第9章:決戦は修学旅行!?魔王と勇者の対決の行方。

生徒会役員選挙に全力で巻き込まれたくない【俺】の物語。

 「ねえ奏っ。私、執行部の選挙出ようと思ってるんだけど。」

紗栄子が俺に宣言した。お、おう。ま、頑張れ。


 9月末の体育祭で現執行部は引退するので9月半ばに立候補受付、二週間の公示期間を経て10月の頭に投票という流れなのだ。


「それでお願いなんだけど⋯⋯。」

紗栄子の言葉を俺は遮る。だが、断る。

「えーっ、まだ何も言って無いけど!」


 この学校の生徒会は、女子生徒が2/3を占める学校であるがゆえに、会長と副会長は男女ペアでの立候補になるのだ。俺は副会長はやらんぞ。どうしてわかったの?って顔すんな。俺はあくまでも陰キャなのだ。確かに転生した時はまさに「生まれ変わった」ように頑張ったけどな。基本は陰キャ。


 「陰キャ」と「陽キャ」の違いについて俺なりの定義があるのだ。それはイベントが好きか嫌いかである。俺はみんなを巻き込んでイベントを楽しみたい人間ではないのだ。それどころか巻き込まれるのさえ嫌だ。とは言え、生徒である以上は最低限自分の分は果たしながらも批評だけしていたいタイプなのだ。よって生徒会執行部なんてごめんこうむるのだ。


 じゃあ、とまた紗栄子が口を開きかけたので真綾も貸さんぞ、と釘を刺す。

「ええっ、ケチ!じゃあ私、立候補できないじゃん。」

どんだけ俺を当てにしてるんだよ⋯⋯。それに心配するな。そのための立候補説明会じゃないか。


「女バス枠で出るつもりなら男バスとか運動部の男子と組んだらいいんじゃないの?」

 真綾がもっともらしいことを言う。そう言えば中学時代は執行部の書記をやってたんだっけ。


 それは現執行部が説明会を開いて、集まった候補予定者のペアの調整を行うんだ。この学校は運動部ではテニス部、バスケ部、フットサル部あたりが大所帯で選挙で集票力があるためいわゆる「政党」の役割を果たすんだ。まあ予算の争奪戦の時だけだけどね。だから部員を執行部に送り込もうとする。

 だから、だいたいペアはその場で決まることが多い。


 他の学校はどうかはわからんが、この学校は校内活動に内申点をたっぷり加算してくれるので割と全国クラスではない運動部の生徒にとっては魅力なのだ。

 紗栄子もこの学校の女バスでは選手として頭抜けた存在だけど、スポーツ推薦で大学には行けるまでは行かないので、内申狙いにシフトするんだろうな、とちょっと穿った目で見てしまった。まあ落選したところで執行部の諮問しもん委員会、エルダーにはなれるだろう。そこもまあまあ内申点くれるらしい。


 まあ、俺も相談くらいは乗ってやるよ、そこで話は終わったと思っていたのだ。ここまでが2学期最初の話ね。


 そして立候補受付終了後、紗栄子が連れてきたのが「副会長」候補だったのだ。

 坂東成二ばんどうじょうじといういかにもな好青年である。男子フットサル部の部員だそうだ。少し髪も染めているが「垢抜けている」程度で「チャラい」感じではない。清潔感があるからかな。


 陰キャな俺とは真逆のタイプのイケメンで、バイト先のおばちゃんにうちの娘とかカノジョにどう?とか言われそうな安心感を醸し出すタイプ。


「よろしく、高山君。噂はかねがね聞いてますよ。」

スマートに俺に手を差し出す。割とガッチリと握手するタイプで日本人的なふにゃっとした感じはしない。


「なんか好いカンジの子だったね。」

帰りの車の中で真綾がボソッと褒めた。

 

 それが9月半ばの話ね。ただ、俺はまだその時はジャスティン対策で頭がいっぱいで選挙なんて全く関心がなかったんだ。

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