7、変種2号
新しい真っ白なオジサンは、抜け殻の黒いオジサンから、トレンチコートを剥ぎ取り着る。
「びっくりしたよね? ゲイのオジサンねぇ。今年の夏、海へ遊びに言って、肌が焼けちゃったんだよね。ほら? 肌が焼けると皮がむけちゃうだろ? だから今のはオジサンの脱皮なんだよね」
日焼けで皮がむけたレベルじゃねぇ!
完全に新種誕生じゃねぇか!!
昔見てトラウマになった、ハエの
ていうか、あの黒さは日焼けかよ?
「実はね、オジサン。昔、宇宙人にさらわれて、改造手術をされたことがあってね。そのせいで宙に浮いたり、影分身や脱皮するんだよ。オジサンを地球侵略の生物兵器にしたかったんだね」
意味不明もいいとこだ!
「あぁ、心配しなくても、改造された後で、宇宙人みんなのカマを掘ってきたから、地球侵略は二度としないと思う」
地球人の日常が、こんな変態に救われていたなんて、最悪だ。
オジサンは深刻な顔で見つめ語る。
「オジサンね。こんなにいっぱい不思議なパワーを使うから、エネルギーの消費が激しいんだよ。だから若いエキスがどうしても必要なんだ。しかも……お尻から抽出しなければいけないんだ!」
絶対そこ関係ない話だろ!?
「オジサン。吸いたく吸いたく……手が震えてるんだ」
会いたく会いたくてみたいに言うな!
近づくオジサンから逃げたくても、腰が抜けて立ち上がれない。
オジサンは手を合わせ合掌。
「それでは今度こそ……いただきま〜す!」
飛び跳ねたカエルのようにジャンプし、空中で手足をCHANEL《シャネル》のロゴマークのように広げて、俺に襲いかかる。
だが、物理法則にのっとって言えば、地球の重力に逆らえず頂点に達したら、後は落下するのみ。
俺は起死回生のチャンスを逃さなかった。
オジサンが空中で身動き出来ない間に、足を槍のように伸ばし、落下してくるまで構える。
落ちてくる身体を、急に方向転換させるのは無理だ。
つまり、こちらの攻撃を避ける算段がない。
ほとんど飛び上がった時と、同じスピードで落ちてくる。
全ての事象を悟った、オジサンの顔が青ざめた。
「ちょ、ちょっ、待てよっ!」
イケボで言っても、テメェの運命は変わんねぇ!
次こそは決める!!
俺はオジサンの腹に足を伸ばしたつもりが、走り疲れて足が上手く上がり切らなかったようだ。
狙いよりやや下、オジサンの腹より下の位置に、つま先をピンと張らせる。
クリーンヒット!
俺の足はオジサンの股間へ、貫通するようにめり込む。
一瞬の静寂。
オジサンはそのまま地面に伏せた。
今度こそ終わったか?
すると、
「あっ…………出る」
そう言うと立ち上がり、オジサンはコート越しに自分の尻を押さえて、内股になった。
今度は何だよ?
「出る出る出る。出ちゃう! 出ちゃうよ!!」
だから、何だよ、何出すんだよ? キモチわりぃから止めろよ。
「ぁぁあああああ○☓△□@✝✡✩ああああっ!!!」
えげつない音を立てながら、オジサンのコートの下から、黒くてぶっ太いモノが、吐き出されるように現れた。
そしてニシキヘビのように、のたうち回る。
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