骨董屋麒麟堂奇譚(改)

麒麟屋絢丸

序章 目覚める


 まだそれは甘い微睡まどろみの中にいた。


混沌とした中に意識がゆっくりとできようとしていた。


「ウツクシイ」


それが初めて聞いた音だった。


そう言われると、その意識は震えるような喜びを感じた。


そしてその喜びは意識を、どんどん形作り、覚醒させた。


ウツクシイ


それは命を形作る言葉だった。


だが、

(それはなんだ―)

ソレは思った。


主人あるじ

「ウツクシイ」

ソレに語りかける。


そう言う主人はどんどん変わっていった。


あるとき、新しい主人がそれを手にした。


覚醒をし続けるそれはふっと目を開いた。


あたりを見ることができるほど、意識が覚醒していたのだ。


しかしソレが見たのは


恐ろしく禍々しい景色だった。


黒い霧が立ち込め


赤黒いものが飛び


主人が首だけになってコトリと落ちた。


そしてそこに


「ウツクシイ」

がいた。











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