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 勢いに流されるままデートをすること数回。彼のことが少しずつ分かってきた。


「その中途半端な敬語やめていいよ」

「いや、でも多分貴女の方が年上だと思うんで」

「あたしは永遠の18歳だよ(ウィンク)」

「ハハ、じゃあ同い年っすね」


 その乾いた笑いはなんだ。



 失礼なところがあることとか。




「貴女を見かける前に、変なやつにあったんすよ」

「変な?」

「坊さんみたいな服だったけど髪がオレンジだったから多分あれはコスプレっすね。そいつがすれ違いざまに、これからいい人に会えるだとかなんとか」


 それは胡散臭い。新手の宗教かなにかだろうか。


「予感がどーのとか言ってたし、何かそういう系の勧誘だったのかも」

「カミサマとかそういうの、信じてるの?」


 あたしが言うのもなんだが。まぁ何を信じるかは人それぞれなので強く否定する気はないけどさ。


「いやー、信じてなかったんですけど、貴女に会えたから。あながち嘘ばかりでもないのかもと」


 一体どっちの意味だろう。

「いい人に」の方なら……。そう勝手に期待してしまう。彼の方を見ると目が合った。ふわっと彼は優しく微笑む。あぁもう。顔が赤くなるのが分かって思わず顔を背けた。


「……君、絶対あたしが初彼女じゃないでしょ」

「ん、まぁ」



 女たらしなこととか。




「おれ、演劇部入ってるんすよ」

「へぇ。演技できるんだ」


 まぁちょい役ばっかですけど、と彼が笑う。


「でも今度主人公のライバル役に選ばれて。よかったら観に来てくれませんか?」


 そう誘われたので、せっかくだからと観に行った。学生がやるものだし、見せてもらったパンフレットには『全人類が泣くであろう!』というやたら規模のでかいあおりに、『タイヤキの尻尾にあんこを入れる派』という一切内容を予想させない題名だったため、正直あまり期待していなかった。


 そもそも魚だから尻尾ではなく尾びれが正解なんじゃという疑問を抱きつつ鑑賞していたけれど、気が付いたらそんなことはどうでもよくなるくらい夢中になっていた。特に後半が良かった。サトルからもらったタイヤキの尻尾に詰まった餡が輝き、アズマの命を守る場面。サトルの思いを感じられ、涙せずにはいられなかった。

 あ、もちろん彼も良かった。でも彼に関しては演技が、というより彼自身が、になってしまうけれど。

 だってほわほわしていて懐っこくてどこか犬っぽい彼が、普段は見せないキリッとした表情とか男らしい言葉遣いとかしていたのだ。そりゃあ年甲斐もなくキュンキュンしてしまうのも仕方ないよね。ギャップ萌えの意味を身をもって知った。


 彼のことを知るたびに惹かれてしまう。それはあまり良くないとわかっているけど、どうしようもなかった。どうしようもないならしょうがない。

 あたしは開き直ることにした。

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