たまご どうする?
あー、私昨日あのまま眠っちゃったんだ、と、生まれたままの姿の自分の体を見て思った。今何時だろう、お腹すいたな。目覚めのぼんやりとした頭で考える。昼ごはん、どうしよう。あれ、朝ごはんかな。どっちでもいいや。冷蔵庫の中に、たしかたまごが入っていた。たまごを使わないといけない。たまごかけご飯でいいだろうか、と思ったけれど、そういえばあのたまご、賞味期限が昨日までだったような。さすがに期限切れのたまごを生で食べるのもな、と寝返りを打つ。さっきまでスヤスヤと眠っていた隣の男が同じくぼんやりと目を開けていたので、声をかけた。
「ね。たまご。茹でる? 煮る? いためる? 焼く?」
「んー……?」
起きて早々そんなことを聞かれてはさっぱりわけがわからないのだろう。同じく生まれたままの姿の彼はボリボリと頭を掻いてあくびをした。
「だから、たまご。茹でる? 煮る? いためる? 焼く?」
「たまご……?」
「うん、たまご」
「たまご……たまごな……」
まだ眠そうな彼が、私を引き寄せて胸元に顔を埋める。唇が胸に触れて、くすぐったくて身をよじらせた。
「聞いてる?」
「……んー」
煮え切らない彼の返事に、多少イライラしながら返事を促したが、彼は全く気にしていないようだった。
身をよじらせたのがばれたのだろう。そんな気はなかっただろう彼の唇が、今度はわざとらしく肌をついばむように動く。チュ、とリップ音がして、私は昨日の夜のことを思い出してしまって、茹で上がったかのように頬を赤らめた。
「ちょっと、だから、今はそれよりたまご……」
「いいじゃん、そんなの」
私がたまごたまご言ってたからか、ムッとしたように彼は私に覆いかぶさってきた。胸元にキスを繰り返していた彼の唇が、とうとう胸の先端を口に含んで、思わず声が漏れる。
「あっ」
「たまごなんていいじゃん」
「よくな……ん、」
彼の勝手な言い分に反抗しようとしたけれど、噛み付くようなキスをされて、言葉を遮られてしまった。寝起きなのに、と抵抗する暇もなく、口内を蹂躙する彼の舌に、私は感じてしまう。
「ふ、んっ……ぁ」
身も心も溶かされてしまいそうな、私のいいところを知り尽くしているような舌に、もう何も考えられなくなる。私、なんでこんなに朝から求められてるんだっけ。
ようやく解放されて、私は空気を求めてはくはくと息をする。その様子に少しだけ満足げな彼な顔を見て、あぁ、そうか、と納得する。ヤキモチ焼きな彼だから、朝一番に自分以外のことを考えられたのが不満だったのだ。昨日あんなに燃えたあとだったから、きっと余計に。
彼の唇が、昨日つけられたキスマークをなぞった。すると、そこを甘噛みされる。
「あ、いっ……」
「お仕置き」
私の身体をいためつけ、やっぱりどこか満足げな彼は、そのまま私の身体を好き勝手に愛し続けた。私ももうごはんのことなんて、すっかりどうでもよくなっていた。
* * *
「それで、たまご、どうする?」
「んー……」
全てが終わってぐったりとベッドに倒れこんだまま、私は彼に再度尋ねた。今度はちゃんと考えてくれてるのか、少し間がある。だけど返ってきたのは、ちゃんとした答えではなく。
「……疲れたから、寝る」
「……そうだね」
さすがに、2日連続は堪える歳になってきた。お腹は空いたが、動くのもだるい。期限切れのたまごのことは、あとでもう一度、夕飯の時に考えよう。幸い今日は何も予定がないオフの日なので、私も彼も、昨晩と同じく生まれたままの姿で、もう一度眠った。
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