友達の選挙戦に付き合う【私】の物語。
「緊張するぅ。」
演劇部のメイクさんに顔を弄られながら紗栄子が身体をぶるっと震わせた。
うちは軽いアイメイクやリップ程度の化粧は自由なんだ。だから慣れてないということはないけど。まあ放送用のドーランのメイクは緊張するよね。
この学校の生徒会役員選挙は立会演説会が無い。体育館に全校生徒を集めてやらないのだ。そのかわり昼休みの校内放送で「政見放送」を行うのだ。
1週間目は候補者単独の演説。2週目は司会者による候補者のインタビューだ。討論会はやらない。というのもそこまで「政策」なんて変えようがないからだ。
「それでは収録を始めまずから二人とも席についてください。」
インタビュアーを務めるメディア委員会の先輩が紗栄子と坂東君を促す。
校内放送を担当するグループは二つあって、生徒会の「メディア委員会」と文化部の「放送部」である。昼休みはそれぞれ15分ずつの番組を持っている。
昨日の放課後に今日の収録のためのリハがあってそれにも付き合わされたんだ。
「三橋さん、毎回付き合ってくれてありがとうね。」
坂東君がすまなさそうに言った。いや、友達のためなんで。まあ奏が手持ち無沙汰にしてますけど、ゲームやらせておけば大人しくできるので。
政見放送の段取りは「メディア委員会」と「選挙管理委員会」が担当する。ちなみに選挙管理委員会や会計監査委員会などを担当するのが「エルダー」たちなのである。
紗栄子たちが席に着くと「本番」が始まる。収録したものを明日の昼休みに流すのだ。
しかし、坂東君ってええ人やね。安心して紗栄子を任せられそう。紗栄子はリーダーシップはあるけど細やかさは無い。逆に坂東君はここ数日一緒しているけどよく気が回る。お嬢様と執事みたいなコンビなんだ。
上がりまくる紗栄子と落ち着いてサポートする坂東君。なんか良い雰囲気だね。そう思わない?
奏は全く関心なんかないようでゲームに没頭している。5分の番組だが収録は30分もかかった。
ようやく収録が終わって家路に着く。
ねえ奏、紗栄子は当選できるかな?奏はやっとゲーム機から目を離した。
「どっちでもいいんじゃない。会長って言ったって、どうせ
それ言っちゃお終いでしょうに。
「そう言うことじゃないよ。俺だって一回死んで初めて一生懸命生きておけばよかったな、って後悔したからな。」
そうなの?その割にあんたは相変わらずズボラじゃん。ゲームばっかりしてるし。
「良いんだよ俺は。俺は
へえ、珍しく寛大だね。帰りが遅くなってもいいの?
「うん。」
ちょっと待てよ。最近ゲームのやりすぎを椿姫さんに
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