本職メイドな【私】の物語。白鳥も水面下では。
「なんか違う。」
きっとクラスの女子たちもそう思ったに違いない。
たかがメイド喫茶である。オムライスにケチャップでハートを描いて「萌え萌えキュン」って適当にやるつもりだったものがほとんどだろう。
ちなみに、メニューはお菓子と飲み物のみで、申請していたご飯メニューの「ナポリタン」と「オムライス」は却下された。それは3年E組(国際科)のクラスが企画したもう一つの「メイド喫茶」に認可されたのだ。(その代わり生菓子はうちのクラスだけ認可。) 時期的に食中毒防止対策でメニューの
されどメイドである。担任のナベ先の軽い提案で、お屋敷でメイド講習を受けることになってしまったのだ。ランチとデザートがつくという甘い囁きに負けたクラスメイトたちは鬼教官と化した椿姫さんの指導を2日にわたってみっちりと叩き込まれることになったのだ。
立つ姿勢から始まって歩き方。お茶を注ぐ腕の角度からエプロンドレスの結び目に至るまで。椿姫さんが教鞭をブンブン振って指導するもんだから、まるで昭和のスポ根ドラマみたいな状態になっていたのだ。
「鬼⋯⋯悪魔⋯⋯。」
恨みつらみが聞こえようが椿姫さんは一切妥協しない。何しろ「メイド喫茶」というものを理解していないのだから。
「その通り、私は魔人である。」
うん、そういう意味で言ってないと思う。
しかし、2日目が終わる頃にはなんとか見られるまでにはなって来た。ま、私が言うのもなんだけど一応メイド業界ではセンパイなので。
「ねえ椿姫さんて凄い厳かったねぇ。でもこれで私もすぐに
華の
一方、クラスの陽キャ男子と紗栄子はコーデルさんに執事としてビシバシ鍛えられていた。執事服まで無料レンタルか。ただ洗濯は
「歯を見せるな。背筋は伸ばせ。なんだそのガニ股な歩き方は!」
コーデルさん、厳しいです。でも2日でなんとか執事っぽく仕上がった。ただ、おだてるとすぐに崩れてしまうのが難だけどね。
紗栄子は水分を補給しながら特訓をにやけ顔で眺める奏に聞く。
「奏は執事服は自前のを着るの?」
奏は思わず苦笑した。
「俺は『ご主人様』だから執事服は持って無いよ。だから借りるんだよ。」
「ああそうだっけ?ごめん、忘れてた。全然貫禄ないんだもん。」
そして、ようやく今日の設営に至ったのだ。なかなかいい感じのカフェに仕上がったじゃん。細かい細工はマリコさんたち本職がやってくれたし、指導もしてくれた。照明からカーテンに至るまでお屋敷にある備品から借りてきてまさに奏様様と言えるだろう。
そして最後にアップライトのピアノが搬入された。どこから借りて来たんだよ。設置はさすがに業者がやってくれたんだけどね。
こうして、このロックフォード国際高校の文化祭「
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