第7章:自由を満喫したい【魔王】と夏休みを満喫したい【メイド】の暑い夏。

夏休みを満喫したいメイド【私】の物語。まずは海水浴へGO!

「俺はなぜこんなところに……。」

 ビーチパラソルの下で奏がため息をつく。なにいってんのこいつ。見なさいよ、どう見ても絶景じゃん。


 それは、扇状の白い砂浜にターコイズブルーの海。水平線を覆い隠す岩。中央に自然の洞門がくりぬかれて外海へとつながり、水平線を垣間見ることができる。地元の人には「扇池おうぎいけ」と呼ばれているが、実際には入江だ。まさに天然のシーサイドプールと言ったところだ。「こんなところ」なんて言ったらバチが当たる。


 7月下旬の絶好の観光シーズンにも拘わらず、海水浴客はまばら。しかも「東京都内」であるにもかかわらずだ。なぜなら、ここは都内といえど小笠原諸島、それも南の方でしかも離島だ。普通の観光客なら来るだけでも2日はかかるだろう。


 「旦那様、『なぜ』かと申し上げれば使用人どもへの福利厚生の一環でございます。」

執事のセバスチャンさんがさらりという。さらりは良いんだけど、ビーチで執事服スーツって暑くないのかな。

「これが仕様ポリシーでございます。」

さすがは魔人。でも珍しく言葉使いが慇懃いんぎんなのは、やっぱり暑いからじゃない?


  今回、夏休みってことでお屋敷のメンバー、それに紗栄子と華、ついでに奏の友人の陰キャ4人衆を連れて海に来たってわけ。サマーキャンプが山だったから次は海ってのもあるけど、一度ここには来て見たかったんだよね。


「ほら二人とも!せっかくだから泳ごうよ!」

紗栄子と華が手招きする。二人とも日頃部活で鍛えているからプロポーションが良い。水着ビキニもかわいい。ねえ、奏も行こうよ!


「まだいい。」

そう行ってゲーム機の画面を眺めている。まったくもう。こんなに素晴らしい景色が無窮むきゅうに広がっているのに、そんな小さい画面に食いついているのか意味不明だ。


「皆の者!水に入る前にはまず準備運動だ。こら、待ちなさい!真綾とて例外ではない。」

メイド長ハウスキーパーの 椿姫つばきさんがメイドたちを並べてラジオ体操をさせていた。ちなみにお屋敷のメイドと執事の合同朝礼で毎朝やらされているのでお馴染みだったりする。この体操は真の姿が人間ではないメンバーにとって「人間らしい」身体の動かし方の良い練習になるそうだ。


 ちなみに椿姫さんもビキニである。なにしろ戦闘時のビキニアーマーの武装を外せばこの状態だそうでまったく違和感はない。今回はメイドも執事も交代制で仕事と遊びになる。ちなみに庭師たちは今回はビーチパラソルの設営だけで終了である。庭師長のマリコさんもビキニですでに臨戦態勢である。いつもデニムのオーバーオールなのに水着もデニムなのはこれまたポリシーなんですかね?


 陰キャ連中は奏と同様パラソルの下で読書しているニッシーを除けばメイドさんたちと鼻の下を伸ばして戯れていた。


 よーし、今日は遊びたおすぞ!

あれ?家族連れなのかな。私たちの方を怪訝そうな顔で見てるな。どうしたんだろう。

 

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