骨董屋麒麟堂
それは初めは大きくともゆっくりとした変化だった。
そして、その変化は確実に、全てを変えていった。
常に柔らかな薄闇の中で共存をしていた人の子は、全てを置き去りにして光の世界へ行こうとしていた。
ただ広く暗かった道に、
その道を人力車や馬車が、髷を切り落とした紳士と、帯の代わりにコルセットで腰を締めた淑女を乗せて走っていく。
しかし、華やかな祭りのような道を一本中に入ると、そこにはまだ相変わらず闇が大きな顔をして、夜を支配している。
その闇の中に未だ
そこだけ明るい店内は、まるで闇にぽかんと浮かぶ満月のようだ。
「おや、いらっしゃいませ」
ヒョロリと背が高い男が振り向いた。
その男の顔は、のっぺりとしてなんの特徴もない。
目を外した瞬間にどんな顔だったか、つるりと記憶から抜け落ちてしまいそうだ。
ただ桜色の唇だけが、奇妙に愛らしく、少女のようだ。
「おや、何かお探しですか」
その男はその唇で愛想よく笑った。
「ああ、
ええ、こういった商売ですもの、妖しい話はたんと存じております。
はい、勿論、これは全てまことの話にございます。
ただその代わり、お代は頂戴します。
いいえ、さように大した物ではありませんよ。
お代は何かでございますか?
それは最後に申し上げます」
店主はにこりと微笑んだ。
「ええ、これは全てまことの話でございます。
さあ、中にお入り下さい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます