目立たない日常を欲する【俺】の物語。決戦前夜は意外な展開に。

 ようやく今日で座学が終わる。ただ、明日からは初歩の軍事教練体験で身体を使った上、レポートを仕上げねばならない。誰か俺の夏休みを返してくれよ。とほほだよ。ただ、今日中にやらねばならない仕事がもう一つあるのだ。


 「リアム。少し話せないか。」

講義が終わり引き揚げようとするリアムに声をかけた。

「構わんよ、魔王。」

空気が張り詰める勇者パの連中。もちろん、同席してくれて構わない。


 昨日の襲撃は君の差し金か?その問いにリアムは澄ました顔で首を横に振った。

「僕はそんな安っぽい真似はしないね。今回のキャンプ富士の話は第7艦隊からの要請だ。政府ステイツと中国政府は君の魔王国を潰すつもりなのさ。それでチンクの兵士どもの上陸を許可したんだが。所詮は丸腰の民衆相手にしか暴力をふるえぬ猿どもだ。身の程を思い知ったろう。」

 

 なるほど。ではとりあえず君たちの新装備で明日俺と戦うことにしないか?

俺一人で君たち相手にしてやる。演習場なら邪魔も入らないし遠慮も要らない。どうだ?


「⋯⋯いいだろう。」

 リアムは我が意を得たり、という表情で立ち上がった。しかし、ここでセバスチャンがしゃしゃり出る。


「お待ちください。旦那様。それはなりません。」

セバスチャン?

「勇者様。まず、魔王の前に四天王を倒すことが勇者の勇者たる条件ではないかと愚考いたします。我ら四天王全員で当たっても我が主人の足下にも及びません。まず、我々を倒せないようなら潔く諦めるべきでしょう。」

え、ちょっと待ってよ。

「それも理屈ではあるな。」

いや、納得するなよリアム。

「では早速、明朝より戦いを開始いたしましょう。よろしいか、勇者。」


 セバスチャンはかつて俺が剣を交えた魔界伯爵コーデルグラキウス4世のかおに戻っていた。氷のように冷徹で鋼のように強靭な魔人である。

 勇者たちもかなり強いが遅れは取らないだろう。


「実はすでにアストリアから城代兼参謀長ドロシーそして魔王軍団長アレイスターも呼び寄せてございます。我らの働き、ご照覧くださいませ。」

相変わらず仕事が速いな。ただ、彼らもトニーの装備と訓練によってかなり強化されている。侮ってはならないだろう。


 今夜はリアムたち主催のダンスパーティーである。もちろん、生徒も海兵隊員も制服で参加可能だ。もちろん、突然開催を告げられたらほとんどの日本人は踊れないだろうが、みんなで予習してワルツくらいはなんとか踊れそうではある。


  中にはちゃんとドレスを持ってくる女の子もいた。ちょっと勘違いしてキャバ嬢みたいになっている子もいる。

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