ポラリス
サタナエル
ポラリス
You gods, will give us. Some faults to make us men.
神は、我々を人間にするために、何らかの欠点を与える。
ウィリアム・シェイクスピア
かの有名な大文豪がこんな素晴らしいことを言っていた。
Happiness does not lie in happiness, but in the achievement of it.
幸福は幸福の中にあるのではなく、それを手に入れる過程の中だけにある。
フョードル・ドストエフスキー
シェイクスピアもドストエフスキーも素晴らしい。
けれどあたしには難しすぎていまだにこの名言の意味が分からずにいた。
夜空に浮かぶ月を見ながらカケルはあたしに言った。
「地球はまだ知らないことばっかだよな。レミはどう思う?」
「分かんない…」
カケルはあたしと付き合ってから地球の話ばかりだ。
だがそれも悪くない。
図書館で魯迅やシェイクスピアや坂口安吾や夏目漱石の作品を読むのも楽しい。
ドストエフスキーは難しいけれどいつか慣れてくるだろう。
あたしは裸足で夜の浜辺を歩いた。
カケルは途中から靴と靴下を脱いで裸足になった。
夜に浮かぶ北極星は綺麗だった。
「あれがポラリスな」
カケルは空に浮かぶ北極星を指差しながらあたしに教えた。
「ポラリス?」
あたしはおうむ返しでカケルに聞く。
「北極星だよ。ポラリスはラテン語で「極の」を意味する言葉だよ。レミは天体に興味ないか?」
「昔はちょっとだけあったけど。カケルほどじゃないけどね」
あたしは笑いながらカケルに言った。
あのポラリスは気高くも天に浮かんでいる。
まるでカケルみたいだ。
あんな感じで気高くいられたらいいのに。
打ち寄せる波があたしとカケルの足跡を消していく。
「神話にもあの星が出てくるんだ。レミにも教えてやればよかったな」
カケルが得意げにあたしに笑う。
「カケルとずっと一緒にいたいよ」
あたしはカケルに笑いかける。
「俺もレミとずっと一緒にいる。約束だぜ」
カケルはあたしの手を繋ぎながら言った。
あたしはカケルを支える星になる。
これからもずっとカケルのそばにいる。
2人でこれからもあの星のように逞しくも強く歩いていこう。
終
ポラリス サタナエル @onore300
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