クリスマスに向けていろいろ忙しい【私】の物語。
期末テストが終わると、今度はお屋敷の仕事と生徒会執行部のお手伝いが忙しくなってきた。地域貢献活動の一環でうちの高校が再びお屋敷の敷地で行われるクリスマスに参加が決定したのだ。
座長は副会長のバンちゃん。私もサポートというかお屋敷のスタッフとの連絡役を頼まれる。うちは私立高校なので受験生を集めたい。だから学校紹介ブースを設置させてもらって、クリスマスに来る受験生や保護者たちにPRしたいのだそうである。
相変わらずバンちゃんは有能で、展示する写真やモニターで流す動画について事細かにメディア委員会に指示してる。メディア委員会の裏方系の女子たちはすっかりメロメロだ。
私がなんとなくバンちゃんにぎこちなく接しているので彼女たちに問い詰められてしまった。ちょうど近所の商店街に展示物の材料の買い出しに行った時だ。
「坂東先輩となにかありました?」
な、なにかって?なにもないけど。たしかにあまりにもにこやかに話しかけてくるもんだから反応に困るってところはある。そう、とても命のやりとりをした間柄とは思えない。
看板にかぶせる布どうしますか?彼女たちが手芸屋さんでわいわいと品定めをしている間、店内をぶらぶらしていると棚に載っていたテディベアと目が会ってしまった。なんか奏に似てる子だな。そういえば、奏のやつ、去年のこの時期くらいにこっちの世界に帰って来たんじゃなかったっけ。
うーむ、手作りキットでも5000円越えかぁ。結構なお値段だなぁ。
「あれ、お屋敷の真綾ちゃんじゃない。」
店番の奥さんに声をかけられる。こんにちは。奥さんとはこの前のクリスマスの相談会でお屋敷に来たとき以来だ。
「悪いわね、いつも亭主どもが押し掛けて旦那様にお世話になっちゃってぇ。私もお菓子とお茶が楽しみになっちゃって。彼氏さんにプレゼント?おまけするわよ。」
なんと、5000円ぽっきり(税込み)に負けてくれるですとぉ?……よし、買った!
つい衝動買いしてしまった。そうだ。奏にプレゼントしてやってもいいか。添付の説明書が解りづらかったらYouTubeとかでも見られるわよ。今はなんでもスマホで見られるから便利よ、って。
そして、仕事が忙しい上にプレゼントづくりなんてものにまで手を出したことに後悔する。わりと細かいパーツを縫製してあとで組たて?ればいいのだから……休み時間に細かい縫製をやればいいや。
「なにやってんの?」
仕事の合間に生徒会執行部室でもお針子さんをやっているとバンちゃんが話しかけて来た。うわ、今ちょうど二人きりやんけ。気まずいわ。
「告白の返事のことなんだけど。」
うわ、しかも向こうから切り出してきた。心臓がばくばくする。
「取り下げるよ。」
え?バンちゃんの表情がくもる。
「真綾ちゃんを好きというぼくの気持ちが本物なのは違わないんだけどね。ただ、ぼくはその気持ちを利用してしまった。きみをナデちゃんの傍にいかせないためにね。
これは間違いなくきみの気持ちをぼくが裏切ったということなんだ。ぼくの行動は真綾ちゃんやナデちゃんを罠にかけるものだ。それはぼくが勇者の仲間であることの方を優先することをぼくが選んだということなんだ。
だから、今のぼくには君とのお付き合いを申し込む資格がないんだ。もし今度のトニー先生の依頼を無事に果たしたらまた挑戦してみるよ。ま、あとはナデちゃん次第だけどね。
君の気持を裏切った形になってホントにごめんね。じゃ、今日はメディア室で作業だからそれがひと段落ついたら来てね。」
私はほっとしたような、残念なような、うれしいような悲しいようなものすごい複雑な気持ちになっていた。
そこに紗栄子が入ってくる。
「どうした真綾?涙出てるよ。なんかあった?」
え?ほんとだ。涙だ。えぇと、さっき針を指に刺しちゃってさ。いたたた。
「気ぃつけなよ。案外あんた
そう?そうでもないけど。私が少しむくれたふりをすると紗栄子は苦笑する。
「違うよ。恋愛の方にね。ま、恋愛マスターたる生徒会長の私が相談にのってあげてもいいよ。」
恋愛マスターが生徒会長の資格とかどんな少女漫画やねん!……でも、ありがとね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます