第10章:告白?最終決戦?クリスマスはドキドキがいっぱい

クリスマスの相談を受ける【俺】の物語。

「さすがに修学旅行の二連戦ダブルヘッダーは疲れたぁ。でも行き帰りがファーストクラスだったからみんなよりマシかな。」

真綾が気怠るそうに肩を回した。


 せっかくのハワイ。今度こそちゃんと告白しようと思ったんだが、マリーさんの件もあってそれどころの雰囲気では無くなってしまったのだ。リアムたちはハワイには現れず本国に一旦帰ったようだ。


 やはり、クリスマスプレゼントと共に告白というところだろうか。俺が悶々としていると再びというか三度、屋敷に商店街の連中が押しかけてきたのだ。


「若旦那、修学力はハワイ行ってたんですって?いいですねぇ。俺も新婚旅行はワイハだったんだぜ。ここは一杯やりながら相談しましょう。」

 俺がセバスチャンに合図を送ると料理とビールが運び込まれる。うーむ。もうこいつらすっかり楽しみにしてやがるな。


「そりゃそうでしょうよ。女房みたいなババアの酌じゃなくてべっぴんさん揃いのメイドさんのサービスですぜ。女房も新婚旅行の時はスタイルよかったんだけどね。今じゃあちこち垂れ下がって来てねえ。うちの売り上げと一緒だよぉ。」


 おいおい、酒が進む前から危険な発言。まあ、いつもの如く奥様たちは洋館のサロンでお茶会。あちらは我が屋敷のイケメン揃いの魔人執事たちが給仕しております。まあ同じようなことをあちらではさらに盛大に言ってそう。あとで向こうのヘルプに行った真綾に聞いてみよう。亭主たちの口が回りに回る。


 「そうそう、酒が回る前に相談ですよ。来月のクリスマスイベントのことなんですけどね。」

いやいや最初からうちでやるていですか?もうこの感じすっかりお馴染みになって来てない?ああ、聞いてねえ。


「今回はずばり、『亜人たちの聖夜』で行きたいんですよ。」

亜人ってエルフやドワーフってことかいな。あのね、「行きたいんですよ」ってその言い方。ずばりじゃねえよ全く。


 あのですね、亜人はホステスでも外タレでもないからね。だいたい世界が違うからクリスチャンなんで一人もいないし。

「へいきへいき、日本人だってクリスチャンなんてほとんどいないから一緒よ。」

そう言えばそうだな⋯⋯って納得するかい!で、そこのスーツ着た方は?どうもその人は都庁のイベント担当の方らしく、「都協賛」をつけるかどうかで連れて来られたらしい。昼間からビール大丈夫ですか?ああ、電車通勤?大丈夫ですね。


  そういえば皆さんクリスマスでの思い出みたいなものはありますか?俺は軽いリサーチのつもりで聞いたのがいけなかった。そうだ、こいつら素面しらふじゃなかった!

「俺が若いころはよぉ、イヴにシティホテルに部屋取るのが大変でさぁ。」

ああ、バブル時代が青春でしたか。

「俺はディ●ニーランドのホテルを……。」

「俺はスカイツリーの見える部屋を⋯⋯。」

なぜかホテルの部屋の話に……。


 結局、うちの異世界で亜人は魔人の庇護下ひごかにあるので魔人の長を務めるセバスチャンに折衝せっしょうを頼むことになった。


 お開きになって酔っ払いの群れを奥さんたちに引き取ってもらう。

「かあちゃん、愛してるよぉ。」

「なに言ってんだい、キモイおやじになってから言ってんじゃねえよ、ハゲ!」

「ハゲじゃねえよ、薄いだけだ。」


最後に残った都庁の人が丁寧にあいさつをして帰ろうとした。

 すみません。おっさんたちが醜態しゅうたいさらして。これが楽しみでうちに来るんで大目に見てやってくださいね。俺が謝ると都庁の人はにやりと笑った。


「アメリカではクリスマスは家族行事なんですよ。ナデちゃんも告白の方を頑張ってくださいね。プレゼントはトニーと相談したらいかがですか?」


お前、バンちゃんか!また化けて人の屋敷に入りこみやがって!


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