その4~6

- works.02 ある約束 -


その4~6を掲載しています。




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《前回までのあらすじ》


 南トゥムの神父エレミヤから、王都メイラレンの司教ハートへの依頼状を

託されたパーティは、草むしりの手伝いで馬を安く借り受け、道具屋での買い物も

OK。後は無事メイラレンに到着するだけですが……。


~その4 街道宿で情報収集~


GM:   それじゃ翌朝、イレーレに見送られて南トゥムを出発するわけだ。

      朝靄の中に騎馬の新米冒険者が4人。

ヤシュト: 俺たち馬に乗れるのかな?

GM:   流す程度ならできることにしよう。

      全速力とか、馬上での戦いなんかの時にはチェックしてもらうよ。

ケイ:   一応街道なんでしょ?

GM:   もちろん。でも、王都から北トゥムに向かうには船の方が便利だから、

      商人なんかも街道を使う頻度はやや低い。

      ジーバース伯爵も、挨拶するためにわざわざ馬車で来たんだし。

ケイ:   ジーバース伯爵っていい人よね~。

ジェスタル:「ん、なんかいい匂いがするぞ」(笑)

ケイ:   「わかる~?」(笑)

ヤシュト: 俺は一歩旅に出たら人が変わるぞ。

      みんなの先頭に馬を進めて、左右に気を配っている。

GM:   分かった。向かって右手は砂浜がずっと続いてる。

      左は雑木林。モンスターの襲撃があるとすれば、左手だろう。

ヤシュト: よし。注意しながら行くよ。

ラルク:  さすがですね。

ヤシュト: やっぱ南トゥムにいるとさ、安心しちゃって緊迫感がないんだよ。

      旅に出ると、冒険者の血が疼きだすぜ。

ジェスタル:それじゃ見張りはヤシュトに任せて、

      吾輩はのほほんとついて行こう。(笑)

GM:   1日目の夜は野犬の群れが出たくらいで難なく過ぎた。

      そして2日目。

      (ダイスを振って)ちぇっ、2日目も遭遇はなしだ。

ケイ:   よかった~。

GM:   せっかく遭遇表を作ったのに。

ヤシュト: そうそう。ちゃんと用意しとくとダイスに裏切られるんだよな。

GM:   不思議だよね。

      それじゃ夕焼けが水平線を朱で染める頃に街道宿が見えてくるよ。

      どうやら3~4軒宿が並んでいるようで、その前では馬車と馬を

      外している者、積荷を下ろしている者なんかが忙しそうに働いてる。

ケイ:   どこに泊まろうか?

ジェスタル:宿選びは旅の醍醐味じゃな~い。

      全部のぞいてみようぜ。

      旅行ガイド見ながら、あそこが人気らしいぜ、とか言って。(笑)

ヤシュト: 旅行ガイドなんかあるか!

ラルク:  いいですねぇ。私は落ち着ける場所がいいな~。

      それにキレイなお姉さんがいれば言うことなしっと。(笑)

ヤシュト: 司祭様よ~。

GM:   軒を連ねる宿の名は”竪琴の宿””金の宿””風来坊の宿”だ。

ヤシュト: なんとなく名前で、どんな宿か分かるな。

ラルク:  ”竪琴の宿”なんかいいですね。

ケイ:   うん。吟遊詩人がいそうだもんね。

GM:   君たちが軒先に馬をつけると、おじさんが馬を預って連れて行くね。

ジェスタル:「まだ泊まるか分からないですよ?」

GM:   「この宿屋街じゃ厩は共同なんですよ」

ヤシュト: じゃ手綱を渡して”竪琴の宿”に入ろう。

      どんな感じ?

GM:   やんわりとしたランプの明りが落ち着く、木造の宿だね。

      壁はクリーム色に塗られて、淡い色のタペストリーがかかってる。

ケイ:   いいなぁ。軽井沢のペンションみたい。

ラルク:  行ったことあるんですか?

ケイ:   ちょっとね。

ヤシュト: ほ~う。で、誰と?(笑)

ケイ:   いやぁねぇ、もう大人ですもの。(笑)

      ほほほ。

GM:   冗談はさておき、店内に君たちのような物々しい冒険者はいないよ。

      構造は1階は酒場、2階が宿というオーソドックスなタイプ。

      ほっそりとした優しそうな、おばさんが迎えてくれる。

      「お疲れでしょう、さぁどうぞ」

      落ち着いた物腰の綺麗な人だよ。

ヤシュト: 客は?

GM:   普通の旅人が5、6人と、ハープを調弦してる若い女性が一人。

ケイ:   とりあえずシードルでも頼もうよ。

ジェスタル:そうそう、乾杯しなくちゃな。

ヤシュト: お前そればっかな。

      周りを見渡して、愛想のよさそうな人に、王都の様子とかを聞きたい。

GM:   王都からの旅人から得た情報だと、ウェイシェド王の善政の下、

      メイラレンは平和な繁栄を謳歌しているようだ。

      これといって変わった情報は得られないよ。

ヤシュト: 後で”風来坊の宿”に行ってみよう。

      あっちの方が冒険者向きの情報があるような気がするんだよ。

ラルク:  私はハープの女性に話しかけたいんですが。

ジェスタル:行くと思ったよ。(笑)

      いつの間にか好色な司祭になってる。

ラルク:  違いますよ。バードに興味があるだけです!

      その人の席に近付いて話しかけます。

      「失礼ですが吟遊詩人の方ですね?」

GM:   その女性は澄んだ瞳で君を見上げるね。

      「はい。言葉を糧に、曲を安らぎとして伝えるのが私の務め」

ラルク:  「私は旅の者ですが、え~っと、一曲聞かせて下さい」(笑)

ヤシュト: もっとかっこよく言わんか~。

ケイ:   突然ファンタジー口調になったから戸惑ったのよね。

ラルク:  うぅ、ケイさんは優しいなぁ。

GM:   すると女性は軽くハープを弾くと、口元をほころばせて、

      「喜んで」

      一言いうと、メロディーに乗せて次のような詩を歌うね。

      「母の髪に霜降る昔、鏡の海が荒れ狂い、日の光は温かみを忘れ、

       風は人々の頬を切った。

       王都の麗人イドリの髪は風に巻かれ、その瞳は献身の喜びと

       愛する人々との別離に光を帯びる。

       血の気の失せた唇は水竜への惟意の言葉を口ずさむ。

       天にも届く琥珀色の頭角は嵐をひきつれ現れた。

       雨にも負けぬ水飛沫は万人の頬をうち、永遠の一瞬に全ては終った。

       日は再び人々を照らし、鏡の海は天を映す。

       ミストラルは何事もなかったように人々の頬をする抜ける……」

      歌い終ってちょっとはにかむようにお辞儀する。

      きれいな、悲しげな歌声だったね。

ジェスタル:お~、酒のさかなにちょうどいい。

GM:   他のお客さんも感慨深そうに、ため息をついてるね。

ケイ:   「あの、それはどこの歌でしょうか?」

GM:   その女性に聞いたの?

      「メイラレンのものですわ」

ヤシュト: 俺もひっかかってんだけど、それってさ。

ケイ:   水竜にいけにえを差し出したってことでしょ?

ジェスタル:そうなの? ただ、ぼ~っと聞いてたよ。

GM:   それに関してはセージを振ろう。

ケイ:   もう一日の終りだから、ピンチ・スキルを全部使っちゃう。

      ……どうだ、18!

ヤシュト: 俺も使うぞ、14だ。

GM:   二人とも文句なしの判定値。

      メイラレンは遥かな昔から水竜コバルト・ドラゴンに生けにえの乙女を

      定期的に差し出している。

      大抵は半世紀周期、前回は35年前だ。

      水竜は元々荒れ狂う海を静めていると伝えられ、

      メイラレンの守護神でもある。

      メイラレンが他国の侵略を受けたことがないのもそのおかげ。

ヤシュト: なんか許せんな。

      自分の国が生けにえを容認してるなんざ。

ケイ:   さっきの歌に出てきたイドリって言う人が生けにえだったのね。

GM:   35年前のね。

      その水竜との契約のせいで、メイラレンでは女王は誕生しない。

      即位できないんだ。現ウェイシェド王だって、親戚を養子にしたんだ。

      先王ハドリヌスには娘がいるけど、王位継承権を持たない。

ジェスタル:女王様がいけにえに選ばれたら大変だもんな。

ラルク:  いけにえなんて、いけねぇ、なんちゃって。

一同: …………。(しばらくの沈黙の後、爆笑)

ヤシュト: 静かだと思ったら、そんなこと考えてたのかよ!

ジェスタル:しょうがないですな。

ケイ:   だけど、ちょっとショック。

ヤシュト: う~む。複雑な気分だな。

      ところでGM、生けにえはどうやって選ばれるんだ?

GM:   さっきの数値なら教えましょう。

      水竜に仕えし者は額にその印が現れる。決って15~18歳の乙女だね。

      一連の儀式を司っているのがドラゴン教会。

ヤシュト: できれば叩き潰したいシステムだが、国とドラゴンの契約じゃな~。

      面白くないが何もできんしな。

      場所変えねぇか? ちょっとしんみりしちゃったからさ。

ジェスタル:そうだな、たまには陽気にやりたいよな。

ケイ:   あんたはいつもでしょ。

      すぐに席を立つと、吟遊詩人さんに悪いから、ちょっとしたらね。

GM:   なら小一時間ほどして場所替えか。

      飲んだと思われる分だけお金を払っておいて。

      一杯1Goldだからね。で、どっち?

ヤシュト: もちろん”風来坊の宿”。

GM:   その宿は、戸口を開く前から、賑やかな笑い声やら、

      罵り声が響いてる。

      お察しの通り冒険者が10人近く。君たちが入った途端に、酒場中の男が

      一瞬値踏みするような視線を向けるけど、すぐに話を再開する。

ケイ:   ちょっと怖いよ~。

ヤシュト: やっぱ酒場はこうでなくちゃな。

      俺は視線を真っ向から受け止めてやるぜ。

ケイ:   女の人は私しかいないんじゃないの?

GM:   いや、カウンターにショートカットの女の人がいるよ。

      腰には細身の剣を差していて、冷たい印象を受ける人だ。

ヤシュト: ピクっ!

ジェスタル:どうしたよ。

ヤシュト: いや、剣士の勘ってやつよ。

GM:   「初めて見る顔だな。ホラ、突っ立ってないで座んな」

      まだ30前後の主人が君たちに声をかけるね。

      店内の壁には剣や盾が飾られていて、明りはランプじゃなく松明。

      他の冒険者連中は、大ジョッキにエールをあおってるね。

ラルク:  ビアホールみたいですね。

GM:   そう思ってくれると、プレイヤーも理解しやすいだろうね。

ジェスタル:「親父さん、エール4つ!」

GM:   「あいよ。フォンダ! あっちのお客にエール4つ!」

      「は~い」

      と、若い元気な女給さんがエールを抱えてくる。

ジェスタル:「ほい、ありがとさん」

GM:   「おつまみはどうします?

       川えびのフライなんか、とれたてでおいしいですよ。

       それにゆでたジャガイモもエールによくあいます」(笑)

ジェスタル:「うんうん、いいなぁ。

       おすすめ上手だね。それ4人前!」

GM:   「は~い、ありがとうございます。

       マスター、川えびとジャガイモ4人前追加~」

ジェスタル:「改めて乾杯しよう」

ケイ:   ほんとにビールが飲みたくなってきちゃった。(笑)

ヤシュト: 「それじゃ旅の成功と……なんだ」(笑)

ラルク:  「ミリアの全快を祈って」

ジェスタル:「それでいこう」

一同: 「かんぱ~い!」

ジェスタル:「さっきの店もいいけど、やっぱこっちだな」

ヤシュト: 「旅先の酒場は落ち着くな」

ラルク:  「そうですか?」

ケイ:   「あの二人がいないから?」

ヤシュト: 「そうなんだよ。

       ルグニカとソニカがいるとうるさくってな」

ジェスタル:「だけどいなくなったら寂しいぞ」

ヤシュト: 「だろうね」

GM:   「おまちどうさま、熱いですから気をつけて」

      女給さんが料理を持ってきてくれるよ。

ジェスタル:「来た来た!」

ケイ:   「お腹ペコペコ。干し肉ばっかりだったもんね」

ヤシュト: 食べながら周囲の話に耳を傾けよう。

      どんな話をしてる?

GM:   冒険者同士の世間話だね。聞こえてくるのはリュンクスを殺ったから

      ひと月は遊んで暮らせるだの、アウトサイダーが王都にいただの、

      最近じゃイーガルが街道に多くて、護衛なら食うに困らないだの。

ケイ:   知らない固有名詞が二つも出てきた。

ヤシュト: イーガルはこの前戦ったヤツだろ。

      リュンクスも多分モンスターだろう。アウトサイダーってのは何だ?

ケイ:   セージを振っていい?

GM:   話を聞くと宣言したのはヤシュトだけだからダメ。

ケイ:   残念。

ヤシュト: リュンクスについては7、アウトサイダーは13。

GM:   アウトサイダーについては知っている。

      西側諸国でもっとも有名なパーティの名前だ。

      リーダーはメイラレンのマッド・マーディガン。

      メンバーはオルドス人の女司祭に、ベドウィン族の中年男。

      確かに有能なんだけど、その強引な解決法は賞賛と苦情の雨あられ。

ラルク:  国籍がバラバラってのが面白いですね。

ケイ:   それでアウトサイダー?

GM:   うん。どこの国からしてもよそ者ってことだね。

ヤシュト: ふ~ん、やっぱ冒険者にも有名な連中がいるのか。

ジェスタル:吾輩たちはまだまだ駆け出しだけどね。

GM:   そんな中、酒場の片隅が怪しくなってきた。

      まあ、冒険者のいる酒場ならつきものだけどね。

ヤシュト: ケンカか。

GM:   ピンポーン。

      中肉中背の男と、それより頭一つ分は大きい男が向き合ってるね。

      そばで飲んでいた連中は、ジョッキを抱えて場所を空ける。

      今にもお互い剣を抜きそうになったとき、主人が割って入るね。

      「ケンカを止めろとは言わねぇ。血気盛んなのは冒険者の性だ。

       だが剣を振り回されちゃ、俺の店に穴が増えるだけ。(笑)

       ここはどうだ、こいつで方をつけちゃ?」

      と、こう拳を突き出すね。

      「レルドリンさんが言うんじゃしょうがねぇ」

      二人の冒険者は、剣を腰から外して壁に立てかけるね。

ヤシュト: 主人の名前はレルドリン、か。

      メモっとこ。

GM:   どうやらこの店の主人は冒険者連中に一目置かれているらしい。

      殺傷沙汰でなくなると、他の冒険者は無責任にカケを始める。(笑)

ジェスタル:「俺も賭けさせてくれ! 大男に50!」(笑)

ヤシュト: 「俺も20!」

ケイ:   「私はもう一人の方に10!」

ラルク:  ケイさんまで……。

      「私も賭けましょう。ケイさんと同じ方に50」(笑)

ヤシュト: 司祭がいいのかよ~。普通仲裁に入らないか?

ラルク:  まぁまぁ。

GM:   (しばらくダイスの振合いをして)

      ベアナックルの末、勝ったのは大男のラルゴーってヤツだ。

ヤシュト: うっしゃあ~!(笑)

ケイ:   ちぇ。

GM:   ラルゴーに賭けてた人は、その分倍にしていいよ。

ジェスタル:じゃんじゃん飲むべ!(笑)

ケイ:   突然千葉弁を出さないでよ!(笑)

GM:   そうするとね、ケンカに勝ったラルゴーは調子にのって、

      カウンターで一人で飲んでた女剣士の肩に手をかけるね。

      「今夜の英雄につきあいなよ」

ケイ:   や~ね~。

ラルク:  平手うちでも出るんじゃないですか?

GM:   結果は平手うちよりひどかった。

      女剣士はラルゴーの手をつかんで、口元を少しほころばせたと思うと

      柔道の背負いのような投げで、床にラルゴーをのしちゃうね。

      ズズ~ン。

ジェスタル:ひょえ~。

ケイ:   ちょっといい気味。

ヤシュト: 賭けが外れたからだろ。

ケイ:   それもちょっとある。(笑)

GM:   酒場の中は一瞬、静まるけどすぐに笑い声で満たされる。

      その笑い声を背に、女剣士は2階に上がって行くね。

      さすがのラルゴーもバツが悪かったらしく、おとなしくなっちゃう。

ヤシュト: むむ、剣士としては見過ごせないな。

      カウンターに行って、レルドリンさんに話しかけよう。

      「あの女剣士を知ってるかい?」

GM:   「知っていると言っても、知らないと言っても嘘になる。

       というのも、プライムという女剣士でハンターウォリアー

       だという肩書以外、素性を知ってる者はいないんでね」

      ちなみにハンター・ウォリアーてのは賞金稼ぎのことね。

ヤシュト: このマスター渋いな~。気に入った。

      「ふ~ん、そうなのか。かなりできそうだけど」

GM:   「ああいう一匹狼は詮索されることを嫌うぜ」

ヤシュト: 「だろうな」

ジェスタル:「な~に難しい顔してんだよ、ホレ飲め飲め!」(一同爆笑)

      襟首をつかんで席に引き戻す。(笑)

ヤシュト: 俺がせっかくカッコつけてるのに~。

      こうゆうおじさんとの会話が好きなんだよ。

ジェスタル:もう酔ってます。(笑)

      「今日は徹夜だ~」

ヤシュト: なんでこうなる~。

GM:   今日はどうするの?

      もう10時近くで、冒険者もチラホラ部屋に帰って行くけど?

ラルク:  ここでいいですよね?

ヤシュト: ケイさんにはちょっと荒っぽいかもしれないが、情報はこっちの方が

      豊富そうだからな。

ケイ:   私は別にいいよ。

ラルク:  やっぱケイさん一人と、私たちは3人部屋でいいですかね?

ジェスタル:一緒はまずいでしょ。

ヤシュト: ちょっと期待したラルク。(笑)

ラルク:  そんなこと考えてませんってば。

GM:   ちゃんと部屋は空いてたよ。前金で30Goldだ。

ヤシュト: 30、と。黄金の宿は行かなくていいか?

GM:   ”金の宿”だよ。

ジェスタル:いいだろ。どうせ商人ばっかだと思うよ。

ヤシュト: 俺は部屋に帰って寝る!

ジェスタル:もうかよ。

ケイ:   明日も早いんだから。

ジェスタル:渋々寝よう。

ラルク:  おやすみなさ~い、と。

GM:   その夜は久し振りのベッドで、薮蚊にも悩まされずぐっすり眠れる。

ヤシュト: あの女剣士が気になるけど、部屋に行くのもなんだしな。

      この時間じゃ夜這いになっちまう。

ジェスタル:投げ飛ばされるぞ。(笑)

      それよか、のんびりしようや。

ケイ:   久し振りにお風呂にも入ろう。

GM:   やっぱり女性はそういうことに気が向くんだね。

ヤシュト: 俺も王都で、きゃ~不潔~とか言われたくないから入ろう。(笑)

ラルク:  出発前に保存食は補給しときますね。

GM:   いいよ、でもラルクが全部払ってるの?

ヤシュト: 旅から帰ったら、みんなで清算すればいいだろ。

ジェスタル:夜の飲み代は、賭けで儲かったから吾輩がおごってあげよう。

ケイ:   ごちそうさま。

GM:   それじゃ60Gold減らしといてね。

ジェスタル:けっこう食べましたな。

GM:   出発前に何かしておきたいことはあるかな?

ケイ:   私は馬にブラシをかけとこっと。

      あまり汚いままだと帰ってマーディーンさんに怒られそう。

ヤシュト: そうだな。俺もブラシをかけとこう。

      王都までよろしく頼むぜ、っと人参でも食わせながら。(笑)


~その5 誰か取ってくれ!~


GM:   朝靄の中を君たちは出発するわけだ。

      右手には海岸線、左手には街道まで松林が張り出した街道を

      順調に馬を進めているね。

      どうも俺がチェックするとモンスターの出番がないようなので、

      ラルク君、2D6を振ってくれない?

ラルク:  はい。15です。

ヤシュト: ちょっと待て~。

      どうして2D6で15が出る!

ラルク:  うわっちゃ。2D10振っちゃいました。(笑)

      振り直して9です。

GM:   (にやり)

ケイ:   嬉しそうな顔。

ヤシュト: どうやら遭遇しちまったらしい。

GM:   馬の並び順はどうなってるのかな?

ヤシュト: 先頭は俺。

ラルク:  しんがりは私が勤めましょう。

ケイ:   どうせ私の前はイヤなんでしょ?(笑)

      私が2番目、ジェスタルが3番目ね。

GM:   それじゃジェスタルくん、突然の回避判定。

ジェスタル:吾輩ですか? むむ、8だってよ。

GM:   それじゃ突然背中にズシっと衝撃を感じる。

      落馬に耐えられたかどうか、戦闘スキルでもう一度。

ジェスタル:なんだ、なんだ、何が来たんだ?

      え~と11。

GM:   それは馬の首を抑えて何とか耐えた。

      ジェスタルは首筋にゴワゴワした体毛と、すえた臭いの息遣いを

      感じる。後ろを走ってるラルクは分かるけど、ジェスタルの背中に

      ゴブリンが一匹、まとわりついている。

      街道までかかっている松の枝から飛び移って来たんだ。

ジェスタル:「うわぁ~。頼む、誰か、誰か取ってくれ!」(一同爆笑)

ケイ:   (笑いながら)そう叫ぶのなら、馬を止めます。

ヤシュト: (同じく笑いながら)俺も、なんだ? って感じで振り返ろう。

ジェスタル:笑うな!(笑)

      吾輩は必死なんだぞ。

      腰からグラディウスを引き抜いて……はて、どうやって斬ろう。(笑)

ラルク:  私は後ろからジェスタルに追いついてレイピアで斬りつけます。

GM:   ちょっと待って。

      ジェスタルも馬を止めるわけだね?

      (それぞれのフィギュアを並べて)

      それじゃここから戦闘処理にしよう。

ジェスタル:あ、吾輩のフィギュアが倒れた。

ヤシュト: 不吉。(笑)

GM:   ヤシュト、ケイはジェスタルから20mほど離れてる。

      ラルクはジェスタルのすぐ後ろ、と。

      モンスターの知識判定はいらない。ゴブリンだ。

      ゴブリンの敏捷度は14。

      今回からちゃんと移動ターン、攻撃ターンと解消していくからね。

      まず移動ターンは敏捷度の遅い人から宣言して。

ジェスタル:ルール読んでて不思議だったんだけど、

      どうして遅い方から動けるの?

GM:   敏捷度の高い人は、それだけ周りの状況を見てから

      動けるってことだよ。

      逆に行動ターンは敏捷度の高い人から解消する。

ヤシュト: 速く動けるほど有利に進められるってわけだな。

ジェスタル:な~るほど。

      なんて悠長に言ってられないな。

      吾輩はもがいてます。

      グラディウスを振り回しても当たりそうにないじゃな~い!(笑)

ラルク:  馬に乗ったままレイピアを構えてます。

ケイ:   ん~と、どうしようかな。

      距離は足りるけど、ジェスタル、スリープ・ユーに耐える自信ある?

GM:   ゴブリンにかけたら、ジェスタルも有効範囲内だね。

ジェスタル:なんでもいいから取ってくれ~!(笑)

ケイ:   本人の許しが出たので、その場で詠唱。

GM:   ゴブリンはジェスタルの背中なので移動はなし。

ヤシュト: 最後に俺だな。

      馬から飛び降りて、全速力でジェスタルの方へ向かう。

      ダダダッ。

GM:   それじゃ行動ターンいいよ。

ヤシュト: 全速移動中なので行動はなし。

      ダガーでも投げるかな?

ジェスタル:やめてくれ! 吾輩に当たる!(笑)

GM:   ゴブリンは馬からジェスタルを振るい落とそうとする。

      回避で耐えてくれ。

ジェスタル:落ちてたまるかの12!

GM:   ぎりぎりで耐えたね。

      ゴブリンは小柄ながらも、かなりの力だよ。

ヤシュト: 「ジェスタル、もう少しガマンしろ!」

ケイ:   私はラルクと行動順位が一緒なのよね。

      「ラルク、ちょっと待って!」

      と言いながら、スリープ・ユーを発動。

      あ、すっごい。14。(一同爆笑)

ジェスタル:ばかもの~。

ケイ:   かけていいって言ったでしょ!

GM:   はい。ジェスタル君抵抗。

ジェスタル:そんな目出ないよ。ほら、12。(笑)

ヤシュト: これでゴブリンだけ成功したら餌食だな。

GM:   う~ん。残念。ゴブリンも失敗。

      ジェスタルとゴブリンはコアラの親子のように、

      馬に抱きついたまま眠っちゃう。(一同爆笑)

ケイ:   (ルールを見ながら)あれ、ちょっと待って。

      ラルク、キュア・マジック使える?

ラルク:  いいえ。使えるわけありませんよ。

      だってキュア・マジックはレベル2のエレンドですよ。

ケイ:   ごめ~ん、ジェスタル。

      あなたはもう目が醒めません。

ジェスタル:ええっ? 何だよ、それ!

ヤシュト: ほんとだ。いいか、ルール読むぞ。

      “リムーブ・スペルや神聖魔法のキュア・マジック等で解除する迄、

       目覚めることはありません。”

      だってよ。

ケイ:   エナル・スペルはレベル2のウィザード・マジックなの。(一同爆笑)

      ギルドに行くまでレベル1になってるから。

ジェスタル:うっひゃ~!

      GM、ピンチ・スキル使わせて!

GM:   こういう時のピンチ・スキルだからね。

      ただしチェック前の宣言ではないので、12+追加したダイスになって

      クリティカルは適用されないよ。

ジェスタル:分かった。

      取りあえずいくつ出せばいいんだ?

ケイ:   私の判定値が14だったから、あと3。

ジェスタル:な~んか不安じゃな~い。

      今日の分のピンチ・スキル全部使う!

ヤシュト: 3だろ? ダイス1個で充分だろ。

ジェスタル:いや、2個振る……ほら2個で4だもん。(笑)

GM:   ジェスタルは一瞬意識が飛びかけたけど、何とか持ちこたえた。

      背中ではゴブリンが臭い息を吐きながら熟睡中だ。

ラルク:  起きないなら攻撃の必要はないですね。

ジェスタル:吾輩は大慌てでゴブリンを引っぺがすよ。

ヤシュト: やれやれだな。

      俺は走るのをやめて苦笑いしてるよ。

GM:   新米冒険者諸君。

      ゴブリンは通常、群れで獲物を襲う習性を持っています。

      ヤシュト、ケイさん、気配察知。

ヤシュト: くそ、油断してた。9。

ケイ:   6。平目だもん。

GM:   ヤシュトとケイは不意討ちを受けたことになるね。

      2人とも回避判定、ヤシュトは2回してもらう。

ヤシュト: 俺の方に2匹来るってわけね。

      受けて立とう! 14と、くそっ10。

ケイ:   私がよけられるわけないじゃない、5。

GM:   突然松林からゴブリンが走り出てきて、その勢いを殺さずに

      君たちに襲いかかった。

      ヤシュトには10発、ケイには9発の殴りのダメージだ。

ヤシュト: 鎧の分は止るんだろ?

GM:   不意討ちでもアーマー分は減少していい。

ケイ:   いたっ!

      私ローブしか着てないのに~。

GM:   それじゃ新ラウンドから正規の流れで解決しよう。

      まずは移動ターン。

ジェスタル:走っても間に合いそうにないから、ここは魔法準備。

ラルク:  馬のままで戦えますかね?

GM:   騎馬での戦いはマイナス修正を受けるけど?

ラルク:  馬から降りてケイさんの所に駆けつけた方が利口ですね。

      この距離だと2ラウンドはかかるか。

      「ケイさん、逃げて!」

      って叫びます。

ケイ:   逃げられるのならそうしたい。(笑)

      けど、ゴブリンの方が早いから逃げられないだろうな~。

      不慣れなダガーを構えます。

GM:   ゴブリン2匹がヤシュトと、1匹がケイと隣接中だね。

      特に移動はなし。

      赤い瞳をギラギラさせて敵意をあらわにしてる。

ヤシュト: ゴブリンと隣接してるからブロード・ソードを構えて終わり。

GM:   行動ターンどうぞ、ヤシュトから。

ヤシュト: さっき俺を殴ったヤツからだ。

      ブオン! 13。

GM:   肩口にヒット。ダメージは?

ヤシュト: これまた13。

GM:   剛毛から鮮血が迸る。かなり効いてるようだ。

      ではゴブリン2匹の攻撃をよけて。

ヤシュト: こいつでしくじるとヤバイからなっと。

      か~っ、11と15。

      一発は食らったか?

GM:   1匹の攻撃をバックラーで止めた隙に

      もう1匹が脇腹に力任せの一撃だ。8発あげよう。

ヤシュト: 「ぐぼっ!」

      じりじり、やられてる。

GM:   ケイさんもよけて。

ケイ:   私は防御専念。お願い、プラス修正分で12。

GM:   間一髪よけた。

ケイ:   ふ~。

GM:   ラルクは全力移動中だね。

      ケイは防御専念で攻撃はなし。最後にジェスタル。

ジェスタル:ヤシュトに言うよ。

      「お前は持ちこたえろ!」

      ケイの方のゴブリンに精霊魔法発動。

      「氷の精霊よ、我が友を救え!」

GM:   アイス・フォールだね。

ジェスタル:判定値は、よし、クリティカル!

ケイ:   偉い!

ジェスタル:ダメージは最大分行くから9点。

GM:   ゴブリンの右腕にビシビシっと氷が炸裂する。

ヤシュト: おお~。ジェスタル、見せるじゃないか。

ジェスタル:たまにはね。(笑)

GM:   では第2ラウンド。

      移動する人はラルクだけかな?

ラルク:  ですね。

      これでケイさんと戦ってるゴブリンと隣接できます。

GM:   行動ターン、ヤシュト。

ヤシュト: さっき手傷を負わせたヤツにもう一撃。

      2匹相手は辛いんで、ここでピンチ・スキル。

      よっしゃ! クリット(クリティカルヒット)で15発!!

GM:   それは見事にゴブリンの肩口から斬り裂いた。

      血しぶきをヤシュトに浴びせながら、ドウッと倒れる。

ヤシュト: よし。

      もう1匹の方の回避だよね。

      くっ、どうもよけの出目が悪いな。8。

GM:   更に11発のダメージ。

ヤシュト: LPが半分になっちまった。

ケイ:   それでも私とほとんど同じじゃない。(笑)

GM:   ケイはまた防御専念?

ケイ:   もちのろんろん。(勿論の意味です)

      ああん、専念でも10しか出ない。

GM:   10発いきます。

ケイ:   「早く助けて、ラルク~」

ラルク:  ここは気合いを入れて……レイピアで刺し!

      「ケイさんから離れろ!」

      12です。

GM:   ダメージは?

ラルク:  8です。二桁を期待したんだけどなぁ。

ヤシュト: しかし慎重にやれば当たるじゃないか。

ラルク:  この前みたいにバーサークはゴメンですからね。

ジェスタル:もう一回アイス・フォール!

      判定値は9、ダメージは7点。

GM:   抵抗したが半分のダメージが来る。

      第3ラウンドに突入だ。

      移動する人はいないね?

      ケイの正面のゴブリンは戦意喪失して逃げていく。

      かなりダメージを受けてたからね。

ケイ:   助かったぁ。

GM:   ヤシュトから行動ターン。

ヤシュト: 血がかかるのもお構いなしに、もう一匹に攻撃。

      こいつは当たったろ! 14!

GM:   うん、胸の辺りに斜めに斬りつけた。

      1匹は眠らされ、1匹は死亡、1匹は逃走か。

      ヤシュトの相手もここで背中を見せて逃げ出すけど?

ヤシュト: それなら追わない。

      ちょっとダメージがあるんで、剣にもたれて膝をつこう。

ラルク:  「大丈夫ですか、ヤシュト?」

ヤシュト: 「俺より先にケイさんを見てやってくれ」

ラルク:  ではケイさんにヒーリング。

ジェスタル:ラルク、ここで詠唱を考えるとかっこいいんだぞ。

ラルク:  そっか。それじゃあ、え~と……。

      「大いなるアガルタの名のもとに傷を癒し給え」

ジェスタル:司祭してるじゃな~い。

ラルク:  えへへ。7点治りました。

ケイ:   「ありがと、ラルク」

ラルク:  続いてヤシュトにも、2回ヒーリングをかけておきましょう。

      合計で13点治ります。

ヤシュト: 「サンクス、ラルク」

ケイ:   「ジェスタルもありがとね」

ジェスタル:馬の上で腕組みしながら

      「なに、大したことではない!」(笑)

ケイ:   もう。ちょっと下手にでるとこれだもの。

      さっきまでゴブリンとコアラのマーチだったくせに。(一同爆笑)

ジェスタル:いや、面目ない。(笑)

      「だけど上手く撃退できてよかったな」

ヤシュト: 「ああ。ケイさんのフォローに回ってくれて俺も助かった。

       一人じゃ2匹でも四苦八苦だからな」

GM:   なかなかパーティらしくなってきたね。

      遭遇戦闘はこれで終わりだ。

      この後は王都に着くまで何事もなく過ぎた。

      各自一晩寝たので、LP・MP共に2D6分回復していいよ。

ヤシュト: ラルクのヒーリングのおかげで全快だ。

ケイ:   私も。

ジェスタル:やっぱ司祭がいると助かるな。

ヤシュト: ほんとだな。

ラルク:  そう言ってもらえると嬉しいですよ。


~その6 王都メイラレン~


GM:   えっと、南トゥムを出発してから、

      4日目の昼頃小高い丘の上にメイラレン城が見えてくる。

      ケイさんにとっては懐かしい風景だね。

ケイ:   あちらに見えるのが、王城でございま~す。(笑)

ジェスタル:「ふぇ~、でっかいなぁ」

      と手をかざして見ていよう。

      「どんなヤツが住んでんだろ?」

ケイ:   「王様だってば!」(笑)

GM:   城門に検問があるけど依頼状のおかげで、すんなり通過できるよ。

      王都メイラレンの中は、色とりどりの旗が風になびいて、

      家屋なんかもモルタルのしっかりしたものばかり。

      道行く人の服装も鮮やかな色が多いね。

      南トゥムがいかに質素な村かってのが実感できる。

      (と言いつつ、王都メイラレンの地図を見せました)

ケイ:   さすがは王都。広いね。

ジェスタル:こりゃ行ってみたいところが山ほどあるよ。

ラルク:  早速アガルタ教会に行きましょうか?

ヤシュト: いや、まずは宿を決めようぜ。

      さすがに旅をしてきた、そのままの恰好じゃまずいだろ。

ケイ:   司教さまに会うんだから、キレイにしなくちゃね。

      明日っからギルドにも行けばいいもんね。

ジェスタル:ギルド?

ヤシュト: メイラレンに来た目的を忘れたのかよ?

ジェスタル:はは、そうだった、そうだった。(笑)

GM:   先ずは宿酒場に行くんだね?

ヤシュト: そこら辺の人に聞いてみよう。

      「冒険者が集まる宿酒場ってあります?」

GM:   それには往来を歩いていた、おじさんが答えてくれる。

      「あんたらも冒険者か。なら”マーディガーナー”に行くといい」

ラルク:  「マーディガーナー?

       どっかで聞いたような気がしますね」

ジェスタル:「牧場のマーディーン?」

ケイ:   「マッド・マーディガン?」

GM:   「おお、そうとも。あの薬屋の伜は、マーディガーナーの常連客でな。

       国王に苗字を名乗ることを許された時、酒場の名前から取ったのさ」

ラルク:  そっか、苗字があるってことは結構すごい人なんですね。

ヤシュト: その酒場に行ってみようじゃないか。

GM:   酒場は王都だけあって、色々な国籍の人達がいるよ。

      昼時だからあぶり肉や、ライ麦パンの香ばしい匂いが立ち込めてる。

      店にはでっぷり太った主人と、その妻だろう、これまたでっぷり。

      「いらっしゃい!」

ジェスタル:「4人ね」

GM:   すぐに線の細い少女が丸テーブルに案内してくれるよ。

      「どうぞ。お食事ですか?」

ケイ:   「いい匂いのあぶり肉がほしいな」

ヤシュト: 「エールで一杯か?」

ジェスタル:「それと川えびのフライ」(笑)

ケイ:   気に入ったのね。

ヤシュト: その女の子に聞くよ。

      「マッドって知ってるかい?」

GM:   マッドって名前を出した途端目がキラリ。

      「もちろんです。

       豪快に食べるし、飲むし、優しいんです、女の人には」(笑)

ヤシュト: いや、あのね。

      剣の腕とかを聞きたかったんだけど、しょうがないか。

ラルク:  女の子ですからね。

GM:   その子は主人に

      「ウィロウ、無駄話はヒマな時だ!」

      と言われて、チロって舌を出して戻ってくね。

ジェスタル:しっかし凄いな。全部名前が決まってるワケ?

GM:   NPCのこと? 大抵はね。

      プレイヤーがプレイしているうちに、どの人と仲よくなるかとか、

      肩入れするかとかはGMが指定するものじゃないと思うんだ。

      自然と意気投合した人に名前がないんじゃ興ざめでしょ?

      即興で名前を出せるGMはいいけど、俺はムリだから。

ヤシュト: 俺なんか街道宿のレルドリンさんとマブダチ(親友)だぞ。(笑)

ジェスタル:いつマブダチになったよ!

ヤシュト: (聞いていません)帰りもあの宿に寄るのだ。

      ざっと店内を見回すけど、面白い話をしてる人はいない?

ケイ:   ヤシュトは酒場に来るとすぐそれね。

ヤシュト: 酒場での情報収集は基礎の基礎でしょう。

GM:   カウンターにロイド人が2人。奥の丸テーブルに商人らしき男が4人。

      この商人たちも外国人だろう。

      隣の丸テーブルには冒険者風の若者が2人。

      他にも職人さんらしい人とか、漁師さんなんかがいる。

ヤシュト: さりげなく一応聞き耳を立ててみるけど。

      ……まだサーチは取ったことになってないから、平目の7。

ジェスタル:吾輩も振ろう。

GM:   客たちは声をひそめて話してるけど、カウンターのロイド人は

      ロイド語でけっこう気にせず話をしている。

ジェスタル:外国語かよ、分からんじゃな~い。

ケイ:   ちょいちょい。

ヤシュト: ん?

ケイ:   言語の欄に西部外海語って書いてあるんですけど。

ヤシュト: へ?

ケイ:   もう、ロイドは西部外海語なの!

ヤシュト: おおっそうか。全然使ってないから忘れてた。(笑)

      どんなこと言ってる?

GM:   要約するとこんなことだ。

      メイラレンの西にケルト島跡ってのがあるね?

      11世紀前、つまりTC0年までは最強最古の魔法を誇る

      ケルト王国ってのがあったんだけど、タリア大陸5ヶ国との戦争に

      敗れて魔法力を失い、島の大半が沈んでしまったんだ。

      タリア暦はタリア大陸の国々が主導権を獲得して始まったことになる。

ケイ:   宗教的な暦じゃなかったんだ。

GM:   うん。

      そのケルト島が徐々にだけど浮上しているらしい。

      ロイドの賢者や漁師ギルドが海流や潮の満ち引きから

      調べあげたんだそうだ。

ヤシュト: 島が浮上? GM、島が浮上するほど地形に変化があるなら、

      灯台守の俺も何か気づいてなかったかな?

      俺は一応日課として潮を見たり、漁師たちとは話をしてるつもり

      なんだけど。

GM:   うん。漁師のケジーが、周回魚のアジとかブリのルートが

      去年と比べて微妙にズレてるって言ってたのが思い出せるね。

ヤシュト: 「ケジーの言っていたことは本当だったのか……」

ラルク:  「どうしたんです? 難しい顔をして」

ヤシュト: みんなにも教えよう。ほにゃららぺけぺけ。(笑)

GM:   久米宏のぴったしかんかんを知ってる人って少ないぞ。

ヤシュト: まあまあ、事のあらましをみんなに教えた表現ってことで。

ケイ:   「ケルトに浮かばれたら困る」

ジェスタル:「なんで?」

ケイ:   「お父さんが、これ以上のめり込んだら本当に家が潰れちゃう」(笑)

ジェスタル:「うん、冗談にならないよな」

ヤシュト: しかし、ケルト島が浮上しかけてるって言われても、

      今の俺たちには関係なさそうだしな。

GM:   ジェスタルはいくつだったの?

ジェスタル:もう今日は出かけないだろうから、ピンチ・スキルを使って、

      商人は11、冒険者は13だった。

ケイ:   偉い!

ヤシュト: しまった、ピンチ・スキルを忘れてたよ。

GM:   まずは商人の方。

      ガダメスに帰るには船で止鏡湾を縦断しなくちゃいけないんだけど、

      北のアフ・チャフマンの海賊が商船を狙って、はるばる南下してくる

      らしいね。

      君たちも聞いたことがあるけど、通称“トロブの海賊”は、

      西側諸国沿岸じゃ、タチの悪い海賊として知られている。

ヤシュト: 強いのか?

GM:   これも知っていていいが、TC1127年から2年間、止鏡湾海戦と

      呼ばれる、メイラレンとアフ・チャフマンの戦争が起こってる。

      一時は北トゥムが占領されかける激戦だったが、どういう訳か

      当時王子だった現国王ラブル・チャフマンは突然撤退。

      それっきり休戦状態なんだ。

ジェスタル:TC1127年って言うと……。

ラルク:  今はTC1142年でしたよね?

ヤシュト: 15年も前か。まだ物心つく前だな。

ケイ:   あっ、この前村長さんが戦争をした人もいるって言ってたのは、

      このことだったんだ。

GM:   そう。酒場のハーレや漁師のケジー、牧場のマーディーンなんかは

      傭兵として戦ってるんだよ。

ヤシュト: そんな海賊がウロウロしてんのかよ。危ねぇな。

      だけど、だんだんタリアの世界観がつかめてきたぞ。

GM:   だから商人はその護衛手段をどうするかと、真顔で相談してるんだ。

      冒険者の方は、大した話はしていない。

      おそらくギルドの依頼で動いているんだろう。

      街道沿いのどこにイーガルがよく出るか、なんて話し合ってるね。

ジェスタル:それじゃ、ほにゃららぺけぺけ。(笑)

ケイ:   「一見平和に見えるメイラレンも何かと物騒なのね」

ヤシュト: 「だからこそ、俺たちの活躍の場があるんじゃないか。

       チャンスと思わなくちゃな」

      と、いいつつ商人に話でも聞いてこよう。

ジェスタル:「おいおい、たまにはのんびりしろよ。

       ヤシュトは旅先になるといっつもこうだ」

ケイ:   「そうよ、来たばっかりじゃない」

ヤシュト: 「そうかぁ?」

      うずうず。(笑)

      「分かったよ。たまにはじっと座ってるよ」

ラルク:  「そうですよ。せっかくですから観光もしなくちゃ」

      メイラレンっていうと、何が名物なんですか?

GM:   貿易品として有名なのは絹だよ。

      それもエメラルド・シルクと呼ばれる、緑色の珍しい絹。

      後は内陸に向けての塩と、海産物、真珠、珊瑚なんかも質がいい。

ラルク:  カチュアさんのお土産にいいかも。

ジェスタル:普通エレミヤさんを先に思い浮かべないか?

ラルク:  ははは。

ヤシュト: 王都だから、質のいい武器もあるかもしれない。

      今から出かけられるかな?

ジェスタル:だ・か・ら! のんびりしろって言ってるじゃな~い!(一同爆笑)

      おめ~はよ、ちょっとは落ち着けって。

ヤシュト: 分かった、分かった、今度こそ分かった。

      今日はのんびりしよう。

GM:   君たちはその後、適当に飲み食いしながら雑談でいいね?

      それじゃ翌日に回していいかな?

ジェスタル:先が長そうだから、今日はおとなしく寝ておこう。

ケイ:   めずらしい。(笑)

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