遠距離恋愛

「あー……見えてる?」


「見えてるね? 良かった良かった。あたしパソコンって専門外だからさ、上手く出来てるか不安で」


「こっちも見えてるよ。見えてる見えてる」


「それじゃあ、初めてのリモートデートを祝して……」


「乾杯!」


「ふい~。これ一応おうちデートってことになるのかな? 今の君の部屋見たのこれが初めてだよね」


「なるほどね~。ふーん……」


「あ、よそ見するな! こっち見て!」


「デート中はあたしから目を離さないこと。いい?」


「よろしい」


「え? あたしの部屋がどうしたって?」


「……汚いぃ? えー……あー……い、いや、そんなこと……ないって。そんなことない」


「君が片付けてくれないからだぞ~。早く帰ってこ~い」


「こっち住んでたほうが絶対にいいって。大学なんて電車で行けばいいんだし」


「それとも~? あたしに内緒で他の女を連れ込むためとかぁ?」


「冗談冗談。君がそういうことしないのはわかってるって」


「あたし? それはこの汚部屋を見てくれればわかるんじゃあない?」


「恥ずかしくて友達すら呼べないよ」


「あ~あ~、君が帰ってきてくれたらな~」


「え、トイレ?」


「あたしと話してるところでしょ? 我慢しなさい」


「だめ。駄目だから! ほんとに、ゼッタイ!!」


「いや……なにも隠してなんか……や……」


「わかったよ……正直に話すから……」


「あたしさ、見えるんだよ。見えるの、幽霊とかが」


「それが君の後ろに居るから振り向いちゃ駄目って言ってんの」


「……なんてね。どう? トイレに行きたくなくなった?」


「よろしいよろしい。あたしが満足するまで話し相手になりなさい」


「ん~? そうだよ~。冗談だよ~」


「素直だなあ君は。その単純さ、あたしは好きだぞ」


「さあてね。あら?」


「いやあね、別に大したことじゃあないんだけど」


「おばけ居なくなったから、もうトイレに行ってもいいよ」

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