花火大会の【私】と【俺】の物語。
(このエピソードはKAC2020参加作を加筆修正しています。今後第7章に移動します。)
「
魔王の特殊魔法にも似たような術式があるが、間違いなく健介が採取した病気を魔弾にのせてあのフライングバジリスクに撃ち込んだのだ。発病すればそう長くはもたずに死に至るだろう。もちろん、殺すのが目的ではない。命が惜しければ俺のもとへ出頭せよ、というメッセージもつけられている。おい、後始末を俺にやらせる気かよ。
「ごめんね。あいつ一匹にかまけてる暇がなくてね。奏のところに来たら治してやって。そのついでに異世界に戻してあげて欲しいの。そして、お願いがもう一つある。」
それは、この世界に異世界の魔獣を保護する施設を作って欲しいというのだ。異世界で絶滅の危機に瀕する魔獣たちを保護したいんだそうだ。
「魔獣カフェでも作ろうかなって健介と相談していたの。そこで怪我した魔獣を治療してリハビリさせてから野生に返すんだ。」
そもそもどうやって世界を行き来するつもりだよ?
俺の反応は当然だがエリスは不思議そうな顔をする。
「私、君のいきつけの居酒屋からこっちに入れたよ。だからあの回線をそのままにしておいてほしいの。」
そうか、ゲームで異世界に
「ね、いいでしょ?ほら、奏。この子を抱っこしてみてごらんよ。もっふもふやで。」
エリスは俺に保護したばかりの「ホワイトオウル」を手渡してくる。フクロウは不安そうにエリスと俺の顔を見比べている。俺は優しく抱いてみた。
⋯⋯⋯⋯⋯これは、いい。
モッフモフな感触が俺を癒してくれる。これは間違いないやつだ。こんなもっふもふを愛でる店を作るだと? う、うむ。そ、その時は手伝わさせてもらおう。俺が満足の息を漏らしながら魔獣をエリスに返すと彼女はそれを抱いて異世界へと帰って行った。相変わらず
あれ?今の俺とそう変わらんかも⋯⋯。
やれやれ、おかげで花火はほぼ観損なったよ。俺が戻ってきた頃にはすでにデザートまで済んでいた。
「ずいぶんと長いトイレだったわね。でもクライマックスには間に合ったみたいね。」
真綾が皮肉をいう。
花火大会のフィナーレはとても巨大な4尺玉が打ち上げられた。これが俺の寄付だということはみんなには内緒だ。
◇ ◇ ◇ ◇
「花火の後って寂しいね。」
珍しく奏が言った。そう?エネルギーを完全燃焼した達成感しかないけど。
そういうと奏はしばらく笑い転げる。ああ、すごい感じ悪ぅ。私の不機嫌な表情に気付いたのか、奏は言った。
「なるほどそう考えてみたことがなかったよ。でもさ、俺その感じ方結構すきかも。」
け、とってくっつけたような褒め方すんじゃねーよ。でも、ちょっと嬉しいけどね。
(次回から「夏休みの宿題」編。なんとか学校の宿題をブッチしたい奏ですが、エスケープした先で巻き込まれる騒動とは?)
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