:   私はこれ。

      「ルーンの輝きをもって、刃は更なる鋭さを増す!」

      ヤシュトの剣にエニグマ・ウエポン(武具の効果をアップする魔法)

      をかけます。

      抵抗しないでよ。(笑)

ヤシュト: しない、しない。

ケイ:   判定は成功。

GM:   ヤシュトのブロード・ソードが小刻みに震えたかと思うと、

      刀身に緑色に輝くルーンがボウッと、浮かび上がる。

ジェスタル:おっ、かっこいい。

ケイ:   これから10ラウンドの間ダメージが+1点。

ヤシュト: 「これが古代魔法の力か!」

      ちょっとケイを振り向いて親指を立てよう。

GM:   はい、ラルク。

ラルク:  レイピアじゃ折れちゃいそうですね。

      ここはマンゴーシュを利き腕に構えます。

ジェスタル:吾輩も一応グラディウスを構えるか。

      滅多に当たらないメイ刀グラディウスを。(笑)

ケイ:   迷うのメイね。(笑)

GM:   ガーゴイルの方も攻撃はなし。

      第2ラウンド。移動ターン。

ジェスタル:もう次で左のガーゴイルが来そうだな。

      ここで待機。

ケイ:   私も次の詠唱。

ラルク:  飛ばしますね~。

ヤシュト: まだ、マンティコアが残ってるんだぞ。

ケイ:   だって、あそこは。

ヤシュト: そうか。魔法が使えないんだった。

ジェスタル:なるほど。吾輩も派手にやろう。

      それにここでやられたら、先にも行けないんだしな。

GM:   ラルクは?

ラルク:  私もここで迎撃します。

ヤシュト: 俺も足場を確かめながら、この場で待機。

GM:   ガーゴイルは1体がヤシュトに近接。宙に浮いたままでね。

      もう1体はヤシュトの横をすり抜けて、ジェスタルの方へ向かう。

ジェスタル:うそ。(笑)

GM:   行動ターン。

      ガーゴイルは石の剣でヤシュトに襲い掛かる。

ヤシュト: バックラーでよける! 13。

GM:   ギィン! と鈍い金属音が遺跡に鳴り響く。

      かろうじて避けたが、バックラーを持つ左手にはジンジンと

      衝撃が残ってる。

ヤシュト: かなりの強敵だな。 こっちの攻撃だよね?

      スパーンと居合斬り! 14。

GM:   ダメージを出して。

ヤシュト: 11発。

ケイ:   エニグマ・ウェポンの分、足した?

ヤシュト: いけね、12発。(笑)

GM:   石でできた右腕に、かなり大き目のヒビが走った。

ジェスタル:いいぞ。

ラルク:  私は攻撃が届きませんね。

ケイ:   ヤシュトの前にいるガーゴイルに、ハーケン・クロイツ。

      ピンチ・スキルでダイスを1個増やしていい?

ヤシュト: ほんとに飛ばすなぁ。

ケイ:   17、ダメージは。

ラルク:  ケイさん、その目ならクリティカルですよ。

ケイ:   あっ、ほんとだ。ダメージは最大の13。

GM:   うん。ケイのハーケン・クロイツで、ガーゴイルの剣が生えた右腕は

      後ろに吹き飛んだ。

      その右腕が穴に落ちていくんだけど、落ちてからしばらくして

      ガァンという音が響き渡る。

ジェスタル:深そうじゃな~い。

ラルク:  落ちたらタダじゃ済みそうにないですね。

ジェスタル:吾輩も必死にいくぞ。

      近寄られる前に少しでもダメージを与えておきたい。

      そうだ、翼を狙うよ。

      「氷のつぶてよ、我が前の敵を討て!」

GM:   アイス・フォールだね。

ジェスタル:判定値は9、ダメージは7。

GM:   手応えは浅かったが、氷の弾丸がガーゴイルの翼に炸裂する。

      ちょっと体勢は崩すけど、まだ飛び続けてる。

ジェスタル:抵抗されたか。

ラルク:  魔法は抵抗されてもダメージはいきますから。

GM:   それじゃ第3ラウンドだ。

ジェスタル:吾輩はこのまま。

ケイ:   私も。

ラルク:  私はジェスタルの方へ向かいます。

      もう1ラウンドかかりますね。

ヤシュト: 俺も待機。

GM:   ヤシュトの方のガーゴイルはヤシュトと同じ足場に着地。

      ジェスタルの方のは、この移動で隣接だ。

      行動ターン。

      ヤシュト、ジェスタル、それぞれ避けて。

ヤシュト: 9。

ジェスタル:8。

GM:   ジェスタルは石の剣をまともに食らった。

      12からアーマー分減少しておいてね。

ジェスタル:う~わ。こりゃ痛いよ。

GM:   右腕を失ったガーゴイルは、ヤシュトの首を左手で掴んだ。

      万力のような力で君の首を締めつける。

      3のダメージを直接受けといて。

ヤシュト: 「ぐはっ」

      こいつはしぶとい。

      俺はブロードでガーゴイルの顔を突く。

      11。外れたか?

GM:   相手の動きは完全に止ってるから、その数値でも当たってる。

ヤシュト: ダメージは、9。

ケイ:   (エニグマ・ウエポンの追加ダメージを)足した?

ヤシュト: また忘れてた。(笑) 10発。

GM:   ガーゴイルの頬から側頭部にかけて、鋭くえぐったね。

ヤシュト: だが、長引くとまずいな。

ジェスタル:首を絞められてるわけだからね。

ケイ:   あっ、私MPが、もうマイナス修正!

ラルク:  それじゃケイさん、行動を私より遅らせて下さい。

      トランス・メンタルで精神力をあげます。

ケイ:   ラルクの方は大丈夫なの?

ラルク:  まだ戦闘で使える魔法は憶えてないし、ヒーリングをかける分は

      残しておきますから、大丈夫です。

ヤシュト: 戦闘中でも使えるのか?

GM:   ヒーリングと違って、トランス・メンタルは可能だよ。

ラルク:  行きますよ、ケイさん。抵抗しないで下さいよ。

ケイ:   しない、しない。(笑)

ヤシュト: 真似するな~。(笑)

ラルク:  私の分の精神力を8点ケイさんに。

ケイ:   「ありがと、ラルク」

      これで、あと2回ハーケン・クロイツが使える。

      ヤシュトの首を絞めてるガーゴイルに、ハーケン・クロイツ!

      12で、ダメージは9。

GM:   うん。ガーゴイルの額に、ハーケン・クロイツの鉤十字が

      風穴を開ける。ヤシュトを掴んでいた手は緩み、そのままガーゴイルは

      後ろの穴に落ちていく。

      しばらくしてから大音響だ。

ケイ:   やった!

ヤシュト: げほげほ咳をしながら、

      「すまん」

      って後ろを振り返って言おう。

      「助かったぜ」

ジェスタル:ここはどうしようかな~。

GM:   前にガーゴイル、右は穴、左は壁だよ。

ジェスタル:GM、壁を蹴ってガーゴイルの後ろに回りたいんだけどいい?

GM:   う~ん。ジェスタルはこの前のターンで移動してないし、

      行動ターンをちゃらにするならいいよ。

ジェスタル:それで充分。みんなに大声で言うよ。

      「翼を攻撃してくれ!」

      三角飛び、行きます!

GM:   成功値はサーチで11以上。

ジェスタル:ピンチ・スキルで、余裕の成功。

      華麗にひらり。(笑)

GM:   ジェスタルはガーゴイルの後ろに回り込んだ。

ヤシュト: 何がしたいんだ?

ケイ:   なんとなく私は分かった。

ラルク:  私も。

GM:   第4ラウンドに移行するよ。

      まずは移動ターン。

ジェスタル:この場で待機。

ラルク:  ガーゴイルに近づきます。

ケイ:   それならラルクに道をあけて、私は一歩後退。

ヤシュト: 俺はよく分からんが、とにかくガーゴイルのそばに移動しよう。

GM:   ガーゴイルは壁を蹴って後ろに回ったジェスタルの方に向き直る。

ラルク:  「ヤシュト、ジェスタルはガーゴイルを落とすつもりなんです!」

ヤシュト: 「そういうことか!」

ジェスタル:翼があったら、すぐに上がって来られちゃうだろ?

      だから翼を壊してほしいってわけ。

ヤシュト: 了解した。

GM:   行動ターン。

      ガーゴイルはジェスタルに攻撃。

ジェスタル:避けは12。

GM:   顔をのけぞらせて、危ないところでかわしたね。

ヤシュト: 俺の番だよね? ジェスタルの言った通り、翼を狙う。

      「うおりゃあ~」

      14。

GM:   それは翼を直撃した。ダメージは?

ジェスタル:行け、恐怖のD10!(笑)

ヤシュト: 10。

GM:   右側の翼に亀裂が走る。

ラルク:  私も同じ翼にマンゴーシュで攻撃。

      攻撃判定値はピンチ・スキルを使って、15。

      惜しい、クリットにあと1足りない。

GM:   ダメージは?

ラルク:  マンゴーシュだから、D6か。

      えいやっ、9です。

GM:   そのダメージで、右の翼は付け根から砕け落ちるよ。

ジェスタル:オーケー。

      「ケイ、任せてくれ」

ケイ:   「うん」

ジェスタル:吾輩はタックルするみたいに体当たり。

      横の穴に落としたい。

GM:   攻撃判定でどうぞ。

ジェスタル:ドカッと13!

GM:   それは見事に決まった。

      ガーゴイルは体勢を崩して、翼で立て直そうとするんだけど、

      左側の翼だけが虚しく空をかく。

      そのまま穴の中に落ちていくね。

ジェスタル:(ガッツポーズをしながら)おし!

ラルク:  「ジェスタル、傷の手当てをしましょうか?」

ジェスタル:「いや、まだ大丈夫だよ」

ラルク:  「でも凄かったですね。とっさの閃き」

ケイ:   「ジェスタルにしちゃ上出来ね」

ヤシュト: 「ああ、ここまで考えてるとは思わなかった」

ジェスタル:「何だよ。誉めてるのか、けなしてるのかどっちだよ!」(一同爆笑)

ラルク:  「とにかくガーゴイルは倒しましたね」

GM:   君たちが勝利を喜び合っていると、穴は床に侵食されるように塞がり、

      正面の扉が音もなく、ゆっくりと開く。

ヤシュト: 「ようやくだな」

ケイ:   「時の番人に会えるのね」

ヤシュト: ブロードを鞘に戻して、

      「会えればいいがな」

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