目立たぬ日常を欲する【俺】の物語。最後はキャンプファイアーだよね。
「旦那様、不甲斐なき姿を晒してしまいまことに申し訳ありません。」
軍団長である竜人アレイスターが代表して頭を下げた。気にするな。お前たちが無事ならそれでいい。
「まさか旦那様の鼓舞魔法が我々魔族にも効くとは思いませんでした。でも⋯⋯それがいちばん嬉しゅうございました。」
椿姫が珍しく笑んだ。当然、お前たちにも効くだろう。なぜなら俺たちは家族だからだ。
「と、とりあえず、奴らのデータは採れました。早速解析いたします。」
セバスチャンは表情一つ変えないが声が少し上擦る。照れてやんの。そう、四天王が勇者一行に勝負を挑んだ目的がそれだったのだ。俺の戦いを有利に導くために身を挺してデータを取ったのだ。俺は彼らを十分労ってからゲート魔法で屋敷に送り返した。
さて、サマーキャンプの最後の晩は教職員主催のキャンプファイアーである。10年前くらいまでは文化祭の後夜祭で催していたが、学校の立地の関係でサマーキャンプでするようになったという。
トニーが手持ち無沙汰そうにしていた。どうした?勇者一行は?
「ああ、すでに東京に帰ったよ。そのまま夏休みは帰国してあちらで過ごすそうだ。」
帰った⋯⋯だと?勇者パーティにバカンスがあるとか初耳だよ。まあ、おかげでこちらもしばらくはゆっくりできそうだな。
明日東京に帰って学校で解団式をやってサマキャンが終わり、夏休みがやっと始まるのだ。トニー、お前はどうすんの?
「俺?仕事なら山ほどあるからな。それにやっと東京のナイトライフを満喫すべき時が来たわけだ。お前もどうだ?」
満喫って、毎晩ずっと遊び歩いていたくせに。それに今の俺は高校生の設定だって言ったろ。「ちゃんねえ」のいるお店とか出入りできないの。そうこうしているうちに、フリーのトニーにJKたちが群がりはじめる。俺は彼女たちの殺気の対象になる前にそこを去った。
実行委員たちが太い薪を井桁に組んでキャンプファイアの準備をしていた。
懐かしい。アストリアでは野宿の時は毎晩火を焚いていたっけ。火の当番は火の妖精王グレンにやらせていた。妖精王たるワシに焚き火の番をさせるとは⋯⋯とぶつくさいいながらも嬉しそうに火の面倒をみていたっけ。料理で火を使う関係でマーヤによく懐いていたのを思い出す。
旅の後半はトニーが作る
「奏!」
真綾たちが俺を見つけて寄ってくる。お、みんな浴衣が似合ってるね。ジャージでの参加で構わないのだが、国際交流なので浴衣の着用も可能なのだ。しかし、プロムのドレスやら浴衣やら、私立高校は金がかかるな。
そういえば自分で着付けできるんだねぇ。
「自分でできるわけないじゃん。椿姫さんがメイドさんたちを手配してくれてなんとかね。」
そ、そう。うちのメイド
日が沈み、まだ西の空に薄明が残る頃、キャンプファイアに火がつけられた。生徒たちの歓声が上がる。
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