【出来事③幼女との食事は至高であり、それ以上の幸せはありえない】

今、久々に口にする感動の食事の席には俺、ヘンゼル、ティナに加え謎のおっさんが座っていた。

「いやー、お嬢さん達、ほんとにお疲れ様!こんなに綺麗で可愛らしい女の子たちと飯が食えるなんて本当に光栄だよ!!」

「お前いいこと言うじゃねえか!おい來人!こいつに奢ってやれ!」

「またまた、綺麗だなんて、持ち上げすぎですよー。お兄さん!奢ってあげますよね?」

はぁ…どうしてこんなことに…


それは遡ること2時間前。俺たちは公共の水飲み場があると聞き酒場近くの公園に来た。

「水飲み場って井戸みたいな場所なのか?」

「ちがうよ。この地域は水道が通ってるんだ。來人の世界のものとほとんど同じだと思うぞ。着いたな!そこだよ!」

そこにはごく普通の冷水機のようなものがあった。だがしかし、そこには水を自分の背の高さ以上に放射させ、ジャンプしながら飲むのを試みる不審者がいた。男だ。歳は30そこらだろうか。あれは、やばい。

「おいヘンゼル!今は行かない方が…」

「もう行きましたよ。」

「おいおい、まじかよ、俺達も行くしかない。か。」

早速話しかける馬鹿野郎。

「おっちゃん!何してんだ?楽しそうじゃねえか!」

「おお!お嬢さん!面白そうに見えたかい!」

「ああ、すごくな!」

「なら教えてあげよう。僕のやっている遊びは…」

「遊びは…?」

「水ダンク!!だ!!」

「なんだそれ!教えろよ!」

「ああいいとも。水ダンクとは、放射した水の最高地点まで口が届くようにジャンプし、最高地点の水をくちにいれる。そのあとは下から来る水を着地するまで口に入れ続けることが出来たら成功!という遊びだ。どうだ?お嬢さんもやるかい?」

「やりたい!!」

その時のヘンゼルの表情は公園で遊ぶ子供そのものであり、いつもの口の悪いムカつくガキはどこかへ行ってしまったようだった。

そのまま彼らは30分ほど水ダンクを夢中になって楽しんでいた。ヘンゼルは俺達の事など忘れた様子であったし、男も彼との距離距離2m程のベンチに俺達が座っているのにも気ていない様子だった。

「ところでお嬢さん、ここに来るまで何してたんだい?」

「あ!來人は!?來人ー!!ティナー!!」

反対を向いているので呼んでやる。

「おい、こっちだ。」

「いた!良かったぁ。」

ヘンゼルは少し涙を浮かばせながら親を見つけた迷子のような安堵の表情を見せた。キュンとした。うん。いつもこんな感じならいいのに。

「いるなら声かけろっつーの!」

足を蹴ってくる。

「痛えなぁ、いるならって一緒に来たのに急にいなくなんのはお前だろうが。」

「あ、紹介するよ!こいつは私の旅仲間…?友達…?うーん……あ!私の荷物持ちの來人!」

もう言い返す気も起きない。

「そんでこいつが私の友達のティナ!」

「今は魚を釣る依頼を達成して帰ってきたところなんだ!」

「そうなのかー!2人ともよろしくな!俺はギル!」

「よ、よろしく。」「よろしくお願いします!」

「それにしても2人はまだ幼いのに大人っぽくて綺麗だねえ、きっと将来はすごく美人さんになるんだろうな!」

「そうか!お前やるなあ!私のことを本当に分かっている!なあ、ティナもそう思うだろ?」

「ええ。でも、確かにヘンゼルはとっても可愛いですけど私なんて全然、えへへ」

こいつ、なんか企んでんのか?なんだなんだ。

「そうだ!私たち今から飯なんだよ!あんたも一緒にどうだ、ギル!」

「おお!飯か!いいなあ、良ければ俺もついて行かせてもらうよ!」

「そりゃうれしいな!2人ともいいよな!」

「私は大歓迎デスっっっ!!!」

ティナ…こいつはおだてられるとダメなタイプだな。

「お、おう、いいんじゃないか?」


そして今に至る。酒場に入る時少し場が静かになった気がしたが、彼が有名な変質者であるのならこれでは済まなかっただろうから、それはないだろうと少し安心はしていた。

「で?こんな良い奴なんだから奢りが当然だよな?來人?」

良い奴には奢るのが普通だと思ってるのかこのお子様は。

「うーん、まぁ、そ、そうかな。」

このくらいなら今日の報酬からなら大したことないしまぁいいか。

ギルとヘンゼルはもう食べないようだし、ティナは泥酔している。俺は、テーブルの中央にある大きな計量カップのようなものに米を入れて支払いを済ませようとした。が、

「大丈夫だぞ。」

ギルが突然そう言う。

「ほぇ?」

「支払いはいいぞ。今日は楽しかったからな!」

と言うと彼はポケットから硬貨を出し厨房の方に投げた。と同時に酒場が大盛り上がりになった。

「釣りはいらねえ、ここにいる全員分払ってやれ!それでも余ったらお前にやるよ!」

ワーーー!ギール!ギール!

「行くぞ。」

と言って彼はさっさと出て行ってしまったのでダウンしたティナを担いで俺達も外へ出た。


さっきの公園で話を聞くと、彼はこの街では知らない人はほとんど居ない凄腕の冒険者だという。さっきの硬貨は米俵200個に値するらしい。

「そんで?寝る場所、ないんだって?」

疲れて寝付いてしまったヘンゼルの横で俺達は話していた。

「ああ、情けないことにな。」

「そんなら俺が知り合いに頼んでおいてやるよ。」

「ほんとに?いいのか!?」

「おう!今日は本当に楽しかったしな!」

「申し訳ないがお願いするよ。」

「三部屋でいいよな?」

「いやいや!申し訳ない!一部屋でいいよ!」と言うとギルは細い目をさらに細め、ニヤニヤしながら俺の方をみて「へーえ、一部屋ねぇ」なんて言ってきたので、スキルじゃないが彼の心を読んだ。

(ロリコンかぁこいつ。だいじょぶかよ)

「ちげえ!!!二部屋!二部屋で頼む!」

「りょーかい。」

俺は宿屋の場所を聞き、早く帰らなければならないというギルとはそこで別れることになった。

「ほんとにありがとうな!」

「おうよ!兄弟!また会おう!」

なーんだ。すげえいいやつじゃん。

「おい、ヘンゼルーいくぞー」

「うーん、うっせーばーか。むにゃむにゃ…」

「おーい!」

「うっせえ!」

ぅごふっ!!

こいつ、寝ながら蹴り入れてきやがった…

仕方ねえな。運ぶか。

まずティナを持ち上げる。それからもう片方の腕でヘンゼルを。無理があるな。よし、どちらか引きずっていこう。

まぁ間違いなくヘンゼルだな。

「いくぞー。」

ズザーーー


ここか。

「ごめんくださーい!」

「おう!いらっしゃい兄弟!」

この声って…

「ギル!!??」

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俺が愛するのは幼女であり、それ以外は受け付けない。 @sakura_yame

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