第23話 独白④ プレイヤー名「記者」 初期配布シム「クピト」



 あらら。うまくいきましたねー。


 わたしとしてもびっくりですよ。


 うんうん。まさかここまで上手くいくとは。


 幸先のいいことです。


 まー、相手が現実逃避真っ最中のお嬢さんでしたからねぇ。


 当然と言えば当然ですか。


 命がけのゲームの真っ最中に、まさか別の、しかもソーシャルゲームに夢中になってるとか。――なかなかあっぱれな判断でしたね。


 まったく、あっぱれなバカ! おバカさんですよ。


 まーこういう手合いは?


 年齢に関係なく?


 アタマの良い人間のエサになって?


 一生を無駄に過ごすのが? 


 ――お約束ですからねぇ。


 しかたないですよねぇ。運命ですよ運命。


 むしろ、若い身空で逝けたのは幸運だったじゃないですかねぇ?


 アナタみたいのが大人になっても、アナタも、アナタの周りも、幸せになんてなれませんからねぇ。


 うんうん。


 なので、おとなしく私の経験値になって下さい。アナタの分まで濃ゆく生きてあげますから。


 




 ……まぁ、このについては思う所もありますよ。

 

 女の子なんですし、出来ればキレイに殺してあげたかったんですけどねぇ……。


 けど、こっちも不慣れなんですよ。


 人殺しなんて。


 そのあたりは、どうか勘弁してくださいね。


 さて、あとは一応を確認しなきゃなんですけどね――


 あーあ、グッチャグチャ……。


 オエッ!!


 さ、さすがにきっついですね。


 一発で殺してあげようと思ってバクダン4つも使ったのは間違いでしたか……。


 バラバラになっちゃってます。


 あーあー、……あー、あーーあーッ!! 無理です! オエェッ!!


 目が合った!


 うわぁ……。トラウマですよコレ……。


 はぁ……私は戦場とか事故現場に突撃してくような記者じゃないんですよ。


 由緒正しいゴシップ記事こそが、私の本領。


 社会の醜聞、現実の裏のカオを暴き出すのが、その本懐。


 こういうグロテイストなのは専門外です専門外。


 あ、でもそれはそれとして、写真はとっておきましょうか。記録は必要ですからね。


 うん。映像だとだいぶマシですね。


 はぁー。でも。それでも、〝スマホ〟は回収しなきゃですねぇ。


 気が滅入りますねぇ。


 あ、そうだ。あなたたち、持ってきてください。


 そう、〝スマホ〟ですよ〝スマホ〟。いいですね?


 ――ちがう!! じゃない!


 〝スマホ〟ですって! コレですよこれと同じやつを持ってくればいいんです!


 ん? それは――、オェェ! もう、だかわからないですけど、とにかく違います!


 あぁー、もうグロい!


 うぇぇ……。な、なんというか、自分の中身がだと思うと何とも言えない気になってきますよ……。


 はぁー、のが好きとはいっても、物理的にぶちまけろってことじゃないんですよ。


 グロ耐性はついてるつもりでしたが、キツいものが有ります。


 全身やけどの中学生とか見たとき以来かなぁ……。あれもひどかったですねぇ。


 うう、きぶんわるい……。


 はぁ……。にしても、このクピトシム。エネミーを撃つだけでいいのは楽なんですけど、レベルが上がらないとなかなか細かい指示を聞いてくれないんですよね。


 意地の悪い仕様ですねぇ。


 まぁ、自分に合ってるな、とは思うので痛し痒しでしょうか。


 何でも自分でやるのはアホのすることですからねぇ。


 ――あ、そうそう。それですそれ。


 けど、くっついてるのはとって! けて! 外して!


 だからぁ! こう、指を広げて……引き剥がして……、そうそう。


 はぁ――、やっと回収できた。……けど、ウェェ……バッチぃですねぇ、細かい血と肉が……


 けど、捨て置くわけにはいきません。


 確認しましょう。


 アイテムはほとんど無し。分かってたけどシケてますねぇ。


 えー、それで特殊シムは「ムラマサ」――これも、あんまり使いたいシムじゃないですね。


 チャンバラなんて御免ですよ。


 ――けど、スマホそれ自体には意味があります。


 さて、これをどう活用しましょうかねぇ?


 なにせ、わたし、死ぬわけにはいかないんですよ。


 なにせ、もうちょっと、もうちょっとで特ダネをつかめるところだったんですよ。


 真相にたどり着けるところだったんです。あとちょっとで!


 ――このバカげたゲーム。


 まず間違いなくあの男、「アカシ・イサオ」が関わっています。


 なにせ、あの男の〝元妻〟が参加者の中に居るんですからねぇ。


 ほかにも、関係者がちらほら……


 これは何かあります。私のカンが告げていますよねぇ。


 私がここに居るのも、おそらくはあの男の差し金なのでしょう。


 アカシ・イサオ――以前にも私の記事を指し止めてくれやがったことが有りましたからねぇ。


 忘れててませんよ?


 こちとら半年以上も掛けた取材を無駄にされたんですからねぇ?


 許しませんよ? そっちがその気ならこっちにだって考えがあるんですからねぇ?


 たかがゴシップ記事と侮るなかれ!

 

 いまどきは個人が情報を発信できる時代なんですよ!


 権力者が情報統制して社会を牛耳る、なんて古いんですよ!


 ――もっとも、二年前のあの件。


 どうしてあの男が『イジメを苦に焼身自殺しようとした中学生の記事』なんて隠ぺいしたのかが分かんないですけどね。


 けれど必ず何かの裏がある。


 ふふん。いいですねー。燃えて来ましたよ。


 一見バラバラのこのピース、必ずどこかで繋がってるハズなんです。


 となれば、ここからどう動くべきでしょうかねぇ?


 まぁ、生き残れるための策を盤石なものにしつつ、このゲームに集められた人間からできるだけ情報を集めるべきですね。


 皆、何かしらの形であの男と繋がっているハズ。


 あの男、アカシイサオと……。


  



      

 特殊シム「クピト」


 機能:矢を精製して射撃を行うことが出来る。


 攻撃手段として使用できる他、矢に当たったエネミーを支配下に置くことを選択できる。


 レベルが上がることで支配下に置いたエネミーの操作性が上がる。(矢の威力や速度は据え置き)


 また最高レベルではエネミーだけではなく「プレイヤー」を支配下の置くことも可能となる。

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