- works.02 ある約束 -

その1~3

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その1~3を掲載しています。




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《プレイヤーたちの導入》


GM:   一ヶ月ぶりのテーブル・トークだけど、前回の流れは覚えてる?

PL A(ヤシュト):あたぼうよ。予習復習はばっちり。

PL B(ジェスタル):そういえば、兄弟を作るって話どうなった?

PL C(ケイ):あ、あれね。やっぱりやめとく。

      もうキャンペーン始まっちゃったし、

      食いぶちが増えるとお父さん大変そうだから。(笑)

PL D(ラルク):親思いですねぇ。

PL A:   ところでGM、この間言っといた件はOK?

GM:   サーチ・スキルを取りたいんだったよね。

PL C:   あ、私もウィザードを上げたい。

PL B:   よくそんなに経験点があるなぁ。吾輩なんか全然ないよ。

      あれ、1400点ある。(笑)

PL C:   私は戦闘スキルを何も持ってないもん。

      ウィザード以外のスキルはセージだけだし。

      この前のセッションの経験値でちょうど3000と10になったの。

PL D:   いいなぁ。私は何も上げられそうにないですよ。

GM:   がんばるんだ。アガルタの大司祭めざして。

      ところでサーチ、ウィザード・スキルを習得するためには、

      ギルドに行く必要がある。

      南トゥムにはご存知の通りギルドがありません。

      北トゥムか王都メイラレンに行かなくてはならない。

      それが今回の導入部になるわけだ。

PL C:   できればメイラレンがいいな。私の生まれ故郷だし。

PL B:   お屋敷に差押え、とか書かれたりして。(笑)

PL A:   いつか取り戻してみせるわ、と。(笑)

GM:   んじゃ始めるよ。どんな展開でギルドに行くことになるかは、

      シナリオの中で確かめてよ。

PL B:   今日も暴れちゃうよん。(笑)


《works.02 ある約束》


~その1 王都メイラレンへ~


GM:   前回は村の中をあまりウロウロできなかったって、一部から不満の声が

      上がりましたので、今回は好きなだけやってください。

      ストーリーを追うばかりがテーブルトークじゃない。

      今日はのんびりいこう。

ヤシュト: 誰がうろつきたいって言い出したんだ?

ケイ:   は~い。

ジェスタル:やっぱり。

GM:   前回の事件から、早1週間が過ぎました。日射しは日に日に強くなり、

      いかにも夏だなぁって感じ。君たちの活躍は村中が知ってて、

      ちょっとした有名人ってところかな。

ケイ:   えへん。

GM:   はい、ウロウロしたがっていたケイさん、あなたから始めましょう。

ケイ:   ど~んと来なさい!(笑)

GM:   食卓でお父さんのロンが紅茶を飲みながら言うね。

      「ケイ、最近よく家を空けるそうだが……」

ケイ:   「お父さん心配症なんだから。ヤシュトたちと一緒よ」

GM:   「だから心配なんじゃないか」(笑)

ヤシュト: どーゆー意味じゃい。

GM:   「聞いたところによると、船乗りと一晩中騒いだり、山小屋の近くで

       魔法を使いまくったり……」

ジェスタル:非行の兆しありですな。お嬢さんはグレてます。(笑)

ケイ:   「それは人助けのためにやったのよ、ねぇ」

ヤシュト: ねぇ、と言われても俺たちはいないぞ。

ケイ:   それじゃお母さんに振ったことにしてよ。

GM:   はいはい、お母さん登場ね。

      「そうですよ。

       あなたのやってる事に較べたら可愛いもんじゃないですか」(笑)

ケイ:   「お母さん、ちょっとキツイ」

ラルク:  結構恨んでるんじゃないですか?

ヤシュト: 貴族暮しから転落したわけだからな。

GM:   「しょうがない。今日は一日古文書の整理を手伝ってもらうか」

ケイ:   「わ、私、ジェスタルと約束があったんだ、じゃねっ!」

ジェスタル:はて、そんな覚えはないぞ。(笑)

ケイ:   ここにいないんだから黙っててよ!

      慌てて家を飛び出します。

      ほんとにジェスタルの家に行こっと。

GM:   往来では一仕事終えた漁師さんとか、果樹園に向かうおばさんなんかが

      行き交ってるね。

      その漁師の中にジェスタルもいるよ。

ケイ:   「ジェスタル~!」

ジェスタル:「どうした、慌てて」

ケイ:   「また手伝わされそうだから逃げてきたの」

ジェスタル:「吾輩なんか、きっちり家の手伝いをしてるぞ。

       見ろ、この立派なマグロを!」(笑)

      網の中のマグロをぐっと自慢するよ。

ケイ:   ほとんど漁師になってる。

ジェスタル:一週間も遊んでるわけにいかないだろ?

      これでも漁師の仕事が気に入ってるからな。

ケイ:   「そろそろ冒険に出ようよ」

ジェスタル:「いいねぇ。漁師にも飽きてきたんだ」(笑)

ラルク:  言ってることが滅茶苦茶ですよ~。

ジェスタル:「と、なれば話は早い。ヤシュトんとこ行くか」

ケイ:   「うん。ソニカちゃんにも会えるしね」

GM:   その頃ヤシュトは?

ヤシュト: 俺はルグニカとソニカに怒られないよう薪割り。(笑)

GM:   それじゃソニカが窓から顔出して、

      「あにぃ~! あと50本!」(笑)

ヤシュト: いい修業だぜ。うおりゃ~! カコーン。

GM:   ヤシュトが汗を流しながら薪を割っていると、ジェスタルとケイが

      歩いてくるけど?

ヤシュト: それじゃ斧を置いて、

      「おう、どうした。久し振りだな」

ジェスタル:「このお嬢さんが冒険に出たがっててよ。ほれマグロ」(笑)

ヤシュト: 「悪いないつも」

      GM、勝手にマグロがあるけどいいのか?(笑)

GM:   いいだろ、マグロくらい。

ヤシュト: ソニカを呼んでマグロを渡そう。

GM:   「わ~い、魚だ。あ、ケイ、いらっしゃい。

       なんだジェスタルも一緒か」

ジェスタル:「悪かったなぁ~!」

      なんだか前回も言われたような……。(笑)

GM:   ソニカはマグロを一生懸命かかえて、

      「ムニエルにするから食べてきなよ~」

ラルク:  激辛の。(笑)

ケイ:   「ありがとう」(苦笑)

ジェスタル:生返事だけしておこう。

ヤシュト: 「それよりなんだよ、冒険って?」

ケイ:   「だって家にいると手伝いさせられるんだもん」

ヤシュト: 「俺なんか灯台番に薪割りだぞ。それくらいなんだ」

ジェスタル:「だけどよ、このままじゃ漁師に灯台守で一生終っちゃうぜ」(笑)

ヤシュト: 「そうだった。それじゃラルクも誘って酒場でも行くか」

ケイ:   「面白い話があるかもよ」

ジェスタル:「酒も飲めるしな。この前みたくタダにならないかな」

GM:   ハーレさんもいい加減怒っちゃうよ。(笑)

      それじゃ3人そろってアガルタ教会に行くと。

ラルク:  あれ、私は教会にいるんですか?(笑)

ヤシュト: 当たり前だろ。教会を手伝わんでどうする。

ケイ:   ラルクの実家は何やってるの?

ラルク:  家はお酒作ってます。

GM:   ラルクの家は人が多いよ。おじいさん、両親、弟。それにエールや

      シードルを作ってる家だから使用人が十数人。

      南トゥムでは有力な酒造所だね。

      ラルクが当然跡を継ぐものと思われていたんだけど、

      なぜかアガルタの司祭になっちゃった。

ラルク:  弟がいるからいいでしょ。

ヤシュト: 家族もそれを望んでたりしてな。(笑)

GM:   ラルクはカチュアさんと一緒に礼拝堂の掃除だね。

      エレミヤ神父は自室で調べ物をしてるよ。

ジェスタル:カチュアって誰だっけ?

ケイ:   エレミヤ神父の妹さんでしょ?

ヤシュト: だぁ~! 娘さんだ!(笑)

      メモしとけよ。俺なんかヤシュト・メモ作ってんだぞ。(笑)

GM:   はいはい。カチュアは長椅子を拭きながら、

      「この間はラルクも大活躍だったわね。

       タムワさんに向かってアガルタの教えを説いた時は、

       とても立派だったわ」

ラルク:  「いやぁ~、当然のことをしただけですよ」

ジェスタル:鼻の下が伸びてる。(笑)

ヤシュト: それじゃ二人っきりで話してるところを、戸口から覗いてにやにや。

ラルク:  「あれ、どうしたんですか?」

ケイ:   「お邪魔して悪いわね」

ラルク:  「いやだなぁ、私はケイさん一筋ですよ」(笑)

ジェスタル:言うようになったな。

GM:   ようやくラルクもケイさんに慣れてきたか。

ケイ:   この間のカラオケで親睦を深めたんだもんね。

ジェスタル:こいつは古い歌ばっか歌ってな。

ケイ:   だって太田裕美、好きなんだもん。

      (小声で歌っています)恋人よ~ ぼくは旅立つ~。(笑)

ジェスタル:歌わないでいいって。

ヤシュト: お前は演歌ばっかだしな。

ジェスタル:男はやっぱ演歌じゃな~い。(笑)

GM:   みんな上手いよ、ほんとに。でもあそこはちょっと高いよな。

ラルク:  早くも脱線ですか?

GM:   失礼しました。GMも脱線しちゃしょうがないよね。

      カチュアは同年代のみんなが来たんで嬉しそうだよ。

      「せっかく来てくれたんだから、お茶でも入れるわ」

      そう言って奥に消える。

ヤシュト: 酒場に行こうと思ってたんだが、お茶くらいはごちになるか。

ジェスタル:それにまだ早いだろ?

GM:   うん、11時頃だよ。

      ほどなく紅茶と、クッキーを持ってカチュアが戻ってくるよ。

ケイ:   「ありがとう。う~ん、いい香り」

ジェスタル:「ヤシュトの家とは格調が違う」(笑)

ヤシュト: 「今日は全員夕食に招待してやる」(笑)

ラルク:  「いただきま~す」

ケイ:   「カチュアは教会の仕事ばかりで退屈しない?」

GM:   「退屈どころか、毎日自分の力のなさを実感させられるわ。

       現にミリアの病気も治せないし……」

ケイ:   「立派ねぇ」

ヤシュト: 「ミリアか。どうにかならんもんかな」

ケイ:   なぁ~んか自分がチャランポランに思えてきた。

ジェスタル:安心しなさい。それは事実です。(一同爆笑)

ケイ:   なによ~。

GM:   「そういえば父さんが、恩師のハート司教に相談したみたい」

ケイ:   ハート司教? この前聞いたよね。

      「ふ~ん、それじゃ病気の原因が分かるかもね」

ジェスタル:「ハート司教って偉いの?」

ケイ:   「ラルクの10倍くらい」(笑)

ジェスタル:「そりゃ偉そうだ」

GM:   そう話していると、奥からエレミヤ神父が出てくるよ。

      「おお、この香りはマリーローズだね。」

      カチュアが

      「残念でした、クィーンメリーです。

       父さんは紅茶と言うとそれしか知らないんだから」

ケイ:   あれ、そういえば、カチュアのお母さんは?

GM:   6年前にエレミヤとカチュアは南トゥムにやって来たんだけど、

      その時から二人きりだった。

      その事について君たちは聞いたことがない。

      なんでお母さんがいないのかってのはね。

ヤシュト: 改めて聞くのもなんだしな。

ケイ:   う~。伏線の匂いがぷんぷんするわ。

GM:   まぁ2話目だし気楽にやってよ。

ケイ:   いつもの手だぁ~。

ヤシュト: 油断してると思うツボにはまってる。

ジェスタル:いいじゃないか、面白けりゃ。(笑)

GM:   エレミヤ神父は皆を見回して、

      「いい時に全員そろっているな。

       ところで君たちは当分村を空けても大丈夫かい?」

ラルク:  「といいますと?」

GM:   エレミヤ神父は長椅子の一つに座って言うね。

      「ミリアのことは知っているだろう。

       何故歩けなくなったのか、未だに理由がつかめない。

       そこで恩師ハート司教に助力を乞うたのだ。

       その返事が今さっきアングートで届いた」

      アングートってのは、この世界で用いられている一般的な伝書鳩ね。

      「それによると、ハート司教直々に南トゥムを訪れてくれる

       そうなのだ。後はこちらからの正式な依頼状を届ければいい。

       こればかりはアングートで済ませるわけにはいかないのだよ」

ヤシュト: お~っ、メイラレンに行けるじゃないか!

ジェスタル:なるほど。

GM:   その推測は正しいよ。

      「そこで君たちに依頼状を届けてほしいのだ。

       先日は無法者たちから見事積荷を取り戻したそうだね。

       それだけの力量なら道中も安心だし、

       見聞を広めるためにも王都は行っておいて損はない。

       もちろん依頼状を届けた後の行動は君たちの自由だ」

ラルク:  「そのようなことなら、喜んで行かせてもらいます」

ヤシュト: 「ミリアも元気になるかもしれないしな」

ジェスタル:「王都に行けば、うまいものが、いてっ!」(笑)

ケイ:   「まったくあんたってば」

ジェスタル:「ぶつことないだろ」

GM:   エレミヤは笑いを抑えながら、

      「それでは引き受けてくれるのかね?」

ヤシュト: 「任せてください。

       というより、こちらからお願いしたいくらいですよ」

      で、細かいことを聞きたいんだけど、王都まではどのくらい?

GM:   徒歩で1週間、馬なら3~4日だろう。

ジェスタル:歩きは辛そうだけど、馬なんか持ってないよな。

ラルク:  馬は高いですよ。

GM:   そこらへんは地元のよしみで、牧場から借りられるだろ。

      エレミヤさんは、ちょっと奥に引っ込むと、少しして出てきて、

      封印した羊皮紙をラルクに渡す。

      「これをアガルタ教会に届けてくれ。

       城門もこれで通れるはずだ」

ラルク:  大事にしまっておきます。羊皮紙、と。

ヤシュト: 羊皮紙って持ち物に書いといたら、何だか分からんだろ。(笑)

GM:   エレミヤ神父からの依頼状でいいんじゃない。

ヤシュト: やったね、王都だぜ。

      これでサーチもばっちりよ。

GM:   さらにエレミヤは旅費として一人当たり500Goldを渡してくれる。

      考えてみれば、この村にも早馬の郵送屋はいるからね、

      君たちを行かせるのは、勉強させたい親心からだね。

ラルク:  やっぱり私の尊敬する司祭様です。

ケイ:   「明日にでも出発する?」

ヤシュト: 「そうだな、早い方がいいだろう。

       今日中に準備を済ませて、明朝出発だ」

ジェスタル:「それじゃ、吾輩が馬を借りてこよう」

ケイ:   「牧場でしょ? 私も行く」

ヤシュト: 「それじゃ俺とラルクで、道具屋で必要な物を揃えとこう」

ラルク:  エレミヤ司祭に挨拶して、教会を後にします。

      「おみやげ買ってきますから」(笑)

GM:   ジェスタルとケイは牧場、ヤシュトとラルクは道具屋だね。

ヤシュト: 「後で酒場で落ち合うことにしよう」

ジェスタル:「分かった」


~その2 ジーバース伯爵~


GM:   牧場は教会からだと道具屋と同じ方向か。

      途中で二手に分かれて、まずは牧場組から。

ジェスタル:柵越しにのぞいてみるけど誰かいる?

GM:   牧場主マーディーンの四女、イレーレが調教してるよ。

      女の子なのに見事に乗りこなしてるね。年頃は君たちと同世代。

      ショートカットの明るい子だよ。

      それとイレーレはジェスタルみたいな魔法は使えないけど、

      精霊の存在を感じることはできる。精霊語も分かるみたいだ。

      ちょっと才能はあるけど、未開発って感じだね。

ケイ:   ふ~ん。霊感少女みたい。(笑)

      同じ村だから知合いでいいのよね?

      「イレーレ~!」

GM:   イレーレは馬首を巡らせて、君たちの方へ早駆けでやってくるね。

      「どうしたの、デート?」

ケイ:   「ばっ、ばか言わないでよ。こんなのとデートのわけないでしょ」

ジェスタル:こんなの……。

GM:   「あら、ジェスタルだって黙ってれば、結構いい男よねぇ」(笑)

ジェスタル:はいはい。黙ってましょ。(笑)

ケイ:   「イレーレって馬乗るの上手いわね。私でも乗れるかな?」

GM:   「大丈夫。うちのはみんな大人しいから。原則的に」

ジェスタル:「原則的じゃない奴もいるのか」

ケイ:   「お父さんいる?」

GM:   「うん、食後のエールを飲んでるけど。何か用?

       ……また迷惑でもかけた?」

ヤシュト: そ~いう親父なワケね。(笑)

ケイ:   「違うの。馬を借りたいの。えっと、4頭でいいよね」

ジェスタル:「2人づつ乗るんじゃ大変そうだから、一人一頭ずつでいいでしょ」

GM:   「それじゃ家の方へ回ってよ」

      と言われて、君たちはイレーレの家に向かうわけだ。

ケイ:   イレーレのお父さんは何て名前だっけ?

ラルク:  マーディーンです。

ヤシュト: たった今聞いたばかりだろ。

ケイ:   えへへ。

      「マーディーンさん、こんにちわ」

GM:   すると戸口の横に張り出したテラスがあるんだけど、そこの安楽椅子に

      エール樽のようなお腹をしたマーディーンが、のんびり揺られてるよ。

ジェスタル:飲んでる?

GM:   頬はほんのり紅い。(笑)

ジェスタル:「あの~、おじさん」

GM:   マーディーンは眠そうな目を向けてアクビする。

      「ふぁ~、ジェスタルか。一杯やりに来たのか?」

ジェスタル:「いいっすねぇ!」(笑)

ケイ:   「なに言ってるの。馬を借りに来たんです」

GM:   「馬? そりゃ牧場だから売るほどいるがよ」

ケイ:   「それじゃ貸してもらえますか? なるべく安く」

GM:   「ふぁ~あ。南側の柵の辺りにずいぶん雑草が増えたな」

ジェスタル:「は?」

ケイ:   「おじさん、酔ってる~」

GM:   「ちなみに鎌は裏の納屋だ」

ケイ:   「あの、馬を」

GM:   「だから安く借りたいんだろ?」(笑)

ヤシュト: さぁ、がんばってくれ。みんなのためだ。(笑)

ジェスタル:「草を刈れば安く借りれるんですね?」

GM:   「おうとも。終った後には冷たいエールもつけてやる」

ジェスタル:「やります! 是非ともやらせてください!」(一同爆笑)

ケイ:   「え~っ、この暑いなか草むしり~?」

ジェスタル:「ほら、やろうぜ」

ケイ:   酔いが醒めたら覚えてない、なんてことはないでしょうね。(笑)

GM:   一方ジェスタルたちと別れた直後のヤシュト、ラルクの二人は、

      カラカラと背後から馬車が近付くのが聞こえる。

ヤシュト: それはよけるよ。

GM:   見ると立派な2頭立ての箱馬車で、御者の身なりも暑いのにパリっと

      してる。馬車の側面には紋章が彫られてるね。どう見ても貴族のだ。

ケイ:   (小声で)セージ、セージ。

ヤシュト: 任せとけ。その紋章が何の紋章か……13。

GM:   これはメイラレンの貴族、ウェーバー伯爵の紋章だね。

      その出目なら、ウェーバー伯爵家というのはロイド系メイラレン人で

      独自の交易ルートを広げてきた家柄だということまで思い出せる。

ヤシュト: そんな貴族が南トゥムに何の用だ?

      と思いながら見送ろう。

ラルク:  跪かないでいいんですかね。

ヤシュト: 時代劇じゃないからいいだろ。(笑)

      ちょっと、頭を下げてやり過ごそう。

GM:   君たちが見送ろうと立ち止まっていると、

      馬車も君たちの前で停まるよ。

      窓からはブロンドの若い女性が見える。

      レースのドレスを着て、気品が漂ってるね。

ラルク:  住所とか聞きましょうか?(一同爆笑)

ジェスタル:相手は貴族だぞ~。

GM:   その女性の奥に、これまた若いオールバックの、丸眼鏡をかけた青年が

      いる。微かにアンドという高価な香水の匂いが漂ってくるね。

ヤシュト: 貴族だけにキザだな。

GM:   言うの?

ヤシュト: 思っただけ。(笑)

GM:   その青年が身を乗り出して尋ねるよ。

      「この村にショウ侯爵のお屋敷があるはずなのだが」

ヤシュト: ショウ侯爵……? はて、どっかで聞いたな。

ケイ:   わざとらしいわね! 家よ、う・ち!(笑)

ヤシュト: 「確かにショウ家はありますが、お屋敷かどうかは……」(笑)

ラルク:  それじゃ場所を教えます。

GM:   青年はありがとう、と言って、馬車は教えられた方向へ去って行くね。

ケイ:   私が道具屋に行ってればよかった。一体うちに何の用だろ?

      ねぇGM、メイラレンにいた頃会ったことない?

GM:   え~とね。

ジェスタル:そんなこと考えてるヒマはな~い!

      「ほら、そっちの草をむしれ!」(笑)

ケイ:   あ~ん。これでも貴族の娘なのに~。

ヤシュト: 俺も気になるけど、相手が貴族じゃ変な詮索はできないしな。

      後でロンさんに聞いてみるか。とりあえず道具屋だ。

ラルク:  ですね。

GM:   道具屋さんはイッカという主人が経営してる。

      このおじさんの妻がマーディーンの長女カミュだ。

      こんな設定は君たちが南トゥムの住人だから言ってるだけであって、

      覚える必要はないからね。

ケイ:   そう言われても聞いたら気になっちゃう。イレーレが四女でしょ?

      次女と三女は?

GM:   まぁキャラクターは知ってるから言うけど、次女のレイマは北トゥムの

      町長夫人になってる。姉妹中一番の美人だった。

ヤシュト: 玉の輿ってやつだな。

GM:   それと、三女のソーシャは君たちが子供の頃、正確に言うと7年前に

      13歳で死亡している。確か熱病だったはずだ。

ケイ:   なんかありそうね。

ジェスタル:このGMですからねぇ。(笑)

ケイ:   そうそう、気をつけないと。

ラルク:  この四姉妹の名前はメモっときましょう。

ヤシュト: いいぞラルク。

GM:   (いい勘してるぞ、みんな)

      で、そのカミュが店番をしてるよ。

      25歳だから君たちから見れば、お姉さんだね。

ラルク:  間違っても、おばさんと言っちゃいけませんね。(笑)

GM:   カミュは笑顔で迎えてくれる。

      「あら、珍しい。買物?」

ラルク:  「ええ、ちょっと。保存食とか、ロープ、それに松明なんかも」

GM:   「いいわねぇ、みんなでピクニック?」(笑)

ヤシュト: 「いや、ちょっとメイラレンまで」

GM:   「裏山の池のほとりなんて涼しいものね」(笑)

ケイ:   人の話を聞いてない……。

ジェスタル:やっぱりマーディーンさんの娘じゃな~い。(笑)

GM:   ふざけるのはこの位にして、ルールブックのリストにあるものは、

      購入できるからね。自分で値段をチェックして。

      そうだな、知り合いだから3割引きで売ってくれるよ。

ヤシュト: らっき~。鏡とかコンパスも買っとこう。

ケイ:   私たちの分の保存食もお願いね。

ラルク:  任せてください。え~と、3食かける4日かける4人で48食!

      すごい荷物ですね。

ヤシュト: 一人づつ馬に積めば大したことないだろ。

ケイ:   ず~っと保存食ってやだな。

      途中に街道宿とかないの?

GM:   え~と、ちょうど中間地点に宿屋が何件かあるよ。

ジェスタル:だったらさ、半分にしといて宿で買えばいいんじゃないか?

ラルク:  そうですね。そうしときましょう。

ヤシュト: 買物も済んだし、酒場に行くか。


~その3 出発前夜~


GM:   ヤシュトたちは酒場にいると。待つこと2時間、頬とか腕にドロを

      つけたジェスタルとケイが酒場”ウミガメ”にやってくるよ。

ケイ:   結局、いくらで貸してくれるの?

GM:   2週間1頭あたり100Goldだ。これは破格の値段だよ。

ジェスタル:エールを、エールをお忘れなく!(笑)

GM:   もちろん。ジェスタルは冷たいのをグッと飲み干して来たんだよ。

      マーディーンはもっと一緒に飲みたそうだったけど、

      イレーレに怒られて渋々仕事を始めてたね。

ケイ:   私たちもほっぺたを紅くしてるのね。

ジェスタル:「おう、おまたせ」

ヤシュト: 「ずいぶん遅かったじゃないか。顔が真っ赤だぞ。日焼けか?」(笑)

GM:   主人のハーレさんが

      「きったねぇな! 手ぐらい洗ってきな」(笑)

ジェスタル:「労働の証ですよ」

      服でゴシゴシ。そのまま座っちゃう。(笑)

ケイ:   私は洗おっと。

ラルク:  「どうでした、借りられました?」

ジェスタル:「もちよ。100Goldでいいってさ」

ヤシュト: 「ずいぶん安いな。

       マーディーンのおやじさんも気前がいい」

ジェスタル:「このドロを見ろよ。働かされたんだよ」

ラルク:  「いやいや、ご苦労様でした。

       冷たいものでも飲んでください」

ジェスタル:「もう飲んできたんだけどね」(笑)

ケイ:   「明日は朝一番で出るでしょ?」

ヤシュト: 「そうだな、涼しいうちに距離を稼ぎたいからな」

ジェスタル:「それじゃ今夜は徹夜して飲んで、明朝出発と」(笑)

ヤシュト: するか~!

GM:   ハーレが興味を覚えたらしく、聞いてくるよ。

      「なんだ、どっか行くのか?」

ヤシュト: 「ちょっとメイラレンまでね」

GM:   「なるほど。冒険者として本腰を入れるつもりか。

       王都に行かないとギルドはないからな」

ジェスタル:「漁師のままでもいいんだけどね」(笑)

ヤシュト: 「お、そうだケイ。

       昼間なんとか伯爵ってのが、お前ん家に行ったぞ」

ケイ:   なんとか伯爵じゃわかんないじゃない。(笑)

ラルク:  ウェーバー伯爵です。

ケイ:   さっき聞こうとして邪魔されたウェーバー伯爵ね。(笑)

GM:   ケイは覚えてるけど、あれはまだ社交会にも出ていた頃。(笑)

      まだ7、8歳だったケイは壮麗なダンスパーティーで、

      少年だった頃のジーバース・ウェーバーに会っているよ。

      その頃からウェーバー家はジーバースが当主になっていたんだ。

ケイ:   うんうん。

GM:   幼い少女をダンスに誘ってくれる人もいなくて、ケイは窓際の椅子に

      ポツンと座っていた。

      そんなケイにチョコレート菓子を持ってきてくれ、

      身を屈めてダンスの相手までしてくれたのがジーバース伯爵なんだ。

      ケイにとってジーバースは、優しいお兄さんとして記憶に残ってる。

ヤシュト: なんだ、いいヤツなのか。

ラルク:  たしかに礼儀正しい人でしたよね。

ケイ:   それじゃほのかに憧れを抱いてよっと。

ラルク:  初恋の人ですか。

ヤシュト: ラルク、ピーンチ!(笑)

ケイ:   「ジーバース伯爵がなんの用だろ?

       帰ったらお父さんに聞いてみるね」

ヤシュト: 「出かけるとなると、またあいつらがうるさいな」

ジェスタル:「あいつら?」

ヤシュト: 「ルグニカとソニカだよ」

GM:   もうこれといってやることがないなら、明朝まで時間を進めるよ?

ケイ:   ちょっと、ちょっと。お父さんと話がしたいってば。(笑)

GM:   あ、ゴメン。そうだったね。

      それぞれ家に帰ったことにしよう。どうぞ。

ケイ:   「ね、お父さん。今日ジーバース伯爵が来たでしょ?」

GM:   「ああ、来たとも。お前とも会いたがってたな。

       もっと早く帰ってくればいいのに」

ケイ:   「仕方ないじゃない、草むしりしてたんだから」(笑)

GM:   「こづかいが足りないのか?」(一同爆笑)

ケイ:   「えっ、ううん、ちょっとね。

       ジーバース伯爵がどうして来たの?」

GM:   「なんでも北トゥムに屋敷を構えたので、その挨拶に来てくれたんだ。

       近くまで来ることがあったら、是非寄ってくれと言っていた。

       もうアイアン・ロック経由の船の上だろうな」

ケイ:   「それだけ?」

GM:   「それとな、父さんのケルト好きを知ってるから、

       ケルトに関する古文書を何冊か持ってきてくれたんだよ。

       なんでもケルトは、タリア大陸各地に祠のような物を

       造ったようでね。

       この南トゥムにも何らかの遺跡を残しているようなんだ。

       それに関する古文書だそうだ。お前も読むか?」

ケイ:   「う~、難しそうだからいい」(笑)

ヤシュト: 前回のジェスタル状態だな。

GM:   (……読んどけば後で楽なのに)

      「お前にも、みやげを置いていってくれたぞ」

ケイ:   「なになに?」

GM:   ”天使の翼”っていう、香水だね。

ジェスタル:吾輩には?

ケイ:   なんで、あんたにおみやげがあるのよ。(笑)

ヤシュト: 金持ちだな、やっぱり。

      ラルク、贈り物じゃ勝てそうもないな。

ラルク:  今に見ててくださいって。(笑)

ケイ:   それじゃ今日は、その香水を手首にちょっとつけて、幸せに眠るね。

      あ、それと両親に王都行きの事は言っとくね。

GM:   了解。別に反対はされないでしょう。

      アガルタの使者として王都に行くのは、名誉ある役目だからね。

ヤシュト: 俺はうまく二人を説得できたんだろうか。

GM:   そんなわけなかろう。

      ソニカは君の腕をつかんで、

      「あにぃばっかりずるい~。あたしも王都に行く~」(笑)

ケイ:   ソニカちゃんはかわいいなぁ。

ヤシュト: 「遊びじゃないんだぞ。ミリアの病気を治すためなんだからな」

GM:   「でも、きっとあにぃはおいしいもの食べて、

       おもしろいことするんだ」(笑)

ヤシュト: 「なに訳の分からないこと言ってるんだ。そんなわけないじゃないか。

       ルグニカは分かるだろ?」

GM:   「ぜんっぜん」(笑)

ヤシュト: く~っ、こいつらは!

GM:   「また灯台守は俺たち?」

ヤシュト: 「分かった分かった。

       それじゃ土産を買ってくるから、それで勘弁しろ」

GM:   「あたしは珊瑚の櫛がほしい~」

      「俺はブーツがいいな。もう親指が出そうなんだ」

      と口々に言っておりますが。

ヤシュト: 「オーケー、しょうがねえな」(律儀にメモしてます)

GM:   そんなこんなで、出発前夜は更けていくと。

      もういいね?

一同: いいよ~。

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