納涼祭で佇む魔王【俺】の物語。
異世界夜祭実行委員会本部は「妙な」熱気で包まれていた。俺が戻ってくると、まだお開きになってもいないのに酒盛りが始まっていた。
「若旦那!聞いてくださいよ、明日、都知事がお見えになります!」
なんと、SNSで盛り上がったことで都知事サイドから急遽、明日視察に行きたいという打診があったようだ。
当然、マスコミも着いてくるだろうし、宣伝効果は抜群なのだそうだ。俺はラムちゃんか不二子のコスプレをしなきゃ良いよ、とだけ言った。
何しろその女性知事、かつては美女だったのだが、60過ぎてハロウィンのコスプレで「メーテル」をやらかして世の男子勢を敵に回した過去があるのだ。
「いや、これで認知度アップ間違い無しですよ。平日でこの賑わいですからな。来年は是非土日で、いや金土でいきましょう!」
どさくさに紛れて来年もやるという約束に漕ぎ着けようとしている。最初は泣きそうだったおっさんたちのドヤ顔がうざすぎる。
「しかし高山君、すごいね、あの火の出ない光だけの花火、まるで魔法みたいだね。今度うちの商店街のイベントでもやってよ。」
「なにいってんだよ。高山さんとこはうちの組合員なんだから。」
だいぶアルコールが回ってきたのか、おっさんたち、喧嘩すんなよな。真綾も酔っ払いが嫌いなのか、彼女のポニテが揺れた。そう、彼女の後ろ姿にマーヤを思い出す。酔っぱらった貴族に絡まれそうになった時の嫌悪感と恐怖感がつたわってくる。それによく似た後ろ姿。
「すみません。少し
俺は思わず真綾の手を取って外に出た。真綾は一瞬身体を硬らせたがすぐに歩き出す。
再び外に出るとステージではパフォーマンスが。セイレーン族の少女たちが坂系アイドルのコスプレで歌って踊る。口パクじゃなくてもここまで歌が上手いのはさすがの種族特性だ。
他にも魔人によるガチにタネも仕掛けもないマジックショーなど。ちなみに彼らのギャラは全部俺持ちである。
親切も味わううちにそれが当たり前になり、そしてそれを
「ねえ、どこまで行くつもり?」
俺はいつのまにか屋敷の2階のバルコニーまで来ていた。
「ちょ、あんたまで酔っぱらってないわよね?」
真綾に大事な話があるんだ。その時、光のショーが始まる。真綾の顔が光で照らし出される。
教えて欲しいんだ。マーヤが亡くなる前日、俺たちは花火を見たんだ。その時、マーヤが俺に伝えたいことがあったんだけど、花火の音で聞こえなかった。マーヤの言葉がなんだったか教えて欲しい。
俺は一気に言い切った。
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