夏休みを満喫したいメイド【私】の物語。沈没船探検!
(このエピソードは公開後、第7章に移動します。)
ねえ奏、宝探しはやらないの?あんたの魔法使えばすぐじゃない?
私の脳内では宝箱の蓋が開き、金銀財宝が眩い光を輝かせる映像が浮かぶ。
しかし、奏は苦笑を隠そうともしない。
「やらないよ。考えてもみなよ。この伝説を誰が流したのか?おそらくはダイビング客を呼び込みたい村の連中だろう。そんなものだよ。伝説の正体なんて。」
セバスチャンさんも頷く。
「我々魔族も、冒険者を誘い込むために偽の財宝情報をよく流したものです。街の酒場に行けば強欲で知性の足りない連中がよくひっかかりました。」
「ああ、ミミックな。」
ミミック?
「そう、宝箱に偽装して
いやだ怖い。しかし、セバスチャンさんは眼鏡を指であげながらつぶやく。
「しかし、噂の出所が乗組員である可能性もありますね。沈んだ船に大切な何かを放棄しなければならなくなり、それを引き揚げて欲しかったのかもしれません。それでも財宝といえば引き揚げる確率は上がると考えたのではないでしょうか。」
そうか。財宝の噂は一人歩きするうちに
「ふーん。そう言うことなら
奏がようやく立ち上がる。久しぶりに腰をあげたので少々立ちくらんだようだ。なぜ、この状況でやる気を出したのだろう?
「セバ、お前も行くか?」
セバスチャンさんは仕事があるのでと断り、かわりにマリコさんを護衛につけることにした。
「いや旦那様とお散歩なんて久しぶりやわ。テンション上がるわ。」
九尾の妖狐の姿で尻尾を振ったらどうなるんだろうか?
「召喚、水の妖精王ドトウ。」
勇者の奏は妖精魔法使いだから、魔法は妖精を介して使うことがほとんどだ。
私たちの周りを魔法の泡が囲むと海の中へと進んでいく。洞門から外海に出ると海の流れが一気に速くなる。やだ、破れたりしないの?
「これは泡ではない。異空間だ。」
妖精王が不機嫌そうに説明する。疑ってごめんなさい。
海中を進むうち視界はどんどん悪くなり、深く潜るにつれてだんだん暗くなっていく。ぜんぜんロマチックじゃない。私はだんだんテンションが下がっていく。
「なんかロマンチックやなあ。新月の夜みたいや。」
一方のマリコさんは嬉しそうだ。でも新月って月が出てないからかえって暗くない?
「いや、月の光に邪魔されんから、星が綺麗に見えるんよ。ほら、向こうに星が見えて来たで。」
あ、それ、沈没船を照らす投光器の群れですから。透明度が低くて灯がともっていることしかわからない程度だ。
海底に船が横たわっている。沈む時に転覆でのもしたのだろうか。爆撃の影響なのか船の上部はかなり破壊されていて侵入が難しそうだ。投光器が照らしているけどやっぱり暗い。そして、船体の腐食が進み過ぎていて捜索は難航しているようだった。
私たちを包んだ泡は船の中へと入っていく。異空間だから障害物は関係ないのだ。何を探すの?奏は目をつむると呪文を唱える。
「
しばらくすると探索魔法が魚の形をとって現れる。船の中へ中へと私たちを案内する。普通の沈没船ではなく、爆弾によって破壊されて沈んだため、瓦礫が散乱し、とてもダイバーでは進めないだろう。そんな所へと進んで行った。
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