第3話 6日目
次の日、仕事を休み大智は、少年と共に、街を見回ったが
これと言って手がかりは、見つからず。
気づけば、夕方になっていた。
いつの間にか少年は、弟の様に
大智に、なついていた。
大智は、少年に、帰るか?と聞くと、少年は、首を振った。
想えば、首を振られてばかりだ。
この子は、本当は、家出してきたのかもな。
なんて事を考えて歩いていると、思い出の公園の前にいた。
大智は、何か少年に面影を感じた。
そして少年の顔を覗こうとすると、この前の40代の男性が、大智に声をかけてきた。
「おい。お前ら、何してる。」
いえ、別に。
大智は、構わず少年と一緒に、帰ろうとすると男性は、少年を見て
不気味に笑い始める。
フフフ・・・。
その不気味な笑い方に、大智は、昨日のあの感覚を思い出した。
少年も異変を感じ、森の方へ走り始める。
「やっと見つけたぞ!!!!」
男性は、逃げる少年に向かい大声で、威嚇し少年を追いかけようとするが、
大智は、男性の腕を掴み引き留める
「おぃ!止めろよ!あいつに何する気だ!!」
しかし、男性は、不気味は笑みを浮かべ、大智の方を見てこう言った。
「フフフ。なんだ?お前正義のヒーロー気取りか?」
大智は、男性の異常さに、怖さを感じたが、負けじと腕を強く掴んだ。
「あいつはな。まだ世間に知れていない貴重な存在なんだ。」
「どうせ信じられないだろうがな。あいつは、人間じゃね。」
は?大智は、この男の発言、行動について違和感と、不気味さを感じた。
初めて見た時から感じていたあの不気味な感覚。
そして初めて見た狂ったような目。
そして「人間じゃね。」という呟いた。
大智が、戸惑っている間に、男性は、大智を振りほどき
転んだ大智の首元にナイフを突きつけた。
「これ以上、関わるんじゃねぇよ。あいつは、俺のもんだ。」
そう言い、男性は、抜け道の方へ走って行った。
大智は、怖さで、身体が動かなかった。
一瞬では、あったが本当に殺気を感じた。
そして、もう一つ。大智の中で、とある記憶が蘇り、とある疑問が頭を交錯していた。
あの少年は。
あの時、この場所で。
探していた友達とそっくりではないか。
何故今更思い出した。
確かめなくては、ならない。
それに。あの男性を止めなければあの少年が危ない。
大智は、震える身体を起こし、抜け道を抜け、森の入り口まで辿りついた。
そうだ。この場所は。
『必ずまた会えるよ』
あの時、あの子と別れた場所だ。
大智は、真実を探すべく森の中へ入っていく。
辺りは、真っ暗で、放置された植物達が、視界を更に妨げている。
大智は、ゆっくり物音のする方を目指す。
ガサガサっ。
大智は、物音の近くまで近づくと。男性が、ナイフを突きつけてくる
「関わるなと言ったはずだぞ」
男性は、怒り狂っていた。
大智は、今度は、落ち着くよう説得した。
が、男性は、聞かずに、大智の右肩を切り裂いた。
あまりの痛さに大智は、悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞きつけ少年が、その場に出てきてしまった。
それを見た男性は、すぐさま少年を捕まえ、大智の方を哀れそうに見た。
「もうすぐ夢が叶うから教えてやるよ」
「俺は、ずっと。とある生物について研究していた。そしてその生物をこの森に、解き放った。」
「それが、こいつ。タカラゼミだ。」
・・・?タカラゼミ”?
大智は、耳を疑った。この子の何処が、蝉なのだというのか。
「タカラゼミは、金や、価値ある物を好む。」
「そしてこいつ等は、たった一度だけ”願いが叶う泉”へ、子孫を残していく為願いにいく。」
「そこには、タカラゼミしか辿り着けない場所だ。なのに・・・」
「それがどうだ?この野郎が願ったは、人間になりたい?」
ふざけんな!!!
男性は、怒鳴り散らした。
大智は、戸惑った。
そんなデタラメあるもんか。この子の何処が蝉なんだ。異常すぎる。
「嘘だよな・・・。」
大智の口から言葉が、零れた。
しかしその言葉に対し、少年は、いつの様に首を横に振る。
その姿を見た男性は、今度は、高らかに笑いだした
「こりゃ傑作だな!お前は、虫けらの為に必死だったって事だ!!」
「くそ。」
大智は、何処か悔しさを感じた。
何の為に俺は、必死になってたんだ。
蝉?ふざけんな!
森の奥へ進んでいく男性と、少年。
辺りは、霧が深くなっていく。
男性は、もうすぐ叶う自分の夢に夢中になっていた。
少年は、ただ着いていくだけ。
しかし、突然男性は、立ち止まり少年の首を掴んだ。
「おい。本当に、この先か?」
少年は、ゆっくり
しかし、少年が頷いた瞬間、男性は、激怒した。
「俺を騙そうとしても無駄だぞ!!!」
男性は、少年をそのまま投げ飛ばした。
「貴様!!虫ケラの分際で、人間様を、騙そうとしやがったな!!」
「この先崖じゃねぇか!!!」
そこには、下の見えない崖になっていた。
「舐めやがって・・・。」
「それがお前の願いか!?だったら望み通り!!」
男性は、再びナイフを取り出し、少年に向かっていく。
しかし、男性目掛け、石が飛んでくる。
バン・・・!
男性の顔面に辺り、男性は、よろめいた瞬間、大智が、男性を押し倒す。
「うおぉぉぉぉ!!」
バタン・・・!
「お前は・・・」
男性は、必死に抵抗する。
「傑作だな!!お前虫ケラの為に、ここまでするかッ!?普通!?」
「悪いかよ、笑いたきゃ笑えよ。」
自分だってなんでこんな事してるか、わかんないよ。
でも。やっぱり、怖くても。
確かめなきゃいけない。
少年は、震えながら大智を見ている。
「なんだよ。何が蝉だよ?ふざけんな。」
ちゃんと涙、流せるんじゃないか。
少年を見て安心していたのも束の間だった。
何か違和感を感じる。
大智は、恐る恐るその違和感に目を向けた。
そこには、男性のナイフが右脇腹に刺さっている。
大智は、痛さを我慢し、そのまま男性を引きずる。
男性も、負け時と抵抗する
そのまま男性は、ナイフを至る所に刺す。
大智は、意識を失いかけながらも、男性を崖まで追いやる。
「一回しか言わないぞ?このままあんたが、この子から手を引かないのなら
此処から突き落とす。」
「馬鹿言え。もうすぐ俺を馬鹿にしてきた奴等を、見返せるんだ!!
誰が引くか!?」
男性は、そのまま大智を突き飛ばし、立ち上がる。
「俺の夢を邪魔するなら、お前には、消えて貰わなければならない!!」
しかし、その瞬間少年が、男性に体当たりし、男性は、足を踏み外し
崖から落ちていく。
大きな悲鳴は、静かに消えていった。
少年が、大智の方へ駆け寄った時には、
大智は、意識が
へっへっへ。少し無茶し過ぎたかな。
大智の身体からゆっくり血が溢れていた。
「大丈夫だ、俺が必ずお前を家族に逢わせてやるからな。」
少年は、ゆっくりその場を離れようとするが、大智が、少年の足を掴み
「必ず、一緒に帰ろうな。」
と言ってゆっくり掴んだ手が、地面に着いた。
『大智、』
『ありがとう。』
少年は、その場から立ち去り。
森の奥へと進んでいく。
そして森の奥の泉で。少年は、最後の祈りを願った。
『お願いします。僕の命はどうなってもいい。』
『だから大智を、どうかお助け下さい!!』
…
……
………
『大智?』
誰かが、自分の名を呼んでいる。
その声に呼び起される様に、遠のいていた意識が自分に戻る感覚を覚えた。
え?
あれ?俺は。
『よかった、無事だったんだね。』
その声を聴いて、懐かしさとある少年との思い出が蘇った。
「良かった。やっと会えたな。」
『え?』
「君だったんだね。俺がずっと探していたのは。」
『大智、覚えててくれたんだね』
「あぁ、ずっと会いたかった。あの時は、ありがとうな!」
『うぅん、』
『ね?大智。』
「うん?」
『ずっと友達でいてね』
「当たり前じゃないか。今度は、忘れない。これからずっと友達でいような!」
『〇〇〇〇〇』
その言葉を聞いて、何故か安心した。
そして大智は、ゆっくり目を閉じた。
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