【大賢者】の物語。四面楚歌な生活。
家に帰ると母と姉が笑顔で出迎えてくれる。母はリビングのテーブルにお茶を用意している。着替えてリビングに行くと母はぼくにお茶を勧めながら
「今日は学校はどうだった?」
定時報告がお望みなら学校にあなた方のスパイがいるでしょう?
「あら、母さんだってたまには息子とちゃんとコミュニケーションをとりたいわ。」
これはぼくが「反抗期」ということではない。この母は偽物だ。ぼくの監視役である。当然、父も姉も偽物である。「父」は政府の指令を仲介するエージェントであり、「姉」はぼくの健康を管理する看護師、そして夜のご褒美係も兼ねている。さすがに抱く気にはなれないが。ちなみに顔は本物とは似ていない。
中南海はぼくを召喚した直後にはすでにぼくの「
家族の身柄は奏の首と交換である。この世界は思った以上に転生者や転生者の子孫たちによって牛耳られているのだ。あの国にも強力な者こそいないが、それなりの術者は存在する。最初は自力で取り返そうとも思ったが、正直、奏から力を奪った方が手取り早い。
奏はかなり強力だ。勇者に加えて魔王の力を持つ。だからこそ魔王討伐以降ぼくは研究に研究を重ねて来た。奏が完全に魔王と化した場合に備えてだ。だが研究すればするほどぼくは彼の力が欲しくなってしまったのだ。
民を支配する魔法。愚民を震え上がらせ持っているもの全てを差し出すほどの恐怖を、そしてどんな強力な軍隊も歯向かうことすらできない圧倒的な力を。彼がその気になりさえすれば一週間で地球の全人口の99%を減らすことくらい簡単だ。
そう、アメリカの財閥どもも中南海も、その力が欲しくてたまらないのだ。
しかし、この学校に来て二週間。奏は生徒の間でさえ恐怖の対象とはなっていない。力の無駄遣いも
話を元に戻そう。奏を倒すための秘策。それはアストリア王家の召喚術を習得することだった。ぼくは王、そして姫と共に研究を重ね、ついに完成させたのだ。
翌日、ぼくは再び勇者たちのVIPルームを訪ねた。彼らの雰囲気はあまり「
リュパートが与えた「転生薬」が効き過ぎてしまったのだろうか。
「ジャスティン。君に魔王と戦ってもらう日が決まったよ。⋯⋯体育祭とやらの日だ。」
リアムが
今回はぼく一人で戦うことになる。それは
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