8、ラブ・オア・ダイ
ケツから出たぶっ太いナニかは意思を持ったように、のたうち回ると切れ目が入り、3つに分離。
真ん中はとても太く、鎌のように持ち上がると、それは巨大な後頭部だというのが解った。
両脇は細くて虫の腕のように、ギザついていた。
分離した部分は、塗りたての接着剤を剥がすように、ところどころ糸を引く。
そして中央の太い物がパックリ割れて、口のように開くと、この世の物とはおもえない産声を上げる。
『ギャギャ、グギャギャギャァア◯☓▲■@&#$ギャァア℃℉¥€¢®©ギャァア〜!!』
まさに化け物。
俺はこの異型のクリーチャーを見たことがある。
昔子供ころに見てトラウマになったSFホラー。
これは、『エイリアン』だ。
オジサンの尻から出たクリーチャーは半身がひっかかり、中途半端にオジサンの尻と繋がったままになった。
オジサンは真っ白な坊主頭をなでながら、自分の尻から出たクリーチャーを眺め、恥ずかしそうに言う。
「あ〜ぁ、出ちゃった。さっきも言ったけど、オジサン、宇宙人に改造手術されちゃってね。こんなデカイ、モンスターを植え付けられちゃったんだ」
ちょ、ちょっ、待てよ?
じゃぁこれ、オジサンが腹で買ってるペットってことかよ?
ヤベェ、ヤベェよ!!
早く逃げないと……
と、思いながらも足は震えて立てない。
下半身に力が入らず、なんだか生暖かいモノが股に広がった。
真っ白な坊主頭のオジサンは、ゆらゆらと歩きながら近づいて来る。
ケツから漏れたエイリアンは、引きずられ地面をかきむしる。
も、もう駄目だ……。
不思議と恐怖に直面し、現実だと感じられなくなると、微かな笑いがこみ上げてきた。
オジサンは俺の目の前まで来ると、ジッと俺を見つめ、悲しそうな表情を浮かべた。
「オジサンはね。君達、若者が心配なんだよ」
は?
オジサンは続ける。
「オジサンは今の現代の人々に伝えたいんだよ。SNSやネットの画面から知った情報だけで、みんな"世界"を知った気になる。
みんな知りたい情報だけ見て、知りたくないことには目の閉じ、耳を塞ぎ知らないふりをする。
でも、それだけじゃ世界はわからない。
世界はわからないことだらけ。
実際にその世界に飛び込み、見たり聞いたり触ったりしないと世界の全てはわからない。
だからオジサンは、若い君達に新しい世界があることを、知ってほしかったんだ。
世界は画面の向こう側よりも、広いってことを……」
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