約束通りに真相を聞く【俺】の物語。
「で、なぜここなんだよ?」
10月に入ってすぐ、俺はジャスティンを呼び出した。最初はトニーの美術準備室の「魔法の小部屋」を借りたかったのだが、トニーに連れてこられたのは先日も連れて行かれたキャバクラの「Vipな個室」だったのだ。
俺もジャスティンと同じことを言うつもりだったがお姉さんたちがお酒の積まれたワゴンを引っ張ってきたところで諦めた。
「社会勉強だよ、生徒諸君。」
トニーがウインクする。なーにが勉強だよ。お姉さんたちが外に出るとジャスティンは約束通り本題に入った。
「マーヤを殺したのはリリアの幼馴染みだ。それ以上でもそれ以下でも無い。ただきみが知りたいのはそこではないわけだ。想像通りさ。唆したのは王だ。ただ、リリアは一切関与していない。知っての通り、彼女のプライドがそれを許しはしなかった。」
マーヤを排除する動機があるのは二人しかいなかった。俺と結ばれるためにマーヤが邪魔だったリリアと俺の力が怖いリリアの父リュパート。
そして、俺の結界をすり抜けるために刺客を鏡から送り込んだ魔法。あれは「召喚魔法」の応用だ。そしてその高度な召喚魔法を使えるのは王家の血の者しかいない。そして俺はほっとしたところもあった。リリアが黒幕でなかったことに。
「リュパートはリリアとの結婚を餌に暗殺者を唆した。もちろん、内々にはぼくとリリアの結婚が決まった後でね。そして、口封じのために暗殺成功の後に処分された、って訳だ。疑っているなら
神聖証紙というのはアストリアで一般的に使われている魔法具で供述に嘘偽りがないかどうかを判別するのに用いられるものだ。懐かしいな。俺が収納からそれを出すとジャスティンは「マーヤ殺害にジャスティンとリリアは一切の関わりがない。責任はリュパートにある」と記しその文章に触れる。もし嘘なら字が赤く変わる。しかし、そうはならなかった。それは彼の供述が正しいことを証明していた。
良かった。同じ釜の飯を食ったジャスティンとリリアが「犯人」ではなかったことは本当に良かった。しかもその「釜の飯」を甲斐甲斐しく作ってくれたのはマーヤじゃないか。正直言ってジャスティンと戦うことよりも、二人がマーヤ殺害に関わっていたらどうしようという心配の方のストレスが大きかったのだ。
そうか。リュパートが死んだ今、さらに理由を問い質すことも、その罪に対する報いも与えることもできないわけか。ジャスティン、これで俺たちも手打ちにしないか?
しかし、ジャスティンは首を横に振った。
「奏。きみの力を譲り受けることをぼくはまだ諦めたわけじゃない。もっとも、次に挑戦するのは勇者たち、ということになるけどね。」
あ⋯⋯そう言えばすっかり忘れていたよ。あいつら二学期に入ってからしばらく大人しかったからな。
彼らに会ったのは生徒会役員選挙のすぐ後だった。正直言って驚いた。特にリアムの変貌ぶりに。
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