夏休みを満喫したいメイド【私】の物語。私の夏物語は⋯⋯。
なんじゃあこりゃあ。
ジーパン(
私たちがビーチに戻ってくると、私と奏がパラソルの下一つのサマーベッドで戯れていたのだ。正確に言えば私と奏の姿に変化した妖狐のつがいが、いちゃコラしていたのである。
「これは⋯⋯ひどい。」
驚きすぎた奏は声がかすれて
まあ、犬とか猫とかがねころがっているとすれば割と自然なんだろうけど。
マリコさんもびっくりして固まっていた。
「あちゃー、これサービスし過ぎやね。」
周りのクラスメートたちもドン引きしているようだ。例の家族づれも子どもたちに「見ちゃいけません」みたいに叱っている。
「あんたたちいつからそんな感じに⋯⋯。」
絶句する紗栄子。
なってなーい!
ここで本人たちが現れてみんながびっくりした。妖狐たちはまだ気付いていないらしく、「奏」が「私」の耳の後ろをペロペロと舐めている。
やめんか!
思わずツカツカ近づいて「奏」の頭を思い切りはたいてしまった。驚いた妖狐の変化が解けて元の狐の姿に戻る。
マリコさん、これはどういうことですか?
マリコさんはひきつった笑顔で言った。
「うん、まあ、これは優しい嘘やで。」
事の顛末を皆に簡単に説明するとみんなは怪しい、という顔しかしなかった。もう、マリコさんのせいで誤解を受けちゃったじゃないの。
「いやあ真綾もすごいエッチな顔をするんだね。」
「画像保存しとかなきゃ。」
コラァ、消しなさい!そんなの。偽物なのに。
その時、騒ぎに我関せず本を読み耽っていたニッシーが顔を上げる。
「どっちにしたって二人で抜け出してよそでこそこそイチャイチャしてたかもしれんやろ。一緒やで。」
がーーーん。頭を抱える私に紗栄子と華は言った。
「大丈夫。旦那様に高く買ってもらうから。」
船の時間なのか例の家族連れは港へと帰っていく。洞門の間を夕陽が落ちて行き、やがて海へと沈んで行った。
「さ、これで家族サービスも済んだし、安心してゲーム三昧できるぞ!」
奏が伸びをしなが言う。
「ねえ奏、次は花火とかがいいなあ。」
紗栄子と華のおねだりに奏は
「もう山も海も言ったじゃん。」
と断るも紗栄子と華がスマホに入った例のフォトを見せる。
「インスタ映えしそうだね。」
無言になる奏。救いを求めるようにこちらを見る。私は一度大きく息を吸って吐く。そしてとびきりの「営業」スマイルで言ってやった。
「夏休みが充実しそうで何よりですわ、旦那様。」
(このエピソードは第7章に移動します。次は花火大会ですよ。)
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