その22~25

- works.02 ある約束 -


その22~25を掲載しています。




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《前回までのあらすじ》


 漁師の島地下の遺跡を進むパーティは、苦闘の末ガーゴイルを倒しました。

ついに時の番人に会えるのでしょうか。そしてミリアを救えるのでしょうか……?


~その22 時の番人~


GM:   ひとりでに開いた扉の向こうには、又4m幅の通路が見える。

      ずいぶん先まで続いているようだ。

ヤシュト: ここまで来たら先に進むしかない。

      「いいか、みんな?」

ラルク:  「もちろんです」

GM:   通路を進むわけだね?

      殺風景な通路を進むこと50m、煌々と明かりの灯った

      円形の部屋に出る。

      明かりの元は、部屋の中央にある直径30cmはある水晶球だ。

ケイ:   水晶球?

GM:   その水晶球の中で、青白い光が炎のように燃えている。

      さらに水晶球を囲んで等身大の石像が5体。

      壁には様々な色をしたプレートが7つ並んでいる。

ジェスタル:石像って人間の形をしてるの?

GM:   そう。すこし描写をしようか。

      鎧を着た逞しい男、ローブ姿の老人、身の軽そうな小柄な男、

      手甲をつけた中年の男、長い髪をした美しい女性の5体だ。

ケイ:   なんか意味がありそう。

ラルク:  まさか、これも動くってんじゃ。

GM:   君たちが部屋に入って石像を見渡していると、

      ガーゴイルの部屋で聞いた声が響き渡る。

      「よく試練を乗り越えた。望む力を得るがいい」

      声と一緒に水晶球の中の炎が明滅する。

ケイ:   「あなたが時の番人?」

GM:   「正確に言うならば、時の番人の記憶の一つだ」

ケイ:   「ほんとうにケルトは人の意識を残せたんだ」

ジェスタル:「すごいな」

ヤシュト: 今は時間がないから単刀直入に言うよ。

      「時の番人。マンティコアを倒すために力を貸してほしい」

GM:   「すでに力はそこにある。手中にある鍵がそなたらの望む力だ」

      その言葉に呼応するように、壁の7つのプレートが一瞬光を帯びるね。

ジェスタル:プレートに鍵穴があるのか。

GM:   光ったことで鍵穴に気づいたね。

      7つプレートは材質の違いで色が異なっているんだ。

ラルク:  この鍵は何でできてるんです?

GM:   間違いなく鋼鉄だね。

ヤシュト: 「ラルク。鋼鉄のプレートに鍵を入れるんだ」

ラルク:  「分かりました」

      鍵を差します。

      あ、プレートは見つかりますか?

GM:   うん。壁伝いに歩いてすぐに見つかった。

      ルーンの明滅する鍵を鋼鉄のプレートに差し込むと、2、3度明滅して

      プレートは消え、かわりに細長い空洞が現れる。

      そこには鞘に入った両手持ちの剣が一振り横たわっている。

ヤシュト: やっぱり武器か。そうじゃないかと思ってたんだ。

ラルク:  その剣を取り出して鞘から抜いてみます。

GM:   剣は刃渡り1.2mほどで、切っ先は平らだ。

      刀身にはびっしりとルーンが刻み込まれている。

ヤシュト: 切っ先が平らって、エグゼショナー・ソードじゃないのか?

ケイ:   なに、それ?

ヤシュト: 処刑用の剣だよ。

ジェスタル:それで、そんなに長くないのに両手持ちなのか。

GM:   「その剣をもってすれば、マランティコエの首を一刀のもとに

       断つことができる」

ヤシュト: 時の番人に言うよ。

      「それではマンティコアを殺してしまっても構わないんですね?」

GM:   「すでにケルトはなく、全能の王リヴァもいない。

       我らの遺産がそなたらに害をなすならば、排除すべきだ」

ラルク:  「この剣以外は効かないんですか?」

GM:   「マランティコエの体は堅固な魔力によって守られている。

       通常の武器の効果は薄いが、歯が立たぬわけではない」

ヤシュト: 「魔法が使えないとなれば、勝ち目はあるか」

GM:   「慢心は危険だ。マランティコエは獅子の膂力を持つ。

       仕留めそこなえば、情けを知らぬ爪に己が身をさらすことになる」

ラルク:  「ライオンを相手にするようなもんですからね」

ジェスタル:「やっぱ、逃がしちゃった方がいいんじゃないか?」(笑)

ヤシュト: 「おいおい。それはまずいだろ」

ケイ:   「村の人たちが襲われたらどうするの」

ジェスタル:「でもよ、ミリアから生命力を奪うのは止めると思うよ」

ヤシュト: 「動けるようになれば、当然そうだろうな。

       でもあそこから出したら、魔法も使えるようになっちまう」

ラルク:  「村がパニックになりますよ」

ジェスタル:「それもそうか」

ケイ:   う~ん、と。

      「時の番人。教えてください。

       ケルトはあのマンティコアをどうするつもりだったんですか?」

GM:   「かのマランティコエに処せられたロゼラは

       魔力を私利私欲のために用いた。

       ケルトの思惑は異なる生態下での意識の改革にあった」

ヤシュト: 「しかし何の関係もない人間を死に追いやろうとしている。

       現に、これは多分ですが、過去にも殺してる」

GM:   ヤシュトはソーシャのことを言ってるんだろ?

ヤシュト: ああ。

GM:   「ロゼラの行いは、先ほどの精神探査で理解している」

ケイ:   さっきのさざなみみたいな魔力ね。

GM:   「もしケルトが沈まなければ、間違いなく処刑されていただろう」

ヤシュト: 「ケルトの処刑人なら、マンティコアも観念するだろうけどな。

       俺たちが相手じゃ思いっきり抵抗してくるだろう」

ジェスタル:「まず間違いないよね」

ラルク:  「それですよ、ヤシュト!」

ヤシュト: 「どれ?」(笑)

ラルク:  「私たちがケルト人のふりをすればいいんです」

ケイ:   「あ~。そっか、そうよね。

       時の番人、マンティコアはケルトが沈んだってことを

       知ってるんでしょうか?」

GM:   「極零下では時間の概念は失われる。

       おそらくは12世紀の時の流れも気づいてはいまい」

ジェスタル:「いけそうじゃな~い」

ヤシュト: 「それでいこう。

       だが、あそこの扉を開く方法は?」

GM:   「剣に呼応し、扉は開放される」

ヤシュト: なるほど。

      残るはマンティコアを倒すだけだ。

ラルク:  ですね。

GM:   もう時の番人との会見は終わりかな?

ケイ:   最後にひとつだけ。

      「どうして罠のヒントをくれた上に、あれだけいたガーゴイルも

       2体しか使わなかったんですか?」

GM:   「私は時の番人ニンブリー。

       ケルト王リヴァの命により、この祠を守護する者。

       だが私も人の意志だ。手違いもある」

      最後の一言は冗談っぽく響くね。

ヤシュト: 堅物かと思ったが、いい人じゃないか。

ケイ:   失礼なこと言わないの。

ヤシュト: 今のはプレイヤーのセリフにしといてくれ。(笑)

GM:   「それにマランティコエは、我々が産み出した災いなのだから」

      そう言うと、水晶球の光は徐々に弱まり、淡い光になる。

      時の番人としては、ケルト王の命令に従うことと

      君たちの力になること、

      この矛盾する中で最良の選択をしてくれた、と言えるだろうね。

ラルク:  そうですよね。

      門前払いされてもおかしくないですからね。

ヤシュト: それじゃ、去り際に水晶に向かって深々と一礼しよう。

ラルク:  私も十字を切ります。

ケイ:   私は、時の番人みたいな素晴らしい人のいる国が、

      どうして滅ぼされちゃうのか複雑な気持ちを抱きながら踵を返します。

GM:   うん。いい心理描写だね。

      全員ネジが待つ小船に戻るわけだね?

ヤシュト: (難しい顔をして考え込んでいます)

ジェスタル:どしたい?

ヤシュト: まだ聞くことがあったような気がしてな。

ケイ:   実は私も。

      タリア大陸との戦争のことや、魔法のことについて聞きたかった。

ラルク:  周りの石像がなんなのかも聞いてませんね。

ジェスタル:ロンさん、死ぬまで調べる場所パートⅡだな。(一同爆笑)

ケイ:   ここもお父さんには内緒ね。(笑)

ヤシュト: 確かにそうだ。

      しっかしこのまま帰っていいものか……迷うな。

GM:   そこはコンピュータ・ゲームと違うテーブル・トークだからね。

      さっきも言ったけど、選択肢がなくなるまでコマンドを試してる

      場合じゃない。

      君たちはミリアを救うために、時間とも戦ってるわけだ。

ヤシュト: そうか。

ケイ:   マンティコアを倒す方法が分かったんだから、ここは急ぐべき?

ジェスタル:だと思うよ、吾輩は。

      こんな場面で、関係ないことべらべら聞くのおかしいよ。

ヤシュト: だな。

ラルク:  ですよね~。

      急いで戻ることにしましょう。

      GM、今は何時くらいですか?

GM:   もう朝の5時頃だ。

      この季節なら、空が徐々に白んでいるだろう。

ジェスタル:早く戻ろう。

GM:   帰り道は端折るとしようか。

      幸運にもオクトパスはエサでも探しに行ったのか、

      さっきの棲家にはいなかった。

ラルク:  ラッキー。

GM:   君たちが入り口と船をつないだロープを辿って水面に顔を出すと、

      朝日でシルエットになった砦の山々が見える。

ヤシュト: 「ぷはっ」

      と息をついて水面に出ながら、

      「くそっ、夜が明けちまったか」

GM:   小船の上ではネジが、

      「は~っ、やっと戻ってくれたか。

       俺も潜ろうかと思ってたところだぜ」

ケイ:   「心配かけてゴメン」

ヤシュト: 「悪いな。思った以上に手間取った」

      船に上がりながら言うよ。

GM:   「手がかりは見つかったのか?」

ジェスタル:「何とかね。ほんとに何とかなるかな、程度なんだけど」

ラルク:  「大丈夫です。上手くいきますって」

ヤシュト: 「ネジ、悪いが急いで村に帰してくれ。

       ミリアの容体は一刻を争う」

GM:   「任せとけ。それより、濡れた服は脱いだ方がいいぞ」

ケイ:   「脱げるわけないっしょ」(笑)

GM:   「ケイは女の子だったな。(笑)

       腰掛けの下に毛布があるから使ってくれ」

ケイ:   ぷんすか。(笑)

ヤシュト: 「ふぅ。少し疲れたな」

GM:   小休止にしようか? かなり続けてるからね。

ヤシュト: 違う、違う。キャラクターのセリフだよ。

ジェスタル:プレイヤーはやる気まんまんじゃな~い。

ケイ:   ねぇ。

GM:   失礼しました。

      ネジが漕ぐ船の中で揺られているうちに、朝日が山を越えて海を

      照らしはじめる。

      初夏の日差しと毛布のおかげで、君たちはいやでも疲れを感じるね。

ラルク:  「さすがに疲れが出てきましたね」

ケイ:   「昨日から丸一日寝てないもんね」

ヤシュト: 俺はほっぺたを平手でパンと叩いて気合いを入れる。

      「もう少しだ。みんな頑張ろうぜ」

ジェスタル:「マンティコアの遺跡には、また吾輩たちだけで入る?」

ラルク:  「今回は騎士さんたちにも来てもらいましょうか」

ヤシュト: 「そこなんだけどな~」

ケイ:   「さっき話した通りケルト人の振りをするなら、あまり大人数で

       行かない方がいいんじゃない?」

ヤシュト: 「俺も考えたんだが、騎士には遺跡の入り口まで来てもらおう。

       マンティコアとは俺たちが直接対決する」

ラルク:  「どうして入り口までなんです?」

ケイ:   「私たちが失敗したときのため。でしょ?」

ヤシュト: 「その通り。

       騎士に全てを任せた方が、俺たちには危険はない」

ジェスタル:「だけど、ミリアを苦しめてきたマンティコア相手に、

       それじゃ我慢ならん、ってとこか」

ヤシュト: 「その通り」

      ケイもジェスタルも俺のセリフを取らないでくれよ~。(笑)

ラルク:  「それに時の番人から、この件を託されたのは私たちですからね」

ヤシュト: 「そういうことだ」

GM:   パーティの相談は終わったかな?

      島を後にしてから2時間後の午前7時。

      君たちは南トゥムの船着き場に戻ってくる。

      そこには額に血管を浮き上がらせた、ケジーが腕組みして待っている。

      「このバカ息子!」(笑)

ジェスタル:吾輩はこうなると予想してた。(笑)

GM:   船が桟橋に着くなり、ケジーはネジのむなぐらを掴んで怒鳴り出すね。

      「勝手に船を出しやがって。

       朝の漁に出られなかったじゃないか!」

      ネジは背中に手を回して、君たちに早く行けって合図を送ってるよ。

ヤシュト: 済まん、ネジ。って心の中で思いながら、船から下りて駆け出そう。

ケイ:   後でちゃんと訳を話すからね。って、これも心の中。(笑)

GM:   「こらっ、ヤシュト! あっ、お前らも待てっ」(笑)

ジェスタル:「ひぇ~っ。ごめんなさ~い」

ラルク:  「後で謝りにいきますから!」

      私も全力疾走。(笑)


~その23 ふたたび凍てつく回廊へ~


ヤシュト: ぜーはーぜーはー。

      これじゃ、いたずら小僧と変わらんじゃないか!(笑)

ケイ:   きっと私たちが小さいときは、こうだったんでしょ。

GM:   そうだね。

      きっと君たちが子供の頃は、つるんで悪さしてたんだろうね。

ジェスタル:悪ガキどもが大人になって冒険者に。

      なるべくしてなったって訳ですな。(笑)

ヤシュト: ケジーさんには後でちゃんと事情を説明するとして、

      今はとにかく村長宅に急ごう。

GM:   村長宅に向かう君たちは、果樹園に向かうおばさんや、

      網を担いだ漁師連中を追い抜いていく。

      みんな君たちのしていることを知らないから、陽気に挨拶してくるよ。

ラルク:  こっちは陽気って訳にはいきませんから、

      会釈だけ返しておきましょう。

GM:   程なく村長宅に到着する。

      今回は玄関を守る騎士もすぐに取り次いでくれて、

      エレミヤとカチュアが外に出てくるよ。

ヤシュト: ほれ、ラルク。お師匠様に報告だ。

GM:   「一晩戻らなかったので心配したぞ」

ラルク:  「ご心配をかけて済みません。

       なんとかミリアを苦しめている元凶を取り除くことができそうです」

GM:   エレミヤとカチュアは一目で疲れ切ってるのが分かるけど、

      ラルクの言葉に期待で目を見開くね。

      「本当なの!? ラルク」

      カチュアもすがりつくようにラルクに近づく。

ラルク:  「漁師の島で手がかりを得たんです」

      えっと、どこから話しましょうか。

      (少し考えて)ちゃんと説明すると、すっごく長いですよ。

ケイ:   ここは、ほにゃららぺけぺけでしょ。(笑)

ラルク:  それでいいですか?

GM:   いいよ。報告だけだから。

      かいつまんで、今までの経緯を話したことにしよう。

ヤシュト: 「それで、ミリアの具合はどうなんですか?」

GM:   「今は幾分持ち直してはいるが……。

       ミリアの生命を削り取っている魔力は、

       断続的に彼女を苦しめている」

ケイ:   あっ、今思いついたんだけど、ミリアをどこかに移したら

      どうなのかな?

ジェスタル:どうだろうな。

      でも結局マンティコアを倒さなくちゃダメだと思うよ。

ケイ:   どして?

ジェスタル:だって自縛霊じゃないんだから。(一同爆笑)

ラルク:  すごい例えですね。

ジェスタル:だってそうだろ。

ヤシュト: 例えはともかく言いたいことは分かるよ。

      場所に関係してるんだったら、牧場のソーシャが死ぬのはおかしい。

      きっとミリアに直接干渉してるんじゃないか。

ケイ:   そっか。納得。ごめんネ。続きをどうぞ。

ヤシュト: エレミヤさんからミリアのことを聞いたんだったよな。

      「そこで一つ頼みがあるんですが」

GM:   「なんだね」

ヤシュト: 「これから俺たちはマンティコアを倒します。

       だが失敗する可能性もある。

       そこで騎士たちを遺跡の入り口に配置してほしいんです」

ラルク:  「村人たちに被害が及ばないように」

GM:   それにはカチュアが

      「みんなが、そんな危険なこと……」

      って心配そうに口にする。

ヤシュト: 「カチュア、ミリアは俺たち以上に危険なんだろ?」

ジェスタル:お~。かっこいいセリフじゃな~い。

ヤシュト: 照れるなぁ。(笑)

GM:   「しかしマンティコアとの対決は騎士に任せてはどうかね?」

ヤシュト: 「いえ。俺たちの方が時の番人と直接話してますから」

ケイ:   「いざというとき、対処できると思うんです」

ラルク:  「遺跡にも一度入ってますから、構造も分かってます」

GM:   エレミヤは君たちの決意に満ちた顔を見て、

      「分かった。ハート司教の許可をいただいて来よう」

      そう言って中に入るね。

ジェスタル:う~ん。何だか緊張してきた。

ケイ:   ジェスタルも緊張するんだ。

ジェスタル:失礼な。多感な少年期なんですぞ。(笑)

GM:   事情を説明するのに少し時間がかかっているのか、20分程してから

      エレミヤが戻ってくる。

      戸口に立っている騎士の一人に向かって言うね。

      「クヴァスタ殿、これからあなたの部下を含む4名は、

       彼らの指示に従うようにとのハート司教からのお言葉です」

ヤシュト: そんな権限までくれるのかよ。ちょっとドキドキもんだぞ。

GM:   クヴァスタと呼ばれた25、6の青年は、普通なら君たちのような若造に

      従うことは不満があるだろうに、

      「分かりました。今後彼らの指示を仰ぎます。

       私が護衛隊を率いるクヴァスタです。なんなりと御命令を」

      と、きびきびした挨拶をする。

ヤシュト: こっちは恐縮しながら、

      「一応リーダーのヤシュトです。よろしくお願いします」

      オドオドと挨拶しよう。

ジェスタル:突然偉くなった気分だな。(笑)

ケイ:   なに言ってるの。

ヤシュト: それじゃ、さっそくラルクの家の方に向かおう。

ラルク:  「エレミヤ神父、カチュアさん。ミリアを頼みます」

GM:   「君たちも気をつけるのだぞ」

ヤシュト: 「はい」

ケイ:   「無理はしません」

ラルク:  「吉報を待ってて下さい」

GM:   君たちはエレミヤとカチュアに見送られて、村長宅を後にした。

ヤシュト: 歩きながら、騎士さんには状況と、遺跡の入り口で待機していて

      ほしいということを説明しておく。

GM:   オーケー。クヴァスタは快く命令を了解した。

      20分ほどで貯蔵庫に到着するよ。

      働いている人は、果樹園に出かけているのか、貯蔵庫の傍にいるのは

      カートだけだ。

ラルク:  「カート、ご苦労さん」

GM:   カートは君たちの引き連れている騎士4名に驚いたのか、

      「アニキ。どうして騎士がいるんだよ。

       そんなにやばいの?」

ラルク:  「念のためだよ。念のため」

      ここは弟に心配をかけないよう気軽に言います。

GM:   「アニキが軽いときは決まって重大なことなんだ。

       司祭になると決めた時も笑いながら“司祭になっちゃおっかなぁ~”

       って言ったもんな」(笑)

ジェスタル:さすが弟。分かってる。

ラルク:  GM、GM。勝手に過去を作らないでくださいよ。

ヤシュト: でもラルクなら、そう言いそうだ。

ケイ:   うん。

ジェスタル:テーブルトークは言ったことが現実なのだ。(笑)

ヤシュト: ラルクの過去、決まり。(笑)

      冗談は置いといて、カートにも事情を説明しておくよ。

      ちゃんと俺たちが戻るのを待っててくれたんだしな。

ケイ:   そうね。

      「頑張ってくれて、ありがとね。カート」

ジェスタル:「ああ。助かったぞ」

GM:   そう言われてカートは頭を掻きながら、少し照れてるね。

      「た、大したことはしてないよ」

ラルク:  「あとは私たちに任せなさい」

ジェスタル:大きく出たね。

ヤシュト: よし、早速遺跡に潜る。

ラルク:  精神力がもったいないから、ここはコネコネを使います。

ケイ:   それとカート君にまたマントを借りて。

ジェスタル:そうだった。寒いんだよな。

ヤシュト: 濡れた服で入ったら、大変なことにならないか?

ラルク:  船に2時間乗ってたんだから乾いてるんじゃないですかね。

GM:   初夏だから乾いたことにしよう。

ヤシュト: じゃ、マントを羽織って、と。

ケイ:   「マントはしっかり前で留めてよ」

ジェスタル:「風邪ひいちゃうもんな」

ケイ:   「違うってば。

       私たちのカッコがケルトの服じゃないから、マントで隠すの」

ヤシュト: 「危ない、危ない。気がつかなかった。

       確かにケルトの服じゃないもんな」

ケイ:   「魔法が使えればイリュージョンでごまかせるんだけど」

ジェスタル:「使えたとしてもさ、見破られる可能性もあるよ。

       相手はマンティコアだし」

ラルク:  「そう言えば言葉はどうするんです?」

ケイ:   「古代語しか話せないようなら私が」

ヤシュト: 「そこら辺はケイに任せた。

       できるだけ、こっちがケルトの処刑人だと思わせて、

       時の番人から借りた剣で方をつけよう」

ラルク:  この剣の効力は幾つなんですか?

GM:   まだ言ってなかったね。必要筋力12、効力20、追加ダメージが+5。

ラルク:  恐ろしい剣ですね。

GM:   通常の武器じゃ、この威力は出せないよ。

ジェスタル:時の番人さまさまだね。

GM:   貯蔵庫の壁から入って行こうとする君たちに

      クヴァスタが声をかけるよ。

      「これを」

      ヤシュトに銀色の細い笛を渡すね。

ヤシュト: 「これは?」

GM:   「緊急の際に仲間を呼ぶ為のものです。

       地下からでしたら、反響するので距離があっても聞こえるはずです」

ヤシュト: 「ありがとう、クヴァスタさん」

      心強いって感じで受け取るよ。

ジェスタル:うう。いい人だ。

ケイ:   今回出てくる人はいい人ばっかりね。

ラルク:  この前のギーランとムールは印象悪かったですからね。

ジェスタル:もう会いたくないやね。

ヤシュト: 「よし、行こう!」

GM:   「アガルタの庇護と御武運を」

ヤシュト: こくっと頷いて穴をくぐろう。

ラルク:  「後を頼みます」

GM:   君たちは再び深淵の闇に身を置いた。

      ライム・ライトの明かりの中、凍てつく寒さに白い息が踊っている。

      前に使ったロープはそのままだから、遺跡に降り立ったことにしよう。

ヤシュト: 「マンティコアの部屋まで一気に行くぞ」

ケイ:   「ちょっと待って。

       マンティコアが遺跡に封じられたのは何年だっけ?」

一同: (誰かがメモしてると思って、お互いにキョロキョロ)

ラルク:  何年でしたっけ?(笑)

GM:   まぁ地図のあった小部屋に行けば、分かることだから教えるよ。

      円柱に刻まれていた内容を正確に言うと、

      “ロゼラをマランティコエに処す  CC618”

ジェスタル:そうだ、マランティコエだ。

      マンティコアって言っちゃまずいぞ。

ラルク:  ケルト人の振りをするんですから、そう呼ばないといけませんね。

ケイ:   みんな気をつけてね。

GM:   マンティコアのいる扉の前まで進むんだね?

ケイ:   今度は滑らないでよ。

ジェスタル:お前が滑ったんだ、お前が!(笑)

GM:   壁沿いに歩くんだったら、チェックはしないよ。

ラルク:  扉に着くちょっと前にみなさんに話があるんですけど。

ヤシュト: なんだ?

ラルク:  「ロゼラの命を絶つのは私に任せてもらえませんか?」

ジェスタル:びっくりして言うよ。

      「おいおい。剣ならヤシュトに任せておけよ」

ヤシュト: ラルクに思うところがあるみたいだな。

      「どうしてだ?」

      って聞くよ。

ラルク:  「マンティコアといっても、元は人間です。

       せめてアガルタに仕える私の手で葬ってあげたいんです」

ケイ:   「気持ちは分かるけど……」

      ここからはプレイヤーのセリフね。

      ラルクって死んじゃいそうなんだもん。(一同爆笑)

ラルク:  ええっ?

ジェスタル:確かにそんな気はする。

      今回のタイトル変更。“遺跡にてラルク死す!”(笑)

ラルク:  そんなー。

      始まって2回目で死にたくないですよ~。(笑)

ケイ:   ほら、ヤシュトって死にそうにないじゃない。

ヤシュト: 人を化けものみたいに。(笑)

ジェスタル:実際お前の筋力とLPは化けもんなんだよ。

ヤシュト: とにかくラルクに言おう。

      「相手はマンティコアだ。それに失敗すればミリアが危ない。

       分かってるな?」

ラルク:  ここは真顔でうなずきます。

ジェスタル:ラルクの肩にこう肘を置いて、

      「仕方ない、協力してやりますか」

      また偉そうな吾輩。(笑)

ヤシュト: 「ここはラルクの決意を尊重しよう。

       だが危なくなったら、俺たちも剣を抜くぞ」

ラルク:  「はい」

ケイ:   「慎重にね」

ラルク:  時の番人からもらった剣を左手でしっかりと握り締めます。

GM:   今回はパーティ同士の会話がいいね。

      GMはちょっと寂しいけど。(笑)

      それじゃ扉に近づくのかな?

ラルク:  はい。

GM:   時の番人からの剣を持ったラルクが扉に近づくと、

      ゴン! と振動を伴う大きな音がして、扉がゆっくりと上がっていく。

      隙間からは質感を感じさせる程の真っ白い冷気が流れ出てくる。

      中はかなりの低温みたいだ。

ケイ:   いよいよね。

ジェスタル:頼むぞ、ラルク。


~その24 ばかぁ~


GM:   扉が完全に開ききって、冷気が薄れるまで数分かかるよ。

ヤシュト: その間に、中で動く気配は?

GM:   今のところない。

      君たちは冷気とマンティコアとの対峙という緊張から、

      体の芯が重く鈍く感じるね。

ラルク:  手がかじかまないように、ニギニギしてます。

ジェスタル:リアルだね。吾輩もそうしよう。

GM:   扉の向こうは10m四方の四角い部屋で、向かいの壁際に

      一段高くなった台座がある。

      その上には獅子の体を持つマンティコアが寝そべっている。

ラルク:  眠ってるんですか?

GM:   そう君たちが思いはじめた頃、背中の羽がゆっくりと左右に開く。

      翼からは氷の膜がパリパリと剥がれ落ちていくね。

ヤシュト: こっちとの温度差で目が醒めたな。

GM:   マンティコアは年老いた老人の顔を上げると、ゆっくり瞼を開ける。

      「ヴァード・モー・マー・イシャム?」

      掠れた声が凍りついた部屋に響く。

ヤシュト: おぅ。雰囲気ある~。

ジェスタル:けどプレイヤーにも何言ってんだか分かんないぞ。(笑)

GM:   これから説明するよ。

      ケイにはもちろん分かるけど古代語だ。

      「ようやく釈放か?」

      って聞いている。

ケイ:   んっと、古代語で冷たく言います。

      「お前に母国語を話す資格はない。

       共通語で話しなさい」

ラルク:  さっすがケイさん。

ジェスタル:なぁ。そう持っていくか。

GM:   マンティコアは喉の調子がおかしい、というように咳払いして

      共通語で話し始める。

      「今は何年だ?」

ヤシュト: もう共通語が通じるんだよな?

      「619年。お前が処罰されてから1年が過ぎた」

      これはでっち上げ。(笑)

GM:   「ならば、もう充分だろう。私を釈放しろ」

ラルク:  「それはできません」

ケイ:   「マランティコエに処されてからも、

       お前には精神の改善が見られない」

GM:   これには片眉をあげて不服そうな表情を見せるね。

      「一体何のことだ。

       それに私をマランティコエと呼ぶな。

       私にはロゼラという名前がある」

ケイ:   「マランティコエに処せられた時点から、

       ケルトはお前に名を認めない」

ラルク:  ケイさん、すごいですね。

      怖いくらいですよね。

ジェスタル:これが地だって。(笑)

ケイ:   おだまり!(笑)

      ケルト人じゃないって気づかれないよう、必死なんだから。

ヤシュト: GM、まだ気づかれた様子はない?

GM:   今のところはね。

      ケイのセリフは完璧だし、コネコネの明かりも一役買ってるんだよ。

ジェスタル:ああ、そうか。

      魔法の使えない遺跡なのに、魔法みたいな明かりを持ってるからか。

      さすがはラルク。

ラルク:  いえ、ちっともそんなこと考えてなかったんですけどね。(笑)

GM:   話を元に戻すよ。

      ロゼラはケイの精神の改善が見られない、という言葉に不服そうだ。

ヤシュト: 「マランティコエよ。

       お前は自分の命を延ばすために他人を犠牲にした」

GM:   「私が!? このような場所に封じ込められて、どのような方法で

       人に危害を加えるというのだ?」

ヤシュト: 「お前は無意識的にやったことでも、村の住人の命を削り取ったんだ」

GM:   「村?」

ケイ:   「あ」

ヤシュト: 「これ以上話しても埒が明かん。

       ラルク、マンティコアを処刑しろ!」

ケイ:   「ばかぁ」

ヤシュト: え?

GM:   「マンティコアだと?

       何故私をマンティコアなどと呼ぶ?」

       それに村と言ったな?

       この周辺に村などないはずだ」

ヤシュト: しまった~!(一同苦笑)

ジェスタル:口を滑らせたな。

ケイ:   お父さんから聞いた話しをしたじゃない。

      ケルトが遺跡を作ったのは、南トゥムができる前だって。

ヤシュト: ダブルでしまった~!(笑)

GM:   「お前たち、ケルトの人間ではないな」

      マンティコアはコウモリの翼を広げると、ブワッと風を巻き起こす。

      君たちの服装を隠すマントは無力にもはだけてしまう。

ジェスタル:トリプルでしまった~!(一同爆笑)

ラルク:  こうなったら同じですよ~。

GM:   「ケルトの処刑人でないのなら、私にも活路はある」

      マンティコアは獅子の咆哮に似た叫びをあげながら襲いかかってくる。

ラルク:  ここは私が剣を構えて前に出ます。

      「行けるところまで、やらしてください!」

ヤシュト: 「気合い入れてけよ!」

GM:   それじゃラルクとマンティコアの一騎討ちだ。

      敏捷度は16だから、こっちから攻撃。

      すでに隣接状態なので移動ターンは省略しよう。

      まずは爪がラルクを襲う。

ラルク:  「アガルタよ!」

      14です。

GM:   ギリギリ避けたね。次はサソリの尾がすれ違い様向かってくる。

ジェスタル:2回攻撃かよ!

ヤシュト: こいつは強敵だぞ。

ラルク:  うはっ、ダメです。9。

GM:   ラルクの足にサソリの尾が深々と刺さった。

      5のダメージ。

ラルク:  アーマー減少していいんですか?

      それなら全部止りました。

GM:   続いて毒に対する抵抗をして。

ヤシュト: やっぱりな。

ラルク:  うえぇ。(一同苦笑)

      毒があるんですか~。12です~。

ジェスタル:さっきまでの勢いが完全になくなりましたな。

GM:   ラルクの反撃、どうぞ。

ケイ:   がんばって。

ラルク:  えりゃあっ、12!

GM:   マンティコアはステップバックしてかわした。

      第2ラウンドに入るよ。

      ラルク、また回避チェック。2回爪の攻撃を避けてね。

ラルク:  う~。2回とも10です。

GM:   12のダメージが2回。それぞれアーマー分減少していい。

ジェスタル:ラルク~。

ラルク:  いっきなりLPがマイナス修正!

ヤシュト: もうダメだ。ブロードを抜いて俺も行く!

GM:   だけど、ラルク以外はマンティコアに隣接するのは

      次のラウンドになる。

ヤシュト: くう。

      ラルク、もう1ラウンド持たせろ!

ケイ:   それならヤシュトの剣にエニグマ・ウエポン!

      判定は成功。

GM:   ルーンがヤシュトの剣に灯るね。

      ラルクの攻撃。

ラルク:  あっちゃ~。11です。

GM:   時の番人から授かった剣が虚しく空を切る。

ジェスタル:吾輩はせめてダガーでも投げよう。

      ああっ。

ケイ:   アクシデント?

ジェスタル:いや、クリティカル。(笑)

GM:   ほんとに? すごいな。

      それはマンティコアの左目に深々と刺さった。

      絶叫が遺跡中にこだまする。

      はい、第3ラウンド。

      このラウンドからラルクは全ての判定に-2の修正を受ける。

ジェスタル:毒だね。

GM:   マヒ性のもののようだ。体が急に重くなる。

      移動するのはヤシュトだけかな?

ヤシュト: こっちに注意をひくように前進。

GM:   それならマンティコアはヤシュトに攻撃だ。

ラルク:  助かりました~。(笑)

ジェスタル:だから言ったじゃないか。

GM:   まずはサソリの尾。

ヤシュト: どりゃっ! 15!

GM:   見事にバックラーで弾いた。

      続いて爪の攻撃。

ヤシュト: 11。食らったか?

GM:   12からアーマー分ダメージ減少しといてね。

      ヤシュトの攻撃。

ヤシュト: 「食らえっ」

      と言いながらブロードで突き刺す。

      判定値は14! ダメージは11。

GM:   それはエニグマ・ウェポンの助けもあって、胸に深々と突き刺さる。

ヤシュト: 「ラルクっ!」

ケイ:   ピンチ・スキルは残ってないの?

ラルク:  えっ、あ。あります!

      「えやあっ!」

      マイナス修正分を引いても15です。

GM:   ダメージは?

ラルク:  2D6を振って……追加ダメージを足して19!

ジェスラル:し~んじらんないダメージだな。

GM:   それは何の抵抗感もなく、スパーンとマンティコアの首を

      胴体から切り離す。

      12世紀を生き抜いた罪人の獅子の体はゆっくりと崩れていくよ。

ジェスタル:「ふ~。間一髪だったな」

ラルク:  「終わった~」

      そう言って、その場に座り込みます。

ケイ:   「危なかったね」

ジェスタル:「大丈夫か、ラルク」

ラルク:  「体がだるいですけど、なんとか」

GM:   ラルクが握っている剣はピキピキとヒビが入っていく。

      もう使えそうにないね。

ヤシュト: 「役目を終えたんだな。

       どれ、ラルク。立てるか?」

      肩を貸そう。

ジェスタル:それじゃ反対側は吾輩が。

ラルク:  ヤシュトとジェスタルに肩を貸してもらいながら、

      マンティコアに十字を切ります。

      「安らかに眠ってください」

GM:   首と胴体から流れる血は、早くも床で凍り始めてるよ。

ケイ:   「考えてみると可哀相ね。

       ケルトがなくなったことも知らなかったんだから」

ラルク:  「自分のしたことを正当化するつもりはないですけど、

       これでよかったんだと思いますよ」

ヤシュト: 「そうだな」

ケイ:   「きっと最期までケルトを憎んでたでしょうね」

ラルク:  「でも、それをぶつける相手もいないんです」

ヤシュト: 「言うなれば、マンティコアもケルトと五賢帝の戦争の犠牲者か」

ジェスタル:「感慨に耽るのもいいけどさ、早く行こうぜ。

       凍えちゃうよ」

ヤシュト: 人がかっこよく決めてるってのに!

ケイ:   あんたってば、いっつもマイペースね。(笑)


~その25 ある約束~


GM:   ラルクは騎士たちにも助けられて、無事村長宅にたどり着く。

      少し体がだるいけど、毒による弊害はもうないようだ。

      君たちは村長宅の居間で毛布にくるまっている。

      睡眠不足と凍てつく遺跡での戦いが、いつまでも体を

      小刻みに震わせている。

ケイ:   「長い一日だったわね」

      って、疲れきって据わった目をしてみんなに言います。

      こんな目。(笑)

ラルク:  「ケイさん、人相が凶悪ですよ」(笑)

ヤシュト: ミリアはどうなったんだ?

GM:   今もハート司教を始め、エレミヤ、カチュアが治療中だ。

      もう時間は昼近くで、窓からは初夏の日差しが差し込んでいるよ。

ヤシュト: 俺は指を噛みながらイライラと足を踏み鳴らしていよう。

ジェスタル:「落ち着けってよ。できることはやったんだ。

       後はエレミヤさんたちに任せよう」

ヤシュト: 「そうなんだけどな。そうなんだけどよ」

ラルク:  「大丈夫です。

       ミリアはきっと助かります」

ケイ:   「もう私たちにできるのは祈ることだけよ」

GM:   やきもきして待っていると、ようやくミリアの寝室の扉が開いて

      エレミヤさんが手招きをする。

ヤシュト: 毛布をはねのけて立ち上がろう。

GM:   君たちが寝室に入ると、ベッドの上でミリアと彼女のお母さんが

      抱き合っている。

      その横では村長も流れる涙を拭おうともせずに、二人を微笑んで

      見つめている。

ヤシュト: エレミヤさんに聞くよ。

      「ミリアはもう大丈夫なんですか?」

GM:   「君たちのおかげだ。よくやった!」

      そう言いながらヤシュトの肩をバン、と叩いて部屋から出ていく。

      続いてハート司教も

      「もう大丈夫。体力さえ戻れば歩くこともできるよ」

      君たち一人一人を眩しそうに見つめて、

      「幾つになっても教えられる」

      呟くように言うと、部屋から出て行くね。

ケイ:   「ミリア」

GM:   「ケイ。みんな」

      そう呼びかけるミリアの顔色は見違えるように、よくなっている。

ラルク:  「よかったですね」

ジェスタル:驚いた顔をしながら

      「顔色もいいじゃないか」

      って言うよ。

GM:   「みんなが私のために戦ってくれたのね」

ヤシュト: まだカチュアはいるんだよね?

      「カチュア、マンティコアのことを誰か話したのか?」

GM:   カチュアは驚いた顔をして、首を横に振る。

      それにはミリアが自信なさそうに答えるよ。

      「夢で見たの」

ジェスタル:「夢?」

GM:   「今は不思議と思い出せる。

       小さい頃、まだみんなと遊んでた頃、夢に黒い影が現れだしたの。

       影は私の夢の中に住まわせろって。

       もし断れば、現実となって村を襲うって。

       だから私、約束したの。怖かったけど約束したの」

ケイ:   「マンティコアはそうやってミリアとの接点を持ったのね」

ジェスタル:「吾輩だったらイヤだって言うな」(一同爆笑)

ケイ:   「だから、ジェスタルのとこには来なかったんでしょ」(笑)

GM:   「でも、みんなが影を夢から追い払ってくれた。

       ラルクもヤシュトもケイもジェスタルも。

       あんなに怖い影を」

      そこまで言うと、ミリアは嬉し涙か、恐怖から解放された安堵からか、

      涙で詰まって話せなくなるね。

ヤシュト: 「ミリアが頑張ったから、俺たちも頑張れたんだ」

GM:   ミリアは泣きながら、うん、うんって感じに頷くね。

      その手にはしっかりとエメラルドのペンダントが握られている。

ジェスタル:「この~」

      肘でヤシュトを小突く。

ケイ:   「いろいろな意味でよかったわねぇ~」

ラルク:  「ヤシュトの思いの勝利でしょうか」

ヤシュト: 「お前らな、好き勝手言うな!」

GM:   ミリア親子は涙で目を赤くしながらも、君たちのやりとりに

      声をあげて笑うね。

      という情景の中、Works.02 ある約束 はお終いだ。

      みんなお疲れさまでした。

PL D(ラルク):お疲れさまでした~。

PL C(ケイ):キャラクターも、プレイヤーもハードだった~。

PL B(ジェスタル):ほんとだよ。

PL C:   最後の方は緊迫しててドキドキしちゃった。

PL A(ヤシュト):俺がドジ踏んじゃったしな。

GM:   でもあれがテーブルトークの面白さでもあるんじゃない?

      たった一言で形勢が逆転する。

      こっちもGMをやってて面白かったよ。

PL D:   まだ始めたばっかりですけど、奥が深いな~。

PL A:   GMが、っつうかマンティコアが間髪入れずに

      ツッコミ入れるもんな。

PL B:   真剣勝負って感じがするやね。

GM:   でもね、俺もミスしてるんだよ。

      元はといえばケイがエニグマ・ウエポンを使ったんだけど、

      それを許可しちゃった。(笑)

PL D:   そう言えばそうですよ!

      あそこは魔法が効かない遺跡なのに。

PL C:   私もとっさに使っちゃった。

PL A:   まぁ厳密なルールよりもノリだよ、ノリ。

GM:   俺もそう思う。

      数値の厳密さよりも、みんなの頭に浮かぶ情景の方が大事だよね。

PL B:   ちょっと言い訳くさいぞ。(笑)

GM:   まぁまぁ。勘弁してよ。

      旗色が悪いので経験値計算にしようか。(笑)

PL A:   今回はみんな頑張ったからな、けっこうもらえるんじゃないか。

PL D:   楽しみですね~。



反省会を含めた歓談は続きますが、読者のみなさんとはそろそろお別れです。

Works.03 ドーファー邸 での彼らの活躍にご期待ください。

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