【出来事①急展開とはこのことを言い、それ以外は緩展開である。】

「おい!いい加減起きろよおっさん!おい!」

女の声。。誰だか知らんがおっさんとはひどいなあ。いつも同じような日々お送っているおれには、現実と夢を見極める力がみについている。よってこれは夢である。そもそも家にいる可能性のある女性は母親、もしくはいとこ。そしてどちらの声とも一致しない声だ。

「おい!起きろっつーの!」

しかしうるさい登場人物だなあ。

誰を連想したらこんな奴が夢に出てくるんだろう。

「おい!おっさん!」

ん、おっさん?待てよ、この声さっきの。

「やっと起きたか。」

やっぱさっきのやつだ。というか俺の部屋と景色が違う。

「ここ、どこだ?」

「ここはバンニル、あんたとは違う世界の街だ。」

「あ、夢…」

「じゃねえ!さっきあんたに渡したのはこの世界を穴から覗けるディスク!なのになんであっちであんたはぶっ倒れててもう1人こっちにいんのよ!」

あんとき俺は、ディスクに指突っ込んで、、

「ちなみにだけどディスクに指入れたらこっちに来れちゃう!みたいな仕組みあったりする?」

「ディスクに指入れたらぶったぎれるだけだよ! 」

「それだー!!」

あーあーなるほど、話はだいたいわかったな。要するにぶった切れた俺の指側が再生したわけだ。簡単だな。って

「どうしよおおお!」

残った俺の体はどっからどう見ても死体以外の何物でもないじゃないか。

「なんだそうか、ディスクで帰ればいいじゃないか。いや痛いからやっぱ違う方法で…」

「こっちからのはねーよ。」

「え?」

「だからこっちからは行けねーよ。」

なにいってんだこいつ。

「だってお前来てたじゃん。」

「あれは私の能力。たまーに使えるんだよ。」

「それって俺もできるようにとか、」

「世界中でできるのは私だけだ。すごいだろ!」

すごいだろ!じゃねえよこのチビ!

「てことは俺って」

「戻れねえな。だから私も困ってんだよ。」

ならあんなよくわかんねえディスク手渡すなよ、、

「てかなんでお前が困るんだ?」

「もともと異世界から人を連れてくるのは犯罪なんだよ。私は暇つぶしにこの世界を見れるディスクでお前らの世界の人を驚かせようなんてしてただけだぜ?そしたら私にとんだ迷惑野郎がくっついてきちまったわけだ。で?なんであんたはここにきてんのさ。」

「信じるかわかんねえ、てか信じろよ。」

「俺にはぶった切れた体を再生する能力がある。ただ、」

「ただ?」

「どっちが再生するかはランダムなのだっ!」

「なのだっじゃねえ!それで指側が再生したわけかよ。飛んだ迷惑野郎だな。」

「信じてくれてよかったよ。バレたくないならお前ん家でかくまってくれよ、その方がお互いにとって好都合だろ?」

「ない。」

「は?」

「家なんてねーよ。ちなみに言っとくけどお金もないからな。」

「おいおい嘘だろ。」

そんなこんなで俺の超大変な異世界での生活が始まった。てか死体もどきどうしよ!!!

でもまって、

「なあ、ここって異世界だよな。」

「まあ、あんたから見たらそうなるな。」

「魔法とかって、あったり、する?」

「あるけど。」

お父さんお母さん、僕とてもワクワクしてます。でも帰りたいです。


「はい。ということで、まず本当に帰れないんですね?」

「カエレナイヨ。」

知ってたけど改めて聞くと辛いなあ。

「そっか、じゃあまず、職を探しましょう。」

「職って、おっさんなんか出来んの?」

「なんかってよくわかんないけど、おっさんはやめねーか?俺19!」

「じゃあなんて言えばいんだよ。」

「俺は、東來斗だ。なんとでも呼べよ。」

「おう、おっさん。」

「そういうことじゃねえ!もういいや、來斗ってよんで。」

「了解來斗!」

「よろしくな!じゃねえよ。お前は?」

「ん?」

「名前だよなまえ。」

「あー、こっちの世界での名前と來斗の世界の名前があるけど、」

「こっちの世界の方で。どうせこっちの世界のが本名だろ。」

「ヘンゼルだよ。」

「よろしく!俺はグレーテル!」

「うるせえ!無関係だ馬鹿!」

「わかったわかった名前を馬鹿にすんのは良くないよな。よろしくヘンゼル!」

「お、おう。よろしく」

「じゃ、話に戻るぞ。いや、その前に住む場所か。」

「てかお前なんで家ないの?」

「売り飛ばされたんだよ。」

「借金でもあんのか?」

「ねーよ、あいつらにやられたんだ…」

「ふーん。」

「あいつらって誰だとか聞けよ。」

「アイツラッテダレダ」

「クビになって借金持ちの元騎士集団、略してクビキシだ。」

「その名前、誰が考えたんだよ。」

「私だけど。」

「この状況よりそのネーミングセンスからなおすことだな。」

「は?、なんでだよ!」

「まあいい、今は色々考えよう。特に職だな。」


5分経過

「ほんで來斗さん、職のほうは?」

「俺、勇者とか冒険者的なやつになりたい!」

「そうだ!ギルドに行って俺の能力を見てもらおう!きっとすごい能力があるぞ!ギルドっギルドっ!」

「おお、そ、そっか、」

ちょこちょここいつの世界に通ってた私でもわかるんだけど、フラグってこういうのを言うんだよな…。


「ここがギルドかー!想像通りの酒場っぷりだなぁー。ということで、俺の力を見てもらいましょう!」

「こんにちは!」

「こんにちは!登録ですか?」

「はい。」緊張してきたな、ドキドキ。。

「では、この水晶に手を当ててください。」

ついにこの瞬間が…

きたぁ!「すごいですよ!」

「な!!何がですか!」

「東さんですね!レベルがほぼ最大!990です!ギルドに来たのは初めてではないんですか!?」

やはりな、ここは少し焦ったような振りをしようか。

「え?ほ、ほ本当ですか?見せてくれませんか?」

紙を受け取り、俺の能力を見るとそこには!

「へ?」

Lv990。体力5。攻撃力7。敏捷性2。幸運1。

特殊能力 超速飲水。 蘇生。

は?おい、低くねえか?いやこれが高い可能性もまだ…

「ねえ聞いて!私ね、やっと体力200いったの!」

「すげーじゃねえか!俺はまだ180くらいだぞ?」

あ、終わった。


「まあそんなに泣くなって、來斗。プククククク、」

「笑ってんじゃねえかよお、レベル990って超頑張ってやっと上がるみたいな感じなのに元がこれじゃ、、しかも蘇生って絶対再生のやつだし超速飲水ってなんだよおお。うう、」

「まあまあ、これでも飲んで落ち着けって、」

グッ

「はや!!」


「それにしたって、どうする?」

「知らねーよー、まあ冒険者は無理だな。」

「知ってっし!それよりまず、食料の確保だな。」

「へいへいにーちゃん!腹減ってない?これ!美味いぞー。やるよ!」

「え?まじか!」

そこには魚の干物?のような見るからに質素であるがそれがまた、すいた腹がそそられるような淡白な感じ。これを作った人の顔が思い浮かぶ。おじさん、ありがとう。

『いただきまーす!』『ばか!食うな!』

2人の声はミュージカル最高峰のハモリを見せた。

パクっ

う、う、

「うめぇー!!!!」

「ばか野郎!なんで食ったんだよ!」

「え?、だってこれ美味い…ぞ…」

バタリ

「ばっかやろーー!!」


あれ?確か俺は干物食って。

あれ?縛られてる

あれ?隣でヘンゼルも縛られてる

あれ?これって幼女監禁になんぞ

「じゃねーーー!!」

「うーん…うるせえなあ。」

「おいヘンゼル!ここは!」

「って來斗!お前のせいで捕まったんだよ!」

「捕まった?警察みたいな何かに?」

「いいや、もっとたちの悪ぃやつらだ。」

「たちの、悪い?」

「あぁ。クビキシだ。」

「悪徳騎士団な。」

「直してくんな!なんて言ってる場合じゃねえ!早く逃げねえと!」

「逃げねえと?」

「もれなくバラバラにされて売り飛ばされますっ!!」

やべえ!やべえ。やべ…え?いや。

「へー。」

「へー。なんて言ってる場合じゃ、って來斗、お前なんでそんな落ち着いてるんだ?」

「蘇生だよ蘇生。」

「は?ほんとにお前助かるじゃねえか!じゃああたしはどうすんだよ!」

どうしよう。

「むりじゃないっ?」

「…しろ。」

「え?」

「お前が指から生えて助けろー!!!」

「おい!馬鹿!何してんだ!!かーむーなー!!!」

「いってえええ!!!」

ニュニュ…

「チェッ、失敗!ならもう一回!」

「いってえええ!!!!!!!」


数分後、俺が立っていたのは縛られた女の子の前。指から生えることに成功したあとである。そういえば俺の体のもう片方はこの世界では残らないらしい。再生したあとすぐに消えていた。そしてちなみにこの女の子、人の指2回噛み切ったり口悪くなかったりしたら可愛いんだけどなあ。

「お前、何してくれてんだ。」

「ごめんなさい。」

「痛かったぞ」

「ごめんなさい。でも仕方なかったじゃねーか!!」

むっこのガキ分かってねえみたいだな。

「へーえ、そんなこと言っちゃうんだー。助けてあげようかなあ、どうしようかなあ、」

「え、え、うそ、嘘だよな!」

「さあ、どうでしょう!」

こいつ、涙目じゃねえか!笑われた仕返しだな。歩いて遠ざかってみる。

「うわぁーーーん。ごめんなさーーい。助けてよー來斗くーーん!やだぁーー!!」

しょうがねえ、助けてやるか。後でバカにしてやろう

「そこの男!動くな!」

へ?


どうやら俺は幼女監禁したということで警察、いや、騎士団に捕まったらしい。

悪い奴らはたまたま騎士団に見つかって逃げていったとの事だ。

「で?やってませんと?」

「あぁやってない。助けようとしただけさ。」

「あんなに泣いてたのに?」

「ぐっ、あ、、あれはこわかったんだよ!きっと!」

「ほーう、なら君は犯罪者ではない、と。」

「ああ、そうだとも。」

「彼女は知り合い?」

「そうだ、最近知り合ったばかりだけどな。」

「そっか、ならいいんだ。よく助けようとしたね!」

「は、はい。」

「食事を持ってくるよ、待っていなさい。」

「ありがとうございます!!!」

すぐに彼は戻ってきた。

そこに置かれたのは3枚の食パン。

「いただきます。」

こ、これは!

「ふんわりパン…だと、」

「そうだよ!少し高いんだけどね!美味しいだろう!君、よく知っているねえ、」

「ええ知っていますとも!この少女の綺麗な肌のような白さ、幼女の指先のような綺麗で弱々しく、しかしまた、もっちりとした感じ。隅々まで堪能したい!」

「君!!」

「はい!!」

「逮捕する。」


連れてこられた部屋は独りぼっちであったがどこか俺の小さきマゾ心をくすぐるものがあった。これはこれで堪能するとしようか。

「君、釈放だ。」

「嫌です。」

「何言ってんだよ。來斗ー、いくぞー。」

そこに広げられたのはクエストの依頼?なのかか。

「魚を取りに行こう!」

「釣りか。いいじゃないか!よくやったな!報酬は?」

「米俵2つだ!」

「米があるのかこの世界は。というか通貨は?」

「米だ。」

「ふーん。通貨がないのか。まあ行くか。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る