美しい世界の終わりと新しい冒険の始まりに立ち会う【俺】の物語。
リアムは言った。
「どうやらこいつは僕の魔力だけでは起動できない。というのも敵の魔法減衰攻撃を受けていて思いの他魔力の出力が上がらないんだ。僕が結界を張ってこの魔導器を
リアム、自分が何を言っているのか分かっているのか?女神は間違いなくこの世界を転移封鎖してくる。そんなことしたらお前はこっちの世界に二度と帰ってこれなくなるぞ!
「もとよりそのつもりだ。マリーはこの世界のどこかにいる。だから僕は彼女に逢いに行く。僕は気づいたんだ。僕はまだマリーのために何もしてやれていない。だから僕は彼女を捜しに行くつもりだ。」
そう言いきったリアムは男の俺ですら惚れそうなほど良い顔をしていた。決意は固いのか?
「ああ。君が言ったじゃないか。マリーが僕の全てだって。」
ごめん。ちょっとあの時は自分でもイキリ過ぎてた。あまりにもお前と自分と重なって見えて⋯⋯。
「ノアやクロエ、ステラのことを頼む。あいつらがアメリカと実家に疎外されないように見守ってやってくれないか?」
ああ。任せとけ。行くぞ、リアム。
俺は渾身の魔力を魔導器に込める。魔導器から光が漏れでる。そう、起動を開始したのだ。しかしまだ十分に働くわけじゃない。
「リアム!」
俺とリアムだけのやりとりだったがノアたちがリアムの異変に気付いたようだ。
「ダメだリアム!戻って来い!」
ノアが手を差し伸べるもリアムは首を横に振る。
「ありがとうノア。君のアシストは最高だった。みんなをよろしく頼む。」
そして俺をみて言った。
「僕の勝ちだ、奏。僕のマリーへの愛は永遠だ。君は新しいパートナーと仲良くな。」
言いやがったよ。俺は思わず彼に敬礼する。そしてリアムも答礼する。そして魔導器と共に下界へと降下していった。
「⋯⋯またな、リアム。」
リアム渾身の結界に守られる魔導器。当然敵の攻撃はそこに集中するが逆に言えばやつらはこちらに背中を向けることになる。俺たちは背後から魔法攻撃を浴びせて次々に撃墜する。やがて魔導器は無事に発動した。
どんな世界でも自分の意思の通りに生きられるわけじゃない。でも夢や希望すら持つ事を許されないのは違うと思う。せめて夢を持てる世界で愛する
「撤収だ!こっちもそうは持たない!」
ジャスティンの怒号で我に帰る。俺たちは元の部屋に戻ると魔法陣は消えてハーモニアとの行き来は完全に断絶されたのだ。
「終わったの?」
不安がいっぱいに詰まった声で真綾が尋ねた。
ああ。終わったよ。俺は床に座り込んだ。ああキツかったぁ。真綾が俺を驚いたように見つめる。
「奏、泣いてるの?」
んなわけねえ。第一、俺が泣く理由がどこにもねえ⋯⋯よなぁ。でも俺の思考に反して次から次へと涙が溢れる。
俺は単純に認めたくなかったんだ。リアムと共感していた自分を。もし俺がリアムと同じ立場だったら、俺はリアムと全く同じ決定をしていただろう。
「作戦は成功した。これにて帰投する。みんなお疲れ様。そしてありがとう。」
我に帰ったようにトニーが告げる。
クロエが声をあげて泣いていた。彼女がリアムを男性として慕っていたのを皆知っていたから何も言えなかった。
「本当は奏もリアム君と一緒にマーヤさんを探しに行きたかったんじゃないの?」
真綾が意地の悪い質問をする。そうだな。最後に勝ち逃げされてムカついたのは事実だね。でも違うんだ。俺とマーヤはあの限られた時間の中でどんなカップルにも負けないほどの濃密な愛を交わしていたんだ。それが俺とマーヤの絆。そしてその物語は幕を閉じてしまったんだ。
俺と真綾はまた違うと思う。幼い頃から一緒にいた幼馴染みという関係から築く別の物語。互いに遠慮せず、理解し合える「対等」という関係。タテマエを取っ払ったホンネでぶつかりあうけどホンキではぶつからない絶妙な関係。
「マーヤさんとは喧嘩したことないの?」
無いね。そんな必要がお互いにないほど愛し合った関係だから。でも真綾とは違う。そして違っていてもいいんだ。俺たちの愛のカタチは俺たちで決めていこう。
もとの部屋に戻るとザックが待っていた。彼は俺たちに礼を述べると報酬を渡した。真綾は魔力をもらったみたいだ。
「ねえ、3種類まで魔法を使えるんだって、何がいいかな。このリストから選べるみたい。なんかオススメある?」
まあとりあえず「収納」はもらっとけば。リストと延々とにらめっこしている真綾が俺を見た。100種類に増やす魔法とか言わないんだな。俺ならすぐに言いそう。
「ねえ、奏は何もらったの?」
秘密。真綾だけじゃなくて誰にも言っちゃいけないやつだってさ。俺がもらった報酬とは次回の転生が「
こうして俺の魔王としての勇者パーティとの戦いは幕を閉じた。
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