残暑にやられた魔王【俺】の物語。文化祭は戦争だ!
ついに文化祭当日がやって来た。
朝7時半。残暑とはいえ、もう十分に暑い。
昇降口の前にバンが横付けにされる。中から出てきたのは商店街のケーキ屋の若旦那だ。
「おはよう旦那。持ってきたよー。」
ご近所の駒場帝大駅前商店街のケーキ屋さん2軒ほどにケーキやシュークリームなどを発注しておいたのだ。ブラウニーとホイットニーの監修で作ったものだ。元はウチで作ろうかとも思ったが、セバスチャンの提案で地元企業へ発注することにしたのだ。やはり、地元に金を落とすのは大事なんでね。みんなで
8時にナベ先がミーティングを行う。あんまり準備に参加してないくせに態度でかい。まあ、電源使用許可やら異装許可とか検便とか書類申請系はやらせてたんで花を持たせておく。
8時半、体育館で全校で開会式が行われる。生徒会長の
その時俺はとんでもないことに気がついた。サノちゃんがガッツリメイクしてメイド服を着ていたのだ。素の顔がかなり濃いのでまるで魔女のようである。
「驚いた?紗栄子だって男装してるんだからいいよね?」
得意げにウインクするが背筋に悪寒が走る。⋯⋯うん。頬骨が高いのとひげが濃いのはどうにもいただけんな。本人としてはかなり徹底的に剃ったそうだが元の体質が体毛濃いのがいかんな。「こ●亀」に出て来そう。
「『ザワっ』というよりは『ゾワっ』て感じよね。」
真綾が上手いことを言ってくれた。
開場と同時にお客さんがやってくる。さあ、始まった。
「お帰りなさいませ、旦那様。」
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
椿姫やセバスチャンに叩き込まれたいい姿勢、そして発声である。
昼まではご飯系よりもこちらん喫茶系に人気が集まる。妖精姉妹の監修デザートはびっくりするほど美味しかった。お客さんもびっくりしてる。
「これ
いいえ。お店の名を明かすとお客さんはもっとびっくりしていた。おいおい。
「そのコスプレ本格的だね?」
お客さんが驚くのは大抵メイド服の質感だ。そりゃド●キで売っているようなテッカテカな化繊ではなく、コットンに麻や魔法素材が入っているからね。「本格的」じゃなくて「本物」ですから。
「ナデちゃん。行ってきたよ。」
隠キャ仲間のロリさんが帰ってきた。ライバル関係にある国際科3Eのメイド喫茶の偵察に行って来たのだ。
「なんかケチャップでハート描いたり『萌え萌えキュン』やってて盛り上がってたよ。うちはどうにも落ち着き過ぎてるかもしれないぞ。」
なるほど、ちょっとこだわりが過ぎて需要を読み誤っただろうか?とりあえず宣伝要員を増やすことにした。
「よう、儲かりまっか?」
そこにトニーが顔を出した。
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