第7話 一方通行の再会
「バトロワって? ――――『バトルロイヤル』ってことか!? それじゃあ、つまり」
ルイカは、何とかそれをのみ込もうとして、言葉をつまらせる。
嫌な予感がした。
――いや、本当は、もっと前から察してはいたのだ。
けど認めたくなかった。
そうであってほしくなかったからだ。
だから、自分でも知らないうちに、分からないフリをしていた。
「つまり、殺し合いをするってことなのか!? このゲームは!?」
「そ。ルールはカンタン。よくあるヤツでスよ」
着ぐるみは言うが、ルイカは声を張り上げる。
「ふざけんな! そんなもの、ソシャゲだとかの、絵空事だから許されることじゃねーか!」
ルイカ自身、他人の命になど興味はない。
誰かがどこかで勝手に死ぬというなら好きにすればいいと思う。
だが、それと殺人の片棒を担がされることとは別だった。
「おかしいだろ!? 何でお前ら、こんな」
「出てきたぞ。3人目だ」
中年があくまでモニターを見ながら、固い声で言った。
ルイカも思わず言葉を切る。
――いや、絶句した。
ルイカ自信が、その人物を見知っていたからだ。
「えーと、表記だと『JK』になってるスけど」
「女子高生ってことか。おおー制服! それにかわいいなこの娘」
「まーた、おっさんはスグそういう」
「――――あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
中年と着ぐるみが軽口を言い合おうとしたのを、すすり上げるようなルイカの悲鳴がさえぎった。
視線が集まる。
だが、ルイカにはそれを取り合う余裕などない。
それどころか、息すらできなかった。
まさか――まさかこんなことになるなんて!
そして理解した。どうして自分がこんなところにいるのか。どうしてこんなところへ連れてこられたのか!!
「――ハル!! そんな!? ――――くそ! どうして、こんな!?」
ルイカは立ち上がり、頭を抱えて絶叫する。
ただならぬ様相に、他の3人もそれぞれに息をのんだ。
「知り合い――なんだな」
中年の声に応えず、ルイカは倒れるようにして椅子に沈み込んだ。
「やー、そんなレベルじゃなさそうっスね――もしかして、彼女さんスか?」
違う。そんな次元ですらない。
――すべてだ! 生きる意味だ!! 命の代えてでも守らねばならない人だ!
本来ならそう叫ぶべきだった。
だが、そんな余裕すら、今のルイカにはない。
なんてことだ。なんてことだ!
しばし、誰もが言葉を失っていた。
「――4人目が来るぞ」
それでもゲームの進行は止まってはくれない。
ルイカの恋人であるハルは、まだスタート地点から遠くない位置にいた。
ランダムに出現するらしい壁に阻まれて、ほとんど前に進めていなかったのだ。
このゲームフィールド――否、バトルフィールドは、一本道だ。
迷路のようになっているわけでもない。
つまり前進をさえぎられてプレイヤー同士が出会ったなら、必然的に殺し合いが始まってしまう、ということだ。
逃げ場のない、一本道で。
なんてことだ! これじゃコロシアムと一緒じゃないか!
逃げ場のない闘技場に閉じ込められ、殺し合いをさせられる奴隷と何が違うっていうんだ!
正直、ルイカは目を開けていられなかった。
愛する人がそんなあつかいを受けているのを、注視できるやつがいるだろうか!?
だが、それでも見ないわけにはいかない。
4人目の「プレイヤー」はゲームフィールドに入ると同時に、目前の「相手」を、つまり「ハル」を「補足」した。
「――なんだこいつ、……笑ってるぞ!?」
その「4人目」を見た中年が声を上げる。
その女は、ハルと同じ制服を着ていて、同じ学校の生徒なのだということは一目瞭然であった。
しかし、それが異様な笑みを浮かべていたことは、誰の目にも奇異に映ったことだろう。
そしてその女は、スタート地点から動くこともなく、手にしていたものを、大きく振りかぶった。
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