第4話 ゲームメイカー、青い肌の女神

 そこでルイカは思い出す。


 頭の中の時間を、強制的に引き戻されるような感覚があった。


 確かに、自分はこの女――のような何かを知っている。


「体調はどうかな? さっきよりは改善している筈なんだけど?」


 女はルイカの方を向き、微笑んだ。――奇妙な感覚が襲ってくる。


 明らかに人ではない。人間でない、人間に似た何か。


 本来は生理的な嫌悪感を抱くはずのそれを目にしてもなお、妙に心が安らぎ、気分が高揚していくような気がしてくるのだ。


 ――ありえない。なんなんだこれは? 


 頭では何一つ理解できない。何一つとして説明できない。


 ただ、頭ではない部分で一つのことを理解している。


 目の前にいる人型が、人間などと言う動物とは、次元の異なる場所にあるはずの存在なのだという事。


 それが、あらゆる過程を飛び越えて、自分の中で結実してしまっている。事実として。


 さらに恐ろしいのは、本来恐ろしいハズのそれを、まるで親愛に足る存在であるかのように思えしまうことだ。



 ――――嘘だ!



 ルイカはその感覚を振り払うように、喉ではない部分で必死に叫んだ。


 そんなはずがない。自分が心を許す相手は、この世にたった一人しかいないのだから。


「やめろ! ――俺に何をした!?」


「……そう抵抗しないでほしい。悪気があったんじゃないんだ」


 激怒するルイカに青い肌の女はかしこまって頭を下げた。


 そして4本ある腕の1本で、手招きでもするような仕草をした。


 高揚していた気分はフラットな状態へと戻っていく。


「ただ、パニックを起こさないよう、キミたちの心を底上げしたんだ。悪気があるわけじゃないんだ。許してほしい」


「こ、ころを? 何だって?」


「要するに、こっちの感情を操ってたってことですか? ――ヤババババッ」


 中年や着ぐるみも目を白黒させている。


 とても信じられない。だが、今起こったことはどう考えても事実だ。


 ――自分が狂っているのでない限りは。


「うん。ここは難しいところなんだけど、……うん。まぁ、まずは座ろう」


「座る?」


 青い女は言う。


 しかし座るも何も、このだだっ広い空間には椅子どころか座布団のひとつもない。


「ちょっと4人とも並んでみてくれないか。そう、円を描くように、向かい合うように」


 言われたとおりに4人が動くと、その場から浮き上がるようにして丸い展開型モニターが現れた。


 ゆで卵を上下で半分に切ったような形だった。


 それを見つめると、不意に視界が吸い込まれる。


 まるで実際に人がそこに居るようなリアリティのある光景が映し出された。


 だが現れた光景はあまり見栄えのするものでは無なかった。 


 湿って薄暗い、石造りの巨大な通路だった。


 まるでゲームの地下ダンジョンの様なだ。


「おほぉー、なにこれすっごい! 魔法でスか!」


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