第4話 7日目

大智が、次に目覚めたのは、病室の中だった。


「あれ?ここは・・・。」


大智が、状況を把握しようと辺りを見渡している事に気づき、

医師が寄り添い大智に状況を説明し始めた。


どうやら昨日の夕方、公園で倒れている大智を、通りかかった住民が連絡してくれて

この病院へ運んでくれたそうだ。


大智は、少しほっとした。

そして、少年がいなかったか、医師に聞くと。

医師は、大智が眠っていたベットの隣にある机の方へ目を向けた。


大智は、目を疑った、

そこには、片方の羽を失った蝉の死骸が。


「嘘だろ・・・。なんで。」

すると、医師は、ゆっくりと重たい口を開いた。

「タカラゼミ。本当に実在していたとはな。」

大智は、今度は、耳を疑った。


聞き覚えのある言葉と、聞きなれないその言葉。

続けて医師は、大智に語り掛けた。


「都市伝説の一つともされているタカラゼミは、昔、人間の欲を見て進化を遂げていった。」

「自分達の欲を満たすモノを求め、そして、いつしかそれを叶えてしまう程の存在となっていた。」

「しかし、欲深い人間は、その蝉を許さなかった。」

「その先に、タカラゼミが辿ったのは、絶滅。」


「なんで、先生が知ってるんだよ?」

そう聞くと、医師は、カレンダーに目を向け大智の問いに答えた。

「昔、あれは10年前位の事か。」

「ある少年が、ここを訪ねてきた。」

「友達を探していると。」


大智は、その少年が誰なのかわかった。

自分だ。


「まだ幼かったその子供と一緒に、友達が消えた公園へ行き、その友達を探していた。」

「陽が暮れて、その子供の両親が迎えに来て。」

「しかし、どうしても私も気になってしまってね。」

「抜け道を見つけ奥まで進んでいくと、私も知らない森を発見したんだ」


「その奥へ行くと。その子供が探していた友達を見つけたんだ」

医師は、懐かしそうに話し続けると、少し躊躇ためらい大智の顔を見て

真実を告げたのだ。


その少年が、タカラゼミで在る事。

そして、タカラゼミは、成虫になると、

自分達を絶滅させた人間になる呪いにかけられている事。


そして7日間の内に、自分の欲を満たせる事を話してくれた。


そして、7日目に。

満たせなかった欲を持つタカラゼミだけ、願いが叶う泉に行ける事。


そして、その友達は、言った。

もうすぐ自分の命が、終わる。その前に、一つだけ願いたい。と


大智は、机の上で眠るタカラゼミを見つめていた。



その願いは。


『いつか大智が、自分を思い出した時に、もう一度だけタカラゼミとして生まれ変わって、大智と遊ぶ事。』


それを聞いた大智は、タカラゼミを手に取り病室から出ていく。


大智は、彼との思い出を帰り道に思い出しながら自宅へ戻り

真っ先に庭に、彼のお墓を作った。


大智は、しばらく、お墓を見つめた。

そして意識が、朦朧とする中、少年との最後の会話を思い出した。


ありがとうって言うのは、こっちだぞ。

絶対忘れないからな。

そして、ずっと友達だからな

また遊ぼうな。


それが、少年の最初で最後のだった。

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1Week Boys Life ウキイヨ @ukiyo112

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