その16~18

- works.02 ある約束 -


その16~18を掲載しています。




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《前回までのあらすじ》


 メイラレンから戻ったパーティを待っていたのは、ハート司教の訪れで

快方に向かうと信じていたミリアの容体悪化でした。

そのミリアに取り付く魔力の黒い影。

 パーティは地下遺跡で得た手がかりに一縷の望みを託して、漁師の島へと

船を出しますが……。


~その16 漁師の島へ~


GM:   みんな遺跡から出るんだね。

      貯蔵庫に凍えながら戻ってくると、カートが心配顔で待ってるよ。

      「なんか分かったの?」

ヤシュト: 「いや。手掛かりはつかんだんだがな」

      マントを返しながら答えよう。

ラルク:  カートに言います。

      「私たちが戻るまで、ここには誰も入らないようにしといてくれ」

GM:   カートは真顔で頷くね。

ケイ:   「船はどうするの?」

ヤシュト: 「漁師に頼むのが一番だろう。ケジーさんかネジに」

ジェスタル:「吾輩も漁師だぞ」

GM:   でもジェスタルは叔父さんの手伝いだから、

      操船には今一つ自信がないね。

ジェスタル:「前言撤回。ケジーさんに任せよう」(笑)

ケイ:   「私、お父さんに話を聞いてきたいんだけど」

ヤシュト: 「そうだな、ここは手際よくやろう。

       ケイはロンさんに話を聞く。

       ラルクはエレミヤさんに報告してきてくれ。

       俺とジェスタルがケジーさんに会って船の用意をする」

GM:   うん。見事な指示だ。

ジェスタル:さすがリーダー!

ヤシュト: 俺がリーダーかぁ?

ケイ:   うん。今の指示で決まり。

ラルク:  頼りにしてますよ、リーダー。(笑)

ヤシュト: テーブルトークのリーダーって、いいことないんだよなぁ。(笑)

ラルク:  まぁまぁ。それぞれ動きましょう。

GM:   まずはケイさんから。

      家についたことにしていいよ。

ケイ:   バタンとドアを開けて、家に駆け込みます。

GM:   お母さんがちょっと怒った顔で出迎えるね。

      「なんです、ケイ。

       帰ってきたと思ったら、こんな遅くまで出歩いて」

ケイ:   「お母さん、ゴメン。後でたっぷり怒られるから。(笑)

       お父さんは?」

GM:   「いつもの通り書斎でしょ。

       それより夕飯も食べずに今までどこ行ってたの。

       こんな時間まで村長さんの家にいたわけじゃないでしょう」

ケイ:   「ゴメンなさい。急いでるの」

GM:   「ケイ!」

      っていうお母さんの声を後にして、書斎に行くわけだね。

ケイ:   「お父さん!」

GM:   ロンは机に広げた古文書から目をそらさず生返事。

      「お帰り。ミリアは元気だったかい?」

ケイ:   「お父さん、ジーバース伯爵が持ってきた古文書は?」

GM:   その問いには嬉しそうに目を輝かせて顔を上げる。(笑)

      「今も読んでるところだよ。もう4度目だがね。

       ようやくケイも興味を持ったか」

ケイ:   お父さんから古文書をひったくる。(笑)

GM:   「お、おい!」

ケイ:   地下遺跡のことが書いてあるところない?

GM:   セージでチェック。

ジェスタル:がんばれよ。

ケイ:   あ~、8。

GM:   この古文書はかなりロイドの言葉が混じっていて、

      ケイにも読めない部分があるね。

ケイ:   それじゃお父さんに返して、

      「この近くにあった遺跡のことは書いてない?」

GM:   「ああ、確か書いてあったな。

       え~と、ここだ、ここだ。

       ちょうど南トゥムの真下にあったようだね」

ケイ:   「なんて書いてあるの?」

GM:   「ケルトは各地に“時の番人”の意志を封じた祠と、

       流刑者や魔法物を封印した遺跡を残したらしい」

ヤシュト: 時の番人?

GM:   ここにいない人は口を出さないように。

ケイ:   大丈夫。私が聞くから。

      「時の番人ってなに?」

GM:   「ケルト王国の宰相のことらしい。

       ケルト王に仕えて内政決定権から軍事の指揮権までを

       持っていたとされる重要なポストだ」

      補足すると、ちょうど三国志の孔明のような人だね。

ケイ:   「その人の意志を封じた祠って?」

GM:   「これは父さんも半信半疑なんだが、

       ケルトには人の意志を何かに移して

       分身のようなものを作り出す魔法があったそうなんだよ」

ヤシュト: 信じられない魔法だな。

ジェスタル:まったく。

      それってすごい魔法だよ。

GM:   「きっと“時の番人”の意志を各地に置いて、

       危険な魔法物や、罪人の監視をさせていたんだろうね」

ケイ:   「でも、どうして南トゥムなんかに遺跡を作ったの?」

GM:   「南トゥムに作ったわけじゃない。

       そもそも、ケルトが各地に遺跡を建造したのは、

       内陸に国家が生まれるよりも前だからね」

ラルク:  ケルトって、すっごい昔からあったんですね。

ヤシュト: なるほど。

      危険なものは隔離してたってわけだな。

ケイ:   「あの鍵は時の番人の祠で使うのね……」

GM:   「あの鍵?」

ケイ:   「ううん、何でもない。

       祠の場所の地図とかはない?」

GM:   「さすがに地図まではないなぁ。

       この古文書もロイドの賢者が記したもののようだし」

ケイ:   (みんなに向かって)聞くことはこれくらいかな?

ヤシュト: ああ。充分だろう。

ケイ:   「ありがとう、お父さん。

       それと一つお願いがあるんだけど」

GM:   「なんだい?」

ケイ:   「ここの窓から外に出ていい?」(笑)

GM:   「なんだ、母さんを怒らせたのか」

ケイ:   「ちょっとね」

GM:   「あまり遅くならないようにな」

      ロンさんは放任主義というか、ケイを信頼しきってるようだね。

ケイ:   「お父さん、大好き」

      それじゃ窓から出て、えっと、海辺の方でいいのかな?

GM:   そうだね。ケジーの家は海辺の方だよ。

ケイ:   そっちに向かいます。

ラルク:  次は私ですね。

      ミリアの家に行って騎士に面会を求めます。

GM:   今回は騎士も君の顔を覚えているから、すんなり通してくれた。

      玄関口までエレミヤ自身が慌てて出てくるよ。

ラルク:  「エレミヤ神父。ミリアの状態はどうですか?」

GM:   「今は少し落ち着いているが、危険な状態に変わりはない」

      そう答えるエレミヤの額には汗が光っているし、

      目も落ち込んで隈ができてるよ。

      かなり無理をしてエレンドを行使しているんだろう。

      「そちらは何か分かったかい?」

ラルク:  「地下に遺跡を見つけました。

       その中に……」

      (みんなに向かって)どうしましょう?

      マンティコアのことを言っちゃっていいですかね?

ヤシュト: そうだなぁ。ここは、

GM:   ストップ。

      ここにいない者との相談はなしね。今はラルクの判断で話すこと。

      それがロールプレイだからね。

ラルク:  分かりました。

      (しばらく考えて)……ここはマンティコアのことは隠しておきます。

      「地下遺跡で手掛かりらしきものは見つけたんですが、

       先に続く通路が崩れていたんです。

       通路は漁師の島に続いていましたので、これから向かいます」

GM:   「危険はないのかい? 私も同行した方がよくはないか?」

ラルク:  「いえ、神父はミリアのそばにいてあげてください。

       これでも私たちは冒険者です。任せてください」

ケイ:   う~ん。かっこいいよ、ラルク。

ジェスタル:なぁ。

ラルク:  照れるなぁ。(笑)

GM:   エレミヤは満足げにラルクに頷くと、

      「分かった。その件は君たちに任せよう。

       私たちはアガルタに誓って、全力でミリアを看病する」

      そう言って、家の中に入っていく。

ヤシュト: うん、上出来だ。

      マンティコアのことは黙ってて正解だろう。

ラルク:  エレミヤ神父もかなり疲れてたようですからね。

      これ以上心配をかけない方がいいと思って。

ヤシュト: そうだな。

      それに騎士が同行することになると、

      小回りが利かなくなると思うんだ。

ジェスタル:吾輩たちなら気心も知れてるし動きやすいもんな。

ヤシュト: そういうこと。

      で、俺たちはケジーの家に着いたことにしていいのかな?

GM:   いいよ。

      ケジーの家は海辺にあるね。

      窓からは明かりが漏れてて、まだ起きているようだ。

ヤシュト: ドアをドンドン叩きながら、

      「ケジーさん!」

ジェスタル:「ケジーさ~ん!」

GM:   ドアが開いてケジーの奥さんが出てくるよ。

ヤシュト: 「こんな時間に済みません。

       ケジーさんをお願いします!」

GM:   「この時間にあの人がいるわけないよ。

       またウミガメでマーディーンさんと飲んだくれてるさね」

ジェスタル:どっひゃ~。(笑)

ヤシュト: こんな時に飲んでるだと~!

      「それじゃ、ネジはいますか?」

GM:   奥さんは大声でネジを呼ぶよ。

      「ネジ! ヤシュトたちだよ。

       こら、そんな所で寝るんじゃないよ!」

ジェスタル:ラルクはかっこよかったのに、こっちは抜けてるじゃな~い。(笑)

GM:   ちょっとして、目をこすりながらネジが出てくる。

ケイ:   よだれの跡がついてたりして。(笑)

GM:   「ふぁ~あ。なんだい、ヤシュト。

       もうちょっとで、こ~んなステーキが食べられたのに」(笑)

ヤシュト: ネジの頭をぽかりとやる。(笑)

      「寝ぼけんな。理由は後で説明する。

       船を出してくれ」

GM:   「へ?」

ジェスタル:「へ? じゃないよ。

       漁師の島まで乗せてほしいんだ」

GM:   「なに言ってんの。夜遊びも程々にしないと。

       じゃ、おやすみ」(笑)

ヤシュト: だぁ~! 面倒だ。ネジの襟首を引っつかんで、船着き場に連れて行く!

ジェスタル:「おばさん、息子さんをお借りしま~す」

GM:   ネジは引っ張られながら、不平を口にするよ。

      「なんだってんだよ、こんな時間に船を出せなんて」

ヤシュト: 「ミリアが大変なんだ」

GM:   「ミリアと漁師の島がどう関係あるんだよ」

ヤシュト: 「だから後で説明するって言ってんだろ」

GM:   船着き場で、ネジは渋々と船の用意を始めるね。

ジェスタル:「そうだ、ヤシュト」

ヤシュト: 「なんだ?」

ジェスタル:「今度は武器を持ってった方がいいんじゃないか?」

ヤシュト: 「漁師の島に行くわけだし、あった方がいいな」

      GM、ここに来る前に武器を持ってきたことにしていいかな?

GM:   厳密にやるなら、その分のタイムロスを加算する所だけど、

      まだ2話目だから大目に見よう。

      ラルクとケイも自分の家で装備を取って来たことにしていいよ。

ラルク:  う~ん。どうしよう。

ケイ:   なにを悩んでるの?

ラルク:  クロスボウを持っていこうか、どうしようか迷ってるんですよ。(笑)

ジェスタル:置いてけ、置いてけ。

ラルク:  当てる自信もないから置いていきます。(笑)

      私の装備はレザーアーマーと、レイピア、マンゴーシュです。

      あとは、バックパックごと道具一式。

ケイ:   私は急いでるだろうから、ロッドとバックパックだけ。

ジェスタル:吾輩はキャラクター・シートに書いてあるやつ。

ヤシュト: 俺も。

      あ、あと即席明かりも忘れずに持ってくるぞ。

GM:   それじゃ、もうすぐ10時になろうという頃、

      全員船着き場に集合していいよ。

ヤシュト: 「みんな乗れ! ネジ、頼むぞ」

GM:   「ちゃんと説明してくれるんだろうな。

       こんな時間に船を出したなんて親父に知れたら大変なんだぞ」

ヤシュト: 「怒られるどころか、感謝されるさ」

GM:   君たちはネジの操船で、降ってきそうな星空と飲み込まれそうな

      夜の海に漕ぎ出したわけだ。

ケイ:   「ねぇ、ネジ。漁師の島までどのくらい?」

GM:   「いつもより人が多いからなぁ。2時間くらいかかるよ。

       あ、ジェスタル。カンテラの灯りを強くして」

ジェスタル:「分かった」

GM:   「さぁ、そろそろ説明してくれるんだろ?」

ヤシュト: 「ミリアのことは知ってるよな?」

GM:   「もちろん」

ヤシュト: 「そのミリアの病気の原因は地下遺跡にあるみたいなんだ」

GM:   「地下遺跡って? どういうことなんだ?」

ジェスタル:「漁師の島に遺跡があるんだよ。

       吾輩たちもそれを調べに行くんだ」

ラルク:  「マンティコアがいるらしいんですけどね」

GM:   「俺、船降りる。(笑)

       お前らだけで行ってくれ」

ジェスタル:「まあまあ。ここまで来てそれはないでしょう」

GM:   「冗談じゃないぜ。

       だから今まで黙ってたんだな。ちくしょう!」(笑)

ケイ:   「安心して。

       これから行くところにマンティコアはいないはずだから」

ヤシュト: 「なんか分かったのか?」

ケイ:   お父さんから聞いた話をみんなにします。

      時の番人のことを。

ヤシュト: じゃあ、その話を聞いた後でケイに尋ねるよ。

      「時の番人か……。今も機能してるのか?」

ケイ:   「それは分からない。

       でもマンティコアの遺跡が生きてたくらいだから」

ジェスタル:「行ってみなくちゃ始まらないってことですな。

       ミリアの方はどうだった?」

ラルク:  「変わりはありませんでした。

       エレミヤさんもずいぶん無理をしているみたいで、

       今にも倒れそうでしたよ」

ヤシュト: 「いろいろな意味で急がにゃならんな」

GM:   約2時間経ったから零時頃、それほど大きくない島が

      星空を遮っているのが見えてくる。


~その17 海中の遺跡~


ヤシュト: さっそく下船の準備をしよう。

GM:   ネジはロープを準備しながら言うね。

      「漁師の島には子供の頃から来てるけど、遺跡なんて見たことないぜ」

ヤシュト: 「この島は沈んだんだ」

GM:   「そんな話聞いたことない」

ジェスタル:「大昔にね」

ケイ:   「遺跡への入り口があるとすれば、海の中なんじゃない?」

ヤシュト: 「だから潜るのさ。

       島の地形伝いに徹底的に調べるんだ」

ラルク:  「時間がかかりそうですね」

GM:   しらみつぶしに調べたら、かなりの時間がかかるだろうね。

ジェスタル:それじゃさ、GM。

      島の地形から遺跡を作れそうな場所って特定できない?

      急な斜面なんかには無理だと思うんだよ。

ヤシュト: おおっ。

ジェスタル:なんだよ。

ヤシュト: まともなことを言ってるな、と思って。(笑)

GM:   地形から遺跡の作れそうな場所を知りたいのなら、セージでチェック。

ケイ:   私たちもいいの?

GM:   いいよ。

ジェスタル:6。発案者なのになぁ。(笑)

ヤシュト: 11。

ラルク:  アクシデントです。

ケイ:   13。

GM:   ヤシュトとケイは察しがついた。

      島の南東の方が斜面がなだらかになっている。

      南トゥム地下の遺跡の通路からも合致する方向だね。

ヤシュト: オーケー。

      「南東の方角を調べよう」

ジェスタル:ウィルって水中でも使えるっけ?

ラルク:  王都の漁師さんが言ってたじゃないですか。

      コネコネに魚の油を混ぜるといいって。

ケイ:   なんの油だっけ?

GM:   ニシンの油。

ヤシュト: 「ネジ、ニシンの油はあるか?」

GM:   「ランタンにも使うからね。煙が出るけど」

ヤシュト: 「それじゃ全員で潜って探そう」

ケイ:   「私も~?」

ジェスタル:「泳げないんだったよな~」(笑)

ラルク:  「ケイさんは船の上からコネコネを落として下さいよ。

       私たちが探します」

ジェスタル:ダメだ、ラルク。もっと苛めないと。(笑)

ケイ:   なにさ。

ヤシュト: 装備品を外して潜るぞ。

      「ネジも手伝ってくれないか」

      って言うよ。

GM:   「分かった。任せとけ」

      波が穏やかとはいえ、真夜中の海は少なからず恐怖を覚える。

      水は温かくて凍える心配はなさそうだ。

ヤシュト: 「ケイ、定期的に明かりを落としてってくれ」

ケイ:   「うん」

ラルク:  「潜りましょう」

ヤシュト: ふっ、と息を止めて潜るよ。

GM:   漁師の島の岩肌を、ケイの落とす明かりが蛍のように照らしていく。

      ちょっと神秘的な風景だね。

ラルク:  絵的にきれいですね。

ヤシュト: 1分位は潜ってられるだろう。

ジェスタル:最初にできるだけ潜って、

      後は自然に浮き上がりながら調べればいいんじゃないか?

ラルク:  いいですね、それでいきましょう。

ケイ:   さっきっからジェスタルが名案を言ってる。

ヤシュト: 熱でもあるんじゃないか?

ジェスタル:ひどいじゃな~い。(笑)

GM:   それじゃ潜った人はサーチ・チェック。

      全員で足した分を宣言して。

ラルク:  私は7です。

ジェスタル:吾輩は12。

ヤシュト: ちっ、出目が悪いな。俺の9を足して28だ。

GM:   (ジェスタルのアイデアで+5、ネジの分10を足して43、

       目標値が45だったから2時間後か)

      ファイ石とレイム石の明かりで探すこと2時間。

      続けての潜水で息も絶え絶えになった頃、ジェスタルは5m下の岩陰に

      アーチ型をした人工物の入り口が見つかる。

ジェスタル:じゃあヤシュトを呼ぼう。

      「ごぼぼっ、ごぼぼごぼぼぼ!」(一同爆笑)

ヤシュト: なるほど。水の中だからか。

      「ごぼ、ごばあ!」(笑)

ラルク:  遊んでる場合じゃないですよ。

ヤシュト: そうだった。

      ジェスタルに手で上にあがろうって合図するよ。

ジェスタル:それじゃ水面に顔を出して。

      「見つけたぞ!」

GM:   ネジも水面に上がってきて、

      「俺も見つけた。岩陰に入り口らしきものがある」

ヤシュト: 「武器を持って行ってみよう」

ケイ:   「私は泳げないってば!」(笑)

ヤシュト: 「ロープを貸してくれ。

       船と遺跡の入り口を結んどけば、ケイも来れるだろ」

ラルク:  「ネジさんには船にいてもらった方がいいんじゃないですか?」

ヤシュト: 「だな。

       ネジ、船で待機しててくれないか」

GM:   「分かった」

      ネジはザバーっと船に上がるね。

ヤシュト: 「ジェスタル、ロープを持って入り口の所に行ってくれ」

ジェスタル:「けどよー、空気がないんじゃ行ってもしょうがないぞ」

ラルク:  「そっか、そっか。大事なことを忘れてましたね」

ジェスタル:「ロープは持っていくけど、取りあえず吾輩が偵察に行ってくるよ」

      丸腰は怖いから、気休めにダガーだけ持って行こう。

      「あ、それとコネコネを一つおくれ」

ケイ:   「はい」

ヤシュト: 「何かあったらロープを引っ張って合図してくれよ」

ジェスタル:「んじゃ、行ってきま~す」

ケイ:   「緊迫感ないんだから」

ヤシュト: 「あれがジェスタルの性格だからな」

ジェスタル:浮かび上がって、

      「なんか言った?」(笑)

ラルク:  「いいから、行ってくださいって」(笑)

ジェスタル:今度は真面目に行こう。

      入り口の所まで行っていいの?

GM:   場所は分かってるから無事に着けるよ。

      岩肌に開いた入り口は高さ、幅ともに4mはある大きなものだね。

      近づくの?

ジェスタル:息が続かないから、一気にアーチの中に入るよ。

GM:   それじゃアーチをくぐった途端に、サーチ・チェック。

ジェスタル:モンスターでもいたのかな? 8。

GM:   それじゃ気づかなかったね。

      ジェスタルは入り口に入った途端、ずしゃっと乾いた岩に落ちるよ。

      ちょっと痛い。2点分のダメージを受ける。

ジェスタル:へ?

GM:   四つん這いになって起き上がると、髪から滴る水が、

      岩にポタポタと染みを作る。

ジェスタル:はれ?

      もしかして空気がある?

GM:   信じられないことに、入り口には垂直に水の壁ができてる。

      空気はちょっと生臭いけど、確かにあるよ。

      明かりの照らす範囲は自然の洞窟を更にくり貫いたもののようだね。

ジェスタル:それじゃ、ロープをそこら辺の岩に結んでっと。

      水がバリアみたいになってるんでしょ?

      手を水の中に入れてみよう。

GM:   うん。手だけが水の中にあるよ。

ジェスタル:こりゃ面白い。(笑)

ヤシュト: 遊ぶな~。

ケイ:   「潜ってから長いんじゃない?」

ラルク:  「そうですね。

       ちょっとロープを引っ張ってみましょうか?」

GM:   ロープは岩に結んだんだよね?

      少し引っ張ると、ぐんと手応えがあって、船の方が動いちゃうよ。

ケイ:   「まさかジェスタル……サメにでも食べられたんじゃ」(笑)

ジェスタル:このままじゃ死んだことにされちゃうな。(笑)

      船に戻ろう。

      あ、コネコネを入り口の空気のある方に置いていくからね。

      水面から顔を出して言うよ。

      「大丈夫だ。空気があった」

ラルク:  「サメに食べられたのかと思いましたよ」

ヤシュト: 「中は空洞なのか?」

ジェスタル:「面白い空洞だ」(笑)

ケイ:   「それじゃ分からないでしょ」

ジェスタル:「水がさ、こう壁みたいになってて、すり抜けると空気があるんだよ」

ケイ:   「ほんとなの?」

ジェスタル:「吾輩の目を見ろ」(笑)

ヤシュト: 「中は調べてみたか?」

ジェスタル:「すまん。遊んでしまった」(笑)

ヤシュト: 「空気があるとなれば話は早い。

       みんな武器を持って行ってみようぜ」

ラルク:  「錆びませんかね?」

ジェスタル:「後でちゃんと手入れをすれば大丈夫だろ」

ケイ:   「真水で洗って油を塗れば平気よ」

GM:   みんな武装して行くんだね?

      すでにジェスタルがロープを渡してあるのと、

      入り口に明かりがあるのとで難なく到着することができるよ。

ヤシュト: 全員、中に着いたことにしていいのかな?

GM:   いいよ。

      水面が正面にあるみたいなもんだから、ちょっとした違和感を

      覚える程度で、洞窟の中に入った。

ラルク:  私も水の中に手を入れてみて、

      「確かに不思議な感じですね」

      と。

GM:   現代の言葉を借りれば、水族館にいるようなものだね。

      淡い明かりに照らされて、海中を魚の群れが通り過ぎていく。

ジェスタル:風情があるなぁ。

ヤシュト: 感心してる場合じゃないぞ。

ケイ:   ちょっと魔力感知していい?

GM:   どうぞ。

ケイ:   水の圧力を垂直に維持しちゃうなんて、すごい魔法だもん。

      11。

GM:   アーチ型の入り口の側面には、海草や珊瑚で見にくくなってるけど、

      規則正しくルーンが刻まれていて、そこから強力な魔力を感じる。

      洞窟内の空気と海水とを反発させるルーンのようだ。

ケイ:   GM、こんな魔法って聞いたことある?

GM:   ないね。少なくともメイラレンの魔術師でこんな魔法を使える者は

      いないはずだ。

ケイ:   その事をみんなに話します。

      「信じられないほど高度な魔法よ」

ヤシュト: 「どうやらケルトの遺跡に間違いないみたいだな。

       時の番人とやらに会えればいいが」

      ここはまだ岩がむき出しなんだよね?

GM:   そうだね。高さ、幅共に4mはある人工的にくり貫かれた洞窟だ。

      ジェスタルの置いてきた明かりの照らす3m先までは岩肌が覗いてる。

ジェスタル:ウィルを召喚しよう。松明なんか持ってきてないし。

ラルク:  持ってきてても役に立ちませんしね。

ケイ:   ちょっと待って。

      私がライム・ライトを使った方がMPが少ないよ。

      ウィルは6点だけど、ライム・ライトは3点だから。

ラルク:  レベルが上がってるから精神力が少なくて済むんですね。

ジェスタル:それじゃお願い。

ケイ:   ライム・ライトを使います。杖にかけよう。

      判定は成功ね。

GM:   ライム・ライトのおかげで5m先の視野まで確保できた。

ヤシュト: ここからは気を抜かずにいくぞ。

      何か変わったことはないか、サーチで調べる。

      9。

GM:   視覚的に分かることは、奥に向かって左側にかなり大きな水溜まりが

      あること、その水溜まりに向かって、半透明のネバネバが帯のように

      岩にこびりついていること、くらいかな。

ヤシュト: ねばねば?

      じゃあ、しゃがんでその粘液を指先につけてみよう。

ケイ:   指が溶けたりして。(笑)

ヤシュト: まさかな。

GM:   君が粘液を指先に取ってみると、シュウシュウと白い煙が

      立ち昇り……。(一同爆笑)

ヤシュト: ほんとにか!

GM:   いや、ごめん。うそ。(笑)

ヤシュト: 頼むぜ。

GM:   粘液は少し乾きかかっている。明らかに生き物の分泌液だ。

ジェスタル:吾輩は漁師だから察しがついた。

      きっとタコかイカだ。

ラルク:  食料になりますね。

ヤシュト: そういう問題じゃないだろ。

      こんな派手に跡がついてるんだぞ。

ケイ:   ジャイアントが頭につくオクトパスかクラーケンかな?

GM:   しゃがみこんで粘液を調べていたヤシュト君、回避チェック。

ヤシュト: うおっ、いきなりか!


~その18 マグロも役に立つ~


GM:   しゃがんでたから回避に-1のペナルティ。

ケイ:   ほんとにいるの~。

ジェスタル:お前が余計なことを言うからだ。

ヤシュト: 回避は-1しても13。

      後ろに飛び退く!

GM:   水溜まりからいきなり5mはある触手が伸びてきて、

      今まで君がいた場所をビターンと叩くよ。

ラルク:  本当に出ましたね。

      あぁ~。クロスボウを持ってくればよかったなー。

GM:   水溜まりからは大ダコが、メロン程の大きさの二つの目で君たちを

      凝視している。

      いまヤシュトを襲ったばかりの触手が4本、水の中から突き出て

      うねうねと動いてるよ。

ヤシュト: 「こっちを攻撃しようとしてるのがありありだな」

ジェスタル:「後ろに戻ったら海だしな」

ラルク:  「ここはやっつけちゃいましょう」

ジェスタル:「おいおい、司祭さま」

ヤシュト: 「無益な殺生は避けるべきだけどな」

ケイ:   大ダコの横をすり抜けられない?

GM:   水溜まりは通路が広がった場所にあるけど、触手は楽々届きそうだ。

      あらかじめ難易度を告げておくと、回避チェックを

      2回とも10以上出せばすり抜けられる程度だよ。

一同: (無言でケイを見ています)

ジェスタル:は~っ。(わざとらしくため息をついています)

ケイ:   悪かったわよ。

      私が戦闘スキルを持ってないのがいけないっていうんでしょ。

ヤシュト: ケイはここで待ってるか?(笑)

ラルク:  でも古代語が読める人がいないんじゃ、この先辛いですよ。

ヤシュト: 冗談だって。

      大ダコを倒すまでいかなくても、手傷を負わせて逃げやすくすれば

      いいんだろ。

ジェスタル:しかたない、無益な戦いをするか。

ケイ:   もぉ。恩着せがましい。(笑)

GM:   (フィギュアを並べながら)戦闘に突入でいいんだね?

      大ダコの敏捷度は14だ。まずは移動ターン。

ジェスタル:今回は魔法で援護に回る。移動なし。

ケイ:   私もこのまま。

ラルク:  私はレイピアを抜きながら近づきます。

GM:   大ダコは水の中から出る気配はない。

ヤシュト: あまり近寄りたくないが、近寄らんと武器が届かん。

      前進。

GM:   ヤシュトから行動ターン。

ヤシュト: ここからだと本体には届かないか。近くの腕、足かな? に攻撃。

      ブロード・ソードで斬りつける。

      「はっ」

      クリット! 最初から出目がいい。

ジェスタル:おお~っ。

GM:   最大ダメージだね。いくつだっけ?

ヤシュト: 15発。

GM:   それは触手が切れかかったね。

      大ダコは2本の触手で、ヤシュトとラルクをそれぞれ攻撃。

      回避して。

ラルク:  12です。

ヤシュト: バックラーで逸らす。13。

GM:   ヤシュトは木の幹ほどもある触手をバックラーで弾いた。

      かなりの衝撃があるよ。

      ラルクは肩口をかすられて8のダメージ。

ラルク:  大ダコ強い!(笑) 3発来ました。

      こっちの反撃行きます。

      ヤシュトが攻撃したのと同じ腕に。判定値は10。

GM:   かろうじてレイピアが触手を捉えた。

      ダメージはいい。今ので触手の1本が水溜まりにボチャンと落ちた。

ラルク:  「おっしゃあ!」

ケイ:   抑えて、抑えて。(笑)

ジェスタル:また一話目みたいに暴れ出さないでくれよ。

ラルク:  大丈夫ですって。

      タコごときにやられてたまるかってんです。

ヤシュト: その口調が心配なんだ、その口調が!(笑)

      司祭の言葉遣いじゃなくなってるんだって。

ラルク:  ははは。(ごまかし笑い)

ケイ:   ヤシュトとラルクで大丈夫よね?

      ここは後々のことを考えて魔力温存。

ジェスタル:なるほど。二人に任せますか。

      吾輩も傍観。

ヤシュト: お前らな~。(笑)

GM:   ケイとジェスタルが何もしないのなら第2ターンに突入。

      特に移動はないかな?

ヤシュト: もう攻撃範囲だからないよ。

GM:   それじゃ攻撃ターンに移行しよう。

ヤシュト: 俺だな。

      そうだ、GM。試してみたいことがあったんだよ。

GM:   なに?

ヤシュト: 居合斬りってあるでしょ。

      あれをヤシュトの得意技にしてみたいんだ。

GM:   キャラクターの味つけとしては、いいところに目をつけたね。

      カーズにそういう剣術があるってのを、酒場ででも聞いたことに

      しよう。だけどルール的には特別の判定はしないよ。

ヤシュト: もちろん、それでいい。

      一度剣を鞘に納めてから、踏み込んでスパーンといく。

      9。低いな~。

GM:   それは当たらない。

ジェスタル:いきなり変わったことするからだよ。

GM:   大ダコの攻撃。ヤシュトとラルクは避けて。

ヤシュト: む、また9。

ラルク:  今度は12です。

GM:   2人とも10のダメージ。ズシャッと重い一撃だ。

      アーマー分減少しておいてね。

ラルク:  「まだまだかすり傷!」

      反撃は10です。

GM:   残念ながら外れたね。

ジェスタル:吾輩たちは、のほほんとしてていいのだろうか?

ヤシュト: そう思うんなら援護してくれよ!(笑)

ケイ:   ねぇ、この前マグロを見たから、

      イリュージョン(幻影を作り出す魔法です)で出せるでしょ?

ジェスタル:大ダコのエサに使おうってか。

ラルク:  それいいですよ、ケイさん。

GM:   リアルさは判定値次第だね。

ケイ:   「我が意志に添いて幻は現のヴェールをまとう。

       出でよ、マグロ」(一同爆笑)

ヤシュト: なんだよ、その呪文は。

ラルク:  途中まではカッコよかったのに~。

ケイ:   (自分でも笑いながら)だって、マグロなんだもん。(笑)

GM:   笑ってないでダイスを振らなきゃ。

ケイ:   ごめんごめん。笑っちゃって忘れてた。

      ん~と、12。

GM:   目の前に突如出現したマグロに大ダコは気を取られ出すね。

      君たちを忘れたわけじゃないけど、ごちそうの方に触手が向き出すよ。

ケイ:   触手が届きそうで届かない所でマグロをひらひらさせます。

ヤシュト: 「いいぞ、ケイ。

       今のうちだ。走り抜けるぞ!」

GM:   触手を1本切り落として、なおかつマグロに注意が向いてるから

      回避判定で7以上を1回出せば、攻撃をかわして

      通り抜けられることにしよう。

ケイ:   それなら私にもなんとかなるかも。

ラルク:  「ケイさん、先に行って下さい」

ケイ:   「ありがとね。ラルク」

      えいっ、7~。

ラルク:  ぎりぎりでしたね。

ジェスタル:吾輩も成功。

ヤシュト: 余裕。

ラルク:  最後に私っと。アクシデント以外は成功しますからね。

      (ダイスの一つが1でした)うわっ、心臓に悪い。(笑)

      成功です。

GM:   君たちは全員大ダコの触手が届かない場所まで遠ざかったよ。

ヤシュト: 考えてみれば、最初からイリュージョン使えばよかったんじゃないか?

GM:   それ以上にスリープ・ユーを使えば楽勝だったでしょ?(笑)

ジェスタル:また忘れてたな。

ケイ:   レベル2の魔法が使いたくって、そこばっかし見てたから。(笑)

ヤシュト: 「まだ先になにがいるか分からん。

       気を引き締めていこうぜ」

ジェスタル:「おう」

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