もう一度幼馴染みの告白を受ける【私】の物語。

 うん。なに?

 私は来るべき時が来たと思った。なんと返事しよう?そんなことは考えないことにした。彼の言葉を聞いて、その時に素直に思ったことをそのまま口に出せばいい。それだけだった。了承も拒絶も今の私にはない、フラットな気持ち。


 場所はサロン。彼と会い向かいにソファに座る。まずは私の先制攻撃だ。

奏、こっちに帰ってきてくれてありがとう。どんな形でも奏が生きていてくれたことに感謝してる。


 そういって私は包みを渡す。

「開けていい?」

私が頷くと彼は開封魔法でリボンを解く。包みがふわっと解けると私が作ったテディベアが現れる。奏はベアをしばらく見つめてから言った。

「おお、すごいね。ありがとう。すごく嬉しいけど無理して無い?高かったんじゃない?」

まあ、学生にしてはだけど。でも手作りだから。

「そっかー。だから少し荒々しい感じがするんだね。」

おい、それは縫製が粗いってか?私のスキルじゃそこが限界なんです。奏も胸から小さな包みを取り出す。


「俺も一部手作りなんだけど。これを真綾に。これまでいつも俺を支えてくれてありがとう。真綾は俺の命の恩人だから。あの時来てくれなかったらみんな死んでた。俺もセバも椿姫も。俺と俺の家族を守ってくれて本当にありがとう。」


 「俺の家族」か……。そこに魔族じゃない私は含まれてはいない。なんだかとても寂しい気がした。

「真綾、改めて言うよ。俺は君を愛している。だからぼくの家族になって欲しい。……その、と、時が来たら。」


 全身を血が噴きあがる感覚。バンちゃんの時はうれしい、という気持ちがメインだったけど今回のは違う。もっと重くて熱い感情。確かめたいことは一つだけ。……マーヤさんのことはいいの?


 「いいんだ。マーヤは死んでしまった。でも、彼女を愛した記憶と時間と事実は消えない。それは俺の中で確かに生きている。だから俺はそこから得たもの、学んだだもの、決意したことのすべてをもって君を愛し抜く。きみはマーヤの代わりでもなんでもない。三橋真綾というただ一人の存在だから。俺はこの世界に帰って来た。それはきっと君を愛するためなんだ。」


 うん、わかった。今の言葉を信用するよ。奏は私を抱きしめた。私も抱きしめ返す。マーヤさんの記憶の中だけで感じて来た彼の体温。そう、マーヤさんは彼の中だけではなく、私の中でも生きているんだ。


 そういえばこれ開けていい?


 包みに入った箱を開けるとそれは指輪だった。きらりと輝く大きな宝石。まさかダイヤモンド?この大きさなら億超えてない?私はさっきの寂しさが吹き飛ぶくらいテンションがあがる。まてよ……?今、あんた手作りって言ってたわよね。このリングと台座、あんたが作ったの?


「違うよ。トニーに頼んだ。」

ですよね。まさかあんたが宝石を研磨カットした?

「それもトニーだよ。」

だよね。じゃあどこらへんが手作りなの?奏はにっこりと笑った。


「宝石だよ。これくらいの大きな石炭をね。チートパワー100トンの握力でぎゅーっと潰していくとダイヤモンドになるんだ。手作りダイヤモンドの完成。」

ねえ、あんたそれだと人造ダイヤモンドジルコニウムになるんですけど。


「おっかしーなぁ。本にそう書いてあったのに。」

まさか漫画とかじゃないでしょうね。

「よくわかったね。」

 やっぱりな⋯⋯。私は妄想の中で、その能天気な奏の頭頂部につきささるはずの私のかかと落としの軌道を確認してからその指輪をはめてみた。きらりと光るゴージャスな輝き。


 ね、お願いがあるんだけど。弾き語りやってよ。中学の文化祭でやってたやつ。そう頼むと奏は心底いやそうな表情を一瞬するがそれをなんとか飲み込む。

「真綾さん。あれ、俺の黒歴史なんですけど。」

そう言いつつサロンに置かれたグランドピアノの前に座る。彼が歌ったのは「I was born to love you」、Queenの曲だった。そういや彼の妹の琴音ちゃんがその映像をアップしてたのまだ彼に言ってなかったわ。ちなみに「痛い おにいチャンネル」というチャンネル名がうけるんだけどね。


「 君と出逢うため俺は生まれた

愛を誓うよ 永遠に!

      

 君と出会うたび高鳴るこの心臓ハート

さあ、愛を誓うよ この命賭けて!


  君しかいない、他にはいない

狂おしいほど抱きしめたい


誰にも奪られたくない 君のハート

試してくれ、俺の本気を


夢でもいい、 叶えて欲しい

信じてくれ、俺の気持ち


この熱い想い 、加速する!


君を守るため 俺は生まれた

愛を誓うよ 人生を懸けて!


君の全部 愛してるんだぜ

君の全部、全部、全部 !

愛-してる

愛-してる

狂おしいほど


愛-してる

愛-してる

命尽きる日まで


この熱い想い 駆け抜ける!


 君と出逢うため俺は生まれた

さあ、愛を誓うよ この命賭けて!」


ピアノを弾く彼の背中は少しだけカッコいいかもって思えた。




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