最後の作戦の緊迫感に押される【私】の物語。

 ここはどこなんだろう?真っ白な部屋。部屋と呼ぶにはあまりにも広い。物凄く高いところに天井があるのがわかるから、ここは屋外ではなく、部屋なのだろう。


「みなさん、お集まりいただきありがとうございます。我が主に代わり、まず御礼申し上げる。」

天使と呼ぶには神々しさには欠ける。ただ人間離れした美しい姿の男性に見えた。


「俺はザックと呼んでいる。当然、本当の名でもなんでもないが『あんた』呼ばわりよりはいいのでね。」

トニーが紹介してくれた。「ザック」氏が説明してくれる。


「ここは我が主が作りし空間です。今回の作戦を感づかれぬよう、そして決行を邪魔されぬように用意しました。では早速はじめましょう。」


 ここには二つのパーティが集まっている。一つは奏のパーティ。

トニーさん、ジャスティン君、エリーさん、そして健介君。


もう一つはリアム君のパーティ。

ノア君、クロエさん、ステラちゃん、そしてバンちゃんだ。


「では魔導器をここへ。」

私たちの真ん中に「機械」が置かれる。何やら歯車が複雑に組み合わさっている。

「なんかアンティキティラの機械みたいだな。」

奏が呟く。なにそれ?

「大昔のあり得ない機械だよ。帰ったらググってみなよ。」

なにその雑な説明。


「この魔導器は『智慧の樹』と名付けた。今、あの女神の世界ハーモニアは造物主クリエイター転生仲介者コーディネイターを一つの神格が担っている。しかし、この魔導器が発動すれば他の転生仲介者コーディネイターもこの世界に魂を送り込める。そうすれば彼女の目論見はやがて瓦解するだろう。」


 なるほど、「無垢」でない魂の人が転生者として送り込まれれば世界は変わっていくということね。


 私は剣で親指に切り傷をつけると奏の頬に触れる。うわ、染みるなぁ。彼の頬に私の血がつくとそこに魔法陣が発動、彼の魔力が上がるらしい。まぁ私は魔力がないから感じないんですけどね。

「ありがとう真綾。」


奏が私の指を口に含む。ちょ、恥ずかしいんですけど。私の傷はすぐに消える。


奏が魔導器に魔力を充填する。奏の魔力はエネルギーに、リアム君の魔力で起動するそうだ。エリクサー三本分くらいの魔力を注ぎ込む。


 次はジャスティン君の出番だ。ジャスティン君が魔杖を掲げ、床を打つと魔法陣が発動し、床全体に上空から見た原野が広がる。これが、マーヤさんとマリーさんの魂が取り込まれた世界、ハーモニア。


 そこに床がさがっていくと私たちはその世界と繋がったのだ。

「リアム、起動を。」

リアム君が魔力を注ぎ込む。しかし、そこで異変が生じた。


「しまった。監視システムに見つかったか。悪いが応戦してくれ。」

それは真っ白な像に翼が生えたキモい感じの兵器。たとえればうーーん、そうだ、昔の大阪万博の太陽の塔を真っ白に塗って羽根をつけた感じ。


 変なビームみたいな魔法攻撃を撃ってきた。健介君とノア君が結界魔法で防御する。

「ステラは反撃!クロエはリアムを援護!」

ノア君の指示が飛ぶ。

「エリーも援護して!」

「OK!」

健介君とエリーさんの流れるような連携。私も奏とこうなれるのかなぁ。

二人の魔銃が派手な魔法攻撃を始める。二人の銃はトニーさんの製作した姉妹銃だ。「カラミティ・ジェーン」と「ベル・スター」。アメリカ西部開拓時代の女性ガンスリンガーの名前だ。エリーさんは左利きなのでなんかすごいかっこいい。


 ステラちゃんもいつものほんわかした感じではなくキリッとして可愛い。


「くそ、まだ起動しないのか?」

苛立つ奏。

「魔力量がお前より小さいからな。」

しかも羽が生えた「太陽の塔」が増えていく。彼らはこちらの魔法陣に砲撃を始める。

「やばいな。これじゃ魔法陣がもたないぞ!なんとかしろよ奏!」

ジャスティン君も悲鳴混じりの声を上げる。うわ、すごい敵が増えてる。


その時だった。

「魔王!提案がある。」

リアム君が奏を呼ぶ。

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