クリスマスでリア充どもを××しかける【俺】の物語。
クリスマス当日、というか18日から25日までの一週間、駒場帝大駅前商店街プレゼンツ「亜人たちのクリスマス」が始まった。庭師長マリコが手配した魔人によって庭の入ってほしくない部分には雪を積もらせて防壁にしていた。
駅から屋敷までの沿道には魔法による光のイルミネーション。すでに大勢の人でごった返していた。エルフたちは天使のコスプレというか衣装を着ていたし、ドワーフたちはサンタクロースのコスチュームがどはまりしていた。
ホビットたちも「もこもこ」な衣装を着ている。出店も異世界と現世界が半々。温かいものがメインだ。ドワーフたちの工芸品の展示販売が人気だった。エルフやホビットが植物で作ったリースなんかも素敵な感じである。
芝生広場の中央に特設ステージが設けられ、ただでもいいから出演させて、というローカルアイドルたちが殺到していた。地元のテレビ局やネット放送局、FM番組の公開放送も行われたりと、金になるとわかると露骨なほどに集まってくるのがいやらしい。
今回は都協賛だったので、知事もサンタコスで登場し挨拶をしていった。
「なんかだんだん大掛かりになると、どんどん主導権をよそに持ってかれるんだよね。」
会長さんがぼやいた。今回はタウン誌や旅行雑誌からいくつも取材があったとか。なんでも大手の広告代理店からもイベント参加のオファーが来たらしい。
「まったくあいつら売り上げのマージン寄こせってうるさいんだよ。業突張りめ!」
お冠なのはわかるけどあんたらだって俺にただでやらせとるやんけ。この亜人たちのギャラ全てこちら持ちなのだ。
「まあ、みんなが楽しんでんのをつまみにしながら酒を飲むのがいいんだよ。」
もうすっかりおっさんたちはドワーフたちと意気投合している。なんかもう全員ドワーフにしか見えんわ。もともと頑固な職人
屋敷の連中はクリスマスとは縁がない者ばかりのため、通常の業務である。
メインイベントである光の妖精による光のイルミネーションがはじまる。今回は夜空をステージにたくさんの星がきらめき、おどり、流れ、白い雪のような光が振りそそぐ。
あまりの美しさに感極まったのか人前をはばからずキスを交わすカップルが続出。
リア充め爆発しろ。エ・ク・ス・プ・ロー……。
「奏、心の声が漏れてるよ。それになに唱えてんのよ。あんたが言うとシャレにならないんだからやめときなさい。」
真綾にダメだしを喰らう。いかんいかん、あやうくジャスティン直伝の爆裂魔法を炸裂させるところだった。
ただ後日評判になりすぎてこのショーは数を2回に増やして入れ替え制になる。地方と違い、あっという間に人であふれかえるのだ。
「ねえ奏、用があるんだけど。」
用?珍しく真綾に屋敷の大食堂に連れていかれる。来客以外でここを使うことはないんだ。
執事が開けたドアを入るとみんなが拍手で迎えてくれた。陰キャ友だち、華や紗栄子、他の執行部。そしてバンちゃんまで。……おい。こいつすっかり溶け込んでるよ。
「副会長だからね。」
真綾が説明する。
「高山奏君、現世界復帰1周年おめでとうございます。」
紗栄子が代表して祝辞。そして、俺の大好物の料理が次々と運び込まれる。まじか!テンションあがる。そうか。たしかに俺の誕生日みたいなものか、現世に魔王として「降誕」した日。まあほんとはもう少し前なんだけどね。
いいのか、こんなごちそう。……ニキビが出やすくなるけど。
「へんな心配すな!」
真綾にどつかれる。俺のためにみんながわざわざ時間を作ってくれたことが素直にうれしい。学校なんか行きたくなかったけど、無理やり引き釣りだされてしまった。そういう意味では
楽しい宴が終わり、みなを送り出す。真綾もメイドさんに混じって片づけを手伝っていた。あれ、なんだか心が温かいものでいっぱいになってるじゃん。このカンジの今夜ならこのままちゃんと言えると思う。
「ねえ真綾。俺もきみに話があるんだけど。ちょっとだけいいかな。」
これを言い終えるまでに2回ほど噛む。あれ、俺マーヤに告白した時ってなんて言ったんだったかな。
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