その10~12

- works.02 ある約束 -


その10~12を掲載しています。




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《前回までのあらすじ》


 無事ハート司教に依頼状を届けたパーティは、ギルドではランダの辛辣さに、

ドラゴン教会では水竜の驚異に翻弄されました。

 気を取り直し、王都でショッピングを決め込むことにしましたが……。


~その10 王都でショッピング~


ヤシュト: GM、ちょっと海に入って貝を採りたいんだがいいか?

GM:   いいよ。

      海の村南トゥムで育った君たちは泳ぎもお手のものだろ。

ジェスタル:ここに一人カナヅチがいますが?

ケイ:   貴族は水泳なんかしないんだもん。

ジェスタル:吾輩も漁師の甥だ。一緒に貝を採ろう。

ラルク:  あ、ジェスタルは火を起こしてくださいよ。

ジェスタル:ほくち箱忘れたの?

ラルク:  持ってますけど、精霊使いは便利な魔法が使えるじゃないですか。

ジェスタル:ティンダー(火をつける精霊魔法です)のこと?

      そんなことで精神力を使わせる!?

ラルク:  いっ、いえ。無理にとは言いませんけど。

ジェスタル:いいでしょ、つけましょ。(一同爆笑)

ヤシュト: 使いたいんじゃないか!(笑)

GM:   他の3人が流木を集めて火を起こしてる間に、

      ヤシュトは器用度のボーナス値+2D6で判定してもらえるかな。

ヤシュト: 出目がいいほど貝が採れるってわけか。

      ちょっと気合い入れようかなっと。

      どりゃ、11だ。

GM:   申し分ないね。

      サザエや大きなハマグリ、ウニなんかも見つけていいや。

ヤシュト: 「どうだ、大漁、大漁」

ジェスタル:「でかした。さっそく焼こう」

      どんどん石の上に貝を並べよう。

ケイ:   ジュ~。

      「う~ん、いいニオイ」

ジェスタル:「いいか、口を開くまで待つのだ。

       焦っちゃいけませんよ」

ラルク:  「ジェスタルが一番焦ってますよ」(笑)

ヤシュト: 「うぷっ、煙がこっちに流れてきた」

GM:   (描写までしてくれるとは、なんて楽なプレイヤーたちなんだ)

      すると網を肩に担いだ、よく日に焼けたおじさんが近づいてくるよ。

      「いい匂いをさせてるな」

ラルク:  「よかったら一緒にどうですか?」

GM:   「その言葉を待ってたのよ。

       タダでとは言わねぇ。こいつを提供するよ」

       おじさんはウォッカの瓶を差し出す。

ジェスタル:「話の分かるおじさんですな。

       ささ、このハマグリなんか食べごろですよ」(笑)

GM:   「悪ぃねぇ。こいつはうめぇや。

       お前さんら、ここらじゃ見ない顔だが、旅人か?」

ヤシュト: 「南トゥムからね」

ケイ:   「駆け出しの冒険者なんです」

GM:   「そうかい、そうかい。

       冒険者ならラジア・ヘスの武器屋にゃ行ったかい?」

ヤシュト: 「有名な武器屋なんですか?」

GM:   「有名も何も王宮騎士団御用達の工房さね。

       銀製の武器も手がけてる確かな店さ」

ラルク:  「詳しいですね」

GM:   「いや、俺の知り合いの息子が弟子入りしてるからよ。

       ほらウォッカもやってくれ」

      おじさんは瓶の口を手のひらで拭いてジェスタルに渡すよ。

ジェスタル:じゃそれを受け取って、

      「いただきます。

       他にいい店はありませんか?」

GM:   「そうだな、バールの道具屋も面白いと思うぜ。

       王都だけあって品物の流通が盛んだからな。

       おお、そうだ。こいつを見てみなよ」

      おじさんは腰から2つの布袋を取り出すね。

      それぞれ赤褐色と黄緑の粉末だ。

      それを水で溶いてこね混ぜている。

ラルク:  「なんです、それ?」

GM:   おじさんはこねた物を手で隠すようにして

      「覗いてみな」

ヤシュト: 覗いてみるけど?

GM:   手の中で団子状になったさっきの粉末は、蛍光塗料を塗ったような

      光を発している。

ジェスタル:「へぇ、面白いですね」

GM:   「イカ漁の時にまくと効果てきめんでな。

       ニシンの油で混ぜるとばらけにくくなるんだ。

       バールの話じゃ冒険者もよく買ってくってよ」

ヤシュト: 「これは便利だな。

       松明ほどじゃないにしても、水さえあれば明かりが使える」

ジェスタル:吾輩のティンダーのライバルだな。(笑)

GM:   「そんじゃ俺は行くとすっかな。

       ごっそさん、残りのウォッカはやるよ」

ジェスタル:「おじさん、ありがと~」

GM:   「そうだ。バールの奴に俺からの紹介だって言ってくれよ。

       後でおごってもらえるからよ」(笑)

      そう言っておじさんは去っていく。

ケイ:   「おもしろい人ね」

ヤシュト: 「ほんとだよ。自分の名前を言い忘れてった。(一同爆笑)

       どうやっておごってもらうんだ」

ラルク:  「でもいい話が聞けましたよ。

       武器屋と道具屋に行ってみましょうか」

ヤシュト: 「だな。腕のいい刀匠には会っておいて損はない。

       そろそろいい武器も揃えたいし」

GM:   武器屋と道具屋、どっち先に行きたい?

ヤシュト: 武器屋。いいかな?

ケイ:   うん。いいよ。

GM:   みんな海の幸で昼食をすませて、王都の中心部に戻るわけだね。

      武器屋は大きな工房で、往来まで鋼を鍛える音を響かせているよ。

      中に入ると壁一面に大小様々の剣や鎧、盾が並んでいる。

      青年がカウンターで、客の相手をしてるね。

ヤシュト: GM、俺は日本刀みたいな剣を捜したいんだが。

GM:   日本刀ねぇ。

      タリア大陸の東にあるカーズという国が日本刀に酷似した剣を

      使うけど、メイラレンじゃ一番近いのがレイピアってところかな。

      少なくとも店内にはないよ。

ヤシュト: レイピアか。

      ちょっとイメージが違うな。

ケイ:   ヤシュトはほんとに剣士を目指すのね。

ヤシュト: ああ、固い鎧を着込んで、破壊力抜群の剣を振り回すのも面白いが、

      それは前のキャンペーンでやったしな。

      GMにも言ってあるけど今回は斬る剣士を目指したいんだ。

ジェスタル:吾輩は面白いものがないか、ぐるっと店の中を回ってみるけど?

GM:   ひときわ目を惹いたのは、柄から切っ先まで1.6mはある大剣だね。

      長さは珍しくないけど幅が15cm、厚みは2cm近くもある。

ジェスタル:ふぇ~。

      こんなの振れるのかよ。

GM:   店の青年が近づいてくる。

      「お気に召しましたか?」

ジェスタル:「いやいや、吾輩にはとても無理だよ。

       こんなの振れやしない」

GM:   「この剣は謎の多い刀匠ガバナの作でデストロイヤーです。

       内陸に三振りだけ確認されている内の一振りです」

ヤシュト: 俺もその話を聞きつけてジェスタルのところに来よう。

      「デストロイヤー?」

GM:   「よかったらお試しになってください」

ヤシュト: せっかくだ。持たせてもらおう。重そうだな。

GM:   ところが見た目ほどの重さは感じない。

      軽く振ると、剣の重心が柄に分散されて、

      絶妙のバランスを保っているのが分かるね。

ヤシュト: 「これはすごい。

       ガバナって何者なんです?」

GM:   「さぁ……。デストロイヤーはそう古い物ではありませんから、

       今もガバナは生きているのかもしれません。

       ですがどのような人物で、どこにいるのか知っている者は

       おりません」

ヤシュト: GM、ちなみに数値を聞いていい?

GM:   必要筋力は16、効力は23。

ラルク:  すごいですね。

      グレート・ソードを軽く凌ぎますよ。

ヤシュト: う~ん。ちょっと気が傾くけど、ここはやめておこう。

      ヤシュトには似合わん。

ラルク:  じゃ、いいですか。お店の人に

      「銀製品を見せてもらえますか?」

      と尋ねます。

GM:   「どのようなものでしょうか?」

ラルク:  「そうですね。レイピアなんかあります?」

ジェスタル:また武器買うのかよ。(笑)

ラルク:  司祭ですから銀の装備で揃えようかな、なんて。

ケイ:   たしかにカッコよさそうだもんね。

      でも高いんじゃない?

ラルク:  え?

GM:   銀は鋼の5倍だから、レイピアだと3000Goldはするね。

ラルク:  ぜんっぜん足りませんよ~。

      「レイピアやめます。ダガー下さい」(一同爆笑)

ジェスタル:いきなり小さくなっちゃったね。

GM:   銀のダガーなら150Gold。

ラルク:  ちょっとずつ揃えます。

ヤシュト: 一応俺も聞いてみよう。

      「カーズで使うような剣はありませんかね」

GM:   「カーズ刀ですか。残念ですがうちでは扱っておりません。

       数日前にもそのようなことを聞かれたお客さんがいましたが」

ヤシュト: 「気になるな。どんなことを?」

GM:   「ガダメスの商人さんでしたが、何でも柄にコニャックダイヤが

       埋められているカーズの剣を捜しているんだそうです」

ケイ:   コニャックダイヤ。

      こっちも高そう。

ヤシュト: 「で、その商人は?」

GM:   「北トゥムに向かうとおっしゃってました」

ヤシュト: 「名前を教えてくれないかな?

       俺もその剣には興味がある」

ジェスタル:目が変わってきたぞ、ヤシュト。(笑)

GM:   「たしかゼイ・ロックスさんという名でしたよ」

ヤシュト: 「ありがとう、助かる」

      ゼイ・ロックス、と。

      よし、ヤシュトの目標が一つできたぞ。

      カーズ刀を手に入れる。

GM:   うん。キャラクターの味付けとしてはいい目標だね。

      他の人は買う物ないのかな?

ケイ:   武器はいらないもん。

ジェスタル:吾輩も。

      おかげで金は残ってるけど、道具屋で面白い物があったら買うつもり。

ラルク:  それじゃ道具屋に行きましょう。

GM:   道具屋は武器屋のすぐそばにあるよ。

ラルク:  から~ん、とドアを開けて入ります。

GM:   「いらっしゃい」

      陽気そうなおじさんが、品物でごった返した店内に座ってるよ。

ケイ:   早速あれ、あの、なんだっけ?(笑)

ジェスタル:即席明かり。

ラルク:  コネコネですね。

ヤシュト: 「なんとか石となんとか石もらえるかな?」(笑)

GM:   「なんとか石ですか?」(笑)

ケイ:   「そう。そのなんとか」(一同爆笑)

ヤシュト: だぁ~! 会話が進まん。

      GM、ごめん。なんて石だっけ?

GM:   ファイ石とレイム石。

ヤシュト: 「いくらだ?」

GM:   「2時間分が10Goldになります」

ラルク:  トーチの倍の値段ですか。

ケイ:   でも手軽さを考えたら安いんじゃない?

ジェスタル:そうだよ。吾輩も10時間分買っておこうかな。

GM:   欲しい人は購入しといていいよ。

ヤシュト: 俺も10時間分もらう。いつもは松明かカンテラを使って、

      いざって時にこのコネコネを使おう。

ジェスタル:コネコネで定着しそうだな。(笑)

GM:   結局みんな買ったんだね。

ヤシュト: 「それと親父さん、珊瑚の櫛と、ブーツがほしいんだが」

GM:   「コーラルピンクの櫛なんかよく売れてます。こちらは100Gold、

       羊革のブーツも上等のもので80Goldです」

ヤシュト: これでルグソニ(ルグニカとソニカ)への土産はオッケーっと。

      思ったより安かったな。

GM:   皮革製品は現代日本よりもかなり安いよ。

ラルク:  皮革だけに比較にならない、ってわけですね。

一同: …………。(しばし沈黙の後、爆笑)

ジェスタル:またダジャレかよ!

ケイ:   一瞬の間がたまらないね。

ヤシュト: ラルクはほっといて、(笑)

      「あとペンダントなんてあるかい?」

GM:   「もちろんございます。どのようなもので?」

ヤシュト: 「あ~、俺たちと同じ年頃の女の子に似合いそうなやつ」

ケイ:   「悪いわね~」

ヤシュト: 「誰もお前にやるとは言っとらん」(笑)

ラルク:  (にやにやしながら)「分かった。ミリアですね~」

ケイ:   「ひゅ~ひゅ~」

ヤシュト: 「ばか者。ミリアの健気さに少しでも力になろうとしてだな、

       俺は不純な目的はこれっぽっちもないぞ」

ジェスタル:「照れるな、照れるな」

GM:   店の主人は君たちのやりとりに微笑みながら、

      「いい人へのプレゼントでしたら、このエメラルドはいかがでしょう」

ヤシュト: 「いい人って、あのな!」(笑)

      親父さんにからんでも仕方ないな。

      「まあいいや、それを包んでくれ」

GM:   700Goldになるけど大丈夫?

ヤシュト: う。(笑) 払ってやろうじゃないか!

      これで俺は宿代しか残ってない。

ジェスタル:「何か面白いものないですかね。魔法物とか」

GM:   「魔法の品をお求めになる冒険の方は多いので……。

       あいにく今はこれしか」

      と言いながら主人は20cm位の、ガラス棒を出すよ。

      茶褐色で全体的に流線形のキレイなものだ。

ジェスタル:「これは?」

GM:   「マトックワンドと呼ばれるもので、自然の岩に魔法で穴を開けます。

       人が通れるだけの洞窟を丸一日間維持しますが、

       効果は一度きりです」

ジェスタル:「お値段の方は?」

GM:   「800Goldです」

ジェスタル:「800かぁ。しかも一回きり。

       ……この前の稼ぎを大きく上回ってるな」

ケイ:   「でも役に立ちそうじゃない。

       ね、半分出すから買っておこうよ」

ジェスタル:「そう? じゃ、ください」

GM:   「ありがとうございます」

ケイ:   400Goldずつね。

ラルク:  「私は絹のリボンと銀の櫛を」

GM:   「エメラルド・シルクのリボンがおすすめですが?」

ラルク:  「いくらです?」

GM:   「60Goldです。銀の櫛の方は200Goldになります」

ラルク:  ん~ん。

      ギリギリだけど買っちゃおう!

      「プレゼントなんで包んでください」

ヤシュト: ラルクこそ誰にやるのかな~。

GM:   他に買いたいものはない?

ジェスタル:店を出る前に、漁師のおじさんから紹介されたって

      言っといてあげよう。

GM:   「それはコディンのやつですね。

       彼の紹介ならこれを皆さんにサービスしましょう。

       ずいぶん買い物もなさってくださいましたし」

      そう言って、一枚ずつ絹のハンカチをくれるよ。

ケイ:   「ありがとう」

ヤシュト: 「いいのかい?」

GM:   「どうぞ、どうぞ。

       また王都にお越しの際は、ぜひとも御ひいきに」

ジェスタル:商売上手だね。(笑)

ラルク:  それじゃお店を出たら、ケイさんに絹のリボンをあげます。

ケイ:   え? 私に?

ヤシュト: やるねぇ。

ジェスタル:香水には負けてるけどな。(笑)

ラルク:  貴族には勝てませんよ~。

ケイ:   「ラルク、ありがとう」

      私は元々リボンしてるから、もらったリボンに取り替えよう。

      でも銀の櫛は誰に?(一同爆笑)

ラルク:  これは、その、お母さんに。(笑)

ヤシュト: 嘘つけ。

ジェスタル:帰れば分かることだ。

      まっ、吾輩には察しがついてるけどな。

      “カ”がついて“チュ”がついて“ア”がつく人だよな!(笑)

GM:   全部言ってるって。

      ところで、そろそろ日が沈みかけてるけど?

ヤシュト: 結構遊んだって気になったな。

ジェスタル:夜ならカジノとかないの?

GM:   国営のものはないね。

      非合法的な賭場はいくらでもありそうだけど。

ヤシュト: 俺はスッカラカンだから、おとなしくする。(笑)

ジェスタル:そうか。じゃ吾輩も我慢しよう。

      みんなで行けないんじゃ、イマイチ楽しくないからな。

GM:   全員おとなしく宿屋に引き上げると。


~その11 南トゥムへ~


GM:   それでは明日からのスケジュールだけど、

      ヤシュトとジェスタルはギルドでサーチの、ケイは魔術の訓練だ。

      これは朝8時から夕方5時までを6日間続けてもらう。

      かなりハードな訓練だと思ってね。

ラルク:  サーチは取らないんですけど、訓練を一緒に受けていいですか?

GM:   うん、いいよ。

      訓練を受けとくなら、今度サーチを取るときは訓練なしにしてあげる。

      で、訓練が終わってから何かしておきたいことのある人?

ヤシュト: ハードな訓練なんだろ?

      たぶん宿屋でバタンキューだな。

ラルク:  ちなみにどんな訓練なんです?

GM:   目隠しをして投げられた石を音だけを頼りに拾うとか、

      回ってる車輪の向こうの木っ端を取るとか、基本的な鍵の解除、

      トラップの講習なんかだね。

      6日間で身につくのは基礎の基礎だけだ。

ヤシュト: レベル1だからな。

ケイ:   私はランダと?

GM:   もちろん。

      「どうしてあんたのライム・ライト(明かりをつける魔法です)は、

       薄暗いの!」(笑)

      なんて苛められながら。

ケイ:   う~。ストレス溜まりそう。

GM:   訓練は無事に過ぎたことにして、最終日にギルド証を全員受け取れる。

ジェスタル:これでギルト登録員になったわけですな。

ヤシュト: 結構うれしいな。

GM:   ちなみにタリア大陸にはギルド・ランキングというものがあって、

      ハイ、ミドル、ローが各9階級、計27階級に分けられている。

      君たちは駆け出しなのでローの9だ。

ラルク:  ランキングが上がると、どうなるんですか?

GM:   いい仕事が受けやすくなる。

      ランキングはギルドの仕事を達成すると上がり、失敗すると下がる。

      つまり冒険者の力量を表わしてるんだ。

ヤシュト: これはやる気になるシステムだな。

      よし、ハイの1級目指して頑張ろうぜ!

GM:   一応ギルドでの訓練は終了したんで、この後どうするの?

ヤシュト: あまり王都でウロウロしてるのもなんだし、

      ミリアの様子も気になるんだよ。

ケイ:   すぐに帰ろっか?

ジェスタル:吾輩はいいよ。

      メイラレンで仕事するのもいいけど、一度は帰っておきたいよ。

ラルク:  お金もないですしね。(笑)

GM:   メイラレンを出る前に宿代を一人210Gold払っておいてね。

ヤシュト: うぉう。

      ほんとにスカンピンになっちまったよ!(笑)

GM:   帰り道は端折って、

ヤシュト: (ボソっと)レルドリンさんに会いたかったな。(笑)

ジェスタル:行きにも寄るんだって、言ってたもんな。

GM:   悪いけど木立の間から南トゥムが見えてきた所で、今日はおしまいだ。

      次回に回すときりが悪いからね。

      ギルドでの訓練と帰り道を端折ったのは時間がないからなんだ。

PL C(ケイ):えっ、もうそんな時間?

PL D(ラルク):早いですね~。

PL A(ヤシュト):テーブルトーク時間と現実時間は流れが違う。

      さっき時計を見たときは5時くらいだったのに、もう8時過ぎか。

PL B(ジェスタル):メイラレンに行って帰って終わっちゃったよ。

PL A:   続きは明日な!

PL B:   おいおい。

PL C:   私たちは仕事があるもん。

GM:   まったく就職前の奴はいいよな。

PL C:   ねー。

PL D:   それじゃ来週ですね?

GM:   オ、オーケー。

PL A:   GM、困っております。

PL C:   どうして? だってシナリオはちゃんとあるんでしょ。

GM:   テーブルトークのシナリオは流動的だからね。

      みんなの行動によって、展開がどんどん変わっていっちゃう。

      この後のシナリオはあるけど、手直ししないと使えないよ。

PL B:   一週間でやれ! がんばれGMちゃん!(笑)

PL A:   昔はいきなり来て、シナリオを作ってもらったっけな。

PL C:   Thirteen's Dreem (過去に行ったキャンペーンです)の時ね。

      たしか9話目だっけ。

GM:   あれには参ったよ。

      横でできるまで待ってんだもんな。

PL C:   感謝しております、GMさま。(笑)

PL D:   私も参加したかったなぁ~。

      この前、Thirteen's Dreem の起こしを読ませてもらいましたけど、

      すっごく面白かったですよ。

      (Thirteen's Dreem の起こしはテーブルトークの簡単なストーリーと

       登場キャラクターのイラスト、説明を書いたものです。

       全11話がまとめてありました。

       残念ながら録音していないのでリプレイでは紹介できません)

PL A:   その頃Dとは知り合ってなかったからな。

      これからキャラクターとして思い出を作ってくれよ。

GM:   いいこと言うねぇ。

      まだみんな話し足りないみたいだけど、夕飯食べに行く?

PL D:   いいですね。食べながら話しましょう。

PL B:   大丈夫?

PL C:   うん、まだ平気。

      うちのお父さん、ここに来る時は全然心配してないから。(笑)

PL A:   Cの家の親父さんて、ロンさんに似てないか?

PL B:   そうそう。吾輩も思った。

      喋り方がそっくりだよ。

GM:   ばれたか。モデルに使いました。(笑)

PL C:   モデル料払ってよ。(笑)

GM:   よし、みんな片づけて、出かけるとしよう。

      Bさん、悪いが車出してくれ。

PL B:   まっかせなさい!

PL D:   サイゼリアで決まりですね。

PL C:   またハンバーグ盛り合わせ?(笑)

GM:   あれ、まだテープ回ってる。

PL A:   もったいない。切れ、切れ。


ガチャン。

(あまりにノリがよく、GMの思惑通りに進行しないのは毎度のこと。

 だけどそれが、とても嬉しく感じられます。

 プレイヤーがキャラクターになりきって楽しんでくれている姿が

 GMにとって最高の報酬ですからね。

 この後メンバーは遅い夕飯をとりに出かけました。

 続きは翌週の日曜日にプレイしています)


~その12 家族の出迎え~


GM:   先週の続きを始めようか。

      特に前回のおさらいは、しなくて大丈夫だよね?

ケイ:   うん。

      愛するミリアのためになけなしのお金をはたいたヤシュト。

      銀の櫛でカチュアにアプローチしたいラルク。

      楽しみ、楽しみ。(笑)

ジェスタル:いつからラブラブ・テーブルトークになったんだよ?(笑)

ヤシュト: ラブラブ! いいなぁ。

ラルク:  私はそんなつもりないですよ~。

ヤシュト: 俺だってないよ。

      でも、真面目な話、このGMだから本編はこれからだと思うんだ。

      気を引き締めていこうぜ。

ケイ:   私もそう思う。

      思い返すと伏線が張り巡らされてた気がするもんね。

ヤシュト: だろ~。

GM:   それが何かはこれから体験しておくれ。

      君たちは無事にメイラレンでの用事を済ませて、

      2週間ぶりに懐かしい南トゥムに戻ってきた。

      もう少しで到着という頃、夏にはお馴染みの夕立がポツポツと

      君たちの頬を打ち始める。

ジェスタル:馬を急がせながら

      「まいったな! もうちょっとで着くってのに」

ヤシュト: 「シャワーだと思えばいいさ」

ケイ:   「どうする? 先に馬を返しちゃおうか?」

ヤシュト: 「だな。その方がいいだろう」

      GM、まずはマーディーンさんの牧場に行く。

GM:   牧場に行くと母屋の方から、すぐにイレーレが走り出てくるよ。

      「みんな、おかえりなさい」

ケイ:   「ただいま。ごめん、雨の中走ってきたから、ずいぶん汚しちゃった」

GM:   「気にしないで。家で少し雨宿りしてったら?」

ヤシュト: 「悪いな。

       マーディーンさんにも挨拶しておきたいし、甘えるとしよう」

GM:   イレーレは4頭の手綱を引いて、厩の方へ行くね。

      母屋の軒下では、相変わらずマーディーンが安楽椅子に

      揺られながら雨を眺めてる。

      「お前らか、夕立を連れてきたのは」

ジェスタル:「日頃の行いがいいですからね」(笑)

ラルク:  「いい馬をお借りできて助かりました」

GM:   「きっちり2週間で帰ってきたな。

       約束どおり一人100Goldでいいぜ」

ヤシュト: そうか、まだ払ってなかったんだよな。

ジェスタル:「やだなー、おじさん!

       草むしりしたからタダって言ったじゃないですか」(一同爆笑)

ヤシュト: (笑いが止りません)こいつ、こいつ~。

GM:   「そうだっけか?」

ケイ:   「うん!」(笑)

ラルク:  ……ケイさんまで。

ジェスタル:「ほら、おじさんのためにウォッカを土産に買ってきました」

ラルク:  いつのまに買ったんです?

ジェスタル:いや、これは海で漁師さんにもらったやつ。(笑)

ヤシュト: (まだ笑いながら)さすがジェスタルだ~。

GM:   「こりゃ悪いな。

       そうかタダにするって言ったか。

       ん? どうして半分しか入ってないんだ?」(笑)

ジェスタル:「ま、ま、気にせずグ~っとやってください」

      とにかくここはごまかすのだ!

ラルク:  「ダメですよ、ジェスタル。ちゃんと代金を」

ジェスタル:「あー? 雨の音が大きくて聞こえないぞ!」(一同爆笑)

ラルク:  しょうがないなあ。

ヤシュト: ま、金ができたらちゃんと返すことにして。

      「ところでマーディーンさん、ミリアの様子はどうなんですか?」

GM:   「ミリアがどうかしたのか?」

ラルク:  「メイラレンのハート司教が来たはずなんですけど」

GM:   「おおっ、騎士に護衛されてきたのは、天下のハート様だったか。

       止鏡湾海戦に出向く俺たちに祝福を与えてくれたのが

       ハート様だった。あの頃は俺も、こんなに腹は出てなくてな」(笑)

ケイ:   もう酔ってる?

GM:   そうらしいね。

      そこへ雨で濡れた髪を額に張りつかせたイレーレが戻ってくる。

      「ずいぶん降りが強くなったみたい」

ヤシュト: 「いい所に来た。

       イレーレはミリアの様子を知ってるか?」

GM:   「うん。

       私も昨日お見舞いに行ったけど、ハート様の治療のおかげで

       ずいぶん気持ちは楽になったみたい」

ラルク:  「それじゃ歩けるようになったんですか?」

GM:   「それがね、ハート様でも歩けない原因は分からないみたいなの。

       体のどこにも異常はないって」

ヤシュト: 「そうか」(露骨にがっかりしています)

GM:   「でもね、エレミヤ神父と一緒にしばらく治療を続けてくれるって」

ケイ:   「早く歩けるようになるといいね。

       ほらヤシュト、ミリアが頑張ってるのに

       しょんぼりしてちゃしょうがないじゃない」

ヤシュト: 「……そうだな。

       よし、一度家に帰ってから村長の家に行こう。

       エレミヤさんもいるだろうからな」

ジェスタル:「止みそうにないから、ひとっ走りすっか」

ラルク:  「そうですね」

ヤシュト: 「それじゃ、マーディーンさん、イレーレ、またな」

ジェスタル:「じゃ!」

      と言って駆け出そう。冷て~。

GM:   それぞれ家に帰るわけだね。

      まずはケイさんから。

ケイ:   「ただいま~」

GM:   「まぁ、ずぶ濡れね」

      お母さんがタオルを渡して出迎えてくれる。

      「無事にエレミヤ神父のお使いは済ませたの?」

ケイ:   「うん。ハート司教にも初めて会っちゃった。

       いいお爺さんよ」

GM:   「司教をつかまえて、いいお爺さんはよかったな」

      ロンがテーブルで古文書を読みながら声をかける。

      「ずいぶんと長逗留だったね」

ケイ:   「ギルドで魔法を習ってたんだもん。

       そうそう、まだランダがいたのよ!」

GM:   「ほう、ベルディンの娘が。さぞ、しごかれたろうな」

ケイ:   「ほんと頭にきちゃった。

       お父さん、何読んでるの?」

GM:   「ジーバース伯爵が持ってきてくれた古文書だよ。

       これによるとだね、南トゥムの地下にも興味深い遺跡があるようだ。

       そもそもケルトは大陸に国家が生まれるよりも早く」

ケイ:   (話を遮って)「ちょっとミリアのお見舞いに行ってくるね!」(笑)

GM:   「あまり長居しちゃダメよ。ミリアを疲れさせるから」

      と、お母さん。

      ロンはやれやれという顔をしてるね。

ジェスタル:話くらい聞いてあげればいいのに。

ケイ:   だってお父さんの話、長いんだもん。

      私はミリアの家に行きます。

GM:   次はジェスタルかな。

ジェスタル:「おじさん、おばさん、ただいま帰りました」

GM:   リーグ叔父さんも、ちょうど漁から帰ったばかりらしくてズブ濡れだ。

      「お前もびしょびしょだな」

ジェスタル:「水も滴るいい男ってとこですか」(笑)

GM&ジェスタル:「はっはっはっは!」(一同爆笑)

ヤシュト: だめだこりゃ。

      ジェスタルの性格はこの叔父さん譲りか。

      次行こう、次!

GM:   じゃあヤシュト君。

ジェスタル:ほんとに次行っちゃうのかよ!?(笑)

ケイ:   どうせ話すことないんでしょ?

ジェスタル:い~ですよ、はいはい。

      叔父さんの出番はほんの一瞬だったな。(笑)

GM:   ヤシュトが灯台への坂道を駆けていくと、灯台の窓からソニカが

      手を振ってるよ。

      「お帰り~。おみやげ~」(笑)

ヤシュト: 「ったく。これだ」

      ドアを開いて中に駆け込もう。

GM:   「もう少し早ければ降られなかったのに」

      ルグニカが着替えのチュニックを差し出しながら迎えるね。

ヤシュト: 「サンクス。

       どうだ、変わりはなかったか?」

GM:   「強いてあげるとすれば、

       ついにブーツから親指が出たことかな」(笑)

ヤシュト: 「分かった、分かったよ。

       ほら、ブーツ!」

      バックパックからブーツを取り出して渡そう。

GM:   ソニカもちょうど上から下りてきて、

      「あたしは? あたしのは?」

ケイ:   ソニカちゃんはいいなぁ。

ヤシュト: 「ちゃんと買ってあるって。

       珊瑚の櫛な。高かったんだぞ」

ケイ:   エメラルドに比べれば安いって。(笑)

ジェスタル:なぁ。

ケイ:   ねぇ。

ヤシュト: 雨にうたれて風邪ひいたかな? 幻聴が聞こえる。(笑)

GM:   ソニカは櫛をもらってはしゃいでるね。

      「ありがとう、あにぃ~。

       今日はとびきり辛い夕ご飯を作るよ~」(笑)

      ルグニカもブーツをはきながら、

      「柔らかくてしっくりくるよ。ありがとう」

ヤシュト: 「長いこと留守番させちまったからな」

      よろこんでもらって、内心うれしいヤシュト君。(笑)

GM:   灯台が微笑ましい光景で満たされたところで、最後にラルクだ。

ラルク:  はい。

GM:   君の家は酒造所だから、始めに出迎えるのは働いてる人々だ。

      「おかえりなさい、ぼっちゃん!」

      「おやまぁ、ずぶ濡れになって。

       早くお着替えなさい、風邪ひきますよ!」

      「ぼっちゃん、何ですか! 泥だらけの足で!」(笑)

      と、口々に君の帰宅を歓迎している。

ラルク:  とてもそうは聞こえないんですけど。(笑)

      それにぼっちゃんってのはちょっと……。

ヤシュト: ラルクはボンボンだったのか。

GM:   みんな樽にワインを詰めたり、シードル用のりんごを剥いたりと

      忙しそうだ。

      君のお父さんも籠いっぱいのぶどうを抱えながら出迎えるね。

      「帰ったか。早速そこの樽を貯蔵庫に運んでもらおうか」

ラルク:  「ちょ、ちょっと。今帰ったばかりなのに。

       それに服だってびしょ濡れだし」

GM:   「だから、もう濡れても気にならんだろ?」(笑)

ラルク:  「しょうがないなぁ。よっと」

      樽を肩に担いで貯蔵庫に行きます。

GM:   貯蔵庫は裏手の階段から下りられるよ。ここは夏でも

      ひんやりしてるから、君たちもよく涼みに利用する場所だ。

ラルク:  暗いんですよね?

      どうしよう、こんな所でコネコネを使うのもったいないし。

GM:   貯蔵庫の下の方からは、うっすらとランプの明かりが漏れてるよ。

      誰かいるみたいだ。

ラルク:  それじゃ、その明かりを頼りに下りていきいましょう。

GM:   貯蔵庫は右手に瓶、左手に樽がずらりと並んで、

      ちょっとしたもんだね。

      「アニキ、アニキ」

ラルク:  私ですか?

GM:   弟がいるって設定にしたの君じゃないか。

      名前はカート。2つ年下の15歳だ。

      カートは壁際にランプを寄せて、なにやらじっと見つめてる。

ラルク:  なんだろう? 近くに寄ってみます。

GM:   「アニキ、この壁見てよ」

ラルク:  見てみますけど?

GM:   レンガを組んだ壁には縦にヒビが入っていて、

      そのヒビの周りが白っぽくなっている。

ラルク:  「これ、もしかして氷?」

      カートに言います。

GM:   カートは指で壁をなぞって、

      「そうみたいなんだ。冬は確かに氷も張るけど、今は夏だぜ」

ラルク:  「確かにおかしいなぁ。

       もしかして鍾乳洞とかがあるのかな?」

GM:   「アニキ、冒険者だろ? なんか分かんないの?」

ラルク:  「無茶言うなよ。ギルドじゃこんなの習わなかったもん」(笑)

ケイ:   あっ。

ジェスタル:なに?

ケイ:   ううん。プレイヤーが思いついたこと。

      ここにいないんだし、言うのは不自然だから黙っとく。

ヤシュト: な~んとなく俺も分かってきたぞ。

      でもプレイヤーが分かったことだから言わない。

GM:   うん。それがテーブルトークというものだね。

      謎を解き明かすのはプレイヤーじゃなくて、キャラクターだからね。

ラルク:  私は分からないな~。

      でも一応平目でサーチ・チェックをしてみます。

      5です。

GM:   見たり触れたりした限り、普通の氷だね。

      壁の向こう側が非常に低温だって事くらいしか分からない。

ラルク:  5ですからね。

      ここは、これ以上調べてもしょうがなさそうだし。

      「カート、後は頼む」

GM:   「またアニキは逃げるのかい? まだ運び込む樽が残ってるんだよ」

ラルク:  「これからミリアを見舞いに行かなくちゃ。

       親父には黙っててくれ」(笑)

ヤシュト: アガルタの司祭の言葉遣いじゃないな。

ケイ:   家族相手だと地が出るのね。

ラルク:  とにかく両親に見つからないように、村長の家に向かいます。

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